「最上川三難所そば街道」で山形の板蕎麦を食す!第一弾「手打蕎麦 おんどり」

2016.06.25 更新

山形を代表する食べ物というと「さくらんぼ」「米沢牛」「芋煮汁」などが知られるところですが、忘れてはならないのが「蕎麦」。県内各地に美味しい蕎麦店が存在し、どの店に入っても「ハズレはない」と言われるほど。休日ともなると、お目当ての店を探して県内外から大勢の蕎麦ファンが訪れます。挽き立て、打ち立て、茹で立ての「三立て」にとことんこだわった山形の板蕎麦の美味しさのヒミツを探ろうと、「最上川三難所そば街道」を訪ねました。

▲「手打蕎麦 おんどり」の「合盛り板そば」

全国で初めて誕生した「そば街道」

「最上川三難所そば街道」は、山形市から北に車で約1時間の村山市にあります。
この辺りは農家が多く、昔から田植えや稲刈りなどの農作業をした後、労をねぎらうために大きな長い板や木箱に蕎麦を盛り付けてふるまう風習がありました。それが「板蕎麦」の由来です。水分の吸収が蕎麦に適している木の板等を利用したのは先人たちの知恵。「蕎麦を打つ」ことは特別なことではなく、どの家でも作って食べる家庭料理でもあったのです。

そうした伝統を受け継ぎ、地元の板蕎麦を多くの人に食べてもらおうと、1994年には最上川の流れに沿って蕎麦店が点在する15kmの道のりを「最上川三難所そば街道」と名付け、市を挙げての取り組みが始まりました。
▲道路脇に立っている「そば街道」の案内板を目印に

「最上川三難所」の名は江戸時代まで物資の流通や交通手段として利用されていた最上川の中流にある碁点(ごてん)、隼(はやぶさ)、三ヶ瀬(みかのせ)の3つの地点に由来します。この辺りは特に流れが急で通過するのが困難だったため、船頭たちに恐れられていた地でした。
▲現在は流れも穏やかで、昔の様子を窺い知ることはできません(写真は碁点付近)

蕎麦の味とこだわりは店それぞれ

「最上川三難所そば街道振興会」に加盟しているのは12の蕎麦店と、そば打ち体験ができる「農村伝承の家」とを合わせて13店。そば街道の蕎麦店には、街道の北部から順番に番号が付けられ、「手打ちそばを提供する」「地元産そば粉を80%以上使う」「こだわりのある地域の水を使用する」「おもてなしの心を大切にする」等、質の高いサービスを提供していくための共通した基準があります。

そうした基準を守りつつ、それぞれの店に作り手のこだわりと個性があるのです。
その中で、今回第一弾としてご紹介するのは2番店「手打蕎麦 おんどり」。

自然の恵みが美味しい蕎麦を作る「手打蕎麦 おんどり」

「手打蕎麦 おんどり」は村山市の市街地から車で20分程山間に入った「山の内」地区にあります。過疎化が進み、現在、この集落に残っているのは16軒だけ。

この辺りは、冬になると3m近く雪が積もります。その自然の厳しさは、春になると豊富な雪解け水や澄み切った空気、美味しい山菜などの恵みをプレゼントしてくれるのです。
▲正面に見える山が「葉山」。雄大なロケーションに癒されます

「手打蕎麦 おんどり」は、休日ともなると県内外の蕎麦ファンが途切れなく訪れる人気店。では、さっそくお店に入ってみることにしましょう。
▲お店は地域のシンボル的存在

地域を守るために一念発起!脱サラして蕎麦職人へ

▲蕎麦屋なのに「山の内物産館」という看板が?!

ご主人の佐藤和幸(かずゆき)さんは山の内地区で生まれ育った地元っ子。入口にあった「山の内物産館」について尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「25年程前、当時すでに過疎化が進んでいて地元を離れる若者が多くいました。そこで、村に若者を定住させるためにみんなが集まれる場所をつくろうと、行政の支援を受けてこの建物を造ったんです。そのうち、自分たちが楽しむだけでなく、地区外の人たちにも来てもらえるような仕掛けができないかという話になって…。小さい時から、婆ちゃんたちが蕎麦を打つ姿を見ていたこともあって“蕎麦屋をしよう”ということになり、“自分がする”と手を挙げたんです」

このことがきっかけとなり、佐藤さんは会社を辞め一念発起。蕎麦職人の道に入ります。そして、1996年、地域の人たちが集う場所を兼ねた「手打蕎麦 おんどり」がオープンしたのです。
▲現在、「最上川三難所そば街道振興会」の会長でもある佐藤和幸さん

以前、集落には村のシンボルとも言える大きな鳥居があったことから、この辺りは「大鳥居」という地名で親しまれていました。人々はその「おおとりい」を「おんどり」と呼んでいたことから、佐藤さんは店名を「手打蕎麦 おんどり」と名付けたそう。

