十和田湖・奥入瀬渓流へ。奇跡的な自然条件が生んだ神秘の世界に浸る

2016.06.08

青森県の十和田湖子ノ口(ねのくち)から約14km続く「奥入瀬(おいらせ)渓流」は、四季折々の豊かな自然を体験できる絶好の場所。十和田湖ではカヌーや散策などのアクティビティが充実しているほか、奥入瀬渓流沿いを歩けば、緑が広がる美しい自然に出会うことができます。

▲深呼吸をしたくなるような奥入瀬渓流(写真提供:十和田市)

十和田湖~奥入瀬渓流エリアを満喫するなら、早朝カヌーから体験するのがおすすめ!

まずは十和田湖をカヌーで満喫できると聞き、体験してきました。中でも湖が極上の美しさを見せてくれる早朝に、湖をゆっくり堪能できる「早朝カヌーツアー」がおすすめです。
▲十和田湖を一望できる「瞰湖台(かんこだい)」から

十和田湖は日本で12番目の大きさを誇る湖沼で、だいたい山手線内の広さと同じくらい。その深さは国内3番目。湖面標高は400mと、意外と高い場所に位置するカルデラ湖です。

そんな湖で体験できる「早朝カヌーツアー」は大自然を満喫できるだけでなく、地元のネイチャーガイドさんの案内によって、約20万年前の火山活動から形成された湖の成り立ちや天然のダムとも言える十和田湖の周辺環境に与えた影響などをわかりやすく聞くこともできます。
▲風や波がほとんどない早朝だからこそ見ることができる美しい景色

早朝5時から2時間、静かに明けていく空の下、水面をゆらぐ水の音と風がなく鏡のような湖面。ゆっくりと昇っていく朝日を浴びながら、のんびり流れる時間を感じることができるほか、春先や晩秋には日の出を見ることもできます。

早朝カヌーでは紅茶と絶品のケーキをいただけるサービスもあり、天気のコンディションによってはカヌー上や、入り江に上陸し隠れ家的な雰囲気を楽しみながら味わうことができます。
▲朝日を浴びながらカヌー上で味わうティータイムは格別
▲コンディションによっては入り江に上陸し、ティータイムを楽しむこともできる

「言葉では伝わりきれない自然の魅力を体感できるのがこの早朝カヌーです。十和田湖の景観は、季節によって表情を変えるので何度訪れても飽きることなく楽しめますよ」とネイチャーガイドの方は笑顔で話します。

都会の喧騒からは想像できないような神秘的な夜明けを体験できるのは本当に一瞬。だからこそ、その貴重な時間を感じることができる「早朝カヌーツアー」は、体験する価値があるのではないでしょうか。
▲秋には、湖の上から素晴らしい紅葉を見ることもできる

奥入瀬渓流の魅力は身近に感じる悠久の自然

次に「奥入瀬渓流」の魅力を感じるために渓流沿いを歩いてみました。「奥入瀬渓流」は十和田湖から流れ出る唯一の水系。上流から下流までの高低差200mを約14kmの長さで下り、渓流沿いを国道がほぼ並行して続くため、川を身近に感じながらトレッキングできることが特徴です。
▲景観を重視しており、国道にはガードレールすらない

奥入瀬渓流は国立公園特別保護地区、また特別名勝及び天然記念物として国の指定を受けおり、原生的な雰囲気が漂う森、変化に富んだ川の流れ、十数もの滝を見ることができます。その中の1つ「雲井の滝」は、高さ20m、3段の落差がある滝で流れ込む水量としては渓流内で一番多く、圧巻です。
▲マイナスイオンが伝わってくるような「雲井の滝」(写真提供:十和田市)

そのほか、幅20mの「銚子大滝」は、奥入瀬渓流の本流での最大規模の滝です。奥入瀬渓流の代名詞的な存在として、多くの観光客がカメラを向けるスポットとなっています。
▲奥入瀬渓流の中で唯一本流にある「銚子大滝」(写真提供:十和田市)

