元祖!門司港焼きカレー。とろ~りチーズと半熟卵が絶品!/全国カレー巡礼の旅Vol.25

2016.06.03

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、一時代を築いた京都「いんであん」の流れを汲む唯一の店、姫路「インデアン」をご紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1. カレーの香り漂う港町!焼きカレー誕生エピソードに触れる
2. 味の土台、ブイヨンに旨さの秘密あり!

北海道生まれのスープカレー大阪生まれの甘辛カレーのように、日本各地には独自の進化を遂げたカレーが多くある――、のは本連載読者ならご存じのとおり。今回ご紹介するのもそのひとつ。起こりは福岡県北部の港町・門司港、ご当地カレーとして知られる「焼きカレー」の登場です!
▲向こうに見えるは本州と九州を繋ぐ関門橋。焼きカレーの元祖とされるお店を訪ね、門司港へやってきた井上岳久先生と私ことライター井上こん

1.カレーの香り漂う港町!焼きカレー誕生エピソードに触れる

貿易拠点としての歴史を持ち、大正時代のレトロな西洋建築が多く残る門司港。今と昔が交錯する小さな港町にはざっと30軒以上の焼きカレー店が軒を連ね、観光客向けに「焼きカレーMAP」なるものまで存在するとか。おもしろいことに、通りを歩くと海風に運ばれてきたスパイスのなんともいい香りに鼻孔がくすぐられることも。さすが、焼きカレーの街!
▲お邪魔したのは、JR門司港駅を出てすぐの「伽哩本舗(かりいほんぽ) 門司港レトロ店」

まずは焼きカレーの定義からおさらい。(実は本連載Vol.3で焼きカレーが話題に上っていました)

「まず、ライスにカレーをかけた上にチーズと生卵を乗せること、それを200~300度のオーブンで焼き上げること。この2つを満たしたものを焼きカレーと呼びます」(井上先生)
▲「もちろん、お店ごとのアレンジが加わった個性的な焼きカレーも多く生まれています」

「そうそう、焼きカレーもどんどん進化しなきゃ。うちではライスをバターと一緒に炊くことで香りを良くしています」と合いの手を入れるのは「伽哩本舗」創業者の松井和之さん。
▲松井さんと井上先生は「横濱カレーミュージアム」出店以来のお付き合いだとか

「焼きカレーを考案したのは、実はうちの母。60年以上も前の話ですが、当時門司港で営んでいた喫茶店でお客さんに出すうちに名物になったと聞いています。それまでカレーを焼くなんて発想がなかったから、珍しさもあったんじゃないかな」

なんと、カレーが庶民の味として食卓に上り始めたころ、九州の小さな港町で焼きカレーがひっそりと誕生していたとは!しかも街の小さな喫茶店で!もっともカレーが普及した昭和初期という時代を見れば、当時は相当にハイカラな料理だったはず。

かくして、おふくろの味=焼きカレーを食べて育った松井さん。ご自身も焼きカレーを広めたい、と1998年に製法特許を取得し、焼きカレーの専門店「伽哩本舗 本店」を博多区にオープンさせました。ところが、当時門司港以外での焼きカレーの認知度は低く「“焼きカレイ“と勘違いされて『魚、お願いね』とオーダーされたことが何度もあった(笑)」とか。契機となったのは2003年、横濱カレーミュージアムへの出店でした。首都圏へ乗り込むや否や絶大な人気を集め、連日大行列を作った「伽哩本舗」はとうとう “殿堂入り”を果たすまでに。こうして、焼きカレーの名は一躍全国に広まったそう。

2.味の土台、ブイヨンに旨さの秘密あり!

さて、「伽哩本舗」でオープン当初から不動の人気を誇るのが、5種の魚介を使った「シーフードの焼きカレー」税込1,050円。
▲エビやパーナ貝、カラスカレイなど海の幸をふんだんに使った港町らしい一品

熱々の器から放たれるジュワジュワとおいしそうな音、香ばしいエビや勢いよく広がるスパイスの香りに思わず小躍りしてしまいそう!
▲いただきま~す!
▲「実はカレーは高温すぎると香りが飛んでしまうんです。しかしこれは見事に香りを閉じ込めていて、お見事!」

「焼き上がりが最高到達点。そこから逆算して作ります」と松井さん。スパイスは、香りを逃さぬようホールから挽くのだとか。クミン、コリアンダー、カイエン、フェンネル、カルダモン、さらにセージなどハーブを含む15種の香辛料が生む豊かな風味が、口に入れた瞬間次々と花開き、鼻から抜けていきます。
▲半熟の卵黄とチーズをよ~く絡めて……
▲パクッ。「うん!ブイヨンが全体をまとめているね」
▲「たしかに!スパイスやチーズにも負けない深いコクがあります!」

食べるほどに旨みの余韻がふくらむ、ただならぬコク。その秘密は“二段構え”のブイヨンにありました。牛骨や牛スジ肉、牛スネ肉の旨みが凝縮した第一のブイヨン「ブイヨン・ド・ブフ」。ここにローストした和牛を煮込んだ第二のブイヨンを合わせることで、仕上がりに奥行きが生まれるとのこと。

さ・ら・に!エビやパーナ貝、ホタテなど魚介の出汁が加わるのだから、そりゃあもう……得も言われぬおいしさなわけです。
▲「ダブルブイヨンと魚介出汁のマッチング……これは悶絶ものですよ!」
▲「熱々のまま食べられるのも焼きカレーの魅力ですよね!それにホワイトソースなどを使うカレードリアと違い、カレーそのものを味わえるのも◎!」

それでは、本日のカレー格言です!
井上先生「焼きカレーブームの火付け役は今も健在、進化中!」
こん「カレードリアとの違いを元祖で確かめるべし!!」
▲「『カレーを焼く』なんて発想、インドにもありませんからね。本当にユニークな料理だと思う。それに『伽哩本舗』さんのカレーをいただくのは久々でしたが、以前よりさらに進化しています。元祖だからといって研究を怠らない姿勢はさすが!」
▲「あらためてカレーって不思議だと思います。何十年も取り組んでいるけれど、いまだに正解が分からない。でもそれがおもしろいところなんだよね!」
▲「伽哩本舗」さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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