“みかんの島”で生まれた名物、「周防大島みかん鍋」を味わう!瀬戸内海の海の幸とみかんが強力コラボ

2015.12.09

誰もが最初に思わず「えっ!?」と耳を疑ってしまうネーミングのご当地鍋が、山口県大島郡周防大島町に存在します。その名も「周防大島みかん鍋」。フルーツと鍋の組み合わせって???果たして、いったいどんな鍋なのか、実際にこの目と舌で確かめに行ってきました!

周防大島町は山口県の南東の端に位置し、瀬戸内海に大小合わせ約3,000ある島の中で3番目に大きな周防大島(面積128.31平方キロメートル)を中心に、31の島で構成されています。近海は豊かな漁場として知られており、漁業が島の産業の一翼を担っています。
▲周防大島は日本三大潮流のひとつ「大畠瀬戸」をまたぐ大島大橋(通行無料)で本州とつながっている

また、農業も島の産業を担う一翼であり、冬でも温暖な気候を利用して温州みかん(山口大島みかん)の栽培が盛んです。山口県内における同品種の全生産量の約8割を占め、「みかんの島」として親しまれており、島内に点在する農園では、10月から12月までみかん狩りが楽しめます。
▲毎年10月になると多くの人がみかん狩りに訪れる
▲島の形から「金魚」にも例えられる周防大島。漁業、農業に加えて観光業も島の支柱

みかん栽培と漁業の島に誕生した異端!?大胆!?「みかん鍋」

そんなみかんの島で、誕生時には、山口県民はおろか地元民や生産者すらも驚かせたご当地鍋が存在します。それこそが、島で採れた温州みかんをふんだんに使った海鮮鍋「周防大島みかん鍋」(通称「みかん鍋」)なのです!

同じ柑橘類でもユズやカボスであれば鍋との相性が容易に想像できますが、こたつのお供としておなじみの温州みかんが鍋の具材に???フルーツとしてのイメージが強い品種だけに、誰もが驚くのは当然かもしれません。
「みかん鍋」の調理法、具材、薬味については、島内の飲食店経営者や料理人で構成される「周防大島鍋奉行会」によって、「4つの定義」が定められています。

まず1つ目は、「みかん鍋」のトレードマーク、出汁の中に丸のまま浮かぶ「焼きみかん」が入っていること。果皮が放つ柑橘特有の爽やかな香りは、食欲を増進させるだけでなく、魚介の臭みを緩和してくれます。
▲「みかん鍋」には島内で栽培されるみかんの中でも小ぶりな2Sサイズ(直径約5㎝)が使用される

JA山口大島と広島環境保健協会による厳しい検査をクリアしたみかんだけが鍋用として選ばれ、「安心・安全」のお墨付きという意味も込めて「鍋奉行御用達」と焼印されています。

みかんは焼くことよって皮のえぐみが解消され、実よりも多く含まれる栄養成分も摂取されやすくなるそう。

2つ目は、「地魚つみれ」を入れること。島を囲む瀬戸内海で獲れた新鮮なイワシやエソなどのすり身に、みかんの果皮を練り込んで作られます。
▲「地魚つみれ」が入っていなければ「みかん鍋」にあらず

続いて3つ目は、青唐辛子とみかんの果皮で作られる「みかん胡椒」を添えること。九州を中心に薬味として一般的に使われる「柚子胡椒」をリスペクトして開発されました。

製品化もされており、道の駅「サザンセトとうわ」や観光施設の特産品コーナー、スーパーなど、島内で手に入ります。
▲「みかん胡椒」(税込465円)はお土産にもオススメ

最後の4つ目は、ふわふわメレンゲ仕立ての「みかん雑炊」で〆ること。淡雪のようにメレンゲ状になるまで泡立てた玉子の白身を、ご飯を入れた鍋に流し込み、黄身をまんべんなくかけたら、みかんのヘタのごとくネギや水菜を真ん中にちょこんとのせます。

蒸らされてメレンゲがふくらんだ様子は、みかんの見た目そのもの。「みかん鍋」にふさわしい〆の雑炊が楽しめます。
▲ふんわりとメレンゲが膨らむと、見た目はみかんそのもの

