市場に出回らない「幻のトマト」!

2016.05.22

普段私たちが何気なく口にしているトマト。一言にトマトと呼んでいるが、国内だけで120種類以上の品種があることをご存知だろうか。今回はそんな数あるトマトの中でも、市場に出回らない幻のトマトがあるという情報を聞きつけ宮城県大崎市へ足を運んだ。一度食べたらクセになると言われている幻のトマトの実態とおいしさの秘密に迫る!

~デリシャスファーム~人々を魅了して止まない
幻のトマトを育てる気鋭の農場を訪問

杜の都、仙台駅から車で約1時間。三陸自動車道の松島北ICを降りて約20分の田園地帯、宮城県大崎市鹿島台にあるのが、噂のトマトを栽培する農場「デリシャスファーム」だ。
▲約7,000坪(東京ドームのグラウンド面積の約2倍!)の広大な土地にビニールハウスが立ち並ぶ

トマトを栽培するビニールハウスのほか、採れたてのトマトや加工食品の販売所、カフェに体験スペースまであるビッグファームは壮観。県内に3つの農場を経営するという「デリシャスファーム」は地元の方からの人気も高く、この日もトマトを求めるお客さんが途切れることなく出入りしていた。
▲今回案内してくれるのは「デリシャスファーム」の常務取締役、吉村さおりさん

早速ビニールハウスの中を覗くと、整然と並んだトマトの樹がズラリ。幻のトマトと呼ばれているのは“玉光(ぎょくこう)デリシャス”という品種で通称「デリシャストマト」と呼ばれている。
▲赤く熟れすぎたものより若干青さの残るものが食べごろという「デリシャストマト」

「デリシャストマトの旬は3月から5月です。2月から7月までデリシャストマトを栽培しますが、他のシーズンは別の品種のトマトを栽培しています」。そう言いながら案内してくれたのはチャーミングな笑顔が素敵な吉村さん。祖父の代から農業を始め、1979年に「デリシャストマト」を育て始めてからは、栽培する作物の9割はトマトになったという。
▲果肉の厚さ、甘さと適度な酸味のバランスが良く、後味もさっぱりしているのが「デリシャストマト」の特徴

そんな季節限定で栽培される「デリシャストマト」、そのおいしさの秘密は節水栽培にある。通常のトマトの約半分程度、苗床の土も乾燥するくらい栽培時の水やりを制限することによって、個体が大きくなりすぎず糖度の高いトマトが出来上がる。ちなみに一般的なトマトの糖度は4~5度程度だが、「デリシャストマト」の糖度は7度以上もあるそうだ。

しかし、その栽培はとても手間暇がかかるもの。毎年有機肥料を使い、土を耕すことすでに20年以上。「デリシャストマト」を栽培するのには、最適な土壌を保ち続ける必要があるという。また最低気温がマイナス10度に達する時もある大崎市。ビニールハウス内は常に最低10度以上に保たなければならない。生育状況も毎日チェックしながら、時間をかけて大切に栽培しなければ「デリシャストマト」として育たず、驚くことに収穫したトマトのうち商品になるのは約半数ほどなのだとか。
▲糖度の高いトマトは甘味線と言われる黄色の筋のような線が出てくる。この線がはっきりしてるものほど、甘くておいしいとのことなので目安として覚えておこう!

栽培できる数に限りがある分、「デリシャストマト」は市場に出回ることがない。生産したトマトの9割が敷地内の直売所で、このトマトのファンやレストランのシェフによって売れてしまうからだ。おいしさもさることながら、そんな希少性も“幻”と呼ばれるゆえん。
▲安心安全なトマトを食べられるのも品質管理が徹底されているからこそ

~ファームカフェ~絶品料理が盛り沢山
トマト三昧メニューに舌鼓を打つ

▲直売所の横にトマト料理を楽しめるファームカフェを併設

ファーム内には「デリシャストマト」を使った絶品料理が味わえる「ファームカフェ」も。この日は平日だというのにも関わらず、大変な混み具合。美味しいトマト料理を食べるために遠方から足を運んでくる人も多いということが、料理のクオリティの高さを物語っている。
▲丸ごとトマトの味噌バターラーメン 980円(税別)

お客さんに一番人気なのは、インパクト抜群のビジュアルを誇る「丸ごとトマトの味噌バターラーメン」。美しく盛り付けられたトマトに爽快感のある水菜、そして中心に添えたバターと、なんとも食欲をそそる色使い。その楽しげな色合いは食べるのが少々もったいなく感じてしまうほど。
▲「トマト辛味噌」を使ったピリ辛スープ。程よい辛味が食欲を刺激する。

スープにはドライ加工してから漬け込んだトマトと味噌、にんにくをブレンドしたお店自慢の加工食品である「トマト辛味噌」を使用。鷹の爪のほどよい刺激、トマトの持つフレッシュな酸味が良いアクセントに。味噌のコク、にんにくの旨味が加わることで、濃厚ながらも後味さっぱりという極上のハーモニーを生み出している。またトマトの上に乗せたバターを溶かすと、さっきまでのピリ辛味とは打って変わって口当たり優しいマイルドな味わいに変化。一度に2つの味を楽しむことができるのも嬉しいところ。
▲左がトマトスープパスタ 850円(税別)、右はふわとろ卵のオムライス 750円(税別)

