神々を訪ねて歩く、熊野三山への祈りの旅路

2016.07.28

世界遺産にも登録されている「熊野三山」とは、和歌山県にある三山「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」の総称。全国に約3千社ある「熊野神社」の総本宮です。今も昔も変わらずに人々の心を引きつける、神々の棲む聖地を訪ねてみたいと思います。

▲美しく風格のある檜皮葺(ひわだぶき)の屋根

「熊野」は、古くから木や岩、川や滝などを神とする自然崇拝の地。神々が鎮まる深山の霊場として神秘をまとい、崇拝されてきました。

奈良時代から平安時代になると、神=仏であるという考え方が広まり、平安時代の末には、皇族や貴族が「浄土への入り口」として「熊野三山」を参拝するようになりました。
浄土へお参りし、浄土から帰ってくるということは、「死と再生」を意味するため、「熊野三山」は「よみがえりの地」として崇められるようになったとも伝えられています。

皇族や貴族の間に広がった熊野信仰は、のちに武士や庶民の間にも広まり、長く険しい道のりを越えて「熊野三山」へ詣でることで、来世の幸せを神々に託してきました。

厳かなたたずまいの「熊野本宮大社」

▲「熊野本宮大社」社殿へ続く158段の石段

和歌山県田辺市にある「熊野本宮大社」に到着。鳥居をくぐり、石段を上って社殿へと向かいます。
参道の中央は神様が通る道なので、右端を上り、左端を下るのが作法なのだそう。
天に通じるようにまっすぐ伸びた杉木立。石段の両脇に立ち並ぶ奉納のぼりが、社殿まで導いてくれます。
▲御社殿(ごしゃでん)

こちらが神々が鎮座する御社殿です。
熊野造の美しい建築様式が、荘厳な雰囲気を醸し出しています。

手前から、第三殿:夫須美大神(ふすみのおおかみ)、第二殿:速玉大神(はやたまのおおかみ)、第一殿:主祭神の家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)、第四殿:天照大神(あまてらすおおみかみ)が祀られています。
主祭神である家津美御子大神から、順番に参拝しましょう。
柏手を打って手を合わせると、幾千万もの人々が同じように重ねてきた歴史のひとコマに時を刻む感動がこみ上げてきます。
▲満山社(まんざんしゃ) 結ひの神

御社殿を参拝したら、その横にある「満山社」へのお参りも忘れずに。
緑の中にとけ込む美しい小さなお社は、親と子の結びなど、人と人の縁を結ぶ「再生の玉石」を祀る、縁結びの神様です。
▲黒い八咫烏(やたがらす)ポストと葉書の木

境内に大きく枝葉を伸ばす御神木「多羅葉(たらよう)の木」は、葉の裏に爪などで文字が書けることから、「葉書の木」「手紙の木」と呼ばれ、一説には「はがき(葉書)」の語源になった木とも言われています。

そして御神木の横に設置された黒いポストの上には「八咫烏」が。
日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている八咫烏とは、日本神話に登場する三本足のカラスです。神武天皇を熊野国から大和国まで道案内したというエピソードから、「熊野三山」では神の遣い「導きの神鳥」として崇められてきました。

この八咫烏ポストは、実際に手紙を投函することができるんですよ。
投函する前に社務所に声をかければ、「出発の地より心をこめて 熊野本宮」というスタンプを押していただけるのだそう。
大切な人や自分へのステキなお土産になりますね。
▲参道には願い事が書かれた小さなのぼりが…。授与所にて初穂料 500円
▲大斎原(おおゆのはら)の「大鳥居」

神が舞い降りたと伝えられる大斎原は、「熊野本宮大社」から歩いて10分ほどのところにあります。凛とそびえる高さ約35m、幅約42mもある日本一の「大鳥居」は壮観です。

それでは、「大鳥居」をあとにして、「熊野速玉大社」へ向かいましょう。

清らかな佇まいの「熊野速玉大社」

車を走らせ約50分ほどで、新宮市にある「熊野速玉大社」に到着です。
改めて手水舎で身を清めましょう。
手水舎の上には鼻の長い不思議な姿の龍が。まるで参拝者を“ようこそ”と出迎えているようで、不謹慎ですが、ちょっとかわいいです。
▲息を呑むほどの壮麗な社殿

鮮やかな朱塗りが美しい! 巨岩を御神体とする自然崇拝を源に、降臨した神々が鎮座する「熊野速玉大社」。
熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)、熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)を主祭神に、十二柱の神々が祀られています。
▲霊験あらたかな主祭神 熊野速玉大神

拝殿のしめ縄の上には、「日本第一大霊験所 根本熊野権現拝殿」と書かれています。「権現」とは、仏が降臨した時代にできた「神」を表す言葉で、日本の八百万の神々は、実は仏が神の形で現れた仮のものだとする思想からきたもの。「日本第一大霊験所」とは、熊野三山の中でも逸早く「熊野権現」の称号を与えられたことを意味するのだそう。

