極上の脂がとろける幻の琉球在来黒豚・今帰仁アグーを堪能

2016.08.02 更新

「鳴き声以外は全部食べる」と言われるほど、沖縄の食卓には欠かすことができない食材である豚肉。その中でも「幻の琉球在来種」といわれる「今帰仁(なきじん)アグー」が那覇でも気軽に食べられるお店「長堂屋(ながどうや)おもろまち別邸」を訪れた。

▲一般的なアグーとは全く別物。幻の豚「今帰仁アグー」(写真提供:長堂屋 おもろまち別邸)

今や沖縄の代表的な食材として知られているブランド豚「アグー」には、実はいくつかの種類がある。市場に出回っている多くの「アグー」の内、9割以上は在来豚と西洋種(バークシャーやデュロック、または大ヨークシャーやランドレースなど)との交配によって作られた、繁殖や飼育がし易いハイブリッドタイプである。

「今帰仁アグー」は、在来豚のかけ合わせにこだわり、沖縄の先祖が培ってきた食文化を大切に、純系島豚として育てられている。

「今帰仁アグー」には、旨味成分のグルタミン酸を始め、多くのアミノ酸が一般豚の数倍以上含まれており、優れた肉質が特徴。脂の融点が低いため、非常に甘みが強く脂肪分やコレステロール値が一般の豚より低いという点が魅力だ。

現在、「今帰仁アグー」は沖縄県北部に位置する今帰仁村(なきじんそん)の自然豊かな環境で大切に育てられている。
▲「今帰仁アグー」はゆっくりとした島時間と自然豊かな環境で育てられている(写真提供:長堂屋 おもろまち別邸)

「今帰仁アグー」は一般的な豚よりも小さく、雄雌ともに成豚でも70kg~100kgほどと、西洋豚の1/3ほどの大きさ。全身が黒い毛で覆われていてタテガミがあり、背が凹み、お腹が地面につきそうなほど垂れているのが特徴だ。性格は温和で人に向かってくることもなく、他の豚の子も分け隔てなく育てるという優しい豚さんである。

約3カ月で成豚になるという「今帰仁アグー」は、成長期の短さから身に脂がつきやすく、聞くところによるとその脂が絶品だとか。

実は、丹精込めて育てられた「今帰仁アグー」を、食べられるお店は少なく、有名なのは沖縄本島中部の今帰仁村玉城(たましろ)にある「長堂屋」。
▲上質な雰囲気で宴席でも人気の「長堂屋 おもろまち別邸」

しかし、那覇空港から車で北へ約1時間の距離にある今帰仁村は、那覇市内からはちょっと遠い。そこで「長堂屋」は、もっと多くの人に「今帰仁アグー」を知ってもらいたいという願いから、2014年4月、那覇市の中心部・おもろまちに「長堂屋 おもろまち別邸」をオープンした。

今回は今帰仁村まで行くには時間が足りない……という方にもぴったりな「長堂屋 おもろまち別邸」を訪ねた。

油好きは食べるべし。極上の「ラード」

▲「今帰仁アグー」のガーリックラードを塗ったフランスパンを七輪焼きで

お店のオススメは「焼肉」と「しゃぶしゃぶ」とのこと。それなら、どっちも食べたい!ということで、両方を堪能できる「よくばりコース」5,000円(税別)を注文した。

コースには「今帰仁アグーのミートボール」や「レバーパテ」といった小鉢が2品と、フランスパン、焼肉3点盛り、季節の野菜、しゃぶしゃぶ肉、雑炊セット、デザートがつく。

まずはオーナーの長堂さんから「うちのはうまいよ!」とオススメいただいたガーリックラードをフランスパンに塗っていただく。こうばしい香りが食欲をそそり、あっさりしているのにしっかりとコクがあるラードは、こんな油があったのかと驚く美味しさ。
▲焼肉はモモロース、三枚肉、肩ロースの3点盛り

続いて焼肉用の肉が登場。七輪の網の上にお肉をそっと並べて備長炭火で炙ると、脂が溶け出して、表面はジューシーかつパリッと焼き上がる。口の中でじゅわっとあふれだす肉汁とさっぱり甘さを感じる脂は、肉好き、油好きの期待を裏切らない。
▲煮立ってきてもアクが出ず、脂のダマができない「今帰仁アグー」