また、定義にはありませんが、鍋には「瀬戸貝」と「みかん白玉」も必ず入ります。

ムール貝を一回りか二回り大きくしたような「瀬戸貝」は、周防大島近隣以外では滅多に流通していません。身も美味しく良い出汁がとれることから、島では鍋物やうどん、正月の雑煮には欠かせない食材となっており、「みかん鍋」においても味の決め手ともいえる存在。
▲良い出汁がとれる「瀬戸貝」は、島では食材として重宝されている

みかん果汁で白玉粉を練り上げた「みかん白玉」は、もっちりした食感で女性や子どもに大人気です。
▲ほのかにみかん風味の「みかん白玉」。出汁を吸い込んでモチモチ食感に

ちなみに、「みかん鍋」のベースは海鮮鍋。「地魚つみれ」や「瀬戸貝」とともに、同じく地場産のタイ、カワハギ、クルマエビ、タコといった豪華な面々が鍋を彩ります。

周防大島の幸が凝縮、「みかん鍋」を実食!

「みかん鍋」が味わえるのは「周防大島鍋奉行会」加盟の島内12店舗のみ。提供期間もミカンの旬に合わせて、毎年11月から3月末までとなっています。

百聞は「一食」にしかず―。「みかん鍋」とはどんなものか、島に渡って実際に目と舌で確かめてきました!今回お邪魔したのは、お土産に「みかん胡椒」も購入できる「お侍茶屋 彦右衛門(ひこえもん)大島本店」。
▲「お侍茶屋 彦右衛門」では「みかん鍋」をはじめとする島の名物料理が味わえる

テーブルに運ばれてきた鍋には、「みかん鍋」の代名詞とも言える「焼きみかん」がごろりと鎮座。実際に目の当たりにすると、やはり大きなインパクトがあります。

さらに、「地魚つみれ」を筆頭に、これでもかというほど詰め込まれた豪華絢爛な魚介たち。タイのお頭は「瀬戸貝」と一緒に出汁の味わいを深めてくれそうです。
▲“周防大島の幸”が凝縮された「みかん鍋」(1人前税込2,160円、写真は3人前)

さて、火にかけて待つこと10分。いよいよ出来上がりです!

蓋を開けると、ほのかに香るみかんと海鮮の風味に、両者の相性の良さを確信。ユズやカボスほど強烈すぎない香りの加減が、魚の旨みをしっかり引き立ててくれている印象です。
▲ふたを開けた瞬間、柑橘と魚介が織り成す香りが部屋一杯に広がる

「地魚つみれ」は出汁を吸い込んで熱々ホクホク。程よい歯ごたえの「瀬戸貝」は噛めば噛むほど旨みが口の中に広がります。
▲みかんの風味香る「地魚つみれ」は魚の臭みなし
▲ムール貝に似た「瀬戸貝」は出汁の要だけあって食べても絶品
▲出汁の美味しさも文句なし。雑炊があるので飲み過ぎないように
▲「みかん胡椒」のピリリとした辛味が食欲をさらに刺激

特に「地魚つみれ」との相性は“超”がつくほど抜群。濃厚で優しい魚の旨みが「みかん胡椒」によっていっそう際立つように感じられます。
▲「地魚つみれ」と「みかん胡椒」の相性は最強のインパクト、何個でも食べられそう…

「みかん雑炊」前の小休止に、「焼きみかん」を皮ごとがぶり。皮に包まれた果肉は煮崩れせずに、みかんそのままの甘さがしっかり残っています。

「せっかくの焼きみかんを残すのはもったいない」と、お客さんの間で自然と広まった雑炊の前の“口直し”なのだとか。ちょっとしたデザート感覚で味わえます。
▲えぐみがないので皮ごと食べられる

〆の「みかん雑炊」は、「瀬戸貝」に加えて何種類もの魚介のエキスが出汁に溶け込んでいるだけに、文句なしに別腹な美味しさ。ふっくらふわふわのメレンゲは、ごはんに混ぜて食べるのがオススメです。
▲「みかん鍋」の旨みをすべて吸い込んだ雑炊、もはや別腹の美味しさ

蓋を開けてから雑炊を食べ終わるまでノンストップ!“変わり鍋”のように騒がれている「みかん鍋」ですが、その味わいは鍋料理として堂々たるものではないでしょうか。

みかんと新鮮魚介、両者ともに栄養満点な「みかん鍋」は、美容にプラスな成分も豊富に摂取できるので女性にもオススメ。魚介の風味が苦手な方でも、素材が新鮮な上にみかんのおかげで臭みがないので、きっと美味しく食べられるはずです。

