室戸ユネスコ世界ジオパークで、太古からの地殻変動を目の当たりにする大スケールの感動体験

2016.08.14

日本で8箇所、また四国では唯一の「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている、高知県室戸市の「室戸ジオパーク」(2016年8月1日現在)。ちょっと聞き慣れない「ジオパーク」の魅力をガイドさんが分かりやすく解説してくれるツアーが人気だ。さっそくツアーに参加して、室戸の自然と「地球」の凄さをたっぷり体感してみよう。

▲室戸岬の先端近くにある「タービダイト層」と呼ばれる岩

「ジオパーク」ってどんなもの?

「ジオパーク」とは、世界的に貴重な地質遺産を地元の人たちが大切に守り、継続的に教育や観光に活かしている地域のこと。日本では39の地域がジオパークとして認定されており、さらにそのうち世界的に価値の高い地域が「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている。室戸はその「ユネスコ世界ジオパーク」のうちのひとつで、国内では他に洞爺湖有珠山(とうやこうすざん)、糸魚川(いといがわ)、山陰海岸、島原半島、隠岐(おき)、阿蘇、アポイ岳の合計8地域がある。
▲山陰海岸ジオパークの「鴨ヶ磯」

室戸市全域に広がる室戸ジオパークは、大地が隆起するダイナミックな地殻変動の様子を間近に観察できる場所であり、そこで人々が長年生活を営んできた歴史や文化が高く評価されている。

ジオパークの見どころのことを「ジオサイト」と呼ぶが、室戸ジオパークには、地震などによる土地の隆起が見られる「室戸岬サイト(隆起ゾーン)」、海底の地層が地上に現れた「行当-黒見海岸サイト(深海ゾーン)」、古い町並みを残す「吉良川まちなみサイト(文化遺産ゾーン)」などのジオサイトがある。

世界が注目する地質遺産に、
気軽に見て触れて体感できるツアー

そんな室戸ユネスコ世界ジオパークの魅力を知るには、ガイドツアーへの参加がおすすめ!ツアーには、歴史的建造物の町並みを巡る「吉良川(きらがわ)まちなみツアー」、巨木の森を歩く「段ノ谷山ツアー」などのプログラムも用意されている。
▲「室戸市観光協会案内所」がツアーの集合場所になることが多い

今回参加するのは、ジオパークの象徴とも言える室戸岬サイトを歩く「室戸岬ツアー」だ。

室戸岬サイトにはさらに「深海ゾーン」「亜熱帯植物ゾーン」「大地の誕生ゾーン」「火山ゾーン」の4つのゾーンがあり、全てのゾーンをガイドさんと共に歩くとたっぷり2時間ほどかかる。今回は室戸岬サイトの醍醐味を一時間ほどで巡れる「深海ゾーン」をお願いすることにした。
▲案内板で周辺の概要を説明してくれるガイドの山村恵美さん。生まれも育ちも室戸市で、ガイドを始めて5年目になる

集合場所の室戸市観光協会案内所をスタートして、すぐのところにあるのが幕末の志士で坂本龍馬の盟友でもある中岡慎太郎の像。高知市桂浜に立つ坂本龍馬の銅像と同じ作者による作品だ。龍馬像がどこか柔和な表情に対して、キリッとりりしい表情で太平洋を見つめるのが慎太郎像の特徴。
▲慎太郎像も印象的ながら、ジオパーク視点では足場を固める巨岩に注目!

実は慎太郎像が設置されている台座には室戸岬周辺で採れた「斑レイ岩(はんれいがん)」が使用されている。斑レイ岩は地下深くで冷えて固まったマグマの岩。この岩が地表にあるということは、つまり地震による隆起や雨風による浸食があったことを物語っている。

続いて慎太郎像の背後にある階段を登ること数分。室戸岬の先端と太平洋を望む展望台にたどり着く。岬先端のゴツゴツした岩の先にはどこまでも続く太平洋が広がる。
▲展望台から見る室戸岬先端。中央左の岩が海に消えて無くなるところが先端。右手前には慎太郎像の背中が見える

