発見!福井・美浜名物「へしこ」の新しい楽しみ方

2016.07.03 更新

「へしこ」ってご存知ですか?若狭地方で捕れる新鮮な鯖を一年中食べられるように糠(ぬか)漬けにして熟成させた保存食の一つなんです。福井の郷土料理としても愛されている「へしこ」を都会の人にも美味しく食べてもらえるようにアレンジしたのが、福井県美浜町にある「喫茶オーロラ」。全国から“へしこファン”が訪れるという噂のお店で、個性的な「へしこ料理」をいただきました。

美浜町は絶景スポット「三方五湖(みかたごこ)」をはじめ、海や山など自然豊かな地域。今回訪れた「喫茶オーロラ」は三方五湖の中でも最も東にある「久々子湖(くぐしこ)」エリアにあります。電車の最寄駅はJR小浜線・美浜駅。そこから車を5分ほど走らせると、一軒の喫茶店が見えてきました。

「喫茶オーロラ」はオムライスや定食といった定番メニューが充実しており、ランチタイムには観光客や地元のお客さんで賑わう人気店です。
▲1976年から続く「喫茶オーロラ」
▲テーブル席や座敷席のほか、カウンター席も多いので一人でも入りやすい

「喫茶オーロラ」が「へしこ」をメニューに取り入れたのは今から10年以上も前のこと。

地元美浜町で日常的に食べられている「へしこ」を、県外の人にも美味しく食べてもらうにはどうすればいいかと考えるうちに、アレンジメニューがどんどん増えていきました。
▲ずらりと並ぶ「喫茶オーロラ」のへしこメニュー

今回はその中でも人気のメニューを注文してみることにします。

栄養満点!昔ながらのソウルフード

料理を待つ間、「へしこ」について簡単にご紹介しましょう。

新鮮な海の幸に恵まれてきた若狭湾では、昔から魚介類を一年中美味しく食べるためのさまざまな知恵が生み出されてきました。

その一つが「へしこ」。保存食というだけでなく、タンパク質やミネラル、アミノ酸のほか、青魚に含まれるDHAなど栄養も豊富で、昔から夏バテにも効果があると言われています。
▲「へしこ」作りは江戸時代中期より行われていたそうです

「へしこ」は内臓を取り出した新鮮な鯖を塩漬けにし、一旦取り出してから糠に漬け(本漬け)、1年以上にわたって発酵・熟成させていく、例えるなら「魚の漬物」のようなもの。
鯖以外にもイカやフグなどで作られることもあります。

その独特の風味や塩辛さから、軽く炙って酒の肴やごはんのお供、お茶漬けにして食べるのが一般的な食べ方ですが、「喫茶オーロラ」ではどんな風にアレンジされているのでしょうか。

伝統の味を活かした、新たな「へしこ」の世界

最初に出てきたのは「へしこサンド」。一見普通のサンドイッチと変わらないように見えますが、“パンとへしこ”の組み合わせはいかに?
▲へしこサンド(税込1,000円)

へしこサンドは一皿に2種類。生の「へしこ」には地元の名産「福井梅(ふくいうめ)」のペースト、炙った「へしこ」には辛子マヨネーズという組み合わせを楽しむことができます。生の「へしこ」は“うま味”、炙った「へしこ」は“香ばしさ”が特徴的なため、それぞれの良さを活かすための食材を試行錯誤しながらこの形に行き着いたそうです。
▲食べるまで少しドキドキしていましたが、何の違和感もありません

一緒に挟んである卵焼きと大葉が「へしこ」の塩辛さをマイルドにし、さっぱりとした風味に仕上げています。これは美味しいし新しい!

ペロッと食べ終わると、次はへしこメニューの中でも一番人気だという「へしこスパゲティ」が登場しました。
▲色鮮やかな「へしこスパゲティ」(税込1,000円)

パプリカやキノコ、エンドウ、タマネギなどの野菜と、一見アンチョビのようにも見えますが、細かく身をほぐした「へしこ」がたっぷり入っています。
ポイントは「へしこ」に火を通しすぎないこと。絶妙な火加減でオリーブオイルに香りづけすることで香ばしさがアップし、「へしこ」の旨みと野菜の甘みがマッチしてとても食べやすい一品になっています。

調理方法によって、「へしこ」はイタリアン食材にも早変わりするから不思議ですね。
▲「へしこ」が惜しげもなくたっぷり!
▲味付けはいたってシンプル。だからこそ「へしこ」の風味が際立ちます

美味しいなぁ~とパクパク食べていると、店主の政岡弘子(まさおかひろこ)さんが、ニコニコしながら美味しさの秘訣を話してくださいました。

「へしこは作り方や寝かせる時間によって、辛くなりすぎたり舌がピリピリしてしまうこともあるんです。でも“美浜のへしこ”はただ辛いだけじゃなくマイルドな味が特徴なので、都会の人でも子どもでも、ペロっと食べられるんですよ」
▲「喫茶オーロラ」の“ママ”・政岡さん

「美浜のへしこ」の美味しさの秘密は、何といっても冬場の脂が乗った鯖を使っているということ。寒い中での仕込みはとても厳しい作業ですが、時期がずれると鯖の身がパサつくため、あえて「冬の鯖」にこだわって作っているそうです。1年から2年、じっくり寝かせた“美浜のへしこ”は農林水産省の「郷土料理百選」にも選ばれています。
▲若狭地方では鯖を樽に漬け込むことを「へし込む」と言っていたことから、「へしこ」の名前が付いたとも言われています(写真提供:若狭美浜観光協会)
▲「へしこ」は鯖を塩漬けした後、1~2週間で本漬けへ。厳寒の中での作業は寒さを通り越して痛みを感じるほどだとか(写真提供:若狭美浜観光協会)

最近ではテレビや雑誌で取り上げられることも多くなり、「へしこ」の知名度はますますアップ。「喫茶オーロラ」は「美浜のへしこ」の味を気軽に楽しむことができると、全国各地から多くのお客さんが訪れるそうです。
▲「喫茶オーロラ」では定番の「へしこ定食(味噌汁つき、税込1,000円)」もありますよ

定番の食べ方からユニークなメニューまで、さまざまな料理に使える「へしこ」の可能性は無限大です!美浜町を訪れた際は、ぜひその味を確かめてみてください。
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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