お次はモモロースと三枚肉を楽しめるしゃぶしゃぶを堪能。今帰仁アグーは筋線維が細く歯切れが良いのが特徴で、脂肪融点(脂肪が解ける時の温度)が低いため、味が伝わりやすいうえ、脂質が体内に残らずとてもヘルシーという。

お肉をさっとお湯にくぐらせて口へ運ぶと、肉質は柔らかく、ほのかな甘さと濃厚な旨みに気持ちまでとろける。
カウンターの目の前で新鮮なブロック肉をスライスして盛り付け

「やさしい味わい」のひみつ

「長堂屋」では今帰仁アグーの美味しさを最大限に楽しんで欲しいという想いから、ハンダマ、ツルムラサキ、長命草など、自然豊かな沖縄北部・やんばる地方のエネルギーがたっぷり詰まった体にやさしい島野菜を提供している。

焼肉やしゃぶしゃぶに添えられる島野菜と、さらさらとした極上の脂が持ち味のお肉を一緒に楽しめば、いくら食べても胃がもたれない気さえしてくる。
▲「今帰仁アグー」のしゃぶしゃぶを沖縄やんばる野菜とともにいただく(写真提供:長堂屋 おもろまち別邸)

筆者は「長堂屋」でいただくすべてのお料理から、やさしい味わいを感じていたが、その秘密は、お店でつかっている調味料にあるらしい。

お店で使用している調味料はすべて自家製で、薬味には沖縄の柑橘類「シークワーサー」をふんだんに使用。皮は島とうがらしと合わせて薬味として、果汁はしゃぶしゃぶに使うポン酢として使い、「今帰仁アグー」の美味しさを引き立たせていたのだ。
▲「アグースネ肉のコンフィー」3~4人前で1,500円(税別)

途中、長堂さんから「裏メニューですが美味しいですよ」とオススメいただいたのが「アグースネ肉のコンフィー」。オーナー自ら切り分けてくださったコンフィーからは肉汁が溢れだし、濃縮されたお肉の旨みとハーブの風味、こんがり焼けた皮目の香ばしさ、甘くとろける脂がたまらなく美味しかった。

ちなみに、「今帰仁アグー」の脂の旨さを存分に味わえる「アグースネ肉のコンフィー」は、前日までに要予約とのこと。他にも、「今帰仁アグー」のハンバーグや餃子、パスタ、カレーといったメニューも豊富。「今帰仁アグー」専門店だが、今帰仁牛や山羊の刺身など、沖縄が誇る美食も味わうことができる。

おまけといってはもったいない絶品「ちんすこう」

「よくばりコース」のデザートとして最後にテーブルに並んだのが、「長堂屋の手作りちんすこう」。こちらは「今帰仁アグー」のラードと、宮古島のまみぐー(ピーナッツの粉)を生地に練り込み香ばしく焼き上げている。

一般的なちんすこうには、口の中の水分が吸い取られるようなドライなものもあるが、こちらはこれまで食べたどのちんすこうよりも、しっとりした食感と、やさしい甘さがくせになる味だった。
▲店頭で購入できる「長堂屋の手作りちんすこう」5個入り 216円(税込)はお土産としてもおすすめ

沖縄出身である筆者はおそらく他県の方よりは豚肉を食す機会が多いかもしれない。しかし、40代に突入してさすがにたっぷりお肉というヤンチャな食べ方をすると、ひじょうに分かりやすく体が拒否反応を起こしてしまう。

今回の取材でも少々覚悟をしていたが、たくさんのお肉を食したにも関わらず、全く胃もたれせず、最後まで「今帰仁アグー」を美味しく楽しむことができた。純系の在来島豚(シマウヮー)にこだわり、先祖が培ってきた食文化を大事に守りぬく「長堂屋」の想い。やんばる今帰仁村のゆったりした島時間と環境に抱かれて育った上質な「今帰仁アグー」をどうぞ楽しんでほしい。
山野かもめ

山野かもめ

文筆家。地域をめぐりながら紀行文を執筆。得意な分野はグルメや伝統芸能など。自然や健康好きだが運動音痴。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP