島々をめぐるアートの祭典・瀬戸内国際芸術祭2016で島と芸術、文化、そして食を満喫!

2016.07.11 更新

3年に一度、香川・岡山エリアで開催されている「瀬戸内国際芸術祭」。3度目となる2016年は、既存の作品に加え、「食」をテーマに新たな作品が展開されています。そのスタートとなる春会期を取材。これから始まる夏・秋会期にわたり楽しめる作品の中でも、高松港から約20分と、船に乗り慣れていない人でも気軽に行ける女木島(めぎじま)の作品を中心にレポートします!島と作品のめぐり方のコツもお教えしますよ。

▲女木港に降りたつと一番に目に入る木村崇人さんの作品「カモメの駐車場」。風が吹くと本物のカモメ同様、いっせいに方向を変えます

「瀬戸内国際芸術祭」は、香川県・岡山県の島々をめぐりながら200点あまりの芸術作品や美術館を鑑賞できる3年に一度のアートの祭典。
2010年からスタートして以来、来場客は増え続け、普段は人口200人弱のお年寄りばかりが暮らす静かな島に、このときばかりはおしゃれな若者や外国人がわんさかと訪れ、島に渡る船は人であふれかえるなど、期間中はまさにお祭り騒ぎ!特に夏休みなどのピーク時は、「行きたい島があるのに定員オーバーで船に乗れない」なんてことにならないように、朝いちばんの船を並んで待つ人もたくさんいます。
▲リン・シュンロン(林舜龍)「国境を越えて・海」は高松港周辺に展示された大きな作品。鑑賞料を払えば中に入ることができます

会期は、既に終了した春(3月20日~4月17日)を含め、夏(7月18日~9月4日)、秋(10月8日~11月6日)の3シーズンを合わせて108日間。
会場は、高松港・宇野港周辺と、直島(なおしま)、 豊島(てしま)、 女木島、男木島(おぎじま)、小豆島(しょうどしま) 、 大島(おおしま)、犬島(いぬじま)、春会期のみ行われた沙弥島(しゃみじま)、秋会期のみ開催される本島(ほんじま)、高見島(たかみじま)、粟島(あわしま)、 伊吹島(いぶきじま)といった島々です。

これらの島では、芸術祭を終えた後も展示されつづける作品が多く、やがてその作品が島の景観として島の人々の暮らしになじむことも多くあります。例えば、平均年齢が60歳以上の男木島の港には2010年にスペインの作家ジャウメ・プレンサによる近代的なアート作品「男木島の魂」が建ちましたが、今では「男木交流館」として観光客と島のお年寄りの船待ちスポットとして利用されています。
▲ジャウメ・プレンサ「男木島の魂」

アートめぐりにお得なチケットと
頼りになるガイド「こえび隊」を活用しよう!

いよいよこれから始まる夏会期に向けて、それらの見所の一部をご紹介。その前に、ちょっとだけ島と作品のめぐり方のコツをお教えします。

多くの人が利用する「作品鑑賞パスポート」は、これ1つで3シーズンの会期中(春は終了)に約200点の作品を楽しめるとてもお得なチケットです。(ただし、同じ作品の重複鑑賞は不可。別途料金が必要となる施設もあり。)
料金は、一般5,000円(税込)、学生3,500円(税込)。ほとんどの作品の鑑賞料が300円以上なので、あちこちの島を回ってたくさんの作品を鑑賞したい人におすすめします。
チケットは、会期中に高松港、宇野港、宮浦港(直島)にあるインフォメーションセンター、各島の案内所・作品受付で購入できます。
▲高松港から女木島と男木島を結ぶフェリー

また、たくさんの島をめぐりたい人におすすめなのが、「フェリー乗り放題3日間乗船券」。
中学生以上2,500円、小学生1,250円(ともに税込)で、高松港と宇野港を拠点とした8航路のフェリーに何度でも乗船できます。もちろん、「作品鑑賞パスポート」との併用もできます。
チケットは、会期中にインフォメーションセンター、関係船会社販売窓口等で購入を。

そして、それぞれの会場で作品の説明をしてくれるのが、ボランティアガイド「こえび隊」です。「こえび隊」の矢田智史さんに「瀬戸内国際芸術祭2016」の見どころをお聞きしました。
▲春会期の「こえび隊」でガイドを務めた矢田さん

「作品の多くは、作家さんが島に滞在して制作したものです。たとえば、島で材料を集めて作ったとか、島の人たちの協力を得て制作したとか。そうした島の背景を感じてもらえればもっと楽しめると思います。また、アートだけではなく島に目を向けると、自然を感じたりそこに住む人たちとあいさつを交わしたり、楽しみ方が広がりますよ」

「こえび隊」は通常、作品の受付にいるので、作品について聞きたい人は積極的に声をかけてみましょう!

