天然の化粧水のよう!と噂の有福温泉。レトロな街並散策と温泉三昧で「福」浴みはいかが?

2016.06.18 更新

街全体が大正から昭和のノスタルジックな雰囲気を漂わせる島根県・「有福(ありふく)温泉」。坂道や路地裏に細い階段が張り巡らされ、その情景から「山陰の伊香保」とも呼ばれています。1300年以上も前からこんこんと湧いている湯は「美人の湯」として評判。そんな温泉やご縁が深まるパワースポット、贅沢宿など、心を癒す「福」浴みの定番コースを巡ってきました。

「福」のある出で湯の里は「恋人の聖地」にも

山陰自動車道・浜田東ICから県道の田舎道を走ること約15分。静かな山あいにぽつんと姿を現す「有福温泉」は、聖徳太子の時代に高名な僧侶によって発見されたと言われる歴史ある温泉。万葉歌人として知られ、石見の国(現在の島根県西部地方)の国司として赴任した柿本人麻呂も湯浴みしたと伝えられています。
▲温泉街の入口。JR浜田駅や江津駅へのバスも停まる

「敬川(うやがわ)」に沿った温泉街は、派手なネオンや大きなホテルとは無縁の鄙びた雰囲気。斜面に数件の宿や外湯などが点在し、細い石段や坂道で結ばれています。
昔ながらの湯治場の風情を残し、ここだけ時間が止まったかのような街並みは、浴衣姿で下駄をカランコロンと鳴らして歩くのがとても似合いそうです。

左右に分かれる石段の下に設置された「福灯り」は手で回すことができ、どちらが「福」に向かう道かを教えてくれるのだとか。ぜひお試しください。
▲石段の入口に立つ「福灯り」を回せば福の縁がある方向がわかる?

石段を登ると石畳の広場があり、ここは島根県では唯一「恋人の聖地」に選定された場所。柿本人麻呂がこの地で「依羅娘子(よさみのおとめ)」と恋に落ちた「縁が深まる場所」としてカップルに人気のスポットになっています。
▲「恋人の聖地」のプレートや「恋人のオブジェ」がある広場。よく探すとハートの形を7つ見つけることができる

特産品の石見瓦を絵馬に見立てた「瓦ぬご縁結所」もあり、思いを書き込んだ色とりどりの瓦が結び付けられています。
▲「瓦ぬご縁結所」で瓦の絵馬を結んで変わらぬご縁を

瓦の色は6種類あって、赤は愛情、青は慈愛、黄色は友情など、それぞれに意味があるので、どんな縁を深めたいかで選びます。瓦は1枚500円(税込)で、すぐ横のカフェで販売されています。
広場の横の石段を上った高台には「有福温泉」の泉源を見守るお薬師さんを祀った「薬師堂」があり、傍らに湯が湧き出しています。
▲温泉街の高台にひっそりと佇む「薬師堂」

部屋に露天風呂を設えた上質な隠れ宿~旅館 樋口~

温泉街の散策を楽しんだら、今日のお宿へ。「有福温泉」には7軒の宿がありますが、予約したのは全19室のうち14室に露天風呂を備えた「旅館 樋口」。
▲「旅館 樋口」は温泉街入口の「出湯橋(いでゆばし)」を渡ってすぐ

竹の間からやわらかい照明がこぼれるアプローチを抜けると、館内は非日常を感じられる設えがいっぱい。レセプションには大きな古時計のようなドイツ製アンティークオルゴールが置かれていて、記念日などにはお祝いの曲を奏でてくれます。予約の際に伝えておくと素敵な想い出になりそうですね。
▲モダンで上質な空気が漂うレセプション

ロビーの横には小上がりのラウンジがあり、木製スピーカーからは心地いい音楽が流れています。上質な木と皮のソファに腰を下ろして寛いでいると、ほのかに漂う茶の香り。館内にはたくさんの茶香炉が置かれ、キャンドルライトのような灯りとも相まって癒しを与えてくれます。
▲茶の香りを部屋でも愉しめるように香炉と茶葉を揃えた「茶香炉コーナー」もある

3階建ての館内は迷路のように入り組んでいて、部屋に案内されるまでにもワインの試飲ルームや地酒の試飲コーナー、瞑想ルーム、ティールーム、図書コーナーなど滞在中にゆっくり楽しみたい設備が盛りだくさん。一泊の予定にしたのを後悔しそうなほどです。
▲折れ曲がった迷路のような廊下

通された部屋は和室と寝室の2室構成になった露天風呂付き客室の「岩戸」。和室とはいってもモダンなデザインで、寝室もセミダブルのツインベッド。竹の間仕切りの手前にはフカフカのソファに座って楽しめるシアターサロンまであります。
▲寛ぎに満ちた客室。洗練されたこだわりも感じる

夕食は部屋によって異なる3種類のコースが用意されています。浜田港で水揚げされたノドグロなどの新鮮な魚介や石見和牛など厳選した地元の食材を味わうことができ、希望すればランクアップも可能。鮮魚イタリアンのコースもあります。
▲最上級の「ダイヤモンドコース」。メインはノドグロや石見和牛などから選べる

