「老祥記」の豚饅頭をはじめ、まるくて美味しい南京町の無敵グルメは地元・神戸っ子にも絶大なる人気!
近頃は「食べ歩きの街」なんて呼ばれ方もしている神戸・南京町。中国料理店、中国茶専門店、中国食材の店などが軒を連ねる極彩色のにぎやかな街となっています。観光色の強いエリアですが、その中でも今回は地元の人たちも大好きなお店をご紹介します。


点心の代表格「老祥記」の豚饅頭。
その厨房にお邪魔しました

初代は子供の頃から食べ親しんでいたこの天津包子を、日本人好みの醤油味をきかせた商品として販売。この包子を「豚饅頭」、略して「豚饅(ぶたまん)」と呼びはじめたのは「老祥記」が最初です。
現在は、3代目曹英生(そうえいせい)さんを中心に、4代目の息子さん祐仁(まさひと)さんたち家族と一緒に切り盛りしています。

「豚饅」の元祖として1世紀、創業当時の味を一子相伝で守り続けている「老祥記」。その味の秘密に迫ってみると……。
まず「あん」の材料となる豚肉。これは、神戸の老舗精肉店「森谷商店」の上質な豚バラ肉を使用しています。適度な脂と旨みのあるバラ肉は肉汁もたっぷり。包丁で叩いて少し粗めにした歯ごたえ絶妙のミンチに、肉の臭みを消すために青ネギを加え、醤油でシンプルに味付けしています。
こね過ぎるとジューシーさが損なわれてしまうので、そのあたりの塩梅もポイント。頬張った時の食感を考慮してこねられています。

そして「老祥記」の豚饅の核となる「皮」は、むちっとした弾力と歯切れの良さが自慢。秘伝の皮は、麹を使って発酵、熟成させますが、初代が中国から持ってきた麹を入れた生地がベースになっています。
3代目の曹英生さん曰く「麹はその土地の風土や環境で変化します。南京町の空気や気候で育ったその皮は、『老祥記』の宝なのです」。

カウンター奥の厨房では、職人さんが本当に忙しそうで、誰も手が止まっていない。みなさんそれぞれが「あ・うん」の呼吸で目配りをしながら生地をカットし、手際よくあんを包んでいきます。
職人さんは、団子状にカットした1個分の生地を手のひらにのせ、指で円形に広げます。厚さ1cmの生地の上に13gのあんをのせ、生地の端を摘みあげながら包む。左手で少しずつリズミカルに回しながら包んでいくと、きれいな渦巻き状に!

熟練の人はなんと1分間に13個も包むのだとか。その見事さは、ずっと見ていても全然飽きません。
そして、作業を行う傍らでスタッフの1人が「はい、あと1分」、「30秒」、「15秒」……「5、4、3、2、1。はい、出ます!」と声をかけます。取材日は蒸し時間が約7分。気候や豚饅の状態によって微調整しながら強火で一気に蒸し上げるのだそうです。

直径70cmほどの大きな特注せいろにズラリ50個、4段重ねのせいろに並んだ豚饅が蒸し上がると、お客さんの期待度がMAXに!

「10個」「20個」「30個」とまとめ買いする人も普通にいて、製造する豚饅の数は1日13,000個!「一度に『2,000個ください!』っていうお客さんもいらっしゃったんですよ」と曹さん。1個90円(税込)。ちなみに予約は不可で、来店者は一度に1,000個(なんと!)までなら買えるそうです。

自分が「老祥記」さんで働いたら、とてもじゃないけど勤まらないなあ……。お店に入って豚饅を買う時、いつもこう思います。
1個目はそのままで。あとはお好みの味付けで

2個目は酢醤油、3個目は洋辛子といろいろな食べ方でどうぞ。わたしは、そのまま食べるのがいちばん好きですが、自宅では辛子や味噌ダレで楽しんでいます。

差し入れ、手みやげに買って行くと、喜ばない人はいない、南京町の無敵グルメ。コロンと丸くてかわいい豚饅はぜひ一度、蒸したてアツアツをイートインで楽しんでみてほしいです。
老祥記
兵庫県神戸市中央区元町通2-1-14
[営業時間]10:00~18:30(売切次第閉店)
[定休日]月曜
078-331-7714
豚饅以外の点心をあれこれ……なら
「飲茶セット」がお得でした
南京町の西側、西安門からすぐのところ、2013年3月にオープンしたフカヒレ料理専門店「友好飯店(ゆうこうはんてん)」は、フカヒレ料理やそれぞれのシェフが手がける上海・北京・四川・広東料理など幅広い中国料理が楽しめますが、点心もおいしく、お手頃価格でいろいろな種類が食べられるとあって、好評のお店です。