女木島を歩き、新作と今年のテーマ「食」をめぐる

瀬戸内国際芸術祭は、島をめぐりアートを見るだけでも楽しめるのですが、作品を通じて、島の自然や生活文化を感じ取れるところが大きな魅力です。
特に、3回目にあたる2016年のテーマは「食」。作家が島で感じたことを作品に昇華させるように、腕利きの料理人たちが島の豊かな食材や食文化に触れ、作品としての料理を作り上げる。と言うとなんだか堅苦しくなってしまうので、おいしい料理を食べて「島にはこんなにおいしい食材があるのか」と感動する、というくらいの気持ちで楽しんでください。
そんな面白くておいしい瀬戸内国際芸術祭2016年の夏・秋会期を先取りしようと、まずは春会期の女木島に行ってきました。女木島は、高松港からフェリーで約20分。春・夏・秋会期すべて開催される島の中で一番港から近く、船に乗り慣れていない人でも訪れやすい島です。
▲改装した古民家の中に、レアンドロ・エルリッヒの「不在の存在」が展示され、そこにレストラン「イアラ」が併設されている

まず初めに鑑賞したのは「不在の存在」。その名のとおり、音と気配と目の錯覚でまるで誰かがいるような、いないような、そんな不思議な気分になる体験型の作品です。写真撮影不可のためお見せできませんが、ぜひ実際に体験してみてください!

「不在の存在」で不思議な時間を味わった後、併設されたレストラン「イアラ」へ。女木島の「食」をテーマにした作品として注目を浴びているレストランで、会期中のみオープンしています。食べられるのは、一皿に瀬戸内の旬の移り変わりを表現しているという「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」のみ。
店に入り、まず提供されたのが、香川県の高瀬町でとれる高瀬茶。香川県産のお茶を使うこだわりように期待が高まります。
▲高瀬茶(左)と、とれたてニンニクのフレッシュな香りが漂うスープ(右)

次に出てきたスープは鯛のあらで出汁をとり、島でとれたキャベツやニンニクを使った味わい深いスープ。一口ずつ、香りと旨みを味わいながらいただきます。

スープを飲み終えたころに提供されたのが、和食のような、フレンチのような、目にもうるわしい料理の数々が盛りつけられたワンプレートです。
▲香川の素材で作った品々がワンプレートになった「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」(1人前 1,500円・税込)。春会期のメニューは、右上から時計回りにハマチのカルパッチョ、鯛とサワラの瀬戸前寿司、クネル、穴子の煮付

瀬戸内海のサワラと鯛で作った押し寿司は、女木島の柑橘で仕上げた酢飯がとってもさわやか。鯛やイカのすり身を泡立てた卵白と合わせたクネルは、ふわっふわの食感。瀬戸内海で養殖がさかんな海苔ソースで食べると魚介の旨味が際立ちます。

口のなかでほどけるほどやわらかい穴子の煮付けは、ソースの隠し味にアルゼンチン産ワインを使い、洋風な味わい。ちなみに、なぜワインがアルゼンチン産かというと、「不在の存在」の作家レアンドロ・エルリッヒがアルゼンチン出身だからだそうです。
▲穴子の煮付け

こちらには、香川の地酒や瀨戸内の柑橘を漬け込んだサングリアなどもあるので、ぜひ料理と合わせて楽しんでみてください。

「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」は、魚や野菜はもちろんのこと、最初に出された緑茶から塩や醤油などの調味料に至るまで、すべて香川県産を使用している徹底ぶり。
今回ご紹介しているのは春会期のメニューですが、夏・秋会期ともにまた新しい味を演出してくれるというのでワクワクします。
▲「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」を監修した出張料理人のソウダ・ルアさん(写真中央)

「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」は、ソウダ・ルアさん(日本人)が、その土地の食材の魅力をいかしたメニューをと考え生まれたもの。
「島に滞在して島の人たちと仲良くなるうちに、近所のおじさんやおばさんが畑の野菜を届けてくださるようになりました。夏会期・秋会期のメニューにはもっと女木島の食材を楽しんでいただけると思います。これから夏に向けた島の食材を探していきますが、秋には女木島産のピーナツを使ったメニューを提供したいと考えています」

