「最上川三難所そば街道」で山形の板蕎麦を食す!第二弾「あらきそば」

2016.07.02 更新

山形を代表する食べ物というと「さくらんぼ」「米沢牛」「芋煮汁」などが知られるところですが、忘れてはならないのが「蕎麦」。県内各地に美味しい蕎麦店が存在し、どの店に入っても「ハズレはない」と言われるほど。休日ともなると、お目当ての店を探して県内外から大勢の蕎麦ファンが訪れます。挽き立て、打ち立て、茹で立ての「三立て」にとことんこだわった山形の板蕎麦の美味しさのヒミツを探ろうと、「最上川三難所そば街道」を訪ねました。

▲「あらきそば」の「うす毛利(もり)」(1人前)

第一弾では、栽培からすべて自家製にこだわる「手打蕎麦 おんどり」を訪れました。
続いてご紹介するのは「最上川三難所そば街道」の十四番店「あらきそば」。創業から約100年、そば街道の中で最も老舗の蕎麦店です。

伝統の蕎麦を家族で守り続ける「あらきそば」

「あらきそば」は村山市の市街地から車で15分。大正9(1920)年創業、江戸時代末期に建てられた茅葺屋根の民家が、そのまま店舗として使われています。
▲趣のある古民家
▲ふるさとに帰ってきたような懐かしさ

その風情と、挽きたてのそば粉で作る極太の蕎麦の味が評判となり、メディア等で取り上げられることも多く、今や北海道から沖縄まで全国各地から蕎麦を求めて大勢の人がやってくる人気店です。

フランス外務省が選ぶ飲食店ランキングに、東北で唯一ランクイン

2015年12月「あらきそば」は、地域で大切にしてきた文化を「食」という手法で頑固に守り続けている点などが評価され、フランス外務省が選ぶ世界各国の飲食店ランキング「ラ・リスト」に東北で唯一ランクインしました。「ラ・リスト」は世界の飲食店の中からトップ1,000店を選出するもので、日本では「あらきそば」を含め127店が選ばれています。
▲「最近は外国からのお客様もいらしてくださいます」と、英語が堪能な女将、真弓さん
▲40人程が座れるお座敷
▲万葉仮名で書かれたメニュー

約100年前から変わらない蕎麦作り

初代の芦野勘三郎(あしのかんざぶろう)さんは農閑期である冬仕事として蕎麦を打ち、近所の人たちに振る舞っていました。「そば打ち名人」との異名をとる程、そのおいしさが評判となり、周りに促されながら蕎麦屋を開くことにしたそう。

店名は、初代の父が心酔していた江戸時代初期の武士“荒木又右衛門”の名から付けられたとか。

「昭和26(1951)年の話、初代の話を聞きつけた人たちが『東京の銀座に店開きするから職人として来てほしい』とやってきたんだそうです。当時、店を継ぐかどうか迷っていた20歳そこそこの2代目夫婦を残して初代夫婦は銀座に行ってしまい、2代目は「あらきそば」をやらざるを得なくなったということです(笑)」真弓さんは当時の秘話を語ってくれました。

初代夫婦の東京暮らしはたった三カ月で終了。でも、東京流の「返し」を会得し戻ると、銀座で蕎麦を打っていた勘三郎さんの名はあっという間に知れわたり、客人も増えていきました。

2代目の又三(またぞう)さんは「最上川三難所そば街道振興会」の初代会長として長年そば街道を見守ってきた重鎮。今も妻のよし子さん、息子夫婦、孫夫婦とともに店を盛り立てています。

3代目の光(ひかる)さんは女将の真弓さんと代々受け継がれてきた技術を守り続け、その思いは4代目の浩平(こうへい)さんへと引き継がれています。
▲「挽く」担当は3代目の光さん
▲新鮮なそば粉にこだわり、その日の分をその日の朝に挽きます

「蕎麦打ち」を担当するのは4代目の浩平さん。休日ともなると、日に200人分の蕎麦を打つこともあるそう。
▲光さんが挽いたそば粉を打つ浩平さん
▲その日の温度と湿度に合わせて調整しながら

