越前打刃物の聖地で作る、自分だけの本格ペーパーナイフ!

2016.07.29

日本の5大刃物産地の一つとも言われる福井県越前市。「越前打刃物(えちぜんうちはもの)」は金属をひたすら叩き刃物の形状を作り上げる独自の鍛造(たんぞう)技法を守っています。約700年続いている越前打刃物の伝統を時代に合わせた形で発信している「タケフナイフビレッジ」で、越前打刃物について学びながら、オリジナルのペーパーナイフづくりを体験してきました!

越前は名匠がたどり着いた刀剣づくりにふさわしい地

1979年、刃物業界としては全国で初めて「伝統的工芸品」の指定を受けた「越前打刃物」。その始まりは、南北朝時代の1337年に京都の名匠、千代鶴国安(ちよづるくにやす)が、刀剣づくりに適した地を求めて現在の越前市を訪れ、刀剣を作る傍で農民のための鎌を作ったことからだと言われています。
▲越前の水は刀剣を鍛えるのに適していたことから、この地で刃物づくりが行われるようになりました

同じく越前は漆器の産地としても有名な地。漆器づくりのための漆を求めて全国を行脚していた漆かき職人が、各地で鎌や刃物を売り回ったことで、全国に「越前打刃物」の名が広まりました。
近年は海外からのニーズも高まっており、用途に合わせた種類の多さと切れ味の鋭さは高い評価を受けています。

近未来的な共同工房で、ものづくりを気軽に体験!

今回訪れたのは越前打刃物の聖地「タケフナイフビレッジ」。
職人たちが共同で運営する工房で、越前打刃物の製造工程を間近で見学できるほか、さまざまな種類の刃物づくりを体験することができます。
▲円柱形をした近代的な建物は遠くからでも目立ちます!

今回は刃物づくりの初心者でも安心してできる「ペーパーナイフ」づくりに挑戦することにしました。

教えてくださる先生は、越前打刃物に魅せられて北海道からやってきた職人歴3年の阿部泰宏(やすひろ)さん。

先生、よろしくお願いします!
▲体験教室は敷地内にある「チャレンジ横丁」で行います

では早速、体験スタート!

通常、越前打刃物は軟鉄と鋼(はがね)を重ね合わせたものを使って作りますが、ペーパーナイフの素材となるのは銅の板。これを鍛造、すなわち叩いて圧力を加えることで金属の組織を頑丈にしていきます。
▲金属を金型に流し込んで作る鋳造(ちゅうぞう)とは違い、形を自由自在に変えられるのが打刃物の特徴です

鉄は熱いうちに打てと言いますが、軟らかいうちに鍛えることで強靭な刃物になっていきます。
▲何も手を加えていない銅の板は簡単に曲がりますが…
▲鍛造した銅の板は強度が増して力を入れてもなかなか曲がりません

ペーパーナイフづくりの大まかな工程は、
1.銅の板を叩いて薄く広げる(鍛造)
2.好きな形に型取りする
3.型通りに切断し、ヤスリで細かく調整
4.金属が錆びないように着色
5.板を鋭角に削って刃の部分を作り、表面を整えたら出来上がり

銅の板といっても、作るものは刃物。怪我のないように細心の注意を払いながら進めていきます。
▲丁寧に説明してくださる先生

とにかく叩く!叩く!

まずは鍛造から。ハンマーでひたすら銅板を叩いていきます。
▲叩いた部分は薄く伸ばされ、さらに平べったくなっていきます

はじめは恐る恐る叩いていましたが、次第にリズムが出てきました。日頃のストレスもここぞとばかりに発散です。楽しい!
夢中になって叩き続けていると、「もうそのくらいで…」と先生に止められる始末(笑)

