大阪・福島「多幸屋」のたこ焼きは店名どおりハッピーが大盛り

2016.07.27 更新

「大阪発祥のたこ焼き」の味は店ごとに多様。でも如実に街の色を映していたりもする。地元の人間には「近所の味が一番」でも、一方で「ちょっと足を延ばしても食べたい」味もある。具や生地、味付けだけでは語れない、客も街もひっくるめての「たこ焼き」の世界、まるごとご賞味あれ。

2011年オープンの「多幸屋(たこや)」は、いわゆる“たこ焼き居酒屋”の範疇だ。大阪のたこ焼きは持ち帰りスタイルが中心で、下町になると各駅前、商店街ごとにありそうなほど店数は多いが、前者はそれに比べるとまだ少ない。
▲タコ以外の魚料理もハイレベル。「造り特上5種盛り」1~2人前2,000円。「肉厚とん平焼」680円、「蛸チヂミ」580円など鉄板焼きメニューも充実

「多幸屋」は居酒屋だが、なんと母体がタコの卸業。大阪中央卸売市場に店舗を構え、和洋料理店などに国内外からの厳選タコを卸している。ちょっぴりズルい気がするが、それゆえにハイコスパ。
毎日お店で釜ゆでした、ブリブリかつ味わい深いタコが、たこ焼きや一品メニューを飾っているという。そう聞いてさっそく出かけた。
▲写真の明石の真ダコ以外にも、この日は手長ダコなどの活け物がウネウネ。手長ダコは躍り食い(1人前700円)も楽しめるのだそうで

JR福島駅前。バルや立ち呑みなど最新の飲食店がにぎわうあたり。
大阪で「流行りの路地店」という言葉は、福島のためにあるようなものだ。
そこからさらに南へ進んで国道2号線を渡る。実はこの福島南エリアは、今や駅前と競うように路地裏の飲食店が増え、どんどん拡大する様子が見えて面白い界隈だ。
▲このすぐそばにJR東西線の新福島駅(地下)がある
▲看板には「蛸にこだわり抜いたたこ焼」と。入り口左側の階段を上がると貸し切り専用(8~20名)のスペースが。3,000円~のコースのみ(要予約)

タコの旨さを活かした名作アテが続々

「多幸屋」ではそのままでも美味しいタコたちだが、たこ焼きはもとより、お造り盛り合わせやカルパッチョなんて料理にも使われているし、何とポテサラにもゴロゴロと入っているというから、まさにタコづくしのお店なのだ。
「蛸の食べ比べ3種盛り」880円。弾力、旨みとも溢れる「明石蛸」(左)はワサビ醤油で。むっちりの身と軽く炙った吸盤がコリコリで抜群の「北海道水蛸」(中)にはゴマ油と塩を。柔らかくほぐれるようなモロッコ産には酢味噌を。
「蛸入りポテトサラダ」480円は、あっさりめに味付けされたポテトサラダの中に、ゆでダコのブツ切りがゴロゴロと、かなりボリューミー。ムチムチで食べ応えも味わいもあるモロッコ産ならではの存在感。

たこ焼きに、むっちり大ぶりタコがゴロリ

たこ焼きに使うのは「味があって柔らかいモロッコ産。その中でも一番ランクが上のヤツ、使(つこ)てます」とキャプテンの上田幸男(ゆきお)さん。
▲店頭の焼き台に次々生地が流し込まれ、焼けるまでちょっとひと息。「実は新人スタッフの研修中で」と、上田さん(左)がみっちりレクチャー中でした

たこ焼きの材料は極めてシンプル。生地の味付けも最小限の和ダシ系。天かすも適量で、油の甘みというより、タコの旨みで満ちている
生地からはみ出しそうなぶつ切りも「ふだん通りですよ」。焼いているうちにタコ自体の旨みが生地にしみ出す仕組み。だからこそ素焼き(ソースなし)から味わいたい。
そんな美味しさを知ってか知らずか(もちろん知ってる)、店頭でたこ焼きが焼き上がる頃、ご近所の主婦とおぼしきママチャリがキュキュっと横付けして「兄ちゃん10個焼いといて」と言葉を残し、再び買い物戦線に突入する。

ほほーっと見とれていると「電話で予約する常連さんも多いっすよ」と店員さん。子どものおやつやオトーサンの晩酌のアテの一品になるのですなぁと、妙に納得した。
▲熱伝導のいい特注銅板でじっくり焼き上げるため、表面がカリカリに仕上がる。やたらとさわって回転させてもイカンのだそうで

たこ焼きは普通よりもひと回り大ぶり。「外こんがり、中トロリ」がきっちり守られているうえに「中からタコごろり」のサプライズ付き。
素焼きのほかに塩、醤油、ガーリックなど14種類。50円増で温・冷のお出汁やネギ、チーズトッピングも用意され、毎日でも通いたい。
▲6個350円、持ち帰り6個300円

こういう「大都会の真ん中なのに下町」の光景が残っているのもまた、福島の特色。
どんなにオシャレな店が増えても、どんなに新しく街や住む人が変わっていっても、日々たこ焼きをハフハフと食べる人がいて、しっかり大阪やん、と感じる。
確実にこの街の深いところでずっと昔から続いているカルチャーなのだ。

※価格はすべて税込
曽束政昭

曽束政昭

フリーライター。たこ焼きはタコと生地が重要。意外に脇役と思われがちな天かすの質によって好き嫌いが分かれるというこだわりを持つ。京阪神を中心に、全国各地の地元うまいもんを訪ね歩いて取材する日々。著書に関西からの旅記事をまとめたムック『1泊5食』(京阪神エルマガジン社)など。

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