自分の尺度にあったそば作りのため、“自家製”にこだわり続ける

お店の売りは、全て自家製だということ。佐藤さん自らが種を蒔き、育てているのは山形県産の蕎麦「でわかおり」。実が大きく、香りが良く、なめらかな食味が特徴の山形県独自のもの。 品種の良さに加え、山の内地区は標高が高く昼夜の寒暖の差が大きいため、蕎麦を育てるには最も適した土地柄なのです。
▲そばの花が満開のそば畑。土を耕すところから蕎麦づくりは始まります

ここでは「挽きぐるみ」の黒めで太打ちの蕎麦と、「丸抜き」の白めで細打ちの蕎麦の二種類を味わうことができます。「挽きぐるみ」というのは蕎麦の実をまるごと挽いたもの、「丸抜き」は外皮を取り除いた実を挽いたものを言います。
▲こねるのは2尺2寸(66cm)のこね鉢で

遠い昔から、山の内地区では標高1,462mの葉山から流れ出る水の恩恵を受け、生活してきました。今も住民たちは「葉山のブナ清水」と呼び、生活用水として大切に使い、「手打蕎麦 おんどり」でも蕎麦作りに利用しています。
▲信仰の山「葉山」から流れ来る自然の水

自家製粉のそば粉に水を回し、一つのかたまりにまとめるように練っていきます。体重をかけてゆっくりと押し出すように練っていく佐藤さん。
▲粉と水が均等に馴染むように練っていきます
▲両手を重ねて空気を抜くように
▲「蕎麦の教本作るみたいだね」と笑いながら、こちらの注文に応じてくれる佐藤さん

生地を打ち台に置いて打ち粉をして、押しつぶしながら平たく、丸くのしていきます。
生地を回転させながら手のひらで中心から外側に向かって押し出すように伸ばしたら、次はのし棒を使い、均等に力をかけ、少しずつ回転させながら大きな円を作っていきます。
▲あっという間に大きな円に

力加減や生地の厚さは職人の勘と経験で。丸くのした生地は、のし棒に生地を巻き付け、真ん中の部分に手のひらをあて、力を加えて転がしながら均等の厚さになるように四角くのしていきます。
▲のし棒を操り、あっという間に均等な厚さに仕上げていく様子は職人技
▲のした生地を切るためにたたんでいきます
▲まっすぐ包丁をおろし、均等の厚さに切っていきます
▲何回切ったかで1人分の量を計算。太打ち蕎麦の完成!

たっぷりのお湯にそっと蕎麦を入れ、かき混ぜずに茹でていきます。
▲茹でる作業は時間との勝負

茹で上がった蕎麦は、葉山からの流水で熱とぬめりを取っていきます。湧き水の冷たさによって蕎麦が締まり、強いコシが生まれるのです。
▲ふわっと浮いてきた蕎麦をざるですくい、冷たい流水にパパッとすばやく浸して

そば粉10・つなぎ1の外一そばを召し上がれ!

▲「合盛り板そば」850円(税込)

さっそく、「合盛り板そば」をいただくことに。 太打ち蕎麦と細打ちの蕎麦の2種類が味わえて2倍の楽しみがあります。なんだかすごく得した気分!

この店の蕎麦は豊かな風味とコシの強さが特徴の、そば粉10・つなぎ1の外一(といち)蕎麦です。まずは太打ちからいただきます!
▲太打ちは4mmくらいの太さ
▲見た目にも角がキリリと立って美味しそう

蕎麦をそばつゆに軽く付けてずるずるっとすすると、口の中にシャキッとした清涼感が漂います。蕎麦はコシが強く、なめらか。喉越しも良く、蕎麦の甘さと香りが口に広がります。

一方、白めの細打ちは「田舎蕎麦はちょっと苦手…」という方にも超オススメ。一本一本に透明感があり、細いので食べやすく、喉越しも柔らか。何度も食べたくなる美味しさです。

合盛りではなく一種類をしっかりと味わいたい方には、「太打ち田舎板そば」800円(税込)、「細打ち板そば」800円(税込)をどうぞ。

そばつゆは選び抜いた醤油で作った「返し」に、葉山の自然な水と厚削りのかつお節、昆布を使って作った出汁を加えたもの。まろやかで、コクのあるそばつゆです。
▲突き出しはふきの煮物とこごみのごま和え。季節によって内容が変わります
▲こごみもビッグ!
▲遠くに葉山を眺めながら最高のロケーションの中でゆっくりと蕎麦を楽しんで

「蕎麦栽培に適した条件が全部そろっている場所に生まれ育ち、ここに店を構えていられることに感謝しながら、毎日蕎麦を打っています」と佐藤さん。

自然の恩恵をたっぷり受け、素材の良さを引き出しながら、どこまでも美味しい蕎麦を追及する「手打蕎麦 おんどり」。必ずリピートしたくなるオススメの店です。
撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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