岩手名物「わんこそば」。どんどん♪じゃんじゃん~♪と掛け声に合わせて100杯越えに挑戦!
2016.05.24 更新
お椀に入ったそばを何杯食べられるか!?そんな遊び心あふれる「わんこそば」は、岩手県を訪れる観光客にぜひ挑戦してほしい食のエンターテインメントだ。数を競うだけでなく給仕さんとの掛け合いも楽しい「わんこそば」。その醍醐味を実際に体験してみた。

盛岡の老舗そば屋「東家」へ
訪れたのは、岩手県盛岡市内にある老舗そば屋「東家(あずまや)」本店。店名は、もともと和食の料理人だった初代・東吉(とうきち)さんの名前をとってつけられた。今や、「わんこそば」で広く全国に知られる店である。これから夏にかけては修学旅行シーズン。食べ盛りの子ども達もわんさかやってくるそうだ。

▲風格ある佇まいの「東家本店」は明治40(1907)年創業。城下町盛岡の歴史ある商店街「中ノ橋通り」にある
「わんこそば」は盛岡市民なら誰もが知っているそば料理だが、実は会社の忘年会や子ども会の行事、県外のお客さんの接待など「イベント」がなければ、味わうチャンスはそう多くない。
というわけで、十数年ぶりの「わんこそば」体験に、なぜかわくわくしながら「東家」の暖簾をくぐった。
「わんこそば」は盛岡市民なら誰もが知っているそば料理だが、実は会社の忘年会や子ども会の行事、県外のお客さんの接待など「イベント」がなければ、味わうチャンスはそう多くない。
というわけで、十数年ぶりの「わんこそば」体験に、なぜかわくわくしながら「東家」の暖簾をくぐった。

▲来店したのは午後の静かな時間だったが、休日の昼どきは満席になることも多いのでご注意を!
本気モードで「わんこそば」100杯越えに挑戦!

▲茹で加減は、長年の経験で見極める
同店では、毎日午前中に「わんこそば」用のそばを打ち終えるそう。春先から旅行者が増えるにつれて「わんこそば」のオーダーも増え、繁忙期になると一日中ずっとそばを茹で続ける日もあるという。
同店では、毎日午前中に「わんこそば」用のそばを打ち終えるそう。春先から旅行者が増えるにつれて「わんこそば」のオーダーも増え、繁忙期になると一日中ずっとそばを茹で続ける日もあるという。

▲茹で上げたら、一気に冷水で締める
「わんこそば」の場合、食べやすいように、他のメニューで提供するそばよりも小麦粉の配分を多めにし、やや柔らかくのど越しがよいそばに仕上げているそうだ。
「わんこそば」の場合、食べやすいように、他のメニューで提供するそばよりも小麦粉の配分を多めにし、やや柔らかくのど越しがよいそばに仕上げているそうだ。

茹であがったそばは、さっとつゆにくぐらせて、お椀へ!この間数秒。煮干し、コンブ、カツオ節の出汁で毎朝作るつゆは、通常のそば用つゆよりも少し濃い目に仕上げている。

▲ベテラン達の早業で、そばがどんどんお椀に盛られていく!
さて、いよいよ体験!「わんこそば」のコースはそば食べ放題に加えて、薬味の内容や数などで料金も変わるが1人税込2,700円から。
今回は、鮪のお刺身、なめこおろし、とりそぼろ、胡麻、海苔、一升漬、浅漬け、とろろなどの9種類が付く税込3,240円のコースを注文した。(団体料金や小中学生・幼児料金は要問い合わせ)
さて、いよいよ体験!「わんこそば」のコースはそば食べ放題に加えて、薬味の内容や数などで料金も変わるが1人税込2,700円から。
今回は、鮪のお刺身、なめこおろし、とりそぼろ、胡麻、海苔、一升漬、浅漬け、とろろなどの9種類が付く税込3,240円のコースを注文した。(団体料金や小中学生・幼児料金は要問い合わせ)

