最後の清流・四万十川の「沈下橋」を眺める、渡る、くぐる、巡る旅

2016.06.30 更新

四万十川には「沈下橋(ちんかばし)」と呼ばれる、低い橋脚で欄干がない橋が数多く存在している。その姿は自然ととけこみ、四万十川らしい景観を作っている。それぞれの橋の個性も楽しみながら、いくつかの沈下橋を巡ってみよう。遊覧船やカヌーツアーを利用するとさらに思い出深い旅ができるはず!

もはや言い古された高知県の「最後の清流・四万十川」。地元の人間にとってはこの清流が「普通の川」なのだが、コンクリートで護岸された川を見慣れた都会の人にとっては、やはりその美しさは驚きの対象になるのだろう。

そんな清流・四万十川に架かる「沈下橋」は、支流を含めると47本あると言われている。増水時には水の中に沈み、水が引けば再び橋として利用できる沈下橋。増水時の水の抵抗を少なくするために欄干がない。構造も簡単で工事費も抑えられるとして、昭和30年代に数多く建設された。

日本各地の川に同じ構造の橋は存在するものの、その川の美しさと、周囲に人工構造物のない中にあるという点で、やはり四万十川のそれは絵になる。もはや沈下橋は清流の象徴として、この川にはなくてはならない存在なのだ。

初めての四万十川観光には観光遊覧船がおすすめ

▲「三里(みさと)沈下橋」ですれ違う「四万十の碧(あお)」の遊覧船

もし初めて四万十川を訪れて、気軽にその醍醐味を味わいたいなら、観光遊覧船を利用するのがおすすめだ。数多くの業者が存在し、発着地も様々なので、各社のホームページを確認し、旅のプランと相談した上で利用するのが良いだろう。

今回は2本の沈下橋を巡ることができるのが売りの「四万十の碧」を選んだ。しかも午前9時から夕方4時まで1時間ごとに定期便「ふらっと堪能コース」を運行しているので、プランも立てやすく、まさにふらりと足を運んで利用できる。事前に予約すれば、船内で川の幸満載の食事も楽しめる。

観光遊覧船は、清流を五感で感じる贅沢な船遊び

▲三里沈下橋をくぐる観光遊覧船

「四万十の碧」の遊覧船は小型の14人乗りから大型の62人乗りまで、大小様々なタイプが揃っている。定期便は基本的には14人乗りのコンパクトなタイプ。乗りあわせた他の乗客とも自然と仲間になったような気分になる大きさだ。

同社の船着き場から下流に向けて出発すると、すぐ先に見えてくるのが三里沈下橋。昭和38(1963)年建設、全長145.8m、幅員3.3m。下流から2番目に架かる沈下橋だ。
▲出港直後に見える三里沈下橋。風もなく川面は鏡のような穏やかさを見せている

「この周辺の四万十川の傾斜は1kmで1m下がる程度。ゆったりと流れています」と解説をしてくれるのは船頭の佐竹正道さん。船着き場周辺は5月中旬から6月上旬にかけてホタルの乱舞も観察できるそうだ。予約すればホタルのナイトクルージングも対応してくれる。
▲観光ガイドブックには載っていない地元ネタを披露しながら操舵する、船頭の佐竹さん

「清流・四万十川といえば、無色透明なイメージが強いかもしれませんが、暖かい季節は意外にも濃い緑色をしていることが多いんですよ。その一方で寒い季節になると透明度が増し、5~6m下の川底が見えることもありますよ」という佐竹さんの説明に、身を乗り出して川を覗き込む乗客も(笑)。場所や時間、気象条件によって川の状態は異なるので、足を運ぶ度に四万十川の様々な表情を楽しむことができるだろう。

せっかくなので四万十川の風景を楽しみながら、川の幸も味わいたい。今回オーダーしておいたのは手軽なお弁当メニューのなかでも一番人気の「碧特製弁当」。アユの塩焼き、ウナギの蒲焼き、川エビの唐揚げ、川ノリの佃煮など、四万十の川の恵みをふんだんに取り入れた内容になっている。
▲碧特製弁当(1,620円・税込)。前日までの予約必須

ふっくらとした焼き加減のアユの塩焼きは、上品な身の味わいとほろ苦いワタのバランスが絶妙。他の料理も川面を流れる風を感じながら味わえば、さらに美味しさは倍増する。ちなみに「貸切りで堪能コース」なら、弁当だけでなくコース料理も味わえ、さらに贅沢な気分を楽しむことができる。

