隠れ家にしたくなる、糸島のとっておき古民家カフェ&食事処3軒

2016.06.04 更新

福岡市中心街から車を約40分走らせると、海と山、両方の自然に恵まれた糸島エリアへとたどり着きます。サーファーが集う海沿いにはカフェやレストランなどが並び、おしゃなエリアとしても知られます。今回は糸島の歴史や自然、食の恵みを感じられる古民家を利用したお店を訪ねてみました。

▲オーガニック野菜を求めて多くの女性が訪れる「伊都安蔵里」

築150年の醤油蔵、母屋、納屋を利用。
体と心を優しく癒す「伊都安蔵里」

地元糸島をはじめ、九州内の新鮮なオーガニック野菜が揃うと評判の「伊都安蔵里(いとあぐり)」。

お店のコンセプトは「つなぐ」。
糸島には、農薬を使用せず安心安全な野菜を丁寧に育てている農家さんがたくさんいらっしゃいます。そんな農家さんが作った野菜を店舗に仕入れ、旬のものを食し、味わう場所を食事処やカフェとして提供しているのです。
▲入り口とは逆の、裏側から見た「伊都安蔵里」の本館

こちらの建物は、大正年間に創業した「旧福寿醤油(ふくじゅしょうゆ)」の母屋や納屋を補修改築して使用しています。食事処では、往時を偲ばせる帳場や看板を現在でも拝見することができます。
▲食事処に置かれた福寿醤油の看板

納屋を利用した「安蔵里かふぇ」で
のんびりした時間を過ごす

▲直売所のある母屋を出た場所にあります

「伊都安蔵里」は、厳選野菜や食材を販売する直売所、地元のこだわり素材を使用した料理がいただける食事処のある母屋、喫茶や軽食が楽しめる「安蔵里かふぇ」がある納屋からなり、いずれも築150年ほどの歴史ある建物。
今回はランチメニューやオーガニックドリンクなどが楽しめる「安蔵里かふぇ」にお邪魔しました。

1階はスタッフさんと対面で食事や喫茶ができるカウンター席、2階は木のぬくもりを感じる空間に様々なソファやチェアが配されたテーブル席。
いやぁ、本当に素敵!どの席に座るかしばし悩んでしまいます。
▲1階のカウンター席。テイクアウトはこちらで注文を
▲2階は広々としたワンフロア。奥にはソファ席も多数

もう、この雰囲気が素敵すぎて、ワタクシしばし悶絶しました。
天井には低い梁がめぐらされ、重厚で奥行きのある空間には、ただただ静かな時間が流れています。壁の本棚には建築本やいわさきちひろさんの絵本、農業に関する本などが並べられ、自由に閲覧することができます。

素敵なのは空間だけにあらず!
食事のこだわりっぷりがスゴイんです

前述したとおり、こちらの店では九州内の厳選野菜を取り扱われています。
が、こだわっているのは野菜だけではありません!
それを味わえる、おすすめメニューがこちら。
▲ホットドッグ650円(税込)
▲BLTサンド650円(税込)

もう、これが最高なんです!
食べてみてください!!

今まで食べていたホットドッグやBLTサンドは何だったんだ?と思うハズ!
それほどに驚きに満ちたメニューなんです。

特筆すべきはその素材へのこだわり。
野菜が新鮮なものはもちろん、トマトソースやマヨネーズなどはすべて無添加の手作り。ソーセージやベーコンも糸島で放牧されているブランド豚「伊都の豚」を使用したオリジナルなんです。
そしてこのソーセージやベーコンに合うように、とパンもオリジナルで作られたとか。

個人的に一番感激したのは、BLTサンドのベーコンです。味付けはシンプルなのに、素材一つ一つの味わいがしっかり。
薄切りなのに、「肉を食べてる!!」って感じがわかります。脂身までが甘くてとってもジューシーなんです。スタッフの方々も大ファンだというソフトフランスパンも然り。食感としてはコッペパンとフランスパンの間くらい。
国産小麦の風味も豊かで、パンだけでも食べたいくらいでした。

そしてこれらと一緒にぜひオーダーしてほしいのが…。
▲有機野菜のスムージー600円(税込)

その時期に一番おいしい旬の野菜を、オーガニックバナナやレモン、リンゴと一緒にスムージーにしたもの。取材時は、大分県産の味美菜(あじみな)と糸島産のケールでした。
ひと口で、「フレッシュな野菜と果物を体の中に吸収してる!」と実感。
体の隅々まで染み渡るイメージです。苦さや酸っぱさはまったくなく、果物と野菜の甘さで美味しくいただけますよ。野菜は日によって異なるので、その時期の旬の味わいを楽しんでみてください。
スムージー、BLTサンド、ホットドッグともにテイクアウトもOKです。
ドライブ途中に立ち寄って、こちらで買って糸島の海で食べる、なんてのも良いですね。

