1日4組限定の能登の宿「ふらっと」。絶景露天風呂と獲れたて魚介のイタリアンを楽しむ

2016.07.02

オーストラリア人シェフのベンさんと女将の船下智香子さん夫婦が営む民宿「ふらっと」は、石川県の能登町矢波の高台、日本海と立山連峰を一望する絶好のロケーションに建つ1日4組限定のお宿です。自然に包まれながら露天風呂に浸かってリフレッシュしたら、能登の素材をふんだんに使った自慢のイタリアンディナーが待っています。そんな能登を大満喫できる「ふらっと」へ行ってきました。

▲献立は、その日の朝獲れた魚介を見て決められるので当日のお楽しみ。どの季節に行っても一番旬な魚料理が味わえます

ご両親が営まれていた宿を引き継ぎ、船下智香子さんとオーストラリア人シェフのベンさんが結婚して始めた「ふらっと」は、2016年で19年目を迎えました。
能登の古き良き家の趣と、能登の伝統食を受け継ぎながら、雄大な自然と食をより楽しくのびのびと満喫できる工夫を凝らしたここには、海外からも大勢の旅行客が訪れています。
▲海沿いの道をググっと登ったところに佇む「ふらっと」
▲エントランスは新緑にあふれていました
▲出迎えてくれた智香子さんとベンさん。着いた途端に話が弾みそうな明るさです

「ふらっと」では、廊下やダイニングルーム、各客室にも能登のアーティスト作品が飾られ、宿泊客の目を楽しませてくれます。
▲ダイニングルームの窓際のテーブルには能登のアーティストの作品が
▲作品は購入可能。地元の陶芸作家やガラス作家の作品は海外からの宿泊客にも人気です

4室ある客室は10畳の和室で、その全ての窓から海と庭が見え、四季折々の自然を味わいながらくつろげる造りになっています。ここへきたらテレビをつけるよりも窓を開けて鳥の声や木々のざわめきを聞いているだけで癒されそうです。
▲一室限定の檜風呂付きのお部屋

海の向こうの立山連峰を一望!手作りの露天風呂で絶景に感動

そんな「ふらっと」の絶好ロケーションを満喫できる場所の一つが、庭にある手作りの露天風呂です。
▲庭の一角にある露天風呂用の脱衣小屋。この小屋も全て手作りというから驚きです

季節の花が咲く庭の中に佇む小さな脱衣小屋の先には、石造りの露天風呂が待っています。こちらは同地で民宿を運営されていた智香子さんのお父様が、数年間かけて作ったそう。石畳の床に、湯船は檜のお風呂。シャワースペースも備えています。
湯船につかると日本海と岬の町並みが一望でき、緑に囲まれながら涼やかな風のざわめきに包まれます。能登では立山連峰が見えると「明日の天気は雨だね」と言われていますが、訪れた日はその立山連峰を拝む事ができました。
▲お風呂から見えた立山連峰(いつも見えるわけではありません)。言い伝え通り、この日の夜に雨が降り出しました
眼下に広がる海と立山連峰、澄んだ空気に熱めのお風呂。まさに旅行の醍醐味がここにありました。※露天風呂は22時までの使用。11月~3月の冬季はお休み

いしり、果物ドレッシングまでこだわりの手作り!

イタリアンシェフのベンさんが作るのは料理だけではなく、ドレッシングや調味料、保存食まで多岐に渡ります。中でもいろんな料理に使っているというのが、自家製の「いしり」。いしりとは、能登地方に何百年も前から伝わる、新鮮な真イカの内蔵と塩で作られる魚醤のことです。「いしりは大事なバックフレーバー」と話すベンさんは、智香子さんのご両親から「いしり」の製法を受け継ぎ、3年程発酵熟成させてまろやかさを出したものを使っているといいます。

さらに新鮮な能登の魚介を引き立てるのは、旬の野菜や果物を使った自家製ドレッシング。香味野菜だけでなく、地元の苺や柿といった果物もドレッシングにして様々な料理に味と彩りを添えています。
▲自家製の苺ドレッシングをかけて仕上げにはいるベンさん

新鮮な魚介と調味料が混じり合った、ふらっと自慢の能登イタリアンとはいかに?