周防大島鍋奉行会

みかん鍋を食べられる周防大島鍋奉行会加盟の12店舗はこちらのリンクをご確認ください。

誕生から10年目、島をポジティブに変えた「みかん鍋」

「みかん鍋」が周防大島町に生まれたのは2006年のこと。第1回「周防大島まるかじり」という、町をあげての地域おこしイベントで初めてお披露目されました。

鍋が誕生して、2015年でちょうど10周年。鍋の開発に中心的に携わってきた、周防大島観光協会・事務局長の江良正和(えらまさかず)さんにお話を伺いました。

「せっかくのビッグイベントを、単に島の特産品が並ぶだけの“大きなバザー”にしたくありませんでした。『食』をキーワードに、将来の発展が見込めるものをイベントの目玉として発表したいと考えたのが、プロジェクトの始まりです」と江良さん。

周防大島は温州みかんの一大産地…といってもそれは山口県内に限ってのお話で、生産量も規模も全国的に見ればマイナーな産地にすぎません。全国に向けてどうやってインパクトを与えるかという思案の中で、島の“アイコン”として育てようと「みかん鍋」は生まれたといいます。
▲「みかん鍋」が課された使命、みかん産地として周防大島を全国区に―─。

名前も奇抜、良い意味で期待を裏切りたい─―。

江良さんを中心に、後に「周防大島鍋奉行会」となる島内の飲食店経営者や料理人とともに研究が進められました。同イベントでお披露目された「みかん鍋」は好評を博しましたが、この時点ではまだみかんは鍋に浮かんでいませんでした。

「飲食店関係者が共通して『成功』と認識できましたが、これから提供していく中でビジュアル的にもう一つ何かが物足りないという課題がその時点では残っていました。そして、“勇気をもって”みかんを丸ごと浮かべてみようというアイデアに至りました」

しかし、皮をむいて浮かべると実が崩れて見た目にも味的にもNG、皮のままであれば香りは良くても一緒にえぐみが出てしまう…。様々な試行錯誤の末に、煮崩れもなくえぐみも解消される「焼きみかん」に行き着きます。

「小さめの2Sサイズを使っているのは見た目のかわいらしさも意識してのものです」と江良さんは開発当時の苦労を振り返ります。
▲みかん鍋の生みの親の一人、江良正和さん

テレビや雑誌など、メディアでの紹介が多くなるにつれ、地元でも新名物として認識されるようになったものの、当初はみかん生産者や年配者層などからは発想の奇抜さに「ふざけている」などと“お叱り”の声もあったそうです。

「島外で暮らしている子どもさんやお孫さんが『みかん鍋』を知って、帰省時に『ぜひ食べたい』とせがまれたそうなんですよ。メディアなどでの全国へ向けた発信が、思わぬ形で反発されていた人の理解に繋がりました」と江良さん。

「『みかん鍋』は農業・漁業関係者、飲食事業者など、島全体の結束も強めてくれ、何かに挑戦すれば将来に繋がると、皆がポジティブに考えられるようになりました。この10年間の町の成長に大きく寄与したと実感しています。ただ、わたしたちの目的は『山口大島みかん』の普及です。そのツールの一つである鍋だけが一人歩きしないように、しっかりと安全・安心の島産みかんをPRしていきたいと考えています」
▲イベントなどでスタッフが着用する帆前掛け。10周年を機に作られた新ロゴは「山口県」を印象づけるために「毛利家」の家紋がモデル

2015年も「みかん鍋」は11月1日に解禁され、島は鍋シーズン真っ只中!全国各地で開催されるようになった、いわゆる「街コン」も周防大島町では冬期に「みかん鍋」を囲んで開催されています。

海水浴やマリンスポーツなど、これまでは山口県内でも「夏」のイメージが強かった周防大島。今では「みかん鍋」の登場で「冬」でも“熱い”島が楽しめるようになりました。

みかん狩りでしっかり体を動かした後は「みかん鍋」。周防大島でみかん三昧を楽しみませんか?
兼行太一朗

兼行太一朗

記者兼営業として、地元山口の地域情報紙に14年間勤務。退職後はNPO法人大路小路ひと・まちづくりネットワークに籍を置き、守護大名大内氏や幕末における歴史資源の取材に携わる。同時にフリーライターとして活動しながら、たまに農業も。自称ネコ写真家。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。

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