「本当に体に良いものを」
丁寧に丁寧に紡がれた味わい

今回特別に“あるもの”を見せていただきました。
それは、「お出汁」です。
某グルメガイドの五ツ星レストランのシェフに開発を依頼したというお出汁、鰹節や昆布など12種類をブレンドしているのですが、完全に無添加なんです。
澄み切った琥珀色のこのお出汁をいただいてみて、びっくり。
後口がないんです。
私も家庭を持つ身ゆえ、毎日料理はしていますがこんなお出汁は初めて。後口がない、と書くと語弊があるかもしれません。飲んだ感想をそのまま書かせていただくと、通常は多少なりとも後に何かしらの味わいがえぐみとしてあるのですが、それがまったくないのです。
口に含んでいる間は色んな深い味わいがあるのに、後口はすっきり。
このお出汁は、食事処での調理に使用されているそうです。
食事処では、糸島で獲れた魚や新鮮な野菜を使用したヘルシーな御膳料理が1,480円(税込)から用意されています。糸島の食材を堪能したい方は、ぜひどうぞ。
▲今後、このお出汁を商品化する動きもあるとか。待ってます!!

帰りに、野菜直売所を物色させていただきました。
一目見ればわかるほど、生き生きとした野菜たち。
そして体に優しい調味料などの安蔵里オリジナル商品。
そのどれもが手塩にかけて丁寧に作られたものばかり。
季節を問わず、スーパーやネットであらゆる食材が購入できる現在、ちょっと立ち止まって旬を味わう楽しみを見つけてみてはいかがでしょう。

明治時代の商家で糸島ごはんを。
宿場町の趣を残す「古材の森」

▲木製の看板が目印

江戸時代、唐津街道の宿場町として栄えた前原宿があったのがココ、前原商店街。
その商店街の一角にある白壁の建物が食事処「古材(こざい)の森」です。
江戸時代に醸造業や質業、呉服商で栄えた豪商「西原家」が、1901(明治34)年に呉服商を独立する際に新築した「出店(でみせ)」の建物を使用しています。
▲コミュニティスペースでは西原家の歴史をパネル展示

こちらを営んでいるのは、油機エンジニアリング株式会社。なんと、建設機械や解体機械のレンタル及び販売、中古販売の会社だとか。
…一体、そんな会社がなぜ食事処を?

これには、まったく違う業種を手掛けるに至る理由がありました。
2005年、油機エンジニアリングはこの「旧西原家」の建物の解体依頼を受けました。そして後日下見に訪れ、この建物に入った瞬間思ったそうです。
「この建物は残さなければ…」と。

解体するのは簡単だけれど、歴史的な価値があり、かつての宿場町を今に伝える景観は保存すべきと考え、会社独自で修復作業をおこなったのだそう。

それ以前にも会社では、古民家の解体現場から出た再生可能な梁や柱などを二次利用する部門を設けていました。その部門名が「古材の森」。
会社の一部門である「古材の森」の名をそのまま付け、現在では食事処および地域のコミュニティスペースとしても活用しています。
▲暖簾のかかった入り口に足を踏み入れると…
▲2階まで吹き抜けになった解放感のある玄関へ

今や、地元の方はもちろん観光客にも人気の食事処となった「古材の森」。この落ち着いた佇まいにそぐう、体に優しい食事も評判です。

糸島の田んぼから採れた白米、黒米、玄米。
近所で採れた朝採れの新鮮野菜。
糸島の漁港で水揚げされた魚介類。
糸島の農場で育った鳥や豚。などなど。

食材のほとんどを糸島産で賄っています。
▲古材の森ランチ1,700円(税込)

どうぞ、とテーブルに出された「古材の森ランチ」。
品数の多さは一目瞭然なのですが、すべての料理に糸島産の食材を使用している…となればちょっと驚きではないですか?

日替わりとなる主菜(取材日はチキン南蛮)の鶏肉、野菜の炊き合わせのニンジンやサツマイモ、刺身の鯛と甲イカ、豆乳のくず寄せの豆乳など、すべてが糸島産!
それだけ糸島は色んな食材に恵まれている、ということですが、地産地消という言葉をこれだけ実証されている食事処も珍しいです。

もちろん新鮮な食材を使用しているため、いずれも体に優しい上に美味しい!炊き合わせの野菜は、素材の味わいを残しつつ野菜の濃厚な旨みがしっかり感じられます。
▲ランチにつくデザートも本格的な味わい。写真は黒糖パンナコッタキャラメル添えとチーズケーキ

客席は畳席とテーブル席があり、それぞれ趣は異なるけれどいずれもゆったりとしたスペース。取材日、お客さんの中には生後半年と1歳の赤ちゃんもいました。縁側から庭が見える畳席もあるので、お母さんもゆっくりと食事が楽しめるのはうれしいですね。
▲畳席からは庭の新緑を望むことができます
▲半個室のように使用できるテーブル席

食事や喫茶だけじゃない
明治時代の香りを感じる楽しみも

体に優しい食事を味わいながら、ちょっと贅沢な楽しみをご紹介。
それは室内のあちこちに設えられた小物や装飾たち。
軒の上にある提灯入れ(この「西原家」を建てた西原藤三郎の「三」の文字が!)、細かい模様が描かれたアンティークな灯り、船の形に彫られた欄間と、当時の雰囲気が小物や装飾からも感じ取れます。
食事前でも後でも、ちょっと周りに目を向けて、宿場町であったこの場所の歴史を感じてみてくださいね。

本場タイ人シェフが作る
絶景レストラン「ドゥワンチャン」

▲海岸沿いにひょっこり現れる古民家レストラン

最後は一風変わった古民家レストランを。

趣のある築150年の古民家で!
タイ人シェフが腕を振るうタイ料理のお店で!!
しかも海を臨むオーシャンビュー!!!

