北海道開拓の歴史から生まれた、世界唯一のばんえい競馬

2017.06.21 更新

「ばんえい競馬」とは、「ばん馬」という馬に鉄ソリを曳かせ、途中2カ所障害(坂)がある直線200mのコースで競うレース。北海道開拓当時の農耕馬のお祭りが起源です。世界で唯一開催されている帯広競馬場ではレースの観戦はもちろん、歴史文化を学びつつ、美味しい競馬場グルメでお腹もたっぷり満たされます。開拓時代から続く「ばん馬」の競走を眺めに、いざ帯広競馬場へ!

▲間近で迫力ある「ばん馬」の雄姿を眺められます

「ばんえい競馬」って、普通の競馬とどう違うの?

北海道帯広市にある帯広競馬場で開催されている、世界唯一の「ばんえい競馬」。馬に鉄ソリを曳かせ、途中2カ所障害(坂)がある直線200mのコースで競うレースです。JR帯広駅前から車で約10分、帯広競馬場へ観戦しに来ました。
▲騎手は馬に跨るのではなく、馬が曳く鉄ソリに乗って馬を操ります
▲一般的な競馬は鼻先が先に達した馬が勝ちですが、「ばんえい競馬」は、鉄ソリの後ろまで全て通過した馬が勝ちです

一般的な競馬は、サラブレッドが颯爽と駆け抜けスピードを競いますが、「ばんえい競馬」は違います。最終的にスピードを競うことに変わりはありませんが、馬が重いものを曳くパワーと堪える持久力、他の馬との駆け引きをする騎手の力量を競う勝負です。
▲あまり先へ急ぐと馬がばててしまうので、馬の調子と他の馬を見ながら、駆け引きをするようにレースが展開します

「ばんえい競馬」を初めて見たという方は、今までの競馬のイメージとはまるで違うと驚くはずです。
このレースに登場する馬は「ばん馬」とも呼ばれ、ずんぐりむっくりとしたいでたちで、かなり巨大。なんと、サラブレッドの2倍も体重があるそうです。「ばん馬」の多くは、フランスのペルシュロン種やブルトン種、ベルギーのベルジャン種などの混血馬。体格が大きく、持久力がある種をかけ合わせて誕生した、パワフルな馬なのです。
▲「ばん馬」、とーっても大きいです!

「ばん馬」が曳く鉄ソリには、重量物がずっしり積まれます。馬のクラスによって重量物の重さは変わりますが、最高は1トン!馬は力をふりしぼり、重~い鉄ソリをのっしのっしと曳いて進むのです。特に障害ではパワーを使うので、坂を登る前に一度止まって馬の呼吸を整えつつ、他の馬との間合いを見計らったりけん制したりしながら、坂へ挑んでいきます。
▲障害はレースの見どころ!ここで順位が大きく変動します

そのため、ぱっと見ではとてものんびりとしたレースに見えるかもしれません。でも、間近で見ると、巨大な馬がパワー全開で突き進む様子はかなりの迫力!
頑張って坂を登ろうとする馬、坂の途中で疲れて休んでしまう馬、馬の体力と機嫌を見ながら操る騎手。一般の競馬のような華麗さはありませんが、馬と人間の熱い魂とみなぎる力がひしひしと伝わってくる、人情味(馬情味!?)溢れるレースなのです。
▲馬も人間も必死!

「ばんえい競馬」の起源は、北海道開拓当時の農耕馬のお祭り

「ばんえい競馬」の歴史については、開催地である帯広競馬場に隣接する観光スポット「とかちむら」の中にある「馬の資料館」で詳しく知ることができます。

「ばんえい競馬」は、明治時代に北海道の農民の暮らしの中から生まれました。パワフルな「ばん馬」は、開拓当初は切り出した木材を運ぶ役目として、その後は畑を耕す農耕馬として重宝されていました。
▲開拓時代の「ばん馬」のイメージ