こういった「木と岩と水が一体となったことによって作り出される景色」を1人で歩きながら鑑賞するだけでも十二分に堪能できるのが「奥入瀬渓流」の魅力ですが、今回はさらに詳しく奥入瀬渓流を知るため、ガイドさんに案内をお願いしました。

コケに覆われた緑の奥入瀬渓流は奇跡から生まれた

ガイドを務めてくれたのは、NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会の玉川えみ那さん。地元・十和田市出身で、東京で就職した後、帰郷したUターン者だそうです。
▲「自然から離れた都会での生活を経験したからこそ、この奥入瀬の魅力を強く感じています」と話す玉川さん

「単純に景色を見るだけではあまりにももったいない。じっくり観察してみましょう」と話す玉川さんが取り出したのはルーペでした。
▲一般的に市販されている観察用のルーペ

何を観察するのかと思えば、コケ。そう、奥入瀬渓流の美しい自然をつくっているのはコケであり、コケこそがこの景色を彩る最大の立役者なのです。
▲コケに体をギリギリまで寄せ付け、観察を始める玉川さん

「奥入瀬渓流を語る上でコケの存在はなくてはならない」と語る玉川さんですが、一般人からすればコケにどのような魅力があり、自然界の中でどんな影響を与えているのか分かりにくいのが正直なところ。

「約1100年前に起こった十和田火山の噴火で、この辺り一帯は死の世界になりました。現在の奥入瀬はそこから再生されてきた森。何もない岩だらけの大地にまずコケが土台をつくり、そのコケを足掛かりに少しずつ森が育まれていきました。コケに着目すると、歩いているだけではわからない奥入瀬の姿が見えてくるんです」と玉川さんは力説します。
▲季節によって胞子を飛ばすための「胞子体」を伸ばしているコケがある

奥入瀬渓流には300 種類以上ものコケ植物が確認されており、種類豊かな「天然のコケ庭」で小さな自然をじっくり観察していくだけでも、今まで気づかなかった発見と驚きがあります。
▲スマホにルーペを取り付け、ミクロの世界を撮影することも

ではなぜ奥入瀬渓流はコケが豊かなのか?1つ目は、絶えず流れている川の飛沫や渓谷上部のブナ林から供給される豊富な水流と、夏場の「やませ」という太平洋側から吹き付ける湿った東風の影響で、奥入瀬全体が高い湿度で保たれていること。
▲ブナ林から供給される豊かな水量や「やませ」の影響により奥入瀬渓流は高い湿度が保たれ様々な物にコケが着生している(写真提供:十和田市)

そして、十和田湖が天然のダムとして機能することで渓流の水量が安定し、洪水や氾濫をほとんど起こさないため、岩や倒木に着生したコケ植物の剥離が少ないことが挙げられます。いくつかの条件が奇跡的に揃っているのがここ奥入瀬渓流で、コケが育ちやすい環境が整っているのだといいます。

通年で楽しめる奥入瀬渓流。四季それぞれの姿を楽しむ

また、一見見落としてしまいそうな岩やブナの模様も、実はコケや地衣類と呼ばれる菌類の仲間がつくりだしたもの。一つの岩の中でもそれぞれの場所でコケと地衣類が共生しています。
▲緑の部分がコケ、白い部分が地衣類
▲ブナの木の模様も実は地衣類によって描かれているものだとか

こういった普段は気づかない自然界のミクロの営みに気づく喜びを感じられるのが、「奥入瀬渓流」の最大の魅力なのかもしれません。さらに四季によってその表情を変えることも忘れてはいけません。
▲新緑の奥入瀬渓流(写真提供:十和田市)
▲さまざまな色で魅了してくれる奥入瀬渓流の秋(写真提供:十和田市)
▲森から滴る水が少しずつ凍って巨大な氷柱に成長する奥入瀬渓流の冬(写真提供:十和田市)

春の芽吹き、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪。それぞれの季節でさまざまな魅力がつまった十和田湖・奥入瀬渓流。こんな自然の中で過ごせる贅沢なひと時を体感しに来てみませんか?
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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