…と魅力がてんこもりの「ドゥワンチャン」です。
▲店内に入ると、タイの空気を感じる装飾がたくさん

タイに携わる店を持ちたかったというオーナー松浦さんが、以前勤めていたこの店(以前はカフェだったそうです)の閉店を機に知り合いだったタイ人シェフのターウィンさんに声をかけたのが始まり。

17年以上もタイのホテルで修行したというターウィンさんの本格タイ料理は、女性を中心に地元でも評判となっています。
「ドゥワンチャン」のタイ料理は、糸島の食材と松浦さんが自家栽培しているという野菜、タイから取り寄せた調味料から生まれます。日本人風にアレンジせずに、本場タイの味を提供し続けているというから、そのこだわりようが伺えますね。
▲「トムヤムクン」2人前1,280円(税込)

ここの人気ナンバーワンメニューは?と聞くと、
「やっぱりトムヤムクンですね!」と即答。
なんでも、ディナータイムに訪れる方のほとんどがオーダーするメニューだそう。2名で訪れて、それぞれ別々に2人前のトムヤムクンを注文する方もいるのだとか!
…すごい人気ですね~。

では、さっそくいただきます!!
一口目で、酸味と辛さをぶわっと感じます。
う~、辛い~!でも癖になる…!

酸味と辛みが強いのですが、大エビの旨みとコクもしっかりとあり、二口三口…と、手が勝手に次々とスープを口に運んでいきます。男性カメラマンも「あまり辛いの得意ではなかったのですが…」といいながら、完食です!

「美味しかったでしょ?」とにやりと笑うターウィンさんに、汗たっぷりの笑顔でうなずいたのは言うまでもありません…!
タイビールやタイ産ワインも豊富!左からタイ産ワインの「モンスーンバレー」は赤白ともに2,880円、「sole」4,500円、タイの焼酎の「モンサイアム」・タイ米焼酎の「あいやら」は各1杯580円、「シンハービール」・「チャーンビール」各680円(すべて税込)。
▲取材日は、地元の男性客による宴会が!「うわぁ、こら辛かばい!」とスタッフと話しながらアルコールを楽しんでいらっしゃいました

まるで海外にいるかのよう
糸島の海を独り占めする贅沢

オーナーである松浦さんがほれ込んだもの。

まず一つ目は、木のぬくもりを感じる築150年の古民家。
あまり日常に馴染みのないタイレストランなれど、ここはアットホームで落ち着いた雰囲気です。それはやはり古民家が生み出す懐かしさによるものなのでしょう。

そして二つ目が、ターウィンさんらによる本格タイ料理。
ターウィンさんが作る料理は、本格的なれど辛さや酸味、甘みなど全体的にバランスが取れていて、食べやすいのです。
▲シェフであるターウィンさん(左)と料理スタッフのブンチューさん(右)。お二人とも仲が良いです
最後が、ここから見る景色です。
「ドゥワンチャン」では、キッチン入り口の横に「SUNSET TIME」を毎日記しています。昼の真っ青な海を眺めつついただくタイ料理も最高ですが、オレンジ色の夕日に染まる海を眺めながらの食事は、何とも言えない幸せな気分に浸れるそう。

これら3つを楽しむ至福の時間を味わうなら、夕刻がベスト!
これからの季節はテラスでの食事もおすすめです。
▲見渡す限りのオーシャンブルー!爽快!
▲幻想的な夕刻。ただぼうっと眺めるのもまた贅沢

糸島の自然と歴史に溶けこむ
古民家カフェ&食事処は、まだあります

昨今福岡では人気エリアとして注目されている糸島エリア。まるで海外のリゾートにいるかのようなカフェやショップももちろん素敵だけれど、「気持ちを豊かにしたい」「丁寧な暮らしに触れたい」と思ったら、古民家カフェ&食事処でのんびりするのはいかがでしょう。古い建物を維持するのは、やはり大変な手間がかかります。でも、その煩わしさを鑑みても古民家を選び、丁寧に大切に古民家を守っている方がいらっしゃいます。
古民家の魅力とは、その空間が生み出すぬくもりや懐かしさ。
糸島という田舎だからこそ、その魅力をよく感じ取れるのです。
ただゆっくりと時間を過ごしたくなる、そんな空間がここにはあります。

今度のお休みにぜひ出かけてみてください。糸島の古民家に触れたらきっとわかるはずですよ。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

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