ウッドテラスには開放感のある露天風呂が備わっています。総ヒノキの大きな湯船で、大人2人で入っても充分なほど。蛇口をひねると源泉が注ぎ込まれ、「有福温泉」の特徴であるぬるりとした「美人の湯」を満喫できます。
泉質は「アルカリ性単純温泉」。肌への刺激が少なく「まるで化粧水に浸かっているような感じ」と、評判です。
▲部屋の露天風呂でのんびり贅沢な湯浴み

ここには同じ設えの部屋はなく、全室が異なる意匠や調度品で雰囲気も様々。館内には7室の貸切露天風呂(1時間1,540円~/税込)もあるので、思い思いの過ごし方ができます。
▲和洋室「岩戸」のベッドルーム

ちなみに、温泉街には神楽殿があり、毎週土曜の夜には地元神楽団による伝統芸能「石見神楽」を上演しています。客席と舞台が近いので臨場感もたっぷり。神話世界の話が繰り広げられる「有福温泉」ならではの夜を楽しめます。部屋でのんびりしたら出かけてみてはいかがでしょう。
▲神楽上演は毎週土曜の20:30~21:30(入場料税込1,000円)

茶香やセンスのいい調度品など、非日常の贅沢なひとときを過ごせる居心地のいい宿でした。みなさんも「旅館 樋口」で「福」(幸せ)な気分を味わってはいかがですか。

ゆるりとした時間を過ごせる地産地消カフェ

二日目は、温泉街の中心にある「有福カフェ」へ。「恋人の聖地」がある広場を見下ろす場所にあり、ウエディングにも利用される人気のスポットです。
▲有福カフェ。ゆったりした時間を過ごせる癒しの空間

ドアを開けると芳ばしい焼きたてパンの香りが漂ってきます。ここでは生地を店内で成形して毎朝クロワッサンやアップルパイなどを焼き、コーヒーはオリジナルのブレンド豆を竹炭で焙煎するこだわり。フードも地元の魚介や和牛肉、豚肉を中心とした地産地消のイタリアンを味わうことができます。
▲パスタやパンが付いたコースランチ(税込2,400円)。メインは魚か肉が選べる(写真は魚)

大きな窓の外にはウッドデッキのテラス席もあり、温泉街を見渡すことができます。目の前に広がる山々から聞こえる鳥のさえずりに耳を傾けて、のんびりとコーヒーを味わってみるのもオススメです。
▲テラス席はカウンター形式。足湯コーナーもある

湯治場の風情を満喫できる3軒の外湯

「有福温泉」の楽しみ方で、忘れては行けないのが外湯めぐり。徒歩圏内に3軒の共同浴場があり、それぞれに佇まいや源泉が異なるので、石段や坂道の散策をしながら外湯めぐりをして湯治場の雰囲気を味わってみたいものです。

外湯の中でも、まず立寄っておきたいのが「御前湯(ごぜんゆ)」。レンガ造りのレトロでモダンな洋風の建物は温泉街の中でもひときわ目を引く存在。入口や窓の形状はアーチ型になっていて、大正浪漫を感じます。
▲レトロな外観の「御前湯」は温泉街のシンボル

中に入ると正面に木造の番台があります。浴室は1階ですが、2階には休憩室があり、畳の広間もあるので湯上りにゴロンと横になって寛ぐこともできます。
▲昔懐かしい「御前湯」の番台。自販機で入浴券を買って渡すシステム

浴室の中央に8角形の湯船があり、その中にある噴水のような湯口から新鮮な湯がこんこんと注ぎ込まれています。
▲男湯の浴室。女湯も同様のつくりになっている

泉質は「アルカリ性単純温泉」で無色透明。やわらかい肌触りの「美人の湯」としても有名で「湯上りは肌がしっとりする」と評判の湯です。
▲源泉100%の掛け流し。新鮮なお湯が絶えず注がれている

ここは観光客や湯治客だけでなく、地元の人も普段使いにしている公衆浴場なので、お湯に浸かって会話が楽しめるのも魅力。

すぐ近くに比較的新しい建物の「さつき湯」や、こじんまりした「やよい湯」もあるので、時間がある人はぜひ湯めぐりを楽しんでください。
1300年も前から湧き続ける湯は、まさに自然がもたらす「福」。「福が有る」湯に癒されますよ。
▲源泉掛け流しでシャワーもある「さつき湯」
▲落ち着いた雰囲気の「やよい湯」。お湯は他と比べてぬるめ
1泊2日でご紹介した「有福温泉」の旅。鄙びた雰囲気の中にもセンスのいいもてなしを感じられて、楽しい時間を過ごすことができました。
地元の方々も気さくで優しく、この日もお年寄りから「昔はここにも芸者がよけーおって賑やかやっただけ」と教えてもらいました。旅先で方言を聞くとほっこりした気分になります。
「福」をもらって運気も上がりそうな「有『福』温泉」。お気に入りの温泉ベスト3に入れたいと思います。
廣段武

廣段武

企画から取材、撮影、製作、編集までこなすフリーランス集団「エディトリアルワークス」主宰。グルメレポートの翌日に大学病院の最先端治療を取材する振り幅の大きさと「NO!」と言わ(え?)ないフレキシブルな対応力に定評。広島を拠点に山陽・山陰・四国をフィールドとして東奔西走。クラシックカメラを語ると熱い。

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