「蕎麦打ちは父から教えてもらいました。今も二日に一度は父に試食してもらいながら、厳しく指導を受けています。」と浩平さん。

こうして手を抜くことなく、真摯に蕎麦と向かいながら守り続けてきた“あらきそばにしかつくれない味”を父から息子へ繋いでいくのです。
▲「まだまだ勉強中です」と話す浩平さんの眼差しは真剣そのもの
▲打ち粉をしながら手早くのしていきます
▲5mm近くありそうな太打ちの蕎麦

蕎麦は、時間の経過で味が変わってしまうので、どの作業も手を休めることができません。
てきぱきと段取り良く、持ち場をこなしながら蕎麦を作っていく精励恪勤ぶりに感動さえ覚えてしまいます。
▲2代目女将から釜番を引き継いだ真弓さん
▲グツグツと沸騰した大鍋の中に泳ぐ蕎麦

「母が茹でるたびに試食をするので、微妙な違いを注意されることも多いです」と浩平さんが話す通り、粉引きや蕎麦打ちの微妙な加減は釜番がチェック役。
▲昔ながらの井戸水を使って素早く蕎麦を引き締めます
▲秋田杉の板の器に盛りつけ

「挽く」「打つ」「茹でる」をそれぞれが分担し、家族総出で味を守り続けている「あらきそば」。その様子にすっかり感銘を受け、蕎麦の出番を待っていると…。

そば粉98・つなぎ2の、無骨なまでの田舎そば

50cmもありそうな秋田杉で作られた板の器に載った蕎麦が運ばれてきました。蕎麦同士が、板の中でくっつくことのないように薄く盛るのがこの店の特徴。
▲水分の吸収が蕎麦に適している板の器
▲格子からやわらかな光が射し込んできます

挽きぐるみの粉を使い“そば粉98・つなぎ2”の割合で仕上げた蕎麦は、風味を最大限に生かした野趣に富む味。角がピンと立ち、香り高く、噛むほどに旨みが広がります。極太でコシが強いので、すするというよりも噛みしめて食べたい蕎麦です。
▲そばつゆは濃いめ。少なめの蕎麦をちょっとつけて

そばつゆは、選び抜いた県内で作る醤油に砂糖とみりんを入れた「返し」と、たっぷりのかつお節でとった出汁とを加えて作ります。
▲趣のある田舎家で味わう田舎そば

蕎麦の種類は「板そば」のみ。1人前の「うす毛利」820円(税込)、2人前の「むかし毛利」1,600円(税込)の他に、1.5人前1,230円(税込)も注文できます。太打ちでボリュームがあるので、男性でも「うす毛利」で十分な量です。

大人気のにしんの味噌煮も一緒に

蕎麦と一緒に必ず注文したいのが「にしんの味噌煮」380円(税込)。2代目女将のよし子さんが作り続けています。一日じっくり煮込むため、身がホロッと崩れる程柔らかく、骨までまるごと食べることができます。秘伝の味噌だれで甘辛く煮込んであり、一度食べたらまた食べたくなる絶品です。
▲大人気の「にしんの味噌煮」。蕎麦とにしん煮を肴に、日本酒を酌み交わす人たちも

「あらきそば」には、頑固なまでに家族だけで守り続けてきた門外不出の蕎麦の味があります。そして、「おばあちゃんの家に帰ってきた」ような懐かしさと温かさ…この店が愛される理由を垣間見た気がしました。

胃袋を満たされたお客さんたちは誰しもが声をかけて店を後にします。
「また来るよ!」

山形蕎麦の美味しさを広く伝えていくために

そばの花が満開になる9月には、打ち立ての香り高い蕎麦を食べることができる「そば花まつり」、そば処で有名な村山市(でわかおり)・尾花沢市(最上早生)・大石田町(来迎寺在来)の蕎麦を食べ比べる「そばの里まつり」、11月の新そばの季節に開催される「板そばまつり」と、「最上川三難所そば街道振興会」では毎年様々なイベントを通して村山市の蕎麦の美味しさを広く伝えています。全国有数のそば処「最上川三難所そば街道」にぜひ足を運んでみてくださいね。
撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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