高台寺 天下人・秀吉の妻が静かに眠る禅寺を歩く
東山の山麓に佇む高台寺は、天下人豊臣秀吉の正室である北政所(きたのまんどころ)が夫の菩提を弔うために開創したお寺です。往時を偲ばせる遺構を眺め、その歴史と北政所の思いに触れながら歩いてみました。

桃山時代の壮麗な建築や
見事な庭園を愛で歩く
その後、寛永元年(1624年)に建仁寺の三江紹益(さんこうじょうえき)和尚を迎えて開山、高台寺と号するようになりました。
当時の政治的な配慮から、為政者である徳川家康は寺の造営に対し多大な援助を行ったため、開創時の様子は壮麗を極めたと言われています。
その後、たびたびの火災に見舞われ多くの建築が焼失しました。現在は開山堂、霊屋(おたまや)、傘亭、時雨亭、表門、観月台などが、当時のままの姿を今に伝えています。


明治時代に高台寺の敷地に移築され現在に至ります。通常は非公開ですが、お茶会が開かれる特別な日もあるそうです。

ここから見るお庭は「波心庭(はしんてい)」と呼ばれ、美しい砂の文様が刻まれています。キラキラと輝く石と波打つデザインは、元来太陽や月の明かりを反射する「明りとり」の役割もあったそうです。
ライトアップやプロジェクションマッピング、現代アートの展示など、様々なイベントも行われています。


偃月池の上には、秀吉とねねが二人で月を見たと伝わる「観月台」が伏見城から移築され配されています。
こちらは国の重要文化財に指定されています。


開山堂の格子天井は、秀吉が使った御座船の天井が、また彩色天井にはねねの御所車の遺材が用いられています。


開山堂から臥龍池を通り、霊屋(おたまや)へと続く臥龍廊。階段の傾斜にそって建てたられた屋根の瓦が龍の背に似ていることから名づけられたそうです。

霊屋に安置されているのは、厨子に向かって右に秀吉、左に北政所の木像。晩年をこの地で暮らした北政所が霊屋の下に安らかに眠っています。
秀吉とねねは、当時の世相では珍しい恋愛結婚で、周囲の反対を押し切って夫婦になったといわれています。
戦の際に、秀吉がねねのことを案じて贈った手紙が残るなど、二人の絆はしっかりと結ばれていました。夫が愛した京の町が一望できるこの地を弔いの地に選んだことからも、秀吉への愛の深さが感じられます。

厨子の扉や須弥壇(しゅみだん=本尊を安置する場所)に施された装飾は、見るものの目を奪う美しさです。「高台寺蒔絵」と呼ばれるこの装飾は、桃山時代の漆工芸美術の粋を集めた華麗なもので、同様の技法で作られたものや類似の意匠も含めて総称されるようになりました。
こちらの霊屋も、国の重要文化財に指定されています。

霊屋から東山側へ登ると、向かい合う二つの茶室が見えてきます。ひとつは「傘亭」、もうひとつは「時雨亭」で、いずれも伏見から移築された、千利休の意匠による茶室です。秀吉が愛したであろう茶室をわざわざ移築したことも、二人の絆の深さを感じるエピソードです。

傘亭は、竹が放射状に組まれた屋根の骨組みが唐傘を開けたように見えることから名づけられたそうです。また時雨亭は、傘亭に対しての雨という由来と、秀吉が時雨のように突然訪れた、ということから名づけられたという説があるそうです。いずれも、国の重要文化財に指定されています。

高台寺
京都府京都市東山区高台寺下河原町526
[拝観時間]9:00~17:30(受付終了17:00まで)
[拝観料金]大人600円、中高生250円、小学生以下無料(父兄同伴のみ拝観可)
075-561-9966

妙加谷 修久
京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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