今度はすっかり薄く硬くなった銅板にペーパーナイフの形をペンで描き込み、型取りを行います。
▲どんな形にしようかな~

なんとなくエッジの効いた形にしてみましたが、どんな形にしようか迷う場合は見本のナイフを書き写しても大丈夫。

型取りができたら、線に沿って金鋏(かなばさみ)で切っていきます。
▲ここは先生にバトンタッチ。紙を切るのとは違い、金属なのでかなり力を入れて切っています

大きな金鋏で切り取ることができなかった細かい部分はヤスリをかけて削っていきます。
▲ここからは私がやります!任せてください!と意気込んでいましたが…
▲これがなかなか難しい。力ばかり入ってなかなか上手く削ることができません
▲最後はちょっと、いや結構先生に手伝ってもらいました

異なる粗さのヤスリを使い分け、銅板をペーパーナイフの形に削った後は、硫黄成分の入った液体につけて着色していきます。

金属は時間が経つとどうしても錆が出てきてしまうもの。硫黄成分と金属が化学反応を起こし、表面に薄い膜を張ることで、金属の錆びを防止します。
▲浸ける時間によって色が変わってきます

ほんの20秒ほど浸けただけで、ツヤツヤの銅色だったペーパーナイフが燻した感じのいい色になりました!
▲長く浸ければ浸けるほど、黒っぽい色になります

さぁ、いよいよ終盤!
思い思いの文字を刻印し、最後はペーパーナイフの切れ味を左右する“刃”の部分に取り掛かります。
▲迷いに迷ったあげく、名字を入れました
▲ペーパーナイフを鋭角に傾け、均一な幅で削った部分が「刃」となります。この作業は切れ味に関わる大事な部分なので、先生に任せましょう

およそ1時間30分かけて作った世界に一つだけの「ペーパーナイフ」が完成です!
どうですか?初めてにしてはなかなかいい感じではないでしょうか?
自画自賛です(笑)
▲紐をつけたら出来上がり!愛着がわきますね~

早速出来たばかりのペーパーナイフで試し切り。
なめらかに刃が入り、紙の抵抗なくスーッと切ることができます。
気持ちいい!

ペーパーナイフと言えども、刃物には変わりありませんので、お手入れは大切です。
市販の棒ヤスリで刃を整えるだけで、いつまでも鋭い切れ味を保つことができるそうですよ。
▲ケーキ入刀!ならぬ、「ペーパー入刀」。緊張の一瞬でした(笑)

このほかにも体験メニューは多数ありますが、中でも6時間かけて作る「包丁づくり」(15,000円・税込、18歳以上)が特に人気です。
結婚を控えている新郎が新婦のために作り、結婚式の時にサプライズでプレゼントする人が多いのだとか。
「東京から新幹線で包丁を作りに来た」なんて人も珍しくはなく、全国から多くの方がやってくるそうです。

愛する人のために心を込めて作る包丁なんて、とてもロマンチックですね。
▲いいなぁ…こんな包丁をプレゼントされたら料理も上手くなりそうです

間近で見られる職人技に圧倒!

「タケフナイフビレッジ」の建物内では、家庭で使う包丁はもちろん、ハサミやプロ用の道具など、幅広い種類の刃物を販売していています。価格は一本3,000円程度のものから数万円までさまざま。各種刃物の相談や刃物の研ぎ直しも受け付けています。
▲伝統工芸士が手がけた作品なども並んでいます

そして、中の工房では実際に職人たちが刃物を作っている過程を見学することも可能。
約800度の炎で焼いた高温の刃物を鍛造し、手作業で美しい刃物の形状に仕上げていく様子は思わず見とれてしまいます。
▲真っ赤に熱された刃物。熱気が充満しているこの空間では、エアコンはほとんど役に立ちません
▲工房は刃物を打つ音や削る音が絶えず鳴り響いています

ギャラリーには普段あまり見かけることができない刃物が展示されており、こちらも見ているだけで驚きと発見があります。
刃物づくりを体験したからこそ、より越前打刃物の奥深さを感じることができるのかもしれません。
▲切るものに合わせて刃の形状や大きさが異なる包丁。これはまだほんの一部。まだまだたくさんの種類があります

伝統工芸というと思わず身構えてしまう人もいるかもしれませんが、刃物は昔から私たちの生活に身近なもの。刃物づくり体験を通して、ぜひ越前打刃物の魅力に触れてみてください!
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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