十勝の人が行列する帯広名物「豚丼」のお店3選

2016.07.01

丼に盛られたご飯の上に、甘辛いタレで味付けした厚切りの豚肉をのせた豚丼。発祥は、北海道十勝地方の帯広市です。十勝地方で豚丼は家庭料理としても一般的。お母さんのお手軽メニューとして日頃から自宅の食卓に並ぶほど、日常の料理です。今回、普段から豚丼を食べ慣れている十勝出身のさおりさんに、おすすめの豚丼店を3店案内してもらいました!

▲十勝地方では家庭料理として一般的な豚丼

「元祖豚丼のぱんちょう」で、豚丼の誕生秘話を知りました

最初に訪れたのは、帯広駅前にある豚丼専門店「元祖豚丼のぱんちょう」。昭和8(1933)年創業、豚丼元祖の店として知られています。
▲開店と同時に行列ができるほどの人気店。「私はランチタイムを外して行きますよ」とさおりさん

豚丼は、もともとスタミナ料理として考案された料理。
詳しい年月まではわからないそうですが、「元祖豚丼のぱんちょう」が開店して間もない頃、創業者の阿部秀司さんは、毎日閉店後に趣味の釣りをするために川に出かけていたそうです。
「川に向かう途中にある畑で汗を流す農家や開拓者を見て、美味しくて力になる料理を出したいって思ったと言っていました」と、2代目の女将・阿部幸子さんが豚丼の誕生秘話を語ってくれました。
▲2代目の女将、阿部幸子さん。今もお店に立ち、お客さんを迎えます

スタミナ料理ならばウナギを使おうと考えたものの、当時ウナギは高価で手に入りにくいものでした。そこで、十勝地方で養豚が広まっていたこともあり、身近で手に入りやすい豚肉を使うことにしました。

ウナギのかば焼きをヒントに、甘辛いタレに漬けた豚肉を焼き、丼にのせてみました。これをお得意さんに試食してもらうと大好評、すぐに看板メニューに。
当初大衆食堂として開店していたものの、定食など他のメニューを全てやめ、豚丼専門店として歩むことにしたそうです。
▲器から豚肉がはみ出ているのが、この店の豚丼の基本スタイル

豚丼のメニューは、お肉の枚数の差で「松」・「竹」・「梅」・「華」の4種類に分かれています。「松」はお肉が約4枚(900円・税込)、「竹」は約5枚(1,000円・税込)、「梅」は約6枚(1,100円・税込)で、最上級の「華」は約8枚(1,300円・税込)です。
▲蓋を外すと、豚肉がご飯を覆い尽くしています。こちらは「梅」です

一般的には、松竹梅といえば松が一番高級ですよね。でも、「元祖豚丼のぱんちょう」では「松」よりも「梅」のほうが高級なのです。
というのも、初代女将の名前が梅さんだったため、初代が妻の労をねぎらい、「松」ではなく「梅」を上のランクにしたのだそうです。

ちなみに、最上級の「華」とは、牛丼店などに例えると特盛のようなもの。ただ、大盛や特盛と呼ぶと、たくさん食べたい女性は気恥ずかしくて頼みにくいだろうと考え、女性が気軽にオーダーできるように「華」と名付けたそうです。食いしん坊の方も、ここなら堂々と頼めますよ!
▲「ほんのりと香る炭の匂いがいいんです~、そそられます!」と、ぺろりと完食!

「元祖豚丼のぱんちょう」の豚丼の特徴は、炭火で焼いた豚ロース肉と、秘伝のタレ。炭火で焼くと、余分な脂が落ちてお肉が柔らかくなるそうです。
秘伝のタレは、豚丼が誕生した当時から守られ続く、門外不出の伝統の味。甘辛い味わいの中にもまろやかなコクがあり、炭の香りとともにいつまでも口の中にじんわりとタレの風味が残ります。食べ終わった後も、心地よい余韻に浸れるのが印象的です。

帯広駅前で食べられる元祖の味。テイクアウトもできるので、持ち帰って列車の中で食べることもできますよ。

豚丼と豚天丼がおすすめの老舗店「はげ天 本店」

次は、帯広駅から徒歩5分、繁華街の中にある「はげ天 本店」を訪ねました。
▲豚丼とともに、天丼やうな重、会席料理などを提供する、天ぷらと郷土料理のお店です

創業は「元祖豚丼のぱんちょう」が開店した1年後の昭和9(1934)年で、こちらも歴史が長いお店。豚丼も創業間もない頃に提供し始めたそうです。
▲3代目の矢野整(ひとし)さん。とても気さくに語って頂きました!

