「老祥記」の豚饅頭をはじめ、まるくて美味しい南京町の無敵グルメは地元・神戸っ子にも絶大なる人気!

2016.06.08 更新

近頃は「食べ歩きの街」なんて呼ばれ方もしている神戸・南京町。中国料理店、中国茶専門店、中国食材の店などが軒を連ねる極彩色のにぎやかな街となっています。観光色の強いエリアですが、その中でも今回は地元の人たちも大好きなお店をご紹介します。

神戸・元町の南に位置する南京町の歴史は、慶応3(1868)年の神戸港開港直後からと言われています。当時の中国(清)は日本が幕末に結んだ通商条約の非締結国だったので、中国人は外国人居留地に住むことができず、その西隣、現在の元町商店街の南側エリアに市場と住居をつくったのがはじまりです。

点心の代表格「老祥記」の豚饅頭。
その厨房にお邪魔しました

「小腹がすいたし、豚饅食べたいなあ」「お土産は豚饅をよろしくね」……なんていうやりとりは神戸では日常茶飯事なのですが、この「豚饅」なる名称を最初に考案したのが、2015年に創業100年を迎えた「老祥記(ろうしょうき)」の初代・中国浙江省出身の曹松◯(そうしょうき※◯は王偏に其)さんです。
大正4(1915)年に日本に移り住み、南京町で日本初の豚饅専門店を開業しました。今ではすっかり「豚饅」の名で定着していますが、中国では古くから「天津包子(てんちんぱおつ)」と呼ばれていたそう。
初代は子供の頃から食べ親しんでいたこの天津包子を、日本人好みの醤油味をきかせた商品として販売。この包子を「豚饅頭」、略して「豚饅(ぶたまん)」と呼びはじめたのは「老祥記」が最初です。

現在は、3代目曹英生(そうえいせい)さんを中心に、4代目の息子さん祐仁(まさひと)さんたち家族と一緒に切り盛りしています。
▲3代目の曹英生さん。「KOBE豚饅サミット」(2016年は11月11日(金)開催予定)などのイベントにも意欲的。南京町商店街振興組合理事長でもある

「豚饅」の元祖として1世紀、創業当時の味を一子相伝で守り続けている「老祥記」。その味の秘密に迫ってみると……。

まず「あん」の材料となる豚肉。これは、神戸の老舗精肉店「森谷商店」の上質な豚バラ肉を使用しています。適度な脂と旨みのあるバラ肉は肉汁もたっぷり。包丁で叩いて少し粗めにした歯ごたえ絶妙のミンチに、肉の臭みを消すために青ネギを加え、醤油でシンプルに味付けしています。
こね過ぎるとジューシーさが損なわれてしまうので、そのあたりの塩梅もポイント。頬張った時の食感を考慮してこねられています。
▲力加減が大事だけど、元々のこねる力がいりそう…

そして「老祥記」の豚饅の核となる「皮」は、むちっとした弾力と歯切れの良さが自慢。秘伝の皮は、麹を使って発酵、熟成させますが、初代が中国から持ってきた麹を入れた生地がベースになっています。
3代目の曹英生さん曰く「麹はその土地の風土や環境で変化します。南京町の空気や気候で育ったその皮は、『老祥記』の宝なのです」。
▲ほんのり麹の酸味も感じる皮はむっちり。この皮こそが「老祥記」そのもの

カウンター奥の厨房では、職人さんが本当に忙しそうで、誰も手が止まっていない。みなさんそれぞれが「あ・うん」の呼吸で目配りをしながら生地をカットし、手際よくあんを包んでいきます。
職人さんは、団子状にカットした1個分の生地を手のひらにのせ、指で円形に広げます。厚さ1cmの生地の上に13gのあんをのせ、生地の端を摘みあげながら包む。左手で少しずつリズミカルに回しながら包んでいくと、きれいな渦巻き状に!
▲活気溢れる厨房。手さばきも必見

熟練の人はなんと1分間に13個も包むのだとか。その見事さは、ずっと見ていても全然飽きません。

そして、作業を行う傍らでスタッフの1人が「はい、あと1分」、「30秒」、「15秒」……「5、4、3、2、1。はい、出ます!」と声をかけます。取材日は蒸し時間が約7分。気候や豚饅の状態によって微調整しながら強火で一気に蒸し上げるのだそうです。
▲さぁ蒸し上がった!

