一度は行きたい世界自然遺産・屋久島。推定樹齢4000年の縄文杉からパワーをもらう旅

2016.07.18

平成5(1993)年、日本ではじめて世界自然遺産に登録された「屋久島」。今回は「屋久島」の象徴ともいえる「縄文杉」を、2日間かけてゆっくりと堪能する「縄文杉ひとりじめキャンプツアー」を体験。貸切プライベートガイドと一緒に、屋久島ならではのトレッキング&キャンプをご紹介します。

▲屋久島で一番の巨木として君臨する「縄文杉」。樹齢4000年(諸説あり)の姿は圧巻!
鹿児島空港からプロペラ機で約35分。周囲約134km、島の90%が森林という圧倒的な自然が残る「屋久島」へやって来ました。島の最大の特徴は、亜熱帯 から冷温帯まで垂直分布する特異な植生。まるで北海道から沖縄まで、日本列島をギュッと詰め込んだような気候と自然が、この小さな島に存在しています。今回は、そんな特異な気候の結晶ともいえる「縄文杉」の神秘に迫ります。

荒川登山口から全長約22kmのトレッキングスタート!

島東部の安房地区にある「屋久杉自然館」からシャトルバスで約40分。屋久島トレッキングの中で最も人気が高い「縄文杉登山コース」のスタート地点「荒川登山口」に到着。登山届を提出し、本ツアーのガイド・青木高志(たかし)さんと一緒に、高塚山の標高1,330m地点に鎮座する縄文杉を目指します。
青木さんの大きいザックの中には、夕飯の材料も入っているそう。メニューはお楽しみです。
(シーズン中は、シャトルバスが大変込み合うので、観光案内所などで事前にバスチケットを購入しておくのがオススメ)

スタートから約8km続くトロッコ道

「荒川登山口」から縄文杉までは片道約5時間。約11kmの行程です。このコースの特徴は、樹齢数千年を超える様々な屋久杉を鑑賞しながらトレッキングできること。「ウィルソン株」「大王杉」「夫婦杉」など、「縄文杉」以外にも、迫力ある屋久杉を体験することが出来る、見どころ満載のコースです。

登山口から約3時間は、平坦なトロッコ道を歩きます。ちなみに、トロッコは今も健在。開通当初の役目は昭和45(1970)年に終了しましたが、現在は登山道のトイレに必要な物資の輸送や、屋久杉の土埋木・昔の切り株運搬に使用しています。
▲歩き出して最初の橋の中央から望む「中島権現岳(なかしまごんげんだけ)」
▲この集落のご神山に、トレッキングの安全と無事を祈ります
▲探検家の気分になれるトンネル。暗いので、足元には気を付けて
平野部では2,300mm、山間部では8,000mmを超える年間雨量の屋久島。登山道の至るところから美しい軟水が湧き出しています。

「屋久杉は雨の多い環境に適応するため、本土の杉に比べ6倍の樹脂を出しながらゆっくり育ちます。そのため腐りにくく、長生きすると考えられています。この雨量が、雄大な屋久杉の森を作りだしているんです」と青木さんは語ります。  
透明度が高い清流を、いくつも渡っていきます。水のせせらぎを聞きながら、少しずつ心が癒されていくのを感じます。

戦後の復興を支えた「小杉谷」

登山口から約1時間。高架橋を渡ると、最初の休憩ポイントである「小杉谷(こすぎだに)集落跡」に到着です。大正12(1923)年から昭和45(1970)年まで、屋久杉伐採に従事する人々の集落がありました。伐採前進基地として栄え、商店や郵便局・小中学校などが立ち並び、最大540人が暮らしていたといいます。

丈夫な木材である屋久杉は、戦後復興に大いに利用され、昭和35(1960)年には最盛期を迎えます。高級品として取り扱われていた屋久杉でしたが、自然保護の要請が高まり昭和45(1970)年に閉山。小杉谷集落の使命も終わりを告げました。
▲当時の様子を伝える看板。トロッコに乗って買い物に出かける主婦の姿も
▲つい45年程前までは、トロッコ道の両側に商店が立ち並んでいたそう。成長した杉林の中を歩きながら、自然のたくましさを感じずにはいられません

ゆっくり、のんびり。屋久島の自然を存分に満喫

多くの登山客が日帰りの行程で歩みを進めるなか、ガイド歴17年の青木さんが時々足を止めながら、屋久島の成り立ちや動植物について詳しく案内してくれます。コースから外れてヤマメが泳ぐ沢で休憩するのも、2日間の行程ならでは。
▲この日は満開の「カワラサツキ」がお出迎え。真紅の花がとても華やか
▲三つの岩峰が特徴的な翁岳(おきなだけ・1,860m)と、九州最高峰かつ日本百名山でもある宮之浦岳(1,936m)。次は、ぜひあの両山にチャレンジしたい
▲荒川登山口からトロッコ道の終点「大株歩道入口」まで、合計3カ所のバイオトイレが設置されています。トイレットペーパーもあるので安心です

さぁ、ここから本番!いざ屋久杉の森へ

「大株歩道入口」からは、急登が続きます。ここから本格登山がスタート!とはいえ、所々に整備された木道があり、思っていたより歩きやすく感じます。
急登が始まってから約1時間。このルートの見どころの一つである「ウィルソン株」に到着です。 アメリカの植物学者である「アーネスト・ヘンリー・ウィルソン」が、大正3(1914)年、屋久島に来日し、日本の針葉樹の森を初めて世界に紹介。植物調査の際に発見された切り株は、後年になってウィルソン博士の名前から「ウィルソン株」と名付けられました。
 
