華やかで愛らしく、幸せを呼ぶ香川の「おいり」。スイーツとしても大人気!

2016.08.09

色とりどりのパステルカラーに、ころんとした丸い形が何とも可愛らしい「おいり」は、香川県西部で古くから婚礼の贈り物として親しまれてきた煎り菓子です。全国的に知られるようになった最近では、香川みやげとしても大人気。サクッとした歯ごたえの後に、すっと溶けてなくなる軽い口どけがたまりません。そんなおいりが生まれる店や、おいりスイーツを味わえる場所に行ってきました。

素朴な伝統菓子が、モダンなパッケージで大人気に

まず訪ねたのは、香川県観音寺市で明治初期から暖簾を構える「菓子工房 遊々椿(ゆうゆうつばき)」。
とにかく可愛いのが、白い箱の中に鯛とおいりが顔を覗かせる「白わくおいりと鯛」という品。縁起物の鯛をかたどった餅菓子の中にパットライス(ポン菓子)を入れ、おいりとセットにしたもので、祝い事にもお土産にも人気だそう。鯛を振るとカラカラと音がするのが楽しい!2015年度の香川県産品コンクールでは、菓子部門の最優秀賞である知事賞を受賞しました。
▲「白わくおいりと鯛)」(488円・税込)。とぼけたような鯛の表情も可愛い

そんなおいりの歴史は、戦国時代にまで遡ります。讃岐国丸亀城主・生駒親正(いこまちかまさ)公の姫君のお輿入れを祝おうと、農民が五色のあられを献上したのが始まりで、婚礼の際のおめでたいお菓子として広まりました。

餅米を「煎る」と嫁に「入る」をかけて、おいりと呼ばれるようになり、ころんとした形は、「まるい心でまめまめしく働きます」という花嫁さんの気持ちを表しているとも言われています。

「花嫁さんが挨拶回りで配ったり、近所の子どもたちにあげたり。西讃(せいさん・香川県西部)独特の風習ですね」
こう語るのは、遊々椿の4代目社長。

“嫁入り道具”としての長い歴史をもつおいりですが、社長が数年前に円筒型の透明なパッケージを考案したことで、用途がぐんと広がりました。おいりの彩りが際立つモダンな印象が好評となり、身近なおみやげ品としても人気が高まったのです。
▲パッケージも可愛い「帯デザイン筒入おいり」(各350円・税込)。のし付きのものは、別料金で名入れも可能。昭和40(1965)年頃までは、右の「花籠」と呼ばれる籠と紙袋入りが一般的だったそう

「おめでたいルーツのあるお菓子ということで、開店祝いやアニバーサリーなど、結婚以外の様々なお祝い事にお求めいただけるようになったのもうれしいですね」
こう語る社長は、最初に紹介した「白わくおいりと鯛」の考案者でもあります。おいりの可愛らしさが、全国的にもアピールされていきました。
県外からの注文も増えたことで、「以前はおいり以外に和菓子も作っていましたが、2006年からはおいり1本に絞りました」と社長。現在は、親子三世代で、伝統の味を守り続けています。
▲遊々椿は、観音寺市で一番古い菓子店。三世代それぞれ、おいりへの愛情はひとしお

サクサクの口どけは、丁寧な手仕事から生まれる

「おいりは、パットライス(ポン菓子)のように一気にできると思われがちなのですが、実は時間も手間ひまもすごくかかるんです」と社長。県内には、他にも数軒の製造元がありますが、それぞれのこだわりから少しずつ作り方が違い、味や見た目も変わってくるそう。遊々椿ではサクッとした口どけを大切にしているため、乾燥作業にはとりわけ手をかけているといいます。

おいり作りの現場は企業秘密とのことですが、作業のない日の工房を特別に見せていただきました。製造の工程は、まず餅米をついて平たく伸ばし、1日天日干しにした後5mm弱のさいの目に切り、1週間くらい陰干しして徐々に乾燥させます。「じっくり時間をかけることで、全体を均一に乾かせる。季節や天気によって温度や湿度が変わってきますので、見極めが難しいですね」とのこと。

機械化できない、職人の経験がモノをいう過程を経て、いよいよ煎る作業。四角い餅米のかけらが、1~2分煎るとまん丸に膨らむのです。煎り機を使いますが、球体に仕上げるにはやはり長年の経験と勘が必要なのだとか。
▲煎り機を動かしているところ。「煎り終わって取り出すタイミングの見極めが大事です」

工房には、大きな煎り機と蜜がけ機が並んでいます。煎り終わったら、樽形の蜜がけ機に色のついた蜜とともに入れ、グルグル回転させてコーティング。白、ピンク、赤、黄、水色、緑、紫――彩り豊かな7色を作ったら、乾燥させて出来上がり。

「うちでは、穏やかな色あいを心がけています」との言葉通り、透けるように上品なパステルカラーにうっとり。口に含むと、軽やかに溶けた後にほんのり爽やかな風味が残ります。「ニッキを少し効かせてアクセントにしています」と社長。
後味がさっぱりしているので、いくらでも食べられそうです。

フォーマルな贈り物としては、「紅白箱入りおいりと紅白カラカラ鯛」がおすすめ。箱の中には、たっぷりのおいりと紅白の鯛が入っています。

▲「紅白箱入りおいりと紅白カラカラ鯛」(588円・税込)。ちなみに、おいりの色は白とピンクがメインで、他の色はアクセントとして少しだけ。このバランスが心憎い

なお、「遊々椿」のおいりは、観音寺の工房のほか、高松のサンポート高松内「四国ショップ88」や、栗林公園内「栗林庵」でも扱っているので、西讃まで足を伸ばせなくてもご安心を。

こんぴら参りの後には、おいりソフトでリフレッシュ!