▲テーブルに並んだ料理はすべてそばの薬味!手前右が「一升漬」
給仕を担当する本堂満智子(ほんどうまちこ)さんは、給仕歴18年のベテランだ。この日はマンツーマンの対応だが、5~6人のお客さんを一度に担当することもあるそうだ。まずは、本堂さんから食べ方のレクチャーを受ける。
給仕を担当する本堂満智子(ほんどうまちこ)さんは、給仕歴18年のベテランだ。この日はマンツーマンの対応だが、5~6人のお客さんを一度に担当することもあるそうだ。まずは、本堂さんから食べ方のレクチャーを受ける。

▲優しく笑顔で説明してくれる本堂さん(右)
「お椀のふたを開けたらスタートします」
「はい」
「15杯食べると、普通のおそば1杯分です」
「はい」
「つゆを飲むとお腹がいっぱいになるので、そちらに捨ててくださいね。もちろん、飲んでも構いませんよ」
「はい!」
そんなやりとりをするうち、まるでマラソンのスタートを待つランナーのような緊張感とわくわく感に包まれる。
しかも、100杯以上食べた人には東家オリジナル「わんこそば証明手形」がプレゼントされると聞き、本気モードに。お椀の蓋をとって、卓上のエンターテインメントがはじまった。
「お椀のふたを開けたらスタートします」
「はい」
「15杯食べると、普通のおそば1杯分です」
「はい」
「つゆを飲むとお腹がいっぱいになるので、そちらに捨ててくださいね。もちろん、飲んでも構いませんよ」
「はい!」
そんなやりとりをするうち、まるでマラソンのスタートを待つランナーのような緊張感とわくわく感に包まれる。
しかも、100杯以上食べた人には東家オリジナル「わんこそば証明手形」がプレゼントされると聞き、本気モードに。お椀の蓋をとって、卓上のエンターテインメントがはじまった。

▲テーブル手前がそばを入れるお椀。右上の小さな桶に余ったつゆをいれる
ちなみに筆者の最高記録は117杯。とはいえ、まだ胃腸が元気な20代の記録なので果たして胃袋がどこまでもつのか、一抹の不安を抱えて臨んだ。が、一口食べはじめると、1杯、また1杯……、つるつるとのどを通るから不思議だ。
ちなみに筆者の最高記録は117杯。とはいえ、まだ胃腸が元気な20代の記録なので果たして胃袋がどこまでもつのか、一抹の不安を抱えて臨んだ。が、一口食べはじめると、1杯、また1杯……、つるつるとのどを通るから不思議だ。

▲1杯分はひと口で食べられる程度

▲「はい、どんどん」と掛け声をかけられもう1杯

▲「はい、じゃんじゃん」とまた1杯。気がつけば、数分で15杯をとっくに超えていた
本堂さんのお盆に乗せたそばがなくなり補充に行く間に、薬味もちょこちょこ味わう。なかでも東家自家製の一升漬は、ピリリと辛みが効いて旨い!味のバリエーションが広がるのはもちろん、気持ちを一から仕切り直すのにぴったりの薬味だ。
不思議なもので、50杯を越えるあたりから本堂さんとの絶妙なリズムも生まれ、どんどん椀数を重ねていく。「もう60杯行きましたよ~」と励ましをくれる本堂さんは、まさにランナーを応援するトレーナーみたいだ。
そして、そろそろくじけそうな90杯に差し掛かると、「もうすぐ100杯ですよ~がんばって」。100杯の声を聞いちゃあ、試合を降りるわけにはいかない!
本堂さんのお盆に乗せたそばがなくなり補充に行く間に、薬味もちょこちょこ味わう。なかでも東家自家製の一升漬は、ピリリと辛みが効いて旨い!味のバリエーションが広がるのはもちろん、気持ちを一から仕切り直すのにぴったりの薬味だ。
不思議なもので、50杯を越えるあたりから本堂さんとの絶妙なリズムも生まれ、どんどん椀数を重ねていく。「もう60杯行きましたよ~」と励ましをくれる本堂さんは、まさにランナーを応援するトレーナーみたいだ。
そして、そろそろくじけそうな90杯に差し掛かると、「もうすぐ100杯ですよ~がんばって」。100杯の声を聞いちゃあ、試合を降りるわけにはいかない!

