エメラルドグリーンの湖面を空中散歩。寸又峡「夢の吊橋」を渡り、大井川鐵道に乗る!

2016.08.12 更新

南アルプスの麓、温泉郷としても知られる静岡県の寸又峡(すまたきょう)。大間ダム湖に架かる長さ90m、高さ8mの吊橋は、その幻想的な美しさが評判を呼び、旅行口コミサイトで、「死ぬまでに渡りたい世界の徒歩吊橋10」に選ばれるほど。大井川鐵道に乗って、幻想的な吊橋を体験してきました。

旅の始まりは、大井川鐵道「千頭」駅から

蒸気機関車(SL)が走ることで知られる大井川鐵道。千頭(せんず)駅は、金谷から続く大井川本線の終着駅であるとともに、日本で唯一のアプト式鉄道が走る南アルプスあぷとラインの乗換駅でもあります。
▲大井川の上流、山々に囲まれる千頭駅

この線路の正式名称は、「大井川鐵道井川線」。大井川水系の発電用ダム建設に使われた専用線がその始まりと言われています。千頭駅から井川駅間の25.5kmを結び、61のトンネルを抜け、55の鉄橋を渡りながら、ゆっくりと奥大井の雄大な景色を満喫できます。
※接岨峡(せっそきょう)温泉駅~井川駅間は、土砂崩れのため運休中。再開は2017年3月頃の見込み。

今回は、千頭駅からアプト式鉄道で奥泉駅へ向かい、そこからバスに乗り換えて寸又峡を目指します(千頭駅発、寸又峡行きのバスもあり)。
▲新緑の山に映える赤いミニ列車に乗って、いざ奥泉駅へ
▲片側に2席、反対側に1席が並ぶ、こじんまりとした車内。車両間の移動はできません

もともと資材運搬用トロッコとして建設されたこの線路。たくさんのカーブや小さなトンネルに合わせたスモールサーズの懐かしい佇まいの車両が使われています。シーズンには展望車も登場し、多くの人でにぎわいます。
▲手動の窓を開けると、心地よい風が入ってくる

ところどころで車掌さんが車内放送のマイクを使い、沿線の見どころを案内してくれます。また、千頭駅からなら、進行方向右側の席(2席側)がおすすめ。大井川の渓谷に架かる橋を眺めることができます。
▲山の緑と赤い鉄橋のコントラストがきれい

大井川の景色を楽しみながら木々の間を抜けること約30分。奥泉駅に到着。そこからさらにバスに揺られること約30分。水車のモニュメントがある寸又峡温泉入口を抜け、温泉街を走ると、終点「寸又峡温泉」が見えてきました。

1周の目安は90分、寸又峡プロムナードコースを歩く

寸又峡は「美女づくりの湯」としても知られる温泉場。南アルプスの麓から湧き出る無色透明の天然温泉は、湯上がりの肌がつるつるすべすべになると言われています。散策の帰りに温泉にゆっくりつかって、疲れを癒してもいいかも。奥泉駅経由、千頭駅行きのバスは1時間30分~2時間に1本ほどなので、帰りのバスの時刻は忘れずにチェックしてください。

夢の吊橋までは、「寸又峡プロムナードコース」というハイキングコースを行きます。かつて森林鉄道として使われていた軌道敷跡を利用した道で、夢の吊橋のほか、「飛龍橋」や「尾崎坂展望台」があり、寸又渓谷の大自然を存分に楽しむことができます。
▲コース入口横にある環境美化募金案内所では、寸又峡のイラストマップを配布しています
▲寸又峡周辺のハイキングコースを紹介したイラストマップ
コースをしばらく進むと、眼下に見えてきたのは、長さ96m、高さ11mの吊橋「猿並橋(さんなみばし)」。この辺りに住む猿の群れが、山から寸又峡温泉への行き来に並んで渡る姿を見て、この名前が付けられたとか。

入口から20分ほど歩くと、「天子(てんし)トンネル」に到着。昭和43(1968)年まで森林鉄道のトンネルとしても使われていた場所で、中はひんやりと涼しく、汗ばんだからだに心地いいです。
▲長さ210m。薄暗く、水たまりもあるので、歩くときには注意
▲トンネルを抜けると、川の水が一気に青くなり、小さく夢の吊橋が見えてきました!