豚丼のタレは、創業当時の味わいを守っています。
タレに使用している醤油など、同じメーカーのものでも製造時期が変わると味わいに微細な差異があるそうです。タレを作る時には原材料の風味に合わせて、ほんの少し甘みを強くしたり弱くしたりするなど、その都度微調整をしてタレの味を均一に保っているそうです。調整具合は、長年調理に携わる料理人たちの経験と勘。こうして伝統の味を継承しています。
▲伝統のタレをからめた豚ロース肉を炭火焼きにし、丼に盛ります

「ここは2人で来たら、豚丼と豚天丼を1つずつオーダーして、シェアして食べるのがおすすめですよ」とさおりさん。
「はげ天 本店」では、豚丼も美味しいのですが、豚天丼もおすすめなのです!
▲左が豚丼(4枚980円・税込)、右が豚天丼(4枚800円・税込)

豚丼も豚天丼も、お肉は北海道産の豚ロース肉。サシが入っているものを厳選し、豚丼には、ややこってりした味わいの頭寄りの部分を、豚天丼には、ややあっさりした味わいの尻寄りの部分を使用しているそうです。
▲こちらは豚丼4枚。ボリューミーな6枚(1,300円・税込)もあります

豚丼は、こってりとした味わいに、ピリッとした山椒のしびれ感がちょうどよいアクセント。ぺろっと食べられます。肉厚ながら、口に入れるとすぐかみ切れるほど柔らかいです。
ランチ時間限定で、豚天丼用のややあっさりした風味の豚肉を使った豚丼もあるそうですよ。お昼にこってりは重たいかも、と感じる方にはちょうどよいかもしれません。
▲豚天丼も、こちらの4枚のほか、6枚(950円・税込)もあります

豚天丼は、天丼のタレを少しかけて食べます。揚げているので多少脂っこさがあるかと思いきや、意外とかなりあっさりとした味わい。ダシで天ぷらを食べているかのような感覚です。これ、なかなかイケます!
▲豚天丼をパクリ!

秘伝のタレで食べる豚丼と、天ぷら店ならではの天丼のタレで食べる豚天丼。どちらも甲乙つけがたいです。皆さんは、どちらを食べてみたいですか?

地元の人たちが行列する人気の新鋭

最後に紹介するのは、帯広駅から車で7~8分程度、繁華街から離れた場所にある「ぶた丼のとん田」です。他のお店と比較すると新しいお店なのですが、地元の人たちが行列をなす店として知られています。
▲開店前から行列ができることも。ねらい目は夕方、ただし品切れで早々に閉店してしまうこともあるのでご注意を

お店の前身は、先代が始めたお肉屋さん。様々なお客さんと対面販売していると、脂身が好きな人や嫌いな人、ヒレ肉が好きな人や嫌いな人など、人によりお肉の嗜好はさまざまでした。そこで、好みに合わせて買えるようにと、お肉を選べるようにして販売してきたそうです。
▲2代目の小野寺洋一さん。熱く語ってくださいました!

その後オープンした豚丼店では、このお肉屋さんの時の経験が活かされています。十勝地方の一般的な豚丼はロース肉を使用しますが、こちらの店ではロース肉のほか、バラ肉とヒレ肉もあります。

嗜好に合わせて好きなお肉を選べる豚丼、これが、「ぶた丼のとん田」の一番の特徴です。しかも、お肉は機械でのスライスではなく、すべて一枚一枚手切り。肉質を見ながら、食べやすい形にカットしています。
▲手前が「バラ ぶた丼」、奥が「ヒレ ぶた丼」。価格は、バラ、ヒレ、ロースとも、780円(税込)です

他のお店ではあまり見かけることのない、バラ肉とヒレ肉の豚丼を比較してみました。
バラ肉には脂身が多いのでうま味成分が多く、甘みが強く感じられます。脂身が好きな方はもちろん、ジューシーな味わいが好みという方がよくオーダーされるそうです。
▲口の中で肉の甘みがじゅわ~っと溶けだすような味わい 

ヒレ肉は、バラ肉の特徴とは正反対といえます。脂身が少ないので、味わいは肉々しいです。お肉の味が強いと感じる方もいれば、肉本来の味わいを楽しめるからこれが一番好きという方もいるそうです。通好みの味なのかもしれません。
▲脂身が少ないとお肉が硬そうに感じますが、意外にもふにゃっとかみ切れるほど柔らかいです

どの豚丼にも、小さな壺に入ったタレがセットで出てきます。タレの濃さも人それぞれ好みがあるので、濃い目が好きな人は自分でタレをかけて好みの濃さに調整して食べられるのです。
タレはお肉屋さんだった時代に先代が作ったもので、今も先代がレシピを誰にも教えず30年以上作り続けているという、マル秘のタレです。
▲小さな柄杓でたら~っとタレをかけていただきます!ただ、お肉にはもともとタレがかかっているので、かけすぎ注意!
豚丼は長い間、十勝地方の人たちに愛され続けた身近な家庭料理でした。近年はご当地グルメや郷土料理として注目を集め、観光客が食べ歩く姿をよく目にするようになりました。
皆さんなら、どんな豚丼を食べてみたいですか?同じ豚丼でもお店ごとに味わいは千差万別。ぜひ食べ比べしてみてください!
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

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