出航してからおよそ20分。折り返し地点となる「佐田沈下橋」が見えてくる。この橋は四万十川で最も下流に位置し、全長291.6mと同川最長の沈下橋。四万十市中心部からも比較的近く、ドラマのロケ地にもなったことから、最も多くの観光客が足を運ぶ場所でもある。タイミングによっては橋の上から手を振る観光客の姿を見ることもあるだろう。
▲風によってさざ波のような川面に変化した四万十川。奥に見えるのが佐田沈下橋
▲デッキに出て直接風を感じながら写真撮影するのも気持ちが良い。ただし転倒には十分注意しよう

佐田沈下橋手前200mほどでUターンして、再び三里沈下橋をくぐり船着き場に到着した遊覧船。途中、船のエンジン音が低くなれば、船が水を切って進む音と野鳥の鳴き声が、耳に心地よく響き渡る。約1時間のクルージングで、四万十川の魅力を効率よく存分に楽しめた。

レンタサイクルや自動車で沈下橋巡りも楽しい

四万十川に架かる沈下橋は、レンタサイクルや自動車で巡ることもできる。特にレンタサイクルは「四万十川りんりんサイクル」というサービスがあり、四万十川沿いの7つのターミナルでレンタル&乗り捨てが可能だ。
▲最も下流に架かる「佐田沈下橋」。観光客と車の通行も多い

佐田沈下橋は青い橋脚が特徴。水深は浅く、透明度も高い。場所によっては流れが速く、橋の上を歩けばそのスピード感を感じることができるだろう。
▲まっすぐ対岸に延びる「佐田沈下橋」
▲時に連続して自動車が通行することもある

自動車で走る場合のポイントは、橋の上では基本的にすれ違えないので、進入時に対岸から来る対向車に注意すること。先に進入した方が優先だ。また自動車も自転車も進行方向の手前ばかりに気を取られず、少し遠くの目標に視線を向け、ゆっくり進むのがコツ。もちろん歩行者にも注意しよう。

徒歩や自転車なら橋の上で爽やかな風をたっぷり受けることができる。とはいえよそ見すれば転落するかもというスリルもあり、ちょっぴり緊張感を持って渡ろう。
▲三本の橋脚が特徴の「勝間沈下橋」。夏には橋の上から飛び込む子どもたちもいる。映画のロケ地にもなった

佐田沈下橋から上流に遡り、ホタルの観察スポットでもある「高瀬沈下橋」→静かな環境に架かる「三里沈下橋」→広い河原で川遊びの利用客も多い「勝間沈下橋」→コンクリートの橋脚が個性的な「口屋内(くちやない)沈下橋」と続き、次に現れるのが「岩間沈下橋」だ。
▲展望スペースから眺める「岩間沈下橋」

四万十川が大きく蛇行する地点にかかり、見る角度によっては全く人工構造物が入らないことから、コマーシャルやポスターにも頻繁に登場する。撮影スポットとして外せない、おすすめの橋だ。近くには展望スペースやキャンプ場もあり、その姿を眺めながらゆったり過ごすこともできる。

もっとアクティブに四万十川を満喫したいなら、カヌー旅にもチャレンジしよう!

もっと四万十川の魅力を体で感じたいなら、やはりカヌーやラフティングなどのアクティビティに参加するのがいい。観光遊覧船同様、流域には数多くのサービスを提供する施設がある。なかでも一番おすすめしたいのが、四万十川唯一のカナディアンカヌー専門ガイド「四万十塾」だ。

カナディアンカヌーとは、オープンデッキの船体にキャンプ道具や食料をたっぷり積んで移動できるカヌーのこと。大人二人と食料を積んでも安定して川下りを楽しむことができる。
▲食料などを積んでゆったり川下りを楽しめる四万十塾のカナディアンカヌーを使ったツアー(写真:四万十塾)

日帰りコースもあるが、四万十塾の場合、4泊5日のテント泊での川旅が基本。ガイドによるレクチャーがあるので、子どもや初心者でも安心だ。ベースキャンプでは、料理本を出版するほどの腕前を誇る塾長・木村とーるさん特製の焚き火料理に舌鼓を打つことができる。

満天の星空の下、川のせせらぎを聴きながら、焚き火を囲んで過ごす時間は、都会でいくらお金を払っても得ることのできない贅沢な経験。そんな野性味あふれる四万十塾のツアーは、まさに「四万十川の自然と一体になれる」とファンから支持されている。
四万十川の沈下橋を巡る川旅は、ドライブ、サイクリング、遊覧船、カヌーなど多彩な選択肢があるので、好みに合わせてプランを組もう。これから夏に向けては四万十川も観光シーズン真っ盛り。いっそ泳いでもいいくらいの心意気で準備をしておけば、間違いなくこの清流をたっぷり楽しめるはずだ。
藤川満

藤川満

清流・仁淀川流れる高知県いの町在住。出版社勤務を経て「撮って書く」フォトライターに。カヌーやトレッキングなど自然と親しむ一方で、利酒師の資格を有する日本酒党。またジャズライブの撮影はライフワークのひとつ。

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