お待ちかねの「ふらっと」ディナー。さて今夜の魚介は?

「ふらっと」の夕飯は18時半から、大広間で他の宿泊客の方々と同時に始まります。1皿目のスープから前菜、メイン、デザートまで計8皿のコースに食後の飲み物もついています。

ここからは旬を味わえる出来立てのお料理を1皿ごとにレポートしていきます。

1皿目は「大根といしりのスープ」。輪島塗りのお椀で頂きます。
大根と言われないとわからないほど、クリーミーで温かいスープです。どろりとした食感のスープを飲むと、鼻にぬけてゆく魚介の香りがあります。これこそが「いしり」の独特な風味で、この地にとってはおふくろの味とも言える懐かしいものです。

続いて「桜鱒のカルパッチョ 能登赤崎苺ドレッシング添え」。
桜鱒には竹炭塩がかかっており、控えめで新鮮な素材の味が引き立ちます。また、甘い香りが立つ自家製の赤崎苺ドレッシングを絡めて頂くと、脂ののった桜鱒のまろやかな味わいにツンと苺の酸味が重なります。食べ終わると口の中が春の香りで爽やかになりました。

3皿目は「サザエと干し柿のマリネ」。自家製の柿酢がかかっています。
サザエのこりこりとした食感、その中に時々干し柿の甘さが広がる面白い一品です。噛むごとにパセリの香りが広がったり、干し柿がバナナのような甘い味に感じたり。さらに柿酢の控えめな酸味やサザエの香りが出てきたりと、海の幸とフルーツが遊んでいるような楽しさです。

そして絶品だったのが、4皿目の「ガーリック蛸と能登パン」。
スペイン料理のアヒージョのようにオリーブオイルが熱々に絡んだガーリック蛸をパンにのせて頂くと、「うまーい!」と誰もが声に出してしまうほど。吸盤のプチプチした食感に、数種のハーブの香り、タコの出汁とガーリックのコクがもうたまりません。そのままだと少し濃いめの味ですが、柔らかいパンとの相性がぴったり。一滴残さずソースをパンにつけて食べました。

ちなみに、このパンはふらっとから車で2分のパン屋さん「能登パン」で作られたものだそうです。

お次は「おこぜのフリッター 柚子果汁添え」。身とヒレ付きの頭とが別々に揚げられて出てきました。
まず、身のほうはまさかのふかふかな食感に驚きます。柚子の酸味が柔らかいおこぜの白身に染み渡ります。一方でヒレ付きの頭は煎餅のような香ばしさ。カリッとしたあとにジューシーさが舌にでてきます。

一つひとつ味わい深い料理を堪能したところで、6皿目にしてメインのひとつ、「自家製生麺のいかクリームパスタ」が登場。運ばれてきた途端にチーズの香りが立ち、濃厚でクリーミーな味わいを予感させます。
しかし一口頂いてみると、思いのほかクリームはさっぱりとしてくどさは全くありません。そして何よりイカの柔らかさは拍子抜けするほど。石川県の県魚でもあるイカは、新鮮さが命。獲れたてのイカは色も鮮やかで驚くほどの柔らかさです。

優しいクリームの味に包まれた麺とイカのコンビネーションには、ベンさんの作る能登イタリアンの真骨頂を感じます。なお、付け合わせのサラダは自家栽培の無農薬野菜とバルサミコ酢のドレッシングで頂きました。

随分お腹も満たされてきましたが、ここで2つ目のメイン「さわらのグリル」が運ばれてきました。
柔らかくほぐれる脂ののったさわらにガーリックが効いたトマトソースを絡めて頂くと、ソースのコクに驚きます。海鮮の旨みを凝縮したようなソースの隠し味にもやはり「いしり」が入っています。

