「尾道」の坂道をぶらぶら散歩。猫と遊んで「千光寺」参り

2016.05.19

尾道屈指の観光名所「千光寺」へ。のんびりして懐かしい独特の雰囲気を漂わせる参道ルートをご紹介します。急な斜面に入り組んだ路地や階段。古い寺社や民家、ユニークなお店も密集した見どころいっぱいの「坂の町・尾道」を楽しみましょう。

▲石段に迷路のような路地が交差する「千光寺」への参道(旧道)

「千光寺新道」は文学の香りがいっぱい

JR尾道駅から国道2号を線路沿いに歩いて10分。線路の下をくぐると現れる石段が「千光寺新道」の入口です。
▲趣のある建物が軒を連ねる「千光寺新道」

新道と言っても、そこはレトロ感たっぷりの尾道。一部は石畳になっていて、観光ポスターや映画のロケにも使われたことがある尾道の景観を代表する坂道です。
▲「千光寺新道」は観光ポスターにも採用された「坂の街、尾道」の代表的な景観

振り返れば古い民家と石垣の間から瀬戸内海の「尾道水道」を望むことができます。「暗夜行路」などの作品で知られる志賀直哉もここで暮らしたことがあり、この景色を眺めながら坂を歩いて、作品の情景描写に反映させていたに違いありません。
▲「志賀直哉旧居」の外観。敷地内には文学公園が整備されている

新道の途中の路地を入ったところに「志賀直哉旧居」があります。ここは志賀直哉が1912年から約1年を過ごした場所で、ほぼ当時のまま保存して公開されています。
▲志賀直哉が暮らした部屋。尾道の街並みを一望できる

6畳と3畳の部屋に小さな台所があるだけの質素なつくりですが、障子の向こうには尾道水道を望む美しい景色が広がっています。代表作「暗夜行路」にある「前の島に造船所がある。そこで朝からカーンカーンと金槌を響かせている」という一節は、きっとこの家で見聞したものでしょう。
▲「文学記念室」の展示物

「志賀直哉旧居」から新道に戻り、少し歩くと「文学記念室」があります。ここには尾道と縁のある数多くの作家の愛用品や書簡、直筆原稿などが展示され、代表作「放浪記」で知られる林芙美子の東京での書斎も再現されています。
▲林芙美子の東京の家にあった書斎を再現

立寄った2つの施設以外にも「中村憲吉旧居」と「尾道市文学公園」があり、これらの4施設は「おのみち文学の館」として文学好きには見逃せないスポット。入館は共通券で300円(税込)です。

森羅万象の声が聞こえてきそうな裏路地「猫の細道」

▲「猫の細道」ではたくさんの猫を見かける

たくさんの飼い猫や野良猫が暮らし「猫の町」としても知られる尾道ですが、それを象徴するのが「猫の細道」です。
▲不思議な雰囲気に包まれた「猫の細道」

「猫の細道」は尾道在住のアーティスト園山春ニ(そのやま しゅんじ)さんが名付けたもので、約3,000体もの招き猫をコレクションする「招き猫美術館 in 尾道」や大正時代の古民家を再生したカフェ、猫グッズの店などが集まっています。
▲ところ狭しと招き猫が並ぶ「招き猫美術館 in 尾道」の館内

「猫の細道」では猫が描かれた丸い石をたくさん見かけます。これは園山さんが制作した「福石猫」で、路傍や石垣の上など、このエリアに108匹が置かれているそうです。
▲ひとつひとつ表情や柄が違う「福石猫」

「福石猫」は「猫の細道」以外にも尾道各所に約3,000匹が置かれていますが、尾道のお土産としてはもちろん、家内安全や商売繁盛など福を呼ぶ置物として買い求める人も多く、国内に1万匹、世界各国には計4万匹がいるそうです。
▲「福石猫」を製作中の園山さん

園山さんは約20年前に尾道で個展を開いたことが縁で自身のアトリエを「坂の町・尾道」に構え、独自の世界観で町づくりを行っています。
▲愛猫の「小梅」も製作を見守っています

「尾道イーハトーヴ」と名付けられた古民家再生やアートによる活動は、今や尾道観光に欠かせない要素になっています。
▲坂の途中から望む尾道の市街地や「尾道水道」

光る玉伝説の「千光寺」は巨岩群も見どころ!

