話題の「MIZUBASHO PURE」を醸す群馬・永井酒蔵。蔵が運営するカフェで味わう酒蔵グルメ

2016.05.29 更新

武尊山(ほたかやま)のふもとに位置し、美しい川と豊かな自然に恵まれたのどかな田園風景が広がる群馬県川場村。ここに、今注目の発泡清酒「MIZUBASHO PURE(水芭蕉ピュア)」を醸す酒蔵・永井酒造があります。築130年の旧蔵を改築した直営店「古新館」にある酒蔵らしいメニューが人気の「蔵カフェ」で、ここでしか味わえない酒蔵グルメを堪能しながら「水芭蕉ピュア」誕生のお話を伺ってきました。

尾瀬のやわらかな水に惚れ込み酒蔵を創業

永井酒蔵は、群馬県のJR沼田駅から車で20分ほどのところにあり、1時間に1本運行している川場村循環バスなら「門前下」停留所のすぐ目の前です。
創業は明治19(1886)年。尾瀬の大地が育んだやわらかな地下水に惚れ込んだ初代蔵元・永井庄司さんは、その地下水が湧き出る川場村の地に「永井酒蔵」を創業しました。
▲地下水は、永井酒造の入り口でも汲み上げられていて、誰でも飲むことができます

口当たりは柔らかでふわりと膨らみ、ほのかな甘みすら感じる美味しいお水でした。そんな上質な水から造られる永井酒造の主な銘柄は、創業時から地元で愛され続ける「谷川岳」と、1992年に新たに醸造をはじめた「水芭蕉」。
「水芭蕉」は、すっきりとした透明感のある味わいで、まさに川場村の水質を活かしたお酒です。

シャンパン製法でつくられた日本酒「水芭蕉ピュア」

永井酒造では、発泡清酒、純米大吟醸酒、熟成酒、デザート酒という4種類の「水芭蕉」を、それぞれ前菜、魚料理、肉料理、デザートに合わせて楽しむ、まるで日本酒のフルコースのような「NAGAI STYLE」を提案しています。
中でも2008年11月にお披露目となった発泡清酒「水芭蕉ピュア」は、5年がかりの大変な苦労をもって開発された特別なお酒です。
その製法は、シャンパンと同じように発泡させるために、瓶の中に酵母を入れて“瓶内二次発酵”させるという珍しいもの。開発段階では、この発酵に耐えられず、計500本もの瓶を割ってしまったそう。さらに、瓶燗火入れの段階でまた200本を失敗。合計700本もの失敗を重ねて完成しました。そうした苦労の賜物でしょうか。うっとりするほど美しいきめ細やかな泡の、本当にシャンパンのように華やかな味わいの日本酒に仕上がっています。
▲仕上がりのガス圧が5.5と、シャンパンとほぼ同じ。濁りは無く透き通っている

口当たりは滑らかで、シャンパンと同じ心地良い泡が口の中で優しく弾けます。米の旨みを感じるので、やはり日本酒だなと実感しますが、シャンパンと比べてキレが良く後味はすっきり。
まさに乾杯に相応しい、華やかでいながらも香りが後に残らないお酒です。

この「水芭蕉ピュア」、フランスで権威ある美食ガイドで3つ星を獲得しているレストラン「メゾン・ピック」に採用が決まったそうで、ワインリストにも掲載されるとのことです。

旧蔵を改築し、試飲も楽しめる直営店に

▲永井酒造の直営店「古新館(こしんかん)」は、酒蔵と同じ敷地にあります
「古新館」は20年前まで使用されていた蔵を改築して造られました。古い物と新しい物が共存している場所にしたいという想いで名付けたそうです。
▲中に入ると、創業時からある立派な梁が。古くても良いものはそのまま残してあります
▲壁には、昔の酒造り方法がイラストで描かれています。お酒を仕込む木樽はそのままオブジェとして飾られていました
▲酒樽の木蓋はテーブルにリメイク
▲階段を上がるとギャラリーが。かつての酒造りの写真が飾られており、蔵人たちの息づかいが感じられます

古新館では「水芭蕉」の各ラインナップを無料で試飲することができます。
▲試飲台にはバリエーション豊かな「水芭蕉」がズラリ
▲気になるお酒は自由に試すことが出来ます

なかなか選べない!という方は、蔵人さんに好みや予算などを伝えれば、きっとお気に入りの1本となるお酒を選んでくれることでしょう。
▲蔵人おすすめは、川場村産の食用米「雪ほたか」を使って醸した「水芭蕉純米大吟醸」

通常、食用米を使ってお酒を造ると、どうしても日本酒としては味が弱い仕上がりになってしまいます。それでも地元のお米を使いたいと4年間研究を重ね、やっと2015年に満足いくものが完成。地元の人たちからも美味しいと太鼓判を押されました。

「蔵カフェ」で味わう酒蔵グルメ

古新館の中には、仕込み水・麹・酒粕などをつかった酒蔵ならではのメニューが並ぶ「蔵カフェ」があります。メニューはすべて蔵人が自ら考案しているのだとか。
▲扉の先は落ち着いた雰囲気のカフェスペース。酒樽の蓋が並んでいるのが印象的

ひんやりとした空気感の中、小上がりに座ると気分も落ち着きます。
▲「蔵カフェ」おすすめの「かわば丼」セット1,500円(税込)

今回いただいたのは、地元の特産品である川場村産のお米「雪ほたか」と地鶏、こんにゃくを使用した川場村名物「かわば丼」。

「かわば丼」は、川場村内10カ所で販売されていますが、「蔵カフェ」の「かわば丼」は、酒蔵ならではの調理法で作られた丼となっています。

塩麹を使って照り焼きにした地鶏に、醤油麹を味付けに使った鶏そぼろを加えた丼と、刺身、天ぷら、煮物にした3種類のこんにゃく。地元野菜のサラダに麹ドレッシングを添え、酒粕汁を付けたセットで提供しています。

