屋久島・送陽邸。ウミガメが産卵に訪れるいなか浜に佇む、夕陽を眺めるために建てられた海辺の宿

2016.07.28

屋久島空港から車で50分。国内はもとより、世界各地からこの宿を目指して旅人が訪れるという、永田いなか浜にある「屋久島民家の里 送陽邸(そうようてい)」。メディアでも度々取り上げられ、“いつか泊まってみたい憧れの宿”としても人気を集めています。部屋にはテレビも電話もなし。潮騒の音を静かに聞きながら、地元の幸を味わう―。都会では味わえない贅沢な時間が待っている、海辺の宿を訪れました。

▲戦前まで島には瓦が無く、川の石を代用していた。この昔ながらの屋根造りは、今では殆ど見ることができません

母と手を繋いで見に来た、思い出の情景が眠る場所

「幼い頃、ここからの夕陽を眺めに母親と散歩に来ていたんだ。その情景がずっと心に残っていてね。いつの日かこの場所に、ビール片手に夕陽を眺められる店を造りたいと思っとったんです」

そう語るのは、宿のオーナー・岩川健(けん)さん(75歳)。50歳で電力会社を早期退職。畑だったこの場所を自ら開拓し、1992年、家族4人で宿をスタートさせました。宿の名前「送陽邸」には、“夕陽を見送る宿”という意味が込められています。
(写真提供:屋久島民家の里 送陽邸)
岩肌に寄り添うように連なる客室棟は、本館・別館・新館の計5棟、11室。島内に点在する古民家を家族で移築・改装しながら、20年以上の歳月を費やし現在の形にしたそうです。
一番古い建物は、なんと江戸時代のもの。歴史と風合いを感じる館内は、独特な雰囲気を醸し出しています。
▲明治40(1907)年に建てられた古民家を移築した本館。廊下には、当時の大工を確認できる看板も
▲こちらは消火栓ボックス。オーナーのこだわりとセンスを、随所で感じることができます
(写真提供:屋久島民家の里 送陽邸)

客室は和室のみ。一つとして同じ間取りは無く、全室が二間続きのゆったりと過ごせる造りです。1室最大6名まで利用できるので、家族やグループで宿泊するのもOK。どんな部屋に案内されるか、当日までお楽しみに。
全室オーシャンビューのテラス付き。広いテラスからは「いなか浜」を一望でき、天気が良ければ満天の星空を眺めることができるそう。
▲客室のお茶請けは、地元洋菓子店で作られている、永田の天然塩を使ったウミガメ型クッキー。塩気と甘さのバランスが絶妙です。宿でも購入できるので、お土産にオススメ

すべてから解き放たれる、見渡す限りの絶景

日本最大のアオウミガメの産卵地「永田いなか浜」を見下ろす高台に建てられた
「送陽邸」。敷地内には、海の絶景を満喫するスポットが点在しています。
▲潮騒に耳を澄まし、海風を感じ、ハンモックに揺られながら夕陽を眺めるのも一興
宿には、オーナーこだわりの2つの露天風呂と3つの内湯を用意。露天風呂はどちらも無料で貸切にできます。まずは、海に面した「岩風呂」でひと風呂いただきます。
お湯は赤茶色が特徴の鉱泉。目の前の岩で波が砕けるダイナミックな眺めと、湯船から海へそのまま続いていくかのような開放感は格別です。
▲こちらが、もう一つの貸切露天風呂「屋久杉風呂」
▲湯船から、ほのかに屋久杉の香りが漂い、贅沢な気分にさせてくれます
▲外には海を望む露天風呂。波の音を聞きながら、ゆっくり浸かるお風呂は最高です
お風呂でさっぱりした後は、宿の中でも夕陽が一番よく見える食事処へ。夕食への期待が高まります
宿の中で最もこだわったという食事処は、開閉式の窓から広がる絶景オーシャンビュー。窓から入ってくる海風と、打ち寄せる波の音が優しく響き、自然を間近に感じられる空間です。
▲この日訪れていたイギリスからの宿泊客。フランスやドイツをはじめ、年間1,000人を超える外国人が、この宿を目的にして訪れるそう
▲地元で水揚げされたアオダイ、アカバラ、サバの白子のお造り。屋久島産の甘醤油でいただきます
この日のメインは炭火焼きでいただく「魚のバーベキュー」。ハマダイ、ウシエビ、キビナゴの一夜干し、ヤリイカをはじめ、鹿児島産の赤鶏といった地元の食材がずらりと並びます。昼間、オーナー夫妻が採ってきたという、旬の竹の子・真竹(マダケ)は、みずみずしい甘み。どれも素材そのものの味を堪能できます。
「これは俺からのサービスね」。そう言って、オーナー自らが地元の銘酒「三岳(みたけ)」を一人ひとりに振舞ってくれます。オーナーが面白おかしく語る、宿の歴史や屋久島の話で大盛上がり!ついついお酒がすすんでしまいます。

早起きして、ウミガメの産卵地「いなか浜」へ

翌朝5時に起床し、ウミガメが訪れる「いなか浜」に向かいます。ウミガメの産卵時期は、毎年5月~8月末。観察のルールや詳細については、宿で確認を。ウミガメ観察会の予約も手配してくれます。
▲浜辺のあちらこちらに、ウミガメの足跡が
産卵を終え、海に帰るウミガメに遭遇!ゆっくりゆっくり歩みを進める姿に、思わず「ガンバレ」と声を上げてしまいます。この日は、2匹のウミガメに出逢うことができました。
ウミガメとの出逢いに感動した後は、宿に戻って朝食をいただきます。
トビウオの塩焼き、地元の豆腐、お味噌汁、漬物と、シンプルながらもカラダにやさしいメニューに、朝から元気をもらいます。
朝食時は、オーナーの奥様がおもてなし。少し会話をしただけで“屋久島のお母さん”と呼びたくなるほど、包容力と芯の強さを感じる女性です。オーナーをずっと支えてきた“お母さん”がいたからこそ、今の「送陽邸」があると言っても過言ではない。そんな凛とした大人の女性の姿を見た気がします。でも、オーナーとの馴初めを話していた時のお母さんは、とっても可愛らしかった(笑)。
何も考えず、ぼんやりと海を眺めて過ごすのも良し。ちょっと元気をもらいに、パワー溢れる“屋久島の家族”に会いに行くのも良し。どこか日本の原風景を感じさせる美しい景色と、訪れた人をほっこり温めてくれるおもてなし。何度でも、何度でも、訪れたくなる海辺の宿です。
河野由美

河野由美

フリーライター&エディター。出版社勤務を経て独立。登山歴は20年以上。歴史を得意とし、武将に関する神社仏閣の御朱印収集に親しむ。ブライダルや求人などの広告をはじめ、旅行誌や会報誌の編集を担当。

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