奥に長い店内はゆったりとした雰囲気で、1階は気軽なテーブル席、2階はグループで楽しめる円卓テーブルのあるフロアになっています。


おすすめの「飲茶セット」は、なんと980円というお値打ち価格。9種の点心にフカヒレ麺(もしくは叉焼麺)、デザートのマンゴープリン(もしくは杏仁豆腐)が付いた全11種が楽しめます。
セイロやお皿に盛り合わせてサーブされるのは、プリプリとした海老の食感と風味がおいしい海老餃子、頬張るとスープ溢れる小龍包、しっかり味付けされた具材凝縮のシュウマイ、春巻など。いろんな味をちょっとずつ味わえるのが楽しい。



ストリートであれこれ買って、広場で食べるのはもちろん楽しいけど、イートインでじっくり味わうのも改めていいなって思いました。「友好飯店」の飲茶セットは、終日オーダー可能なので、遅めのランチにもおすすめです。
次回は、ポットサービスのたっぷり中国茶とともに、ゆっくり友と語らいながら点心を味わいたいもの。

※価格はすべて税別
友好飯店
兵庫県神戸市中央区元町通2-2-3
[営業時間]10:30~21:30(L.O.21:20)
[定休日]不定休
078-391-5365
シュー・ア・ラ・クレーム!
まるくて甘い、もう一つの無敵グルメ

看板商品はシュー・ア・ラ・クレーム。そのパリパリッと香ばしい固めのシュー皮が、創業(1988年)の頃は大きな衝撃でした。
洋菓子文化が明治期から根付いていた神戸でも、当時はまだフランス菓子に特化した店は少なく、オーナーの東山行延(ゆきのぶ)シェフがフランス修業時代に覚えてきた味は、とても珍しかったのだそう。

「今でこそ、シュー・ア・ラ・クレームの専門店のようになっていますが、当初はもっとフランス色が強かったんですよ。現在の神戸のパティスリーは、フランス菓子を作られる店が増えていますが、うちは28年前から当時にしては本当に珍しい、クラシックなお菓子をたくさん作っていたんです」とマダム。

そのおいしさとお手軽な価格もあってか、「シュー・ア・ラ・クレーム」が飛び抜けて売れるようになったとか。
28年前と言えば、わたしも神戸で暮らし始めた年で、ご多分に漏れずあのシュー皮の食感やバニラビーンズに感動した1人でした。
しっかりと焼き込んだシュー皮にマダガスカル産バニラの香るカスタードクリームがたっぷり詰まった「シュー・ア・ラ・クレーム」は、どっしりと重みを感じるほどのクリームの多さやそのコクが、香ばしい皮と好相性。ペロリと平らげてしまえるおいしさです。

何より「シュークリーム」じゃなくて、「シュー・ア・ラ・クレーム」という呼び名の響き。食べる時は、いつも「やわらかくないシュークリームは、フランスの味。そんなオシャレなお菓子を買うわたしもオシャレ(笑)」と思いながら買っていた当時を思い出します。
せっかく神戸に来たのだから、メリケンパークやハーバーランドなど海の近くで食べるのもお薦めです。


行くとつい、「シュー・ア・ラ・クレーム」を買ってしまう私ですが、今回はさつまいものクリームをサブレでサンドした「クレオル」や、「ミルフィーユ」も買ってみました!
「シュー・ア・ラ・クレーム」、「ミルフィーユ」と合わせて「3大看板」の3つ目は、シューにパイ生地を巻き付けた「シュー・シュルプリーズ」。でも取材日は売り切れ……。それはまた次回のお楽しみ、ということで。
※価格はすべて税込
エスト・ローヤル
兵庫県神戸市中央区栄町通1-3-16 チャイナコートビル
[営業時間]10:00~19:00
[定休日]月曜(祝日の場合は営業、翌日休)
078-391-5063

いなだ みほ
赤穂生まれ、神戸・岡本暮らしのフリーランスライター。雑誌、ガイドブック、WEBマガジンなどで神戸のスイーツ、パンなどを中心に執筆。『神戸みやげの新定番』『神戸紅茶散歩』『神戸のおいしいパン屋さん』(以上、グラフィス)は編集と取材執筆を担当。『東京最高のパティスリー』(ぴあ)にも携わる。神戸市主催のまち歩き体験プログラム「おとな旅・神戸」では、パティシエやパン職人と一緒にプログラムを企画・実施。自身のブログ「miho a la mode」では、東北のお菓子を紹介する「北国のお菓子」や「お菓子を食べたそのあとは…」を連載。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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