▲「千光寺」の本堂は珍しい舞台造り

1200年以上の歴史がある「千光寺」は、古い寺社がたくさんある坂道エリアの中でも屈指の名刹です。千光寺山の中腹に位置し、本堂の前にある朱塗りの舞台からは尾道水道や向島、因島など瀬戸内海の美しい景色を見ることができます。
▲光る玉の伝説が「千光寺」の名前の由来とも

境内には高さ約15mの「玉の岩」があり、天頂部には大きな玉が置かれています。これは「その昔、岩の上に宝玉があり、夜ごとに光っては遥か海上を照らしていた」という伝説を再現したもので、日が暮れると3色に光るように作られています。
▲今も18時には時の音を響かせる鐘楼

「玉の岩」の横には断崖にせり出すようにして朱塗りの鐘楼が建っています。除夜の鐘として紹介されることも多く、1996年には環境庁の選定した「日本の音風景百選」にもなった尾道の音の風物詩。この鐘の音を取り上げた逸話は、志賀直哉や中村憲吉の作品の中にも登場しています。
▲煩悩を打ち消してくれる「三十三観音堂」の大念珠

「三十三観音堂」には関西一円の観音霊場の御本尊33体が祀られ、ここにお参りするとそれらの霊場を巡拝したのと同じ功徳があると伝えられています。正面には大念珠が下がっていて、幸せを念じながらゆっくり回すとカチカチという音が煩悩を打ち消してくれるそうです。
▲大きな岩に掛けられた鎖を使って登る「くさり山」

また、巨岩、奇岩のたくさんある「千光寺」の中でも、ひときわ気になるのが「くさり山」。岩に掛けられた鎖に足をかけて登りますが、男性でも簡単には登れません。
▲輪の中に足を入れ、縄梯子の要領で登る

それでも修行僧になった気分で慎重に一歩一歩。どうにか登りきると岩の上には「石鎚蔵王権現(いしづちざおうごんげん)」の祠(ほこら)があり、ここからの眺めはまさに絶景。本堂とは違った素晴らしい眺めが広がり、頑張りが報われた気分になります。
この他にも境内には石で叩くとポンポンと音がする「鼓岩(つづみいわ)」や、冬至のときだけ岩屋の先に日の出が拝める「御船岩(みふねいわ)」など不思議な岩もあります。
▲裏参道にある「文学のこみち」

「千光寺」の周辺は「千光寺公園」として整備され、春は桜の名所として人気のスポット。山頂には展望台もあり、そこから山を下る裏参道のルートもあります。途中には尾道に縁のある作家や詩人の作品の一節を自然石に刻んだ文学碑が点々と並ぶ「文学のこみち」があり、散策にはうってつけの場所です。
▲「文学のこみち」には25基の文学碑がある

見ずには帰れない「尾道水道」の夕景

▲「千光寺」の境内から望む夕刻の尾道水道

見どころいっぱいの「千光寺」とその周辺ですが、ぜひ目に焼き付けておいて欲しいのが尾道水道の夕景。参道や坂道の途中からも見ることができますが「千光寺」の境内や「千光寺公園」の展望台は絶好の観賞ポイント。尾道水道の対岸にある向島まで見渡せ、ライトアップされた「新尾道大橋(しまなみ海道)」や造船所のクレーンなど、尾道ならではの景観を望むことができます。個人的には、すっかり暗くなるより黄昏どきの方が尾道らしい趣を感じます。
▲伝説を再現して夜間は3色に光る「玉の岩」

「千光寺」の境内にある「玉の岩」も夜になると存在感がひときわ。最上部の宝玉は数十秒おきに赤、黄色、緑と色を変えて光ります。参道下の市街地からも見える位置にあり、地元の人にはお馴染みの光景になっています。
数多くの文人に愛され、映画やアニメーションの舞台としてもたびたび描かれる尾道。坂道の路地に入って時が止まったような街並みも楽しみながら、自分なりのベストな参道ルートを見つけてみてはいかがですか。
廣段武

廣段武

企画から取材、撮影、製作、編集までこなすフリーランス集団「エディトリアルワークス」主宰。グルメレポートの翌日に大学病院の最先端治療を取材する振り幅の大きさと「NO!」と言わ(え?)ないフレキシブルな対応力に定評。広島を拠点に山陽・山陰・四国をフィールドとして東奔西走。クラシックカメラを語ると熱い。

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