高台寺 天下人・秀吉の妻が静かに眠る禅寺を歩く

2016.06.27

東山の山麓に佇む高台寺は、天下人豊臣秀吉の正室である北政所(きたのまんどころ)が夫の菩提を弔うために開創したお寺です。往時を偲ばせる遺構を眺め、その歴史と北政所の思いに触れながら歩いてみました。

桃山時代の壮麗な建築や
見事な庭園を愛で歩く

高台寺は、慶長11年(1606年)秀吉の没後に北政所、通称ねね(おね、ねいとも言う)が出家し開創しました。
その後、寛永元年(1624年)に建仁寺の三江紹益(さんこうじょうえき)和尚を迎えて開山、高台寺と号するようになりました。

当時の政治的な配慮から、為政者である徳川家康は寺の造営に対し多大な援助を行ったため、開創時の様子は壮麗を極めたと言われています。

その後、たびたびの火災に見舞われ多くの建築が焼失しました。現在は開山堂、霊屋(おたまや)、傘亭、時雨亭、表門、観月台などが、当時のままの姿を今に伝えています。
境内を順路にそって進むと、苔むす庭園と石畳の道が現れます。この日は、雨上がりの陽射しに輝く新緑の緑と、しずくに濡れた苔のコントラストが見事でした。
苔むす道の先に現れたのは「遺芳庵(いほうあん)」という茶室です。京都の豪商にして文化人として知られた灰屋紹益(はいやじょうえき)が、妻に娶った島原の芸妓吉野太夫を偲んで建てたと言われています。

明治時代に高台寺の敷地に移築され現在に至ります。通常は非公開ですが、お茶会が開かれる特別な日もあるそうです。
続いて、お寺の本堂でもある「方丈」へ。
ここから見るお庭は「波心庭(はしんてい)」と呼ばれ、美しい砂の文様が刻まれています。キラキラと輝く石と波打つデザインは、元来太陽や月の明かりを反射する「明りとり」の役割もあったそうです。

ライトアップやプロジェクションマッピング、現代アートの展示など、様々なイベントも行われています。
▲新緑に変わった枝垂れ桜(右)。早咲きの桜として知られ、桜の時期には多くの見物客が訪れます
開山堂の左右に配された「臥龍池(がりょうち)」・「偃月池(えんげつち)」は、東山の借景とともに見事な庭園を成しています。
偃月池の上には、秀吉とねねが二人で月を見たと伝わる「観月台」が伏見城から移築され配されています。
こちらは国の重要文化財に指定されています。
こちらの開山堂は、高台寺開山の祖、三江紹益和尚を祀る塔所です。壇上向かって右には、ねねの兄である木下家定やその妻雲照院(うんしょういん)の像が、左には高台寺の建立に尽力した堀監物直政(ほりけんもつなおさだ)の像が安置されています。
▲重要文化財となっている開山堂(写真提供:高台寺)

開山堂の格子天井は、秀吉が使った御座船の天井が、また彩色天井にはねねの御所車の遺材が用いられています。
▲天井に描かれた龍図。特別な日以外は非公開(写真提供:高台寺)
▲臥龍廊(がりょうろう/写真提供:高台寺)

開山堂から臥龍池を通り、霊屋(おたまや)へと続く臥龍廊。階段の傾斜にそって建てたられた屋根の瓦が龍の背に似ていることから名づけられたそうです。
▲臥龍廊の先にある霊屋の内部(写真提供:高台寺)

霊屋に安置されているのは、厨子に向かって右に秀吉、左に北政所の木像。晩年をこの地で暮らした北政所が霊屋の下に安らかに眠っています。

秀吉とねねは、当時の世相では珍しい恋愛結婚で、周囲の反対を押し切って夫婦になったといわれています。
戦の際に、秀吉がねねのことを案じて贈った手紙が残るなど、二人の絆はしっかりと結ばれていました。夫が愛した京の町が一望できるこの地を弔いの地に選んだことからも、秀吉への愛の深さが感じられます。
▲見事な蒔絵が施された厨子(写真提供:高台寺)

厨子の扉や須弥壇(しゅみだん=本尊を安置する場所)に施された装飾は、見るものの目を奪う美しさです。「高台寺蒔絵」と呼ばれるこの装飾は、桃山時代の漆工芸美術の粋を集めた華麗なもので、同様の技法で作られたものや類似の意匠も含めて総称されるようになりました。

こちらの霊屋も、国の重要文化財に指定されています。
▲傘亭

霊屋から東山側へ登ると、向かい合う二つの茶室が見えてきます。ひとつは「傘亭」、もうひとつは「時雨亭」で、いずれも伏見から移築された、千利休の意匠による茶室です。秀吉が愛したであろう茶室をわざわざ移築したことも、二人の絆の深さを感じるエピソードです。
▲時雨亭

傘亭は、竹が放射状に組まれた屋根の骨組みが唐傘を開けたように見えることから名づけられたそうです。また時雨亭は、傘亭に対しての雨という由来と、秀吉が時雨のように突然訪れた、ということから名づけられたという説があるそうです。いずれも、国の重要文化財に指定されています。
いかがでしたか?ぐるりと一周歩いて回って約30分~40分ほど。壮麗な建築や装飾、四季を映す美しい庭園を眺めながら、秀吉や北政所が生きていた時代に思いを馳せて歩いてみては。
妙加谷修久

妙加谷修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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