当時、馬の価値や力を試すため、2頭の馬を互いに引っ張らせて、綱引きのように競い合わせていました。その後、丸太を曳いて重い荷物をどれだけ運べるかを競うようになり、明治時代の終わり頃には農耕馬の祭典として定着するようになったそうです。
▲馬の資料館には、昔の農機具なども展示されています

「ばんえい競馬」が公営競馬となったのは、昭和21(1946)年。終戦後の混乱期、食糧事情を改善するために馬の畜産が提唱されたことと、戦時中に軍用馬として徴用されて激減した馬の増産を促す目的でスタートしました。

北海道営ののち、帯広市のほか旭川市、北見市、岩見沢市と4市共同で長年運営してきましたが、平成19(2007)年度の開催からは帯広市が単独で運営しています。
開拓の歴史が刻んだ、世界で唯一の「ばんえい競馬」。現在は帯広競馬場でのみ楽しむことができます。
▲馬の資料館内、じっくり見ていくとかなり見応えがあります

馬の資料館には、北海道開拓の立役者で、農業を長年支えてきた「ばん馬」の歴史と、「ばんえい競馬」の成り立ちなど、情報がぎゅーっと凝縮されています。馬好きな方や歴史文化が好きな方は、時間にゆとりをもって訪れてみてください!

バックヤードツアーに参加して、「ばんえい競馬」の裏を探ろう

帯広競馬場では、レース開催日限定で、関係者しか入ることができない競馬場の裏側を見学するツアーを開催しています。
▲14:00までに受付をしたのち、参加者が集まり説明を聞いてからスタート

最初に訪れる場所は、装鞍所(そうあんじょ)というところ。
▲今日のレースに出走する「ばん馬」がやってきます

出走馬の体重測定をはじめ、馬体の検査と蹄鉄(ていてつ)の検査、馬の健康状態のチェックをする所です。もちろん、一般の人が入ることができないエリア。ツアー参加者だけの特権です。
装鞍所の後は、マイクロバスに乗り厩舎(きゅうしゃ)地区を巡ります。車中からの見学で下車することはできませんが、馬が生活している場所や、調教師をはじめ関係者が生活するエリアを巡ります。
▲訪れた日はラッキーなことに、タイミングよく蹄鉄を付け替えている様子を見ることができました

ツアーの最後は、マイクロバスを下車し、競馬場内にある旧実況室へ。過去に実況室として使用していた見晴らしのよい部屋からレースを観戦!
すぐ隣には現在使用されている実況室も見え、実況放送の様子を間近で見学することができますよ。

「ばんえい競馬」観戦するならここ!

観戦ポイントは複数あるので、人により好みは分かれるところ。
座って全体を見渡したいのならば、スタンドで観戦。まわりで声援を送る人たちに囲まれ、熱気ムンムン!
▲スタンド席は上から眺められるので、レース全体を見ることができます

落ち着いてゆったり眺めたい方は、「プレミアムラウンジ」というVIPルームもあります!1人500円(税込)で一日利用OK!出入りも自由で、利用者専用のトイレもあります。
▲カウンター席には電源もあるのでスマホ充電も安心

テーブル付きのソファ席か、窓際のカウンター席のどちらかを選べ、自分だけの専用席として使用できます。
▲VIPルーム専用のテラス席も!

「ばん馬」の迫力を体感したい方は、レース場の脇で観戦。
▲砂埃がここまで届くのではと思うくらい、近くで迫力ある様子を眺められます

重たい鉄ソリを曳くレースなので、馬の歩みのスピードも緩やか。馬の進み具合に合わせ、スタート地点からゴール地点まで歩いて見学することもできるのです!猛スピードでサラブレッドが走る通常の競馬ではありえない観戦方法ですよね。
▲馬の動きにあわせて観戦者もみな移動

一攫千金!?いざ、勝負!

「ばんえい競馬」の馬券購入や払い戻しは、一般の競馬と概ね同じシステム。20歳以上であれば100円から購入でき、発売所の窓口や発売機で馬券を買い、的中馬券は払戻機で払戻金を受け取ります。

帯広競馬場では、建物1階と2階に一般向けの発売所があり、3階の「プレミアムラウンジ」内に専用の発売機があります。
▲2階にある発売所。競馬新聞に見入る人、窓の外の競馬場を見下ろす人、馬の選び方は人それぞれ

ただ、競馬をやったことがない方は、買い方もよくわからないですよね。そこで、はじめての方向けに、1階には馬券の買い方などを案内するビギナーコーナーもあります。ただし、予想屋ではないので、どの馬があたるの?と聞いても答えられないのであしからず。
▲購入する用紙(マークシート方式)の書き方など、基本的なことを教えてもらえます

いざ、勝負!
初心者なので穴場狙いの高倍率の馬には目もくれず、勝つ可能性が高そうな人気の馬を選んでみました。100円玉を発売機に入れ、馬券を購入。馬券は8種類ありますが、一番シンプルな、1位の馬を当てる「単勝」で勝負!さて、100円がいくらに化けるか!?せめてコーヒー1杯飲める位になればいいな~と、淡い期待を胸にスタンドで観戦!
▲あれー、先頭の馬がゴールに近づいているのに、私が買った馬はまだ坂を越えられない…

残念ながら、あっけなく敗退。私が買った馬券は紙くずと化しました…。

観戦しつつ、美味しいグルメも!

歴史を学び、競馬場の裏側を知り、観戦に熱中していると、だんだんお腹が空いてきてしまいます。空腹では応援もできません!最後に、おすすめの競馬場グルメを2つ紹介します。

まず一つ目は、競馬場内の屋台で10年間営業している「田中屋の焼とり」。競馬ファンのほか、観戦せずこの味だけを求めてやってくる人もいるという、人気グルメです。
▲屋台に立つ田中さん。以前はお肉屋さんを営んでいました
▲8種類のスパイスで味付けした鶏モモ肉を炭火で焼きます
▲「若どりのチキンコロコロステーキ」(550円・税込)」。から揚げくらいの大きさの鶏モモ肉がパックいっぱいに入っています。では、いただきま~す!

辛すぎず程よい塩気と旨みがじわじわっ!未だかつてこんな美味い炭火焼に出会ったことがない、と言い切れるほどの美味しさです。これはひと口食べたらやめられません!

もう一軒は、帯広競馬場に隣接する「とかちむら」にある「million sante(ミリオンサンテ)」。
▲競馬場の雰囲気とは一転、ゆったり落ち着いて過ごせるお店です

「十勝の豊かさを食べる」をコンセプトにしたお店で、帯広市を中心とした十勝地方の豊かな食材を使用したビストロ料理店です。
▲「十勝産の素材が美味しいって感じてもらいたいです」と語る代表の田中さん

ここでの一番人気はラクレット!
アスパラ、ラディッシュ、ムラサキキャベツ、ノーザンルビー(ジャガイモ)、シイタケなど十勝産の10数種の野菜ローストとバゲットに、新得町の「共動学舎」産のラクレットチーズをかけて食べます。
▲「とかちむら野菜のラクレットチーズかけ(スープ・サラダ・バゲット付)」(1,200円・税込)。たっぷりの野菜に、チーズをたら~っと

もう一品おすすめは、十勝産の豚肉や牛肉などを食べ比べできるセットメニュー。訪れた日は、十勝各地のポーク肩ロースの食べ比べをしました!
▲「十勝ポーク肩ロース食べ比べ」(1人前1,500円、2人前2,500円・各税込)。写真は1人前よりちょっと多めに盛ってもらいました

この日のお肉は、中札内(なかさつない)村産の「十勝野ポーク」、幕別町産の「どろぶた」の燻製、池田町産の「黒豚」。それぞれローストしたお肉を、燻製塩、マスタード、山ワサビの醤油漬につけて食べます。お肉3種類×塩など3種類で、9通りの食べ方を楽しめます。
開拓時代から続く「ばん馬」の競走、歴史文化とレースを楽しみつつ、お腹もたっぷり満たされます。
世界唯一の「ばんえい競馬」を楽しみに、帯広競馬場へ行ってみませんか?
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

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