一見すると単なる広い海の風景だが「先端から東の海底には沖合2~3kmの場所に1,000mまで落ち込む崖があります。一方、西の海底は沖合7kmほどまで100mより浅い海が続きます」という山村さんの解説を聞けば、海の表情も少し違って見えてくる。

東側の急激な海底の落ち込みは、室戸海洋深層水や深海魚キンメダイなど、室戸ならではの特産品を生み出す要因にもなっている。

展望台から降りて、岬周辺の遊歩道へ向かう。遊歩道はコンクリートで固められて歩きやすいものの、コース上には磯歩きもあるので、歩きやすく滑りにくい靴をチョイスしておきたい。
▲曲がりくねった幹が特徴的なウバメガシの森の中に遊歩道が延びている

遊歩道を覆う高さ2~3mの常緑樹は、備長炭の原料にもなるウバメガシ。本来ならまっすぐ幹が伸びるのだが、岬周辺は風が強いため、ぐにゃっと曲がってしまっている。ちなみに室戸市には40ほどの備長炭を製造する窯があり、「土佐備長炭」として都市部の料亭などで重宝されている。
▲紫色の花を咲かせる「ノアサガオ」。夕方になると花を閉じ、花びらがピンク色に変化するように見える

遊歩道周辺には季節折々の花々が咲き、目を楽しませてくれる。「4~5月にかけてはトベラ、シャリンバイ、11~12月はシオギクなど、やっぱり春と秋が見頃ですね」と山村さん。
▲中央にあるのが通称「空海岩」と呼ばれる奇岩。人の横顔のように見える!?

ウバメガシの森を抜け山村さんが指さす岩を見ると、なにやらそれが人の横顔のように見える。「ガイド仲間のあいだでは『空海岩』と呼んでいるのです」。
ちなみにその昔、空海が室戸岬周辺で修行をしたという言い伝えも残っている。
▲縞模様が印象的なタービダイト層は室戸岬サイトの象徴的存在

室戸岬周辺では現在でも平均すると1000年に1~2m隆起し続けている。それを証明しているのが「タービダイト層」といわれる岩だ。この縞模様の岩は約1600万年前の深海に砂と泥が交互に重なってできた。

海底が徐々に隆起し、地上に露出したのが現在の状態だ。単に露出しているだけでなく、ねじれて垂直に立った状態になっているという説明を聞けば、その変動のパワーに驚かずにはいられない。
▲「タービダイト層」の成り立ちを、手書きイラストで解説してくれる山村さん

この岩の周辺には、深海の小動物が通った跡が化石になった「生痕(せいこん)化石」なども観察できる。パッと見ればただの模様のように見えるが、改めてガイドさんの説明を聞いて観察すれば、それが地球からのメッセージのように思えてくるから不思議だ。
▲湾曲した岩も地殻変動によるもの。右奥に見えるのは室戸岬灯台

これらの化石や地層は手で触れてもいいし、岩の上から太平洋を眺めることもできる。このように太古の地殻変動を間近に見て触れることができる場所は珍しく、世界的にも注目されているゆえんなのだ。
▲遊歩道沿いにあるアコウの巨木。岩を抱くように根を伸ばす亜熱帯性の植物
▲波打ち際にも独特の岩肌が見られる
▲大型スクリーンやプロジェクションマッピングで、ジオパークをわかりやすく紹介している「室戸世界ジオパークセンター」。産直品の販売やカフェなども併設している

太平洋の荒々しい波音を聞きながら巡った約1時間のツアー。単なる地質や地形の見学だけでなく、磯遊びの要素もあり変化に富んで楽しめる。時間があるなら事前に受付を兼ねている「室戸世界ジオパークセンター」に足を運べば、さらに室戸ジオパークの魅力を知ることができるだろう。
藤川満

藤川満

清流・仁淀川流れる高知県いの町在住。出版社勤務を経て「撮って書く」フォトライターに。カヌーやトレッキングなど自然と親しむ一方で、利酒師の資格を有する日本酒党。またジャズライブの撮影はライフワークのひとつ。

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