直径70cmほどの大きな特注せいろにズラリ50個、4段重ねのせいろに並んだ豚饅が蒸し上がると、お客さんの期待度がMAXに!
▲蒸し上がった瞬間のたまらない香り!

「10個」「20個」「30個」とまとめ買いする人も普通にいて、製造する豚饅の数は1日13,000個!「一度に『2,000個ください!』っていうお客さんもいらっしゃったんですよ」と曹さん。1個90円(税込)。ちなみに予約は不可で、来店者は一度に1,000個(なんと!)までなら買えるそうです。
▲奥様の嘉子(よしこ)さんは販売担当。まとめ買いされる豚饅を手際よく包んでいきます

自分が「老祥記」さんで働いたら、とてもじゃないけど勤まらないなあ……。お店に入って豚饅を買う時、いつもこう思います。

1個目はそのままで。あとはお好みの味付けで

もし時間が許すのであれば、出来たてアツアツを店内で食べるのがおすすめです。イートインでも持ち帰りでも3個から注文できる豚饅は、「まず1個目はそのまま食べてみてください」と嘉子さん。頬張ると、皮のむっちり感や肉汁がじゅわりと広がるあんのしっかりとした味を楽しめます。
▲小ぶりなので、1人でペロリと平らげられます

2個目は酢醤油、3個目は洋辛子といろいろな食べ方でどうぞ。わたしは、そのまま食べるのがいちばん好きですが、自宅では辛子や味噌ダレで楽しんでいます。
▲中のあんはしっかり醤油味

差し入れ、手みやげに買って行くと、喜ばない人はいない、南京町の無敵グルメ。コロンと丸くてかわいい豚饅はぜひ一度、蒸したてアツアツをイートインで楽しんでみてほしいです。

豚饅以外の点心をあれこれ……なら
「飲茶セット」がお得でした

「老祥記」の豚饅をはじめ、餃子、シュウマイ、ゴマ団子など、南京町には食べ歩きも楽しい点心が充実。
南京町の西側、西安門からすぐのところ、2013年3月にオープンしたフカヒレ料理専門店「友好飯店(ゆうこうはんてん)」は、フカヒレ料理やそれぞれのシェフが手がける上海・北京・四川・広東料理など幅広い中国料理が楽しめますが、点心もおいしく、お手頃価格でいろいろな種類が食べられるとあって、好評のお店です。
▲お店がひしめき合っています。私のように間違えて隣に入ってしまわないように(汗)

奥に長い店内はゆったりとした雰囲気で、1階は気軽なテーブル席、2階はグループで楽しめる円卓テーブルのあるフロアになっています。
▲こちらは1階のテーブル席。サイン色紙がズラリと。左上は関脇の嘉風関

おすすめの「飲茶セット」は、なんと980円というお値打ち価格。9種の点心にフカヒレ麺(もしくは叉焼麺)、デザートのマンゴープリン(もしくは杏仁豆腐)が付いた全11種が楽しめます。
セイロやお皿に盛り合わせてサーブされるのは、プリプリとした海老の食感と風味がおいしい海老餃子、頬張るとスープ溢れる小龍包、しっかり味付けされた具材凝縮のシュウマイ、春巻など。いろんな味をちょっとずつ味わえるのが楽しい。
▲小籠包、海老シュウマイ、ちまきなど、蒸したてが並ぶセイロ
▲鶏の唐揚げ、揚げ春巻、ゴマ団子など揚げ物は4種類
▲今回はフカヒレ麺をチョイス。フカヒレがコリコリの美味でした!