醤油麹の甘めでコクのある味付けが地鶏によく合い、こんにゃくも新鮮さを感じさせる味わい。優しい風味の酒粕汁が蔵カフェらしさをアップしていて、バランスの良い組み合わせです。
▲デザートの抹茶アイスには、酒粕の天ぷらが添えられています

「蔵カフェ」では、他にも永井酒造の商品を使ったメニューが楽しめます。
▲「水芭蕉ピュア」を使ったトリュフチョコレート480円(税込)
▲作家の吉本ばななさんが「世界一美味しい」と言ったバームクーヘン480円(税込)。表面には「水芭蕉」のお酒がたっぷり塗られています

2016年の夏は、新スイーツとしてかき氷を出したいと考えているそう。「水芭蕉かき氷」、想像しただけでも美味しそうです。

ドリンク類も酒蔵らしいものが揃っていました。
▲地元のお米「雪ほたか」を使った麹でつくった甘酒580円(税込)。優しい甘さと米の旨みを感じます。アルコールは入っていないのでお酒の弱い方や子供でも大丈夫
▲仕込み水を使用した珈琲580円(税込)
▲珈琲の水出し用器具

珈琲は水出しのため、仕込み水の柔らかい口当たりはそのままに、程よい豆の風味と主張しすぎない焙煎具合でした。
焙煎のスペシャリストに「水芭蕉」の仕込み水を送り、それに合うように豆を焙煎してもらっているそうです。

取材日はまだ出来上がっていませんでしたが、「水芭蕉ピュア」、「水芭蕉純米大吟醸」、「水芭蕉ヴィンテージ」、「水芭蕉デザート」の4種類で構成される「NAGAI STYLE」に合わせたおつまみを開発中だそうです。あの美しいお酒、「水芭蕉ピュア」にはどんなおつまみを合わせるのでしょうか。「蔵カフェ」のメニューに追加されるのが楽しみです!

6代目蔵元の永井則吉さんが考える「酒蔵の役割」とは?

▲6代目蔵元、永井則吉(ながいのりよし)さん

則吉さんは、建築を学んでいた学生時代にヨーロッパを回った際、川場村はイタリアやフランスと比べても劣らない、本当に美しいと場所だと実感したそうです。
そんな矢先、実家の永井酒造で新しい酒蔵の建築プロジェクトが立ち上がり、則吉さんも日本に戻ってきました。

はじめは新しい蔵の建設と旧蔵の改築に携わっていましたが、徐々に酒造りの魅力にはまり、今は社長として「水芭蕉」の醸造や「蔵カフェ」のメニュー開発などをしています。

「酒造りは、『地域』、『自然』、『文化』、『歴史』、『営み』、の5つを凝縮したもの。地元一丸となって酒造りに携わり、地域一帯が盛り上がっていって欲しい」と則吉さん。

永井酒造の発展だけでなく、川場村全体の人口が増え、村全体が活性化して欲しいと望んでいるのですね。
▲初代蔵元が水を守るため、他の手が入らないよう、買い足していった山々。「水芭蕉」の仕込み水が流れる沢がある山は、全て永井酒蔵のものとなりました

則吉さんは蔵の前の土地も購入。今後は畑を耕していきたいそうです。「地元の人たちで酒米を作り、その酒米で水芭蕉を醸していく」と断言していました。

大胆に近代化された酒造り

▲仕込み蔵への入り口

最後に、則吉さんに蔵の中を案内していただきました。
建築関係の仕事をしていた経験を活かし、蔵の設計をしたそうです。
▲使用している酒米。玄米の状態と精米した状態を比較できます
▲驚くほど大きな洗米機
▲麹を造るための特注の機械
▲醪(もろみ)の状態を上から見ることが出来る部屋
▲見学者には、こうしてライトを当てて中を見せてくれます
▲ガスが発生し、元気に発酵している様子が確認できました
▲出来上がったお酒を、瓶詰めするまで一時保管しておくホーロータンク

仕込み蔵の中は、酒蔵というより工場のような設備が揃っていて、まさにお米を洗うところから瓶詰めまで、性能の良い機械がほとんど行ってくれます。

則吉さんの方針は、機械が出来る所は機械に任せるということ。杜氏には、麹を造るのに毎日夜寝られないということはなくし、その分体調を調えて五感を鍛えていって欲しい、お酒の仕上がりをブレること無く確認して欲しいとの考えです。

新酒が完成した時は、則吉さん、杜氏、杜氏見習い、鑑定師の4人で永井酒造の商品全てを1日かけて試飲するそうです。僅かな違いも分かるよう、様々な感覚を研ぎ澄ませるのは重要なことなのですね。

だからこそ、美しい水を生かした日本酒が造れるのかもしれません。
▲2016年に130周年を迎えたという「永井酒造」。初代蔵元からの歴史を受け継ぎながら新しいことに挑戦しています

「群馬県川場村を有名にしたい」と則吉さんは仰っていましたが、「水芭蕉ピュア」は既に世界へ発信されています。今後、更に「永井酒蔵」と川場村の良さが広がっていくのではないでしょうか。
まゆみ

まゆみ

日本酒専門メディア「SAKETIMES」ライター、酒匠、料理研究家。1年365日酒を呑み続ける驚胃の持ち主。日本酒を愛し、旨い肴に目がない。全国各地の酒蔵を訪ね、純米酒の普及に力を注いでいる。ブログ「スバラ式生活」では様々なお酒に合うレシピを公開。

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