そのまま頬張っても美味しいおいりですが、ぜひ一度味わってほしいのが、ソフトクリームとのマッチング。“こんぴらさん”の名で親しまれている、琴平町の金刀比羅宮の門前町に、参拝者に大人気のお店があります。
▲御本宮まで785段もの階段でも名高い、こんぴらさんの門前町。お参りの後は、やっぱり冷たいもので癒されたい!

「ナカノヤ琴平」は、大正3(1914)年創業の老舗土産物店。観光客がうどん作りを体験できる「中野うどん学校」も主宰するなど、“オンリーワン”の精神を大切にするお店です。

2008年に誕生した「嫁入りおいりソフト」(350円・税込)も、そんな精神を体現したメニュー。おいりをたくさんの人に知ってほしい、参拝後のお客さんに笑顔になってほしい、という思いから生まれました。香川県でおいりソフトを食べられる店はいくつかありますが、ここが元祖です。
▲お店の入口にあるソフトクリーム売場。店内にはセルフサービスのお茶コーナー(無料)もある

嫁入りおいりソフトは、ソフトクリームにおいりをトッピングしたもの。フレーバーは、焼き芋と香川特産の和三盆の2種類です。口コミで徐々に評判が広がり、今では「休日などには1,000個以上売れることもありますね。老若男女を問わず、真冬でも人気です」。こう語るスタッフの羽藤(はとう)裕子さんが、さっそく和三盆のおいりソフトを作ってくれました。
▲ソフトクリームの上から、コップですくったおいりを大胆にかけてくれる

カラフルなおいりがふんだんに散りばめられた出来上がりは、とってもキュート。ソフトクリームが淡いベージュ色なのは、和三盆の糖蜜が使われているからだそう。
▲馴れた手つきであっという間に作ってくれた羽藤さん。「女性のお客様は、ほぼ皆「カワイイ!」と歓声を上げて写真をお撮りになりますね(笑)」

おいりがこぼれないよう気をつけながら、ひとくちパクリ。これは…素晴らしい組み合わせです!サクッと軽やかなおいりが、口の中で冷たいソフトクリームとともにシュワッと溶けていくのは、未知の食感。あっさりした甘みが、コクのある和三盆の風味を引き立てます。

この組み合わせに開眼し、家でカップアイスにトッピングしてみましたが、やはり柔らかなソフトクリームとのマッチングがベストだと実感。こんぴら参りの際には、ぜひ味わってみてください。
▲和三盆フレーバーの嫁入りおいりソフト。近隣にある姉妹店「四国の旬」では、香川らしい「希少糖ミルク」と「しょうゆ」のフレーバーもある

おいりパフェの華やかさと迫力に、目が釘付け

ソフトクリームとの組み合わせがあまりに目からウロコだったので、ほかにもおいりを使ったスイーツはないかと探したら……ありました!その名も「瀬戸の花嫁パフェ」。高松市内の「カフェ 瀬し香 レインボー店」で味わうことができます。
▲シンプルな外観。扉の奥には、高い天井のゆったりした空間が広がる

住宅地に佇む建物の扉を開けると、倉庫のように高い天井と、味わい深いビンテージ家具に迎えられます。

メニューを開くと、「屋島」「琴平」「善通寺」など、香川の地名がずらり。メニュー名だけでなく、郷土料理の押抜き寿司のアレンジや、特産品のしょうゆ豆を使ったどら焼き、そしておいりを使ったパフェといった具合に、料理そのものにも讃岐のエッセンスが散りばめられています。

「地元の人が、県外のお客さんを連れてきたくなるといいなと思って」と語るのは、店長の深水隆司(ふかみずたかし)さん。食材もなるべく地元のものを使っているといいます。
▲倉庫を思わせる広々した店内。年月を経た家具や、随所に置かれた本がくつろぎのひとときを誘う

パフェは「瀬し香」の看板メニューのひとつだけあって、かなりユニーク。中でも、今回のお目当て「瀬戸の花嫁パフェ」は、運ばれてきたときに店内のお客さんの誰もが振り向くほどのインパクト。すごいボリュームです!大ぶりのグラスが、溢れんばかりのフルーツとおいりで彩られているのですから。
▲華やかさにテンションが上がる「瀬戸の花嫁パフェ」(933円・税込)。右横に添えられているのは、おいりに同封されていることが多い小判型の餅菓子

さらにユニークなのが、パフェの下の部分がドリンクになっていること。「瀬し香」のパフェはすべてこのスタイルで、ドリンクはカフェラテ、ミルクティー、コーラの中からチョイスすることができます。今回はミルクティーをオーダーしました。

食べきれるか不安になりますが、やはりおいりとアイスクリームの組み合わせは鉄板!生クリームやフルーツとも好相性で、下のミルクティーも甘さ控えめでさっぱりしていたため、ぺろりと平らげることができました。
深水さんによると、食時の後に続けて注文する女性のお客さんも少なくないとのこと。デザートは別腹とはいえ、おいりパフェの威力、恐るべし!

また、こちらにはおいりを使ったパフェのほか、フォンダンショコラや和風白玉抹茶など、パフェは全部で5種類あります。どれもおすすめですが、やはりおいりパフェのインパクトはピカイチです。
素朴さゆえに、他の甘味との相乗効果も抜群のおいり。香川みやげの新定番としてだけではなく、ぜひ“おいりスイーツ”の美味しさを、現地で味わってみてください。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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