コシの強さがクセになる、「盛岡冷麺」で絶対に外せない厳選3軒!

2016.06.23

岩手県の盛岡に来たならぜひ食べてほしい「盛岡冷麺」。そのルーツは朝鮮半島の郷土料理だと言うが、作り方は盛岡で独自に進化した。デンプンをベースにした麺はつるりとしてコシがあり、そのコシの強さに最初はびっくりするけれど、3度食べればその美味しさにハマると言われている。地元でも人気の高い3軒を巡ったら、「盛岡冷麺」の虜になるかも!

まず、「盛岡冷麺」とはどんなものなのか?その特徴は何と言っても、やや太めでコシのある麺だ。じゃがいものデンプンと小麦粉を合わせた生地をしっかり練ってできている。名前の通りきりっと冷たい麺なので、夏にはぴったりの食べ物だが、盛岡では一年を通して人気が高い。スープは、牛骨や上質の牛肉、鶏ガラなどをベースに作られ、脂分が少なくすっきりしながら深いコクがある。

「盛岡冷麺」の元祖、「食道園」

今や、盛岡市近郊には「盛岡冷麺」の看板を掲げる店は数えきれないほどあるが、そのはじまりは盛岡市大通にある「食道園」だ。
▲「食道園」の冷麺・普通盛り(税込900円)

「食道園」の冷麺は、普通・辛・特辛の3段階。メニューにはキムチが別皿で出てくる“別辛”もあるけれど、ここは基本を知るべく“普通”をオーダーする。ほどなくして運ばれてきた冷麺は、丼のなかで麺が美しく折りたたまれ、ゆで卵、キュウリの酢漬け、牛チャーシュー、キムチ、ネギ、ゴマがキレイにトッピングされている。
▲透明感ある麺は、少しちぢれがあってスープがよくからむ

そんな観察はあとにして、冷麺は出されてすぐの食感を味わうべし。コシのある麺は、口にいれた瞬間の弾力と喉を通るときの滑らかさがたまらない。太い麺にからむスープはまろやかで、牛の旨みが鼻の奥にもひろがる。

キムチは辛さと酸味のバランスがちょうどよく、冷麺初心者にもおすすめだ。一般的にスイカやナシなど果物を乗せる冷麺も多い中、同店では果物をトッピングしないが、それは「丹念に育てたスープに果物の味が移ってしまうから」とのこと。
▲函館からの修学旅行生も、初めての「盛岡冷麺」に舌鼓中!

その味を堪能したところで特別に厨房にお邪魔し、「食道園」の冷麺の作り方を見せてもらった。「食道園」では、毎朝10時半から手ごねで麺を打っている。粉の配合や水加減、練り方は季節や気温などで日々変わるそう。
▲多いときは1日800食分の麺を打つ
▲専用の機械で麺を押し出して
▲大なべで茹で上げ
▲水で締めるときも、季節によって水温を調整

「食道園」のスープは、牛骨・牛肉をベースに、鶏ガラなどで4時間ほど煮込んだもので、すっきりとしながらも、牛の旨みと甘味がふくよかに広がる。
▲この釡にスープの秘密が!

味に深みを加えるキムチも自家製だ。季節による発酵具合を室温などで加減し、酸味と辛みを調えるそう。
▲冷麺の味のきめ手ともいえるキムチは、ほどよい酸味が大事
▲細切りの牛チャーシューも甘辛で柔らかく、「盛岡冷麺」に欠かせない具材だ

イベントをきっかけに「盛岡冷麺」という呼び名が定着

「まっ白な丼一つに、辛い・しょっぱい・酸っぱい・甘いという4つの味がバランスよく入っています」と話すのは、専務の青木雅彦さん。

同店の創業は昭和29(1954)年。雅彦さんの父であり創業者の故・青木輝人(てると)さんは朝鮮半島で生まれ、若い頃に日本へ戻って東京都内で仕事をしていたが、終戦後に知人を頼って盛岡へと移り住み、現在の場所に朝鮮料理店を開いたという。

「父は故郷で食べた味が懐かしく、いろいろと試行錯誤を重ね『平壌(ぴょんやん)冷麺』としてメニューに加えました。日本に馴じみのない食べ物なので最初は評判が悪かったのですが、山形出身の母が東北人の口に合うよう工夫し、今の冷麺へと進化させていったようです」と雅彦さん。まさに夫婦二人三脚で作りあげた味なのだ。
▲先代の後を継ぎ、現在はお兄さんと2人で店を切り盛りする雅彦さん

こうして「食道園」の冷麺が浸透すると共に、盛岡市内にも徐々に冷麺を提供する店が増えていった。そんな折、昭和61(1986)年に盛岡市内で開かれた「ニッポンめんサミット」を機に「盛岡冷麺」という呼び名が定着。「食道園」の冷麺は、いまやわんこそば、じゃじゃ麺と共に盛岡三大麺の一つとして全国に知られる「盛岡冷麺」の元祖と言われるようになったのだ。
▲「食道園」には「平壌冷麺」の看板が掲げられている