しばらく行くと吊橋へと続く下り坂が見えてきます。が、その先にある登り階段がかなりきついということなので、今回はそのまままっすぐ「飛龍橋」に向かう逆コースを進みます。
※紅葉シーズンなどの繁忙期には、夢の吊橋は一方通行になるため、反対側(今回のコース)から渡ることはできません。
▲飛龍橋まで約15分。渓谷に浮かぶ姿が、飛ぶ龍のように見えたことから名付けられたとか
▲途中にある「子知らずの険」。道中、露わになった大きな岩を見ることも
▲飛龍橋の手前から振り返ると、雄大な渓谷美が!
▲飛龍橋に到着。ここもかつて森林鉄道のトロッコが走っていた場所です
▲高さ70mの飛龍橋の下には、木々に包まれた渓谷が見えます

「飛龍橋」を渡り、次は「21世紀に残したい日本の自然100選」に選ばれた「尾崎坂展望台」を目指します。
▲標高560mの場所にある、尾崎坂展望台。自動販売機や簡易トイレもあるので休憩にぴったり
▲奥に見える建物は大間ダムの一部。秋には山が赤や黄色に染まり、初夏とはちがう印象的な眺望を楽しめます
▲展望台入り口には、ダム建設や森林伐採の運搬として使われていた機関車や運材台車が保存されています

神秘的な美しさに心奪われて

展望台からすぐ脇にある「えっちら階段」を下ります。木々の間からダム湖のエメラルドグリーンがのぞき、まるで空に下りて行くような不思議な感覚。

この青さは「チンダル現象」によるものだそう。寸又峡の水はとてもきれいで、川の底まで見えるほど。この水に含まれるわずかな微粒子が、波長の短い青の光を反射し、逆に波長の長い赤を吸収するため、この美しい景色が生まれました。
▲遂に「夢の吊橋」に到着!長さ90m、一度に渡れるのは10人までの注意書きが
▲吊橋の端は安定していますが、真ん中に進むに従って揺れが増していくようです。ときおり吹く風にどきどき
▲底が見えるほどの透き通った水
吊橋の渡り板は2枚だけで、幅は40cmほど。途中に退避スペースはありますが、すれ違うには勇気がいります。高さ8mはビル3階ほどですが、青色のせいか距離感が曖昧になって、まるで空中に浮かんでいるかのような夢見心地な感覚。
▲遠くに見えるのが大間ダム

吊橋の真ん中で女性が恋の成就を願うと、その想いが叶うと言われています。また、静岡県が県民から募集した「恋愛・結婚・子宝」にまつわる噂のスポット「ふじのくに エンゼルパワースポット」で第3位に選ばれるほど人気のパワースポットでもあります。愛の象徴とも言われる宝石のエメラルド。そのエメラルド色に包まれ、大自然のパワーを借りれば、あの人に想いが届くかもしれませんね。

奥大井の渓谷を走る、日本唯一のアプト式鉄道

夢の吊橋の後は帰路についてもいいですが、奥大井の景色を楽しめる南アルプスあぷとラインに乗車するのがおすすめ。バスで千頭駅に戻り南アルプスあぷとラインに乗って、終点の「接岨峡温泉」を目指しましょう。

そもそもアプト式鉄道とは、線路の真ん中に施設された「ラックレール」という歯形レールをかみ合わせて、急な坂を登り降りする鉄道のこと。スイスの山岳鉄道が世界的にも有名ですが、日本でこれが見られるのはここだけ。奥泉駅の先にある、アプトいちしろ駅から長島ダム駅間は、1,000m進む毎に90m高くなる日本一の急勾配。この1区間のみアプト式電気機関車を接続します。両駅では車両から降りて、接続と切り離しのシーンを間近に見ることができます。
▲アプト式電気機関車がやってきました
▲合体!この大きな機関車が列車を後ろから押し、急勾配を登ります
▲接岨湖(せっそこ)を堰き止める長島ダム。高さ109m、幅308m、貯水量7,800立方メートルの大スケール
▲湖畔には野生の鹿を見ることも
▲秘境、奥大井湖上駅につながるレインボーブリッジ。高さはなんと70m!遊歩道が併設され、すぐそばを列車が走り抜けていきます
奥大井湖上駅があるのは、長島ダムがつくる接岨湖に飛び出した半島状の山頂。レインボーブリッジを徒歩で渡ると対岸に抜けられます。2つの赤い橋に挟まれ、エメラルドグリーンの湖の中にぽつんと浮かぶ姿は、まるでおとぎの国に訪れたかのような不思議な景色。

駅の一角には幸せの鐘「Happy Happy Bell」や「愛の鍵箱」があり、「ふじのくにエンゼルパワースポット」にも登録されています。2016年6月には「奥大井恋錠駅」(おくおおいこじょうえき)の愛称が採用され、ますますロマンチックな駅になりました。
▲終点の接岨峡温泉駅に到着。ここで折り返して千頭駅へ戻ります

なんだかずいぶん遠くまで来たような感覚です。山と水に囲まれ、手つかずの自然が残る奥大井と寸又峡。非日常的とも言えるような自然の美しさに触れるうちに、なんだか自分の気持ちに素直になれそうです。大切な人と一緒に寄り添いながら訪れてみてはいかがでしょうか。
大杉晃弘

大杉晃弘

大阪にて結婚・住宅情報誌の制作ディレクターとして、企業の販促活動に従事。その後、地元浜松へUターン。編集、文章、写真の仕事をしつつ、活版印刷工としても修行中。

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