錦市場の食材が楽しめ、かつ居心地よしの居酒屋。裏寺町「百錬」

2015.06.17 更新

京都を訪れる観光客に人気の錦市場。そこからほど近い裏寺町にある「百練」は、錦で仕入れた素材を使った料理が食べられるだけでなく、観光客にとってもありがたい、使い勝手も居心地もいい居酒屋だ。

時代によって業態も柔軟に。「さすが」の錦市場

400年の歴史を持ち、「京の台所」とも呼ばれる錦市場。京都ならではの旬の食材が揃い、料理のプロも多く通うことから、観光客にも人気のスポットだ。
歩いていると新鮮な食材や美しく並ぶ店先の様子に、ついあれこれと買いたくなってしまう。
遠来の観光客など、「せっかく来たのだから、今食べたい」という人も多いのだろう。10年ほど前から錦市場にはイートインのできる店が増え始め、最近では手軽なテイクアウトメニューを売っている店も増えてきた。魚介類の串焼きや、外国人向けにマリネした魚の切り身をピンチョス風に串に刺して売っていたりと、アレンジもいろいろで面白い。
▲食べやすいように串に刺して売っていたり、買い食いを楽しめるのが錦市場の流行り
旅行で来られる人にとっては、「さすがは日本有数の観光都市・京都」というところか。観光というより隣の街へ遊びに行く感覚で訪れる者としては、「やっぱり京都は初めての人でもちゃんとうまく遊べるようにしてあるな」と妙な感心の仕方をしてしまう。

店主は錦市場で漬物屋を営む。「百練」

とは言え、まさか豆腐を買ってホテルに持って帰るわけにも行かない(そういう人もいるようだが)。そんな時におすすめしたいのが、錦市場からほど近い裏寺町にある居酒屋「百練」だ。
▲裏寺町は錦市場の東端からもう少し東へ入る。河原町通沿いのOPAの裏手(西側)と覚えておくとわかりやすい。「たつみ」の左側が百練
▲明るいうちから飲んでいる人もよく見かける店だ
こちらで出される料理の食材のほとんどは、錦市場の店で仕入れたもの。例えば冷や奴の豆腐や京揚げは「近喜商店」、魚は「かね秀」と「まるやた」、肉は「村瀬精肉店」、酒は「津之喜酒舗」とだいたい決まっているとのこと。錦市場を丸ごと味わえるというのは言い過ぎかもしれないが、「錦市場の」という冠が付くだけで、いっそう美味しく感じられる気がする。

下の写真はぽん酢で食べる豚しゃぶのような「豚皿」(500円・税込※以下同)、京揚げを炙った「おあげ焼き」(400円)など、錦市場で仕入れた食材がずらり。伏見の日本酒「まつもと」(600円)にとてもよく合う。
▲鉄皿・ステーキ(700円)は「百練」の人気メニューの一つ
「百練」が錦市場の店を大切にするのには理由がある。何を隠そう、店主である井上英男さん自身も錦市場で「錦・高倉屋」という漬物店を営んでいるからだ。また、漬物店を手伝う井上さんの息子も地元の青年会に入っているなど、同じ市場で店を構える中で培われてきた長年のつながりが、料理のあれこれに表れている。
▲「錦・高倉屋」は錦市場の東の端。
▲店先には試食コーナーも充実。「百練」で出されるのはこちらの漬物です

観光客から地元の常連まで、誰にもやさしい店

ここまで書いてきて恐縮なのだが、私が錦市場うんぬんの魅力に気づいたのは実は最近のこと。そもそもこの店を知ったのは、店主の井上さんとの縁があってのことだ。

井上さんは漬物店を始める前から、「酒場ライター・バッキー井上」の名で、『Meets Regional』や『dancyu』など数多くの雑誌に京都の店について書いている。私がMeets編集部にいた頃はもちろん、『京都・店特撰』(140B)という本を作った時には、京都中の店に連れて行ってもらったものだ。

とまあ、そんなことで通っているのだが、こういう風に井上さんを介して「百練」の存在を知って通うお客さんは多い。だから、一人で行っても井上さんがいなくても、何となく同じものを共有する仲間の輪に入ったような安心感がある。そうかと言って、常連やよく知る人たちだけにとって居心地のいい空間ではないのが、この店の一番いいところだと思っている。

テレビが見られるカウンターでゆっくりと過ごす一人客もいれば(私もこのパターンが多い)、名物の「赤チリトリ」(特製ダレで食べるホルモン鍋)をわいわいとつつくグループもいる。昼から夜までの通し営業なので、観光客は空いた時間にふらりと訪れることができるし、食堂のように定食メニューもあるので遅い昼飯の営業マンにも人気だ。

要するに誰にとっても使い勝手がよく、懐の深い店なのだ。このあたり、いつも「店で過ごすこと」について書いている井上さんらしいな、と思う。
▲店の至るところに貼られた品書きには、酒場ライターでもある井上さんの、ひねりの効いたひと言が添えられる
「百練」では毎週木曜日の夜、「聞いて語る祭」と題したイベントを開催している。第1回目のザ・ビートルズに始まり、サザンオールスターズ、矢沢永吉、エルビス・プレスリーの回もあれば、ハワイアンや「あまちゃん祭」という日もある。イベントというか、音楽をかけてみんなで語り合うという単純なことなのだが、そのぶん誰でも輪に入りやすい。そんな風にして今日もまた地元の客も観光客もたまたまやって来た人もみんな呑み込んで、「百練」の夜はゴキゲンに更けていくのだった。
大迫力

大迫力

編集出版集団140B、編集者・ライター。バッキー井上『京都・店特撰 たとえあなたが行かなくとも店の明かりは灯ってる』では編集を担当。京都の暮らしや季節に密着した季刊誌『キョースマ!』(淡交社刊)では、錦市場を1冊丸ごと特集した。

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