▲心の体制を立て直して、残り10杯をクリア!
「やった~」と思ったのもつかの間。「わんこそば」は蓋をしないと終わらないのだ。実は、この蓋をするタイミングが難しい。「100杯越えたから、あと1杯ね」と迫られ、ついついひと口。
「やった~」と思ったのもつかの間。「わんこそば」は蓋をしないと終わらないのだ。実は、この蓋をするタイミングが難しい。「100杯越えたから、あと1杯ね」と迫られ、ついついひと口。

▲「いけます、いけます!」とベテランの技で迫る本堂さん

▲「いや無理ですって」と蓋をするも、隙間を狙ってそばが投入される。この攻防を何度か繰り返し……。

▲ついに107杯!奇跡の記録達成で終了

▲やったー、念願の証明書と手形を獲得
この日筆者が使った蓋付き椀は、岩手県の公認キャラクター「そばっち」が描かれた椀。「東家」では「わんこそば」用の椀としていくつか用意しており、小さなお子さん連れのご家族などに出しているそう。皆さんも、運が良ければこのカワイイ椀を使うことができるかも。
この日筆者が使った蓋付き椀は、岩手県の公認キャラクター「そばっち」が描かれた椀。「東家」では「わんこそば」用の椀としていくつか用意しており、小さなお子さん連れのご家族などに出しているそう。皆さんも、運が良ければこのカワイイ椀を使うことができるかも。

▲カワイイ「そばっち」椀は気持ちも盛り上がる
ところで、「東家」の初代・馬場東吉さんは、地元の割烹料理店で板前をした腕前。その味を引き継ぐ同店では、「わんこそば」以外にも、そば会席や季節限定そばなど人気メニューがいろいろ。
中でも、地元住民に根強いファンが多いのは「特製かつ丼(税込980円)」だ。そば屋ならではのダシとスパイシーな黒コショウの香りがクセになる味。こちらも試してほしい一品だ。
ところで、「東家」の初代・馬場東吉さんは、地元の割烹料理店で板前をした腕前。その味を引き継ぐ同店では、「わんこそば」以外にも、そば会席や季節限定そばなど人気メニューがいろいろ。
中でも、地元住民に根強いファンが多いのは「特製かつ丼(税込980円)」だ。そば屋ならではのダシとスパイシーな黒コショウの香りがクセになる味。こちらも試してほしい一品だ。

▲東家「特製かつ丼」には小さなおそばがサービスされる
たくさんのお客を一度にもてなす工夫から生まれた、「わんこそば」
さて、満腹のお腹を抱えて2階の座敷を下りると、階段に「わんこそば」の由来が記されていた。それによれば、昔から、岩手では宴会の最後に「お立ちそば」といって、締めの温かいそばを振る舞う風習があった。地主さんは、冠婚葬祭などに100人ものお客さんをもてなしたという。
しかし、そばは大きな釡で茹でても一度に10人前程度が限度。そこで100人の出席者がいたら100の椀に小分けして勧め、その間に次のそばを茹でて別の椀で「おかわりをどうぞ」と勧める、という工夫をしたらしい。
「もうけっこう」と断っても「そういわずに、もっと、もっと」ともてなすのが亭主の心意気。それが、遠方のお客さんをもてなす形として定着したのが「わんこそば」なのだとか。う~ん、そんな深い意味があったのか!
しかし、そばは大きな釡で茹でても一度に10人前程度が限度。そこで100人の出席者がいたら100の椀に小分けして勧め、その間に次のそばを茹でて別の椀で「おかわりをどうぞ」と勧める、という工夫をしたらしい。
「もうけっこう」と断っても「そういわずに、もっと、もっと」ともてなすのが亭主の心意気。それが、遠方のお客さんをもてなす形として定着したのが「わんこそば」なのだとか。う~ん、そんな深い意味があったのか!

▲先代自筆の「わんこそばの由来」
100杯越えの野望も達成し、お腹もいっぱい。「わんこそば」は、給仕さんとのテンポ良い掛け合いも楽しみの一つなので、ぜひ一度お試しあれ。
100杯越えの野望も達成し、お腹もいっぱい。「わんこそば」は、給仕さんとのテンポ良い掛け合いも楽しみの一つなので、ぜひ一度お試しあれ。
東家本店
岩手県盛岡市中ノ橋通1-8-3
[営業時間]11:00~20:00L.O.
[定休日]12月31日、1月1日
019-622-2252
写真撮影:川代大輔

水野ひろ子
岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。 (編集/株式会社くらしさ)
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