心を鎮め、心願成就を祈願します。
▲御神木である推定樹齢千年のナギの大樹

「熊野速玉大社」の御神木「ナギ」は、天然記念物に指定されています。その高さは約20m、幹の外周は約6m。
道中の安全を祈り、このナギの葉を懐中に納めてお参りするのが習わしとされているのだそう。
約千年もの間ここに根付き、旅人を見守ってきたのだと思うと、とてつもない神秘のパワーを感じます。
それでは次に、「那智山」のふもと熊野古道大門坂入り口にある「大門坂茶屋」で、平安衣装の体験ができるそうなので、「熊野那智大社」へ向かう前にちょっと寄り道。平安時代にタイムスリップしてみたいと思います。

平安衣装に身を包み、熊野古道の歴史に思いを馳せる

「熊野速玉大社」から車で約30分。那智勝浦町にある大門坂駐車場に到着です。
約500mほど歩いたところに「大門坂茶屋」のちょうちんを発見!
▲案内所 兼 休憩所 兼 お茶屋の「大門坂茶屋」

茶屋の中には色とりどりの艶やかな衣装がずらっと並んでいて、どれにしようか迷ってしまいます。
衣装を決めたらスタッフの方に着つけてもらいます。(所要時間は15分ぐらい)

平安衣装には女性用だけでなく、男性用や子供用もあるので、カップルやファミリーでも楽しめます。
女性が男性の衣装を着たいと希望されることも多く、とてもカッコよく仕上がるそうですよ。

首から下げた筒はお守り、胸に掛けた帯は魔除けです。
平安時代の皇族や貴族は、このような格好で「熊野三山」を詣でたんですね。
▲平安衣装のまま周囲を散策

写真の両サイドに見える2本の杉は「大門坂茶屋」のすぐ近くにある「夫婦杉」です。それぞれ推定樹齢は800年を超えるといわれ、幹の周りは8m以上もあるんです。
そっと幹に触れてみると、脈動を感じるような命のエネルギーが伝わってきます。
深い森の木々たちは、これまでに多くの参拝客を見守り、歴史を重ねてきたのでしょうね。

平安衣装で神秘的な古道の風情を感じれば、最高にステキな旅の思い出になりますよ。
それでは、「熊野那智大社」に向かいましょう。
ここ「熊野古道 大門坂」からは、苔むした美しい石畳とみごとな杉並木が続きます。
石段は267段、距離にして約600m。

「大門坂」を上りきったところで「那智山」に到着です。
那智山にはバス停と駐車場があるので、ここまではバスや車で来ることもできます。
そして目的の「熊野那智大社」へは、さらに参道である200段の石段を上ります。

神々しい佇まいの「熊野那智大社」

▲熊野夫須美大神を主祭神として祀る「熊野那智大社」

計467段の石段を上ってようやくたどり着いた神の聖域。標高約500mに鎮座する「熊野那智大社」です。
運動不足の私にはちょっとこたえましたが、その分ありがたみも増します。
呼吸を整えて参拝します。
▲那智大社の境内にも神の遣い「八咫烏」が…
▲御神木である推定樹齢800年の巨大なクスノキ。そしてその足元にぽっかりとあいた穴
▲胎内くぐり 初穂料300円

「胎内くぐり」といい、願い事を書いた護摩木を持ってこの穴の中をくぐると、願いが叶うといわれているんです。
御神木の中をくぐるなんて、ドキドキします!
▲巨大おみくじ 100円

「胎内くぐり」で神秘のパワーをもらったら、拝殿前に戻って運試しにおみくじを…。
「大きい…こんなおみくじ見たことない!」
両手で抱えて筒を振り、ひっくり返せば穴から長~いみくじ棒が出てくるので、授与所で番号を伝えておみくじをいただきます。

それでは私も…。
「やったー!」大吉です。
なんだかいいことがありそうな予感…。

迫力満点の「那智の滝」

▲那智の滝

自然崇拝の象徴である「那智の滝」は、那智大社の別宮「飛瀧神社」のご神体。熊野那智大社からは約1km(徒歩約15分)のところにあります。

石段を少し上ると、朱塗りの「御瀧拝所」があるので、滝に最も近づけるこの場所から「那智の滝」を拝むのがオススメです。

すごい迫力!滝を流れ落ちる水のミストに全身を包まれ、神聖な気持ちになります。
毎秒約1tも流れる水量は日本一を誇り、滝口から滝壺までの落差は約133m。一段の滝としての落差も日本一なのだそう。

毎年7月9日と12月27日には、「御滝注連縄張替式」という神事が行われ、白装束に烏帽子(えぼし)姿の神職たちが、長さ26m、重さ4kgの大しめ縄を断崖絶壁の滝口まで運び、冷たい水に浸かりながら張り替えるんです。
すごいですね~。想像しただけでゾクゾクします。
「熊野三山」祈りの旅路。大きな自然の神秘と歴史にふれ、自分のちっぽけさを知る旅ともなりました。
「よみがえりの地」「再生の地」というのは、己を知り、心を新たにするという意味もあるのかもしれませんね。

たくさんの癒やしとパワーをもらえる神秘を「熊野三山」で体験してみませんか?
Yukitake

Yukitake

三重の雑誌「Edge」をはじめ、さまざまな雑誌・情報誌において、グルメ・観光などの記事を執筆。女性目線の取材とソフトな文体を大切にしています。

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