下鴨茶寮 伝統と今が融けあう老舗料亭で、本格京料理茶懐石を味わう

2016.06.14

世界遺産下鴨神社のほど近く、160年続く老舗料亭「下鴨茶寮」。常連さんも一見さんも、訪れた人がすべからく笑顔になるという、美しき料理の数々をご紹介します。

伝統を活かし「今」にあり続ける
【一期一会】のおもてなし

創業安政三年(1856年)。
かつては下鴨神社の境内にあった「下鴨茶寮」は、代々下鴨神社の料理人を務めていた佐治家(さじけ)が創業し、以来160年以上続く歴史を誇る老舗料亭です。

現在、主人を務めているのは、脚本家や放送作家など多彩な活躍で知られる小山薫堂(くんどう)氏。先代たっての希望で就任したのち、江戸時代から続く伝統を活かしつつ、現代という時代にフィットさせるため、様々な改革を行ったそうです。

料理を一新し西洋の手法を取り入れたり、違うジャンルの料理人とのコラボを行ったりと、京都の老舗料亭という枠を超え、世界にむけて「京料理茶懐石」の文化を発信しています。
▲暖簾をくぐると、ふっと鼻をくすぐるよい香り。京都の老舗「松栄堂」のお香を毎日焚いているとのこと
▲待合所に設えられた茶席。「一期一会」の心を大切にしたおもてなしが、お店の随所に感じられます
席に通されるまで、しばしの間お庭を散策。緑の苔むすこちらのお庭は、100年以上の時間をかけて手入れされてきたもの。
春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪…。美しい「京都の四季」を写してくれます。

庭園内をサラサラと流れる小川の音に心は鎮まり、少しずつ緩んでいくのがわかります。
▲利き酒師が厳選した地酒の数々。京都伏見をはじめ全国の銘酒をラインナップ。中には手に入りづらいレアなものも

地の食材を、地の料理法で味わう。
一皿ごとに完結した美を感じて

地元の食材を、地元に伝わる料理法で味わう「土産土法」スタイルは、創業時よりの伝統。受け継がれてきたものに、時代にあった創意工夫が加わって生まれる一皿は、まさに美しいの一言です。

それでは、今回頂いた寿膳 (16,200円/税込)を紹介していきます。
一品目:ぐじ(甘鯛)の木の芽味噌
塩焼きにした旬のぐじに、木の芽のソースをかけて。木の芽はちりめん山椒の芽のことで、京料理には欠かせない和のハーブ。爽やかな香りと、甘いぐじの身が、春の訪れを感じさせます。
二品目:八寸
旬の食材を使い、彩りも鮮やかな八寸。穴子でごぼうを巻いた八幡巻は、シャキシャキとした歯応えが楽しく、長芋にこのこ(なまこの卵巣をペースト状にしたもの)をかけたものは、まったりとした味わいの珍味。五感を刺激する楽しい品々ばかりです。
三品目:蛤真丈(はまぐりしんんじょう)
白身魚のすり身に、弾力のある蛤の身の食感が楽しい一品。上品な蛤の出汁に、胃も心もほっと緩みます。
四品目:お造り(鯛、引っ下げ)
紅白のあしらいが美しいお造り。引っさげとは手で持ち上げられる(引っさげる)サイズのマグロのことだそう。鮮魚は間違いのない素材を、京都の市場や和歌山の港から仕入れているとのことです。
五品目:油目(あいなめ)の木の芽焼き
魚の骨を煮詰めて作ったタレを塗りながら焼いた油目に、木の芽を載せて。淡白な身と、コクがあって香ばしいタレがよく馴染み、爽やかな木の芽が絶妙なアクセントを加えています。
六品目:若竹煮 飯蛸(いいだこ) 
京都産の柔らかい朝どれ竹の子に、低温調理で柔らかく煮込んだ飯蛸。これぞ老舗料亭の味、と伺わせる上品なダシでまとまった煮物は、サクサクの竹の子とふっと噛み切れるほど柔らかい飯蛸との食感のハーモニーを楽しんで。
七品目:牛フィレ肉の低温焼 玉葱餡
玉葱をバターと煮詰めた餡に、低温調理した牛フィレ肉を載せた一品。かみ締めるほどに味わい深い牛フィレ肉に、コクとまろみを加えるソースが絶品です。
▲80度程度で1~1.5時間ほど低温調理。ソースに加えてお好みで和がらしをつけて
八品目:お食事(桜海老と筍の釜炊き御飯)
上品なダシで炊き上げた竹の子ご飯に、静岡産の桜海老の素揚げを載せ、蓋をしてしばし。蓋を開ければ、春の香りがふわりと漂います。口の中で弾む桜海老と竹の子の食感に、箸を持つ手がとまりません。
九品目:甘味 アイス最中
バニラアイスと自家製のつぶあん、そしてイチゴが入った和スイーツ。バニラ粒の香り、炙った最中のパリパリ感、イチゴ、アイス、そしてつぶあんと、三位一体の甘さ。幸せが口の中に広がります。
十品目:お抹茶 お茶請け
目にも美しく、心も胃も満たされる料理のラストを飾るのは、ほんのり温かいお抹茶と、オリジナルのお茶請け六種。
写真左から黒豆のチョコレートがけ、バナナ羊羹、バタークリームの黄粉がけ、レモンキャラメル、乾干大根の赤ワイン漬、蘇(そ:牛乳と紅花で作った古代のチーズ)。

「終わりよければすべてよし」と言いますが、どれも初めて味わう驚きがあり、感動の料理のラストにふさわしいものでした。

下鴨茶寮主人:小山薫堂氏から一言

今回の掲載にあたり、主人を務める小山氏からコメントをいただきましたので掲載します。

『安政三年に創業した下鴨茶寮は、これまで160年の歴史を重ねてきました。改めて、京都という世界から注目される都市で、和食という日本文化を発信できることを大変光栄に思います。今後は、受け継いできた伝統に、新たな創意や工夫を加えながら、和食の素晴らしさを、より多くの方々にお伝えできれば幸いです。下鴨茶寮は、「食」で、世の中を幸せにする日本文化発信組織でありたいと考えています。』

160年続けてきたことの価値、それを続けていくために変わっていくことの大切さ。「食で、世の中を幸せにする日本文化を発信する」という小山さんの言葉が胸に響きます。

プライベートでも大切な人を連れて訪れたいと思わせてくれる、そんな素敵なお店でした。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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