見た目の美しさだけでなく、料理作品を通して女木島の旬を教えてくれる「女木島キュイジーヌと瀬戸前寿司」、ぜひ味わってみてください。

ほかにも、食をテーマにしたプロジェクトは、豊島の「イル・ヴェント」で提供される「豊島の郷土料理の定番!呉汁(ごじる)とさくら寿司セット」や、小豆島の「せとうちのずかん」で飲める島の果物や野菜を使ったジュース、大島の「カフェ・シヨル」で味わえる島の果物や野菜を使ったお菓子などがあります。アートとともに食めぐりも楽しみましょう!

有名アーティストから地元デザイナーまで
女木島の注目作品が続々と!

女木島には、ほかにも注目作品がたくさん。そのいくつかをご紹介します。
まずは、休校中の女木小学校にある大竹伸朗(しんろう)さんの作品「女根/ めこん」。
▲大竹伸朗「女根/めこん」

このタイトルは、女木島の“女”と「生命力」の象徴としての“根っこ”、そして作品が島の人々の憩いの場として“根付いていくこと”への願いを込めて付けられたそうです。
もともとある使い古したものたちをコラージュして作られた、家一軒ぐらいの大きさはあろうかというこの作品は、おもに船材などを使ってできているそうです。近くに立ち見上げると、感覚的に組み合わさった数え切れないほどの廃材やネオンの建造物に圧倒されます。
2013年に初登場したこの作品は、会期ごとに増殖しているそうなので、一度見たことがある人もまた新しい印象を受けるでしょう。展示場所が、かつて子どもたちの学び舎だった小学校の中庭なだけに、混沌とした大人の世界が際だっているように感じました。

次に、盆栽師の平尾成志(まさし)さんと香川県のクリエイター集団「瀬ト内工芸ズ。」のコラボレーションで生まれた「feel feel BONSAI」。
▲平尾成志×瀬ト内工芸ズ。 / 香川県盆栽生産振興協議会「feel feel BONSAI」のメインとなる大広間

神社の敷地内にある空き家を使い、盆栽をいかした新たなアート空間を演出しています。大小の盆栽をあちこちに配した大広間のほか、お風呂の浴槽が盆栽になっていたり、小部屋に盆栽と瀬戸内海の風景を重ねたインスタレーションがあったりとなかなか奥が深い作品です。
▲お風呂にまで盆栽が!平尾成志×瀬ト内工芸ズ。 / 香川県盆栽生産振興協議会「feel feel BONSAI」

次に、倉庫を活用したシアター仕立ての建物で、絵画と映像によるインスタレーションを発表する「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」(依田洋一朗)。館内のペインティングが古き良き時代の映画館を思わせます。どんな映像が見られるのかは、行ってからのお楽しみ。
▲依田洋一朗 「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」

作品を探して島内を歩いていると、島のおじいさんやおばあさんに出会います。見つけたら、積極的に挨拶しましょう。こうしたコミュニケーションも「瀬戸内国際芸術祭」の楽しみのひとつです。
▲島で人とすれ違うときは挨拶を。こんなに素敵な笑顔を返してくれますよ

ほかにも作品がたくさんありますが、そろそろ帰りのフェリーの時間。
最後に、海沿いに佇む大きな作品を見て帰ります。大航海時代をイメージした禿鷹墳上(はげたかふんじょう)さんの「20世紀の回想」からは、グランドピアノの音色が波の音と呼応するように流れています。
▲禿鷹墳上「20世紀の回想」

今回めぐった女木島は、要領がよければ半日ほどで回れます。「瀬戸内国際芸術祭2016」は、夏・秋会期もそれぞれの島ならではのアートと風景が楽しめるので、いろいろなプランが立てられそうです。今年の夏と秋は、ぜひ瀬戸内で島とアートの旅を!
山下亜希子

山下亜希子

エディター・ライター。広告営業から転身後、旅情報誌の編集から撮影・執筆まで一人で担当し5年間ほど四国をあっちこっち取材。近年は、移住者インタビューであらゆる価値観に出会ったり、瀬戸内の島々を旅するように取材したり。そうしてできた書籍や雑誌は、『瀬戸の島あるき』、『瀬戸の島旅』、『せとうち暮らし』ほか。

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