日本最大級のカルスト台地・秋吉台と秋芳洞で地球の記憶を辿る!

2015.06.17

山口県美祢(みね)市に位置する秋吉台国定公園の総面積は4,502ヘクタール。石灰岩の白い岩肌が露出したカルスト台地は日本最大級の広さを誇ります。地下には、国の特別天然記念物に指定される秋芳洞(あきよしどう)をはじめ、450を超える鍾乳洞があります。周辺には、秋吉台科学博物館、秋吉台エコ・ミュージアム、秋吉台国際芸術村など、学びや文化に触れる施設が点在。近年は、トレッキングやサイクリング、トレイルランニングが楽しめるアクティブなレジャースポットとしても人気です。その秋吉台のはじまりは、原始時代よりずっと昔。3億5,000万年の記憶を持つ絶景スポットで、たくさんの感動とドキドキに出合いました!

いくつもの時代を越えて育まれた秋吉台の自然美を体感

秋吉台のはじまりは、今から3億5,000万年前。南方の遠く温かい海で、サンゴ礁として誕生しました。そのため、秋吉台の石灰岩には、古生代時代に海に生息していた生物の化石が多く含まれているそうです。何千年、何億年とかけて、海から山へ堆積しながら移動した石灰岩の厚みは、500m~1,000m。そこに、雨水が流れ、長い時間を掛けて石灰岩が溶け、今の地形になりました。中世になると、農業の発展のために木が切られ、草は家畜のエサや肥料に、ススキは屋根の材料として使われるようになります。良質の草原を維持するために行われる山焼きは、今も春の訪れを告げる風物詩です。その秋吉台の見どころを案内していただくのは、美祢市観光協会の竹田さんです。まずは、360度の大パノラマが広がるカルスト展望台から、秋吉台の全景を眺めました。「西の西山の山頂からの眺めもおすすめですが、カルスト台地の見どころでもある地獄台から冠山のコースを歩いてみましょう」と竹田さん。「石灰岩の岩肌の迫力を感じるには、山焼きのあとから5月までがおすすめ。梅雨になると草丈が伸び、石灰岩が隠れてしまいますから」とアドバイスをいただきました。
カルスト台地の上に突き出た石灰岩柱が地獄の針の山のように見えることから、その名前が付けられた地獄台。ゴツゴツした石灰岩の白い岩肌が辺り一面に群がる地獄台は、雄壮な雰囲気に包まれています。2月の山焼きのあと、春の訪れを告げるのはオキナグサという赤い花。春から夏にかけて、キキョウやコオニユリなど、色とりどりの花が咲きます。秋になると、辺り一面がススキ野原に。ススキに覆われた大地が日の光に輝く風景は、息をのむほど美しい自然が生み出す芸術です。「11月の中旬から下旬、秋吉台のチガヤが赤く染まる様を、地元では”草紅葉(くさもみじ)”と呼んでいます。太陽の光に照らされて輝く風景はとても綺麗です。晩秋から冬にかけて、枯れ行く草原も趣がありますよ」とのこと。どの季節も魅力的ですね。
次は、地獄台から冠山の頂上をめざします。標高377mの冠山の山頂から眺めると、あちらこちらが窪んでいることに気づきます。これは、「ドリーネ」と呼ばれるカルスト台地特有のもの。石灰岩の割れ目に雨水が浸み込み、窪んだためにできたものです。西の方角には、採石場も見えます。「この辺りは、白(石灰岩)、赤(銅)、黒(無煙炭)の鉱山物に恵まれた土地です。奈良の大仏に使われた銅の産地、国内最古の銅山ともいわれている長登(ながのぼり)の地名は、”奈良登り”が訛ったものと言われています。また、旧日本海軍の軍艦に美祢の無煙炭が使われていたんですよ」と竹田さん。地形の科学から近代史まで、壮大な歴史のスペクタクルに思いを馳せることができるのも秋吉台の魅力かも知れません。
「カルスト展望台からも秋吉台の景色を眺めることはできますが、山頂で自然の風が吹き抜けていく感じをぜひ体験してもらいたいですね。その清々しさはそこでしか味わえませんから」と竹田さんは話します。秋吉台でいちばん高い龍護峰(りゅうごほう)でも標高425mほど。スニーカーで歩けるコースも多く、近年は、トレッキングやトレイルランニングを楽しむ人も増えています。地球の鼓動を感じながら、大自然の空気を身体いっぱいに吸い込むと、なんだかパワーが湧いてきました!