おいしく冷麺を頂きながら、「例えば、輝人さんの知人が福島の人だったら福島冷麺に、山形出身だったら山形冷麺になっていたのか!」と思うと、輝人さんが盛岡に来た運命に感謝したくなる。

駅前で美味しさ満喫、「盛楼閣」

次に紹介するのは「盛楼閣(せいろうかく)」。盛岡駅の向かいのビル内にあるので、盛岡を初めて訪れる観光客やビジネスマンも、道に迷うことなく美味しい冷麺を味わえる。数ある冷麺店の中でも、同店のコシの強い麺が好きだという人も少なくない。
▲盛岡駅からみえる「盛楼閣」の看板
▲店内はシックで落ち着いた雰囲気。お座敷や椅子席まで席数も多く、昼夜ともに賑わっている

「盛楼閣」は冷麺の辛さについて、特辛・辛口・中辛・ちょい辛・普通・ひかえめ・辛み別と7通りのオーダーが可能(辛みによる追加料金はなし)。また、麺の量も普通盛り(税込1,000円)と大盛り(税込1,200円)がある。ここは普通盛りの辛み別で注文した。
▲「盛楼閣」の冷麺・普通盛り・辛み別(税込1,000円)
▲こちらは特辛!旨みを感じる辛さがたまらない

同店にはスープ、麺、キムチづくりなどの工程ごとに専任スタッフがいるそうで、質の良い材料にこだわって、独自のブレンドによる麺やスープ、具材づくりを行っている。

なかでも、厳選された食材を3日間かけてじっくりとったスープは、コクがあってまろやかな味わいだ。辛み別のキムチをほぼ全部入れても、その奥に感じるスープの旨みがしっかり生きているので、最後まで飲み干せる美味しさだ。

そして、つやつやした麺は食欲をそそる透明感。一口食べた瞬間に麺のコシの強さに驚くが、決して硬いのではなく独特の弾力があってのど越しが良い。
▲ファンが多いというコシの強い麺は、修業を重ねた職人のわざによって生まれる

具材は、ゆで卵、太目に切った酢漬けキュウリ、ネギのトッピングに、スイカが乗っている!単品で提供するものとは別に、冷麺スープとの味のバランスを考慮して作った冷麺専用キムチは酸味もほどよく、スープに溶けこんだ辛みが何ともいえない一体感だ。

昭和56年のオープン以来、同店に通い続けるお客さんも多く、変わらぬ味を守るために常に良い材料を揃えて「盛楼閣」ならではの冷麺を提供し続けているという。旅の終わりや出張の合間などに、さっと行って食べられる立地も魅力的だ。
▲店内には冷麺専用カウンターもある

国道に6店舗がひしめく冷麺街道の草分け、「髭」

最後に紹介するのは、盛岡近郊にある一軒。盛岡と秋田を結ぶ国道46号線沿いに看板を掲げる「髭(ひげ)」だ。この街道沿いには冷麺を提供する店が現在6軒もあるが、昭和48年に開店した「髭」は、40年に渡って変わらぬ味を作り続けている。
▲「髭」があるのは、盛岡から秋田へ向かう国道46号線沿いの左手。盛岡市中心部からは車で20分ほど
▲明るく開放的な店内

同店の冷麺は普通盛り(税別750円)のほか、大盛り(税別870円)、小盛り(税別500円)の3種類。辛みキムチはすべて別容器で用意するので、食べたい分だけ調整ができ、小さなお子さんのいる家族連れにもおすすめだ。
▲「髭」の冷麺・普通盛り(税別750円)
▲鮮やかなキムチが食欲をそそる
▲お好みの量の辛みキムチをいれて完成

同店の特徴はというと、国産黒毛和牛の牛スジを7~8時間煮込んだスープ。醤油で仕上げてあり、どこか懐かしい味がする。具材の牛チャーシューは、焼き肉で提供する和牛のブリスケ(肩バラ肉)という部位を使っているそうで、しっかりとした歯ごたえを残しつつ柔らかく旨みがある。
食べた瞬間は柔らかい印象がありながらコシをしっかり残した「髭」の冷麺。麺、スープ、キムチがまろやかに馴染んでおり、「盛岡冷麺」初心者にもおすすめの味だ。
▲同店ではお持ち帰り冷麺もある
今回は3軒を巡ったが、「盛岡冷麺」を提供する店は皆、店主のこだわりが詰まっており、それぞれの美味しさがある。さっぱりと後味がよいので、しばらくするとまた恋しくなる、それが「盛岡冷麺」だ。

コシの強い麺、時間をかけてとったスープの旨み、酸味と辛みのバランスが絶妙なキムチ。基本スタイルは同じでも、具材や味などの細かな違いは、一人ひとりの好みによるので、ぜひ自分の好みの味を探してみよう。盛岡の冷麺はシンプルだけれど、味わいは奥深いのだ。
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。 (編集/株式会社くらしさ)

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