「この切り株は、江戸時代、山の中で平木に製材されました。樹高約42mの真っ直ぐな杉であっただろうと推定されています。使い物にならなかった『ウィルソン株』の先端部分は、下の沢に放置され、今でも残っているんですよ」。青木さんのお話しを聞きながら、機械もない江戸時代に、こんなにも大きな杉を伐採できたのかと、ただただ驚くばかりです。
▲切り株の中は大きな空洞になっていて、ある場所から空を見上げると「ハート型」に見えます。このポイントはガイドさんに教えてもらって
▲ウィルソン株から登ること5分。コースで最も美味しい軟水が汲めるとされる水場。このコースを1,500回以上歩いた青木さんに言われると、是が非でも汲んでおきたくなる

屋久杉のオンパレード!次々と登場する巨木たち

ウィルソン株から登ること約1時間30分。縄文杉に次いで太いとされる「大王杉」の姿が見えてきます。推定樹齢はなんと3000年。樹高24.7m、胸高周囲は11.1m。下から仰ぎ見ると、一般的なカメラでは収めきれないその巨大さがよく分かります。
大王杉から約5分。夫(右)の杉の枝が、妻(左)の杉を貫通している姿が、まるで手を繋いでいるかのような「夫婦杉」。夫杉は樹齢2000年、妻杉の樹齢は1500年。なんとまぁ、仲良しな夫婦。色んな意味であやかりたい(笑)。

ついに、到着!日本で最も太い杉の木「縄文杉」とご対面

夫婦杉から約1時間。午後4時30分、ついに最終目的地「縄文杉」に到着。樹高25.3m、胸高周囲16.4mという気の遠くなるような生命力。「感動」という一言では表せない、胸に迫る光景が待っています。
凹凸の激しい幹は、角度によって人の表情にも見えてきそう。江戸時代、利用できない巨木として切り残された奇遇と、屋久島が織りなす自然に感謝。まさに世界最大級のパワースポットと言っても過言ではありません。

この時間は登山客も少なく、縄文杉と思う存分ゆっくり向き合うことができます。(縄文杉保護のため、見学は展望デッキから。直接触れることはできません)

地元の味を堪能する、屋久島ならではのキャンプ

「縄文杉」からしっかりパワーをもらった後は、約10分登った今夜のキャンプ地「高塚小屋」へ。無人の避難小屋は20名収容可能ですが、ピーク時には人が溢れ、小屋に宿泊できないこともあるそう。宿泊する場合は、しっかり準備して出掛けましょう。
▲私たちは小屋前のテント場にテントを設置。テント設営から食事の支度まで、青木さんが全て準備してくれます
▲今夜のメニューは、地のものにこだわった鹿児島豚と地元野菜のしゃぶしゃぶ!山の上でこんなに至れり尽くせりの食事が食べられるなんて、登山歴20年の私も初めての経験
青木さんが持参した地元の焼酎「三岳」で乾杯!今日1日頑張った体に、美味しいお酒と温かい食事が染み渡ります。ちなみに、翌朝はしゃぶしゃぶの残り汁を使った雑炊。出汁がしっかり出ていて、これまた美味しゅうございました。
翌朝は4時30分に起床。美しい朝焼けが屋久杉の森を照らしはじめます。「この鳴き声はズアカアオバトだね」と青木さん。尺八のような音色が森にこだまします。
▲5時過ぎ、朝の姿を拝みに「縄文杉」へ
▲屋久杉の森から差し込む朝の光が「縄文杉」を赤く染めていきます。その時間、わずか10分。宿泊した者しか見ることができない景色です
「縄文杉」からしっかりパワーをもらい、ゆっくりと下山開始。屋久島についてひと通り学んだ後では、屋久杉の森も違った形で見えてくるから不思議です。昨日とは異なるルート「自然観察路」に向かいます。
▲屋久杉の切り株の上に、桜やサカキなどいくつもの植物が育っています。このように他の木の上で育つ植物のことを「着生植物」と呼びます。「この切り株だけで、一つの森のよう」と青木さん。
▲屋久杉の切り株の中に入ってみたり
▲直接木に触れたりできるのも「自然観察路」ならでは。余すところなく屋久杉の森を堪能します
▲下山途中も沢で休憩。「水に足をつけると、疲れが取れますよ」と青木さん。5秒と足をつけていられない冷たさに、思わず叫んでしまいます
▲午後3時、「荒川登山口」に無事下山。屋久杉の森を存分に楽しんだ後は、「屋久島山岳部環境保全」のためにぜひ募金を。ひと口500円です
募金すると、屋久杉で作った「箸置き」をお土産にいただけます。使うたびに、屋久島の景色と自然のパワーが蘇ってきそう。
樹齢1000年を超える屋久杉と、混雑を避けじっくり「縄文杉」と向き合える2日間のエコツアー。朝日に染まる「縄文杉」の姿を見られたことは、日帰り登山では味わえない貴重な体験でした。屋久島の自然を感じ、考え、そして楽しむ。本州では味わえないスケール感と、神秘的な旅が待っています。
河野由美

河野由美

フリーライター&エディター。出版社勤務を経て独立。登山歴は20年以上。歴史を得意とし、武将に関する神社仏閣の御朱印収集に親しむ。ブライダルや求人などの広告をはじめ、旅行誌や会報誌の編集を担当。

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