ストリートであれこれ買って、広場で食べるのはもちろん楽しいけど、イートインでじっくり味わうのも改めていいなって思いました。「友好飯店」の飲茶セットは、終日オーダー可能なので、遅めのランチにもおすすめです。
次回は、ポットサービスのたっぷり中国茶とともに、ゆっくり友と語らいながら点心を味わいたいもの。
▲「飲茶にはお茶を…」とプーアール茶(500円)をオーダー。大きめのポットでたっぷり5~6杯は飲めます

※価格はすべて税別

シュー・ア・ラ・クレーム!
まるくて甘い、もう一つの無敵グルメ

中華色の強い南京町で、異彩を放っているのがここ「エスト・ローヤル」。中国料理店が軒を連ねるストリートの中、ピンク色のひさしの店構えがそこだけフランスのようです。
▲極彩色の街に、このひさしが目を引きます

看板商品はシュー・ア・ラ・クレーム。そのパリパリッと香ばしい固めのシュー皮が、創業(1988年)の頃は大きな衝撃でした。
洋菓子文化が明治期から根付いていた神戸でも、当時はまだフランス菓子に特化した店は少なく、オーナーの東山行延(ゆきのぶ)シェフがフランス修業時代に覚えてきた味は、とても珍しかったのだそう。
▲種類豊富なフランス菓子の中から、飛び抜けて売れるようになったのが「シュー・ア・ラ・クレーム」1個194円

「今でこそ、シュー・ア・ラ・クレームの専門店のようになっていますが、当初はもっとフランス色が強かったんですよ。現在の神戸のパティスリーは、フランス菓子を作られる店が増えていますが、うちは28年前から当時にしては本当に珍しい、クラシックなお菓子をたくさん作っていたんです」とマダム。
▲午後に行くと、もはや品薄状態。お気をつけて

そのおいしさとお手軽な価格もあってか、「シュー・ア・ラ・クレーム」が飛び抜けて売れるようになったとか。
28年前と言えば、わたしも神戸で暮らし始めた年で、ご多分に漏れずあのシュー皮の食感やバニラビーンズに感動した1人でした。

しっかりと焼き込んだシュー皮にマダガスカル産バニラの香るカスタードクリームがたっぷり詰まった「シュー・ア・ラ・クレーム」は、どっしりと重みを感じるほどのクリームの多さやそのコクが、香ばしい皮と好相性。ペロリと平らげてしまえるおいしさです。
▲ボリューミーな「フレーズ」389円。ザクザクっとしたパイ生地にたっぷりのカスタード&生クリームとイチゴ

何より「シュークリーム」じゃなくて、「シュー・ア・ラ・クレーム」という呼び名の響き。食べる時は、いつも「やわらかくないシュークリームは、フランスの味。そんなオシャレなお菓子を買うわたしもオシャレ(笑)」と思いながら買っていた当時を思い出します。
せっかく神戸に来たのだから、メリケンパークやハーバーランドなど海の近くで食べるのもお薦めです。
▲創業時からの定番「ミルフィーユ」335円。サクッと軽い生地とバニラ香るカスタードクリームが絶妙で、来店した某料理研究家が「世界一!」と太鼓判を押したそうです
▲3年前に登場した「さつまいものクレオル」346円。サブレ生地にもアーモンドクリームにも、ふかして、裏ごしした鳴門金時が入っていてほっくり

行くとつい、「シュー・ア・ラ・クレーム」を買ってしまう私ですが、今回はさつまいものクリームをサブレでサンドした「クレオル」や、「ミルフィーユ」も買ってみました! 
「シュー・ア・ラ・クレーム」、「ミルフィーユ」と合わせて「3大看板」の3つ目は、シューにパイ生地を巻き付けた「シュー・シュルプリーズ」。でも取材日は売り切れ……。それはまた次回のお楽しみ、ということで。

※価格はすべて税込
豚饅、点心、シュー・ア・ラ・クレーム。中華だけじゃない、パリのスイーツもある南京町のまるくて美味しいものをみなさんもぜひ、あれこれ食べ歩いて堪能してください!
いなだ みほ

いなだ みほ

赤穂生まれ、神戸・岡本暮らしのフリーランスライター。雑誌、ガイドブック、WEBマガジンなどで神戸のスイーツ、パンなどを中心に執筆。『神戸みやげの新定番』『神戸紅茶散歩』『神戸のおいしいパン屋さん』(以上、グラフィス)は編集と取材執筆を担当。『東京最高のパティスリー』(ぴあ)にも携わる。神戸市主催のまち歩き体験プログラム「おとな旅・神戸」では、パティシエやパン職人と一緒にプログラムを企画・実施。自身のブログ「miho a la mode」では、東北のお菓子を紹介する「北国のお菓子」や「お菓子を食べたそのあとは…」を連載。

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