それで味わったことのない旨みがでているのか…と、魚介の風味とトマトの酸味のコンビネーションに唸らずにいられません。ソースまで美味しいのがイタリアンの醍醐味、深い味わいなんだなと気づかされました。

そして、最後のデザートは「赤崎苺のソルベ」。涼しげなガラスの器に真っ赤なソルベが映えています。
美味しさに興奮した胃とテンションを落ち着かせるように、ひやっと酸味の効いた苺のソルベが五臓六腑に染み渡ります。

新鮮な海の幸を食べながら能登の郷土の味を同時に知る、これぞふらっとの能登イタリアン。素材の美味しさはもちろんのこと、いしりやドレッシングといった手作りの調味料にも能登の里山里海からの恵みが生きていました。

朝は海を眺めながら深呼吸。
能登ごはんを満喫して満足度120%

夜に降り出した雨が朝には上がり、爽やかな空気の中に鳥達のさえずりが聞こえてきました。部屋の窓を開けて深呼吸すると、身も心も刷新されるようです。部屋に備えられている自家栽培の「杜仲茶(とちゅうちゃ)」を頂いてから8時にスタートする朝ご飯へ。
▲和風の朝食はおかず7品に白いご飯と味噌汁(ご飯はおかわり自由)。ここでも自家製杜仲茶が付きます

昨夜あんなにお腹いっぱいだったのに、おかずに出された「いしりごはんのかいべ」を見て早速食欲が沸き立ちます。
▲囲炉裏であぶられる「いしりごはんのかいべ」からは香ばしい香りがただよう

そして、ぜひ味わってほしいのが「こんかいわし」です。こんかいわしとは、北陸地方に昔から伝わる越冬の為の保存食で、脂ののったいわしと糠、唐辛子、塩を樽で漬けて発酵熟成させたもの。ベンさん手作りのこんかいわしは、中能登町の「いまい農園」の無農薬の糠と自家製唐辛子、能登の塩など、こだわりの調味料を使って漬けられた1年半ものです。
▲囲炉裏で炙られたこんかいわしは糠の香ばしさといわしの旨みが重なり、これでご飯二杯はいけます

「こんなにいい材料を使っていて美味しくなかったらおかしいよねぇ」と爽快に笑う智香子さん。糠と塩の強いこんかいわしを熱々のご飯にのせて食べると他にはない味わいになります。この例えようのない珍味は、ぜひ能登に来たら食べて頂きたいものです。

その他、自家製の漬け物、鯛と椎茸がふんだんに入った味噌汁、鯛の酢の物、山菜の胡麻和えなど、手作りの郷土料理がズラリと並びました。能登らしい朝ご飯からは発酵食やいぶした懐かしい香りが漂い、噛めば噛むほど旨みが広がるものばかり。ゆっくりとよく噛んで、いつもよりも充実した朝食の時間になりました。
▲ふらっと自家製「いしり」(100ml・税込756円)は購入もできます。能登の隠し味をぜひお土産に

新鮮な料理と絶景、元気で明るいご夫婦に生きる喜びを分けてもらえる「ふらっと」。また違う季節にも訪れたくなる、満足度120%のこの宿で、次の休みは絶品能登イタリアンと絶景露天風呂を味わってみませんか。
中乃波木

中乃波木

東京に生まれ、幼少期はインドネシア、芦屋と移り住む。13歳の夏に母と二人で能登に移住したことから能登の原風景に魅了される。美大卒業後、広告制作会社amanaに入社。アシスタントを経て独立後2007年に写真集「Noto」を出版(FOIL刊)。2010年より季刊誌「能登」にてフォトエッセイ大波小波を連載中。写真家としての活動を軸にイラストレーター、ライター、ムービーカメラマンとしても活動している。(編集/株式会社くらしさ)

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