また、「トマトスープパスタ」と「ふわとろ卵のオムライス」も絶品。

「トマトスープパスタ」のスープには、「デリシャストマト丸しぼり」というトマトジュースを使用。サラサラしているにも関わらずハッキリとした輪郭を持つスープは、芯のある味わいが特徴の「デリシャストマト」ならでは。そこに爽やかなバジルと深みのあるにんにくを加えることで、芳醇な香りも加えている。また具材として入っているジューシーかつプリッとした伊豆沼農産ソーセージも旨みに一役。
「ふわとろ卵のオムライス」のデミグラスソースにも「デリシャストマト丸しぼり」を使用しているが、ケチャップをブレンドして煮詰めることでその風味は全くの別物。引き立てられた酸味が卵の甘さと相性抜群なのだ。またライスはトマト果肉を一緒に炊き込んでいるため、よりソースの味わいとマッチ。そこにフワフワかつトロリとした絶妙な焼き加減の卵を乗せることで、食感の楽しさもプラスした。ソースと卵、そしてライスの3つが生み出す極上のハーモニーをぜひ堪能していただきたい。

~トマト直売所~さまざまな加工品を販売!
トマトと肩を並べるほど大人気の商品は必見

▲トマトの直売所にはオリジナルの加工食品もズラリ

続いて向かったのは「ファームカフェ」に併設された直売所。こちらでは採れたての「デリシャストマト」はもちろん、トマトジュースやゼリー、さらには飲むトマト酢などの多種多様な加工食品も販売している。当初数品目だった加工食品は年々増え続け、50品目を超える規模に。今ではトマトと並ぶ人気商品となっている。

どんな商品があるのか確認していたところ、デリシャスファームの常連だという女性から「ここのトマトジュースは飲まないと損よ!」という一言が。というわけで、早速トマトジュースを購入し飲み比べてみた。
▲(左から)プレミアムデリシャストマト丸しぼり100g 450円、デリシャストマト露しずく100g 350円、デリシャストマト丸しぼり100g 250円 (全て税別)

まずは「デリシャストマト丸しぼり」からご紹介。こちらは塩や砂糖などで味付けせず、「デリシャストマト」をそのまま絞った一品。早速口に含んでみると、まるでトマトソースを飲んでいるかのような濃厚さ。他のトマトジュースにはないトロっとした口当たりが持ち味だ。お好みで氷と砂糖を加え、爽やかなフルーツジュース風にアレンジしてみるのも面白い。

次は「プレミアムデリシャストマト丸しぼり」。「デリシャストマト」の中でも糖度10以上という厳選された素材のみを使い製造された一本。その濃密な味わいは「デリシャストマト丸しぼり」以上でトマトだけを使用して作られたとはとても思えないほどバランスの取れた酸味と甘みが味覚に直撃する。今まで抱いていたトマトジュースのイメージを覆す、衝撃的な味わいを体験できる。

最後は「デリシャストマト露しずく」。こちらは「丸しぼりシリーズ」と打って変わって、何度も丁寧に濾過することにより生まれた透明感のある黄金色が特徴的。その外見通りサラリとした飲み口だが、味はしっかり「デリシャストマト」。喉越しがとても良いので、トマトジュースが苦手だという人にも飲みやすそう。
▲(左から)手づくりとまとソース100g 350円、手づくりとまと辛味噌100g 400円、手づくりとまとジャム100g 360円、真っ赤なトマトのうまみダレ160g 800円、デリシャスとまとドレッシング100g 450円、青とまとバジルドレッシング100g 550円 ※全て税別

それ以外にも「デリシャストマト」を使った製品はまだまだ沢山。スープやソースのベースとして最適な「手づくりとまとソース」や「手づくりとまと辛味噌」、砂糖とレモン汁を加えて煮た「手づくりとまとジャム」、肉・魚・野菜と何にでも使える万能ダレの「真っ赤なトマトのうまみダレ」、トマトのドレッシングなど多様な商品がラインナップされている。

~吉村さんが農業に携わる理由~
身近だからこそ気付かなかった大切なこと

現在、営業や加工品のパッケージ考案など多忙な日々を過ごす吉村さんに、手間暇のかかる農業を手伝うきっかけを聞いてみた。
▲トマトの仕分け場でスタッフとコミュニケーションを取る吉村さん(左)

「幼い頃は農業に携わりたいと思っていませんでした。汚れるし手間暇もかかるし(笑)だから高校を卒業してからの10年間は東京に出て勤めていたんです。でも東京で働くうちに、今まで当たり前のようにあった野菜の新鮮さやおいしさが当たり前ではないということ実感しました」。そして改めて農業の偉大さを知り、結婚を機に実家の農業を手伝うことを決めたという。

トマトに含まれるリコピンは、美白作用やシワ・たるみから肌を守るといった美肌作用も確認されつつある美容の強い味方。東京でエステティシャンとして美容の仕事に携わっていた吉村さんが、トマト作りの道に進むのは必然だったのかもしれない。
▲6月から7月の間はトマトやミニトマトなどの手摘みを体験できる(要予約)。新鮮な野菜に触れることのできる貴重なイベントだ

今ではトマトの新鮮さやおいしさを知ってもらうために、体験型のイベントも開催。デリシャスファームの今後の展望について「手摘みやトマトの加工など、新鮮な野菜に触れる体験を通じて野菜の素晴らしさをみなさんに知ってもらえるように、観光農園としての取り組みを強化していきたいです」という吉村さん。デリシャスファームの人気は、丁寧に作られたおいしいトマトとトマトの様々な可能性を追求する生産者の姿勢が生み出しているのだ。
もぎたてのトマトと加工品を購入できる直売所、さらには絶品料理を多数取り揃えたファームカフェ、時期によってはトマトの摘み取りや加工体験も可能というトマト三昧な一日を満喫できる「デリシャスファーム」。トマト好きはもちろん、本当に美味しいトマトを食べてみたいという人は、ぜひ訪ねてみてはいかがだろうか。
飯塚鉄平

飯塚鉄平

1980年生まれのフリーライター。ファッション雑誌「Fine」や旅行情報誌などの他、WEBメディアや企業系webサイトなどで執筆。

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