ミニアトラクションの宝庫! 鍾乳洞で気分は冒険家

秋吉台の南側、地下100mの場所に日本屈指の大鍾乳洞として知られる秋芳洞があります。洞内は、年間を通して17度、水は15度と、冬は暖かく、夏は涼しく感じられます。その入口からは、洞内に湧き出る地下水や、秋吉台に降り注いだ雨水が、勢いよく外に流れ出ています。晴れた日には、透き通った水面がコバルトブルー色に輝いてとってもキレイ! 神秘的な雰囲気が漂う入口から、鍾乳洞への期待感が高まります。
暗くて冷んやりとする鍾乳洞を歩いていくと、多くの皿を並べたような姿から名付けられた「百枚皿」の景色が広がります。「上の方から水が流れ出て、その流れる水の波紋の端の泡立つ部分に石灰分が沈積することで盛り上がり、このような皿状になったと言われています。あそこから水が流れ出ているのがわかりますか?」と懐中電灯で照らして教えてくれるのは、観光アテンダントの西さん。それぞれの名所には、ボタン式の音声ガイダンスが設置されていますが、観光アテンダントのガイド(有料)を利用すると、見どころやポイントをさらに細かく案内してもらえます。
自然の造形美に感動しながら歩いていると、「この辺りに、小さなエビがいますよ~」と西さんが懐中電灯で辺りを探しはじめました。「あ、いました、いました!」と懐中電灯で照らされた先を見てみると、全長1センチほどの小さな白い生物が小刻みに動いているのがわかります。これは、四国・中国地方の井戸や石灰洞にも住むシコクヨコエビです。光がない洞窟に住む生物の多くは、環境に適応するため、体は白く目が退化しているそうです。「夏には、子育てするコウモリの姿を見ることもできますよ」と西さん。秋吉台に450以上ある鍾乳洞には、6種類15,000頭ものコウモリが生息しているといわれています。住んでいる生きものたちの暮らしをのぞくことができるのも秋芳洞の面白みのひとつです。
さらに奥へ進むと、高さ15メートル、直径4メートルのどっしりとした「黄金柱(こがねばしら)」がありました。上から下に流れる地下水が岩肌に付着して大きくなった柱は、今は地下水が流れていないため成長は止まっています。その裏手には、「大仏岩」があります。「大仏岩を左回りに一周すると寿命が一年伸びるといわれているんですよ」と西さんに教えてもらったので、ご利益がありますようにと一周してみました。そのほかにも、富士山の形に似た「洞内富士」、天井から昔の傘屋のように鍾乳石がぶらさがる「傘づくし」、広い空間の天井に無数の鍾乳石が下がる「五月雨御殿」など、いくつもの名所があります。それだけでは物足りない人には、懐中電灯を片手に道なき道を探検する冒険コース(入洞料+300円)もおすすめ。子どもから大人まで楽しめる鍾乳洞には、ドキドキ、ワクワクのアトラクションがいっぱいでした。
石灰岩でつながり、深い関係を持つ秋吉台と秋芳洞ですが、地上と地下の楽しみ方はそれぞれに異なります。そのどちらにも、地球の生命の記憶が刻まれたカルスト台地の魅力を満喫できる見どころが数多くありました。また、秋吉台では気象条件が重なることで、雲海が広がることもあるそうです。写真は、龍護峰の山頂で迎えた初日の出の様子です。こんなに美しく幻想的な風景を肉眼で見ることができたら、一年を幸せに過ごせそうですね。
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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