ひんやり涼しい溶岩洞窟・鳴沢氷穴、富岳風穴と、青木ヶ原樹海をのんびり楽しむおすすめコース

2016.08.12

富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海。「一歩立ち入ると迷い込む」…そんなウワサは大間違い!きちんと整備された国立公園で、初心者でも安心して歩ける散策コースがあるのです。樹海の東西には、溶岩洞窟「鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)」「富岳風穴(ふがくふうけつ)」もあり、樹海散策と合わせてまるごと楽しめる散策コースがあります。どんなコースなのか、さっそく行ってきました。

溶岩洞窟「富岳風穴」からスタート!

コースの出発地点は「富岳風穴」。ここを見学したあとに青木ヶ原樹海の東海道自然道を歩いて「鳴沢氷穴」へと向かいます。ガイドさんの、解説を聞きながらめぐる「ネイチャーガイドツアー」は完全予約制(コース時間・料金は記事の最後に明記)。
今回は、ガイドの貫井雅弥(ぬくいみやび)さんが案内してくれました。
▲中央自動車道河口湖ICから約20分、富岳風穴案内所「森の駅 風穴」に集合する
▲ガイドの貫井さん。両親もネイチャーガイドをしていて、幼い頃から自然と親しんで育った。動物看護師の資格も持っている
▲案内所では、ぜひスタンプを押して。「富岳風穴」と「鳴沢氷穴」のスタンプを集めるといいことが…。それは最後のお楽しみ!

じつは、取材した日は早朝から土砂降りの雨でした…が、午前11時頃に雨が止み、樹海にはしっとりと落ち着いた気配が漂っていました。天気も味方してくれて、散策スタートです。

「雨が降っていても、木々が屋根の代わりになって、あまり雨に打たれません。地面は土ではなく溶岩なので、ぬかるみにならず歩きやすい。ふだんから、豪雨・雷・強風でなければツアーを開催しています。ただ、歩きやすい靴やレインコートなど、安全に歩いていただくための準備はしっかり行ってくださいね」(貫井さん)
▲案内所から「富岳風穴」の入口までは徒歩3分ほど。青木ヶ原樹海の中を通る

「富岳風穴」の入口が見えてきました。入口までは階段を下ります。階段を半分ほど下りると、急にひんやりと冷たい空気に包まれました。洞窟内の冷気が流れてきているのです。
見えない〝冷気の壁〟を通り抜けます。

洞窟の気温は、一年を通して0度~3度。真夏でも寒いので、上着を持ってきて入口付近で着込むと安心です。
▲「富岳風穴」の入口へつづく階段。階段の手すりは竹製だった。鉄製よりも冷たくならず、錆びないという理由からだそう
▲「富岳風穴」の入口

真っ黒でゴツゴツした溶岩をさわってみよう

入口の向こうは真っ暗です。これは穴が深いからというだけではなく、洞窟自体が黒いから。

「富岳風穴」と、コースの最後に行く「鳴沢氷穴」は、溶岩でできた洞窟で、約1200年前に富士山の側火山である「長尾山」という山の噴火によって流れ込んだ溶岩が固まって形成されました。岩ではなく、溶岩でできているから黒いのです。

滑って転んだり、頭をぶつけたりしないように気をつけて進んでいきます。「富岳風穴」は総延長201m、高さは最大8.7mの横穴。往復所要時間は約15分です。
▲入口階段の下は天井が低くなっているので、頭をぶつけないように気をつけて

少し進むと、左手に大きな氷が現れました。溶岩には、気泡がたくさんあるので、地上に降った雨が溶岩の中を通って、天井からしみ出た水滴が凍り、氷柱を作っているのです。氷は「鳴沢氷穴」にしかないと思っていたのでびっくり!
▲時期によっては、もっと大きいそうだ

さらに奥へと進みます。

「ぜひ溶岩にさわってみてください。ザラザラしていて、溶岩ならではの手触りです。雨がしみこんで、いたるところから水がぽたぽたと落ちていますよね。この水は、天然のミネラルウォーターですよ」(貫井さん)

さわってみると、岩ではなく溶岩でできた洞窟であることをしっかりと感じとることができます。
▲溶岩の表面をじっくり見てみよう
▲ゴツゴツした表面。うっすらと苔が生えている部分もある
▲したたり落ちる水は、ミネラルをたっぷり含んだミネラルウォーターで、誤って口に入ってしまっても安心
▲さらに奥へと進んでいく

噴火によっていっせいに流れ込んだ溶岩のなかに、なぜ、このような空洞が出来たのでしょうか。

「流れ出た溶岩は、あまり粘り気のないものだったと言われています。イメージでいうとなめこ汁くらい。けっこうサラサラしていますよね。そんな溶岩が一気にこの地へ流れ込み、周りから温度が下がって固まっていきました。中心部分はなかなか固まらず、外へと流れて出たため空洞が出来たのです」(貫井さん)

地元の人たちの養蚕業に欠かせない洞窟だった!

さらに進むと、なにやら缶が並んでいます。よく見ると、中にふわふわと白いものが…。なんと、蚕の標本。なぜここに蚕が!?
「富岳風穴」は、大正時代に養蚕業に欠かせない場所として活用されていたのです。

蚕は、寒い冬を越え、あたたかい春を迎える頃に孵化しますが、それだけでは生産量が足りません。まるで冬のように寒い「富岳風穴」で保管し、外に出せば、蚕は「春が来た」と勘違いして孵化をする。一年を通して蚕を作ることが出来るのです。
「富岳風穴」があったおかげで、この地帯では養蚕業が栄えていたのです。
▲まさか、洞窟が養蚕の場となっていたとは…

蚕の保管場所跡をもう少し進むと、洞窟のいちばん奥へ到着。入口から100mくらいです。
奥の溶岩には、ヒカリゴケが生えていて、電灯の光を反射してほのかに光っていました。

「溶岩には養分が少なく、水も通り抜けてしまうため、植物がほとんど育ちません。苔は植物自体に保水力があるので、このように生育しているんです」(貫井さん)

人が通ることはできませんが、ヒカリゴケの向こうにはさらに穴がつづいていました。
▲ヒカリゴケ

折り返して、同じ通路を戻ります。ここで、貫井さんからある提案がありました。

「溶岩洞窟は、溶岩に無数の穴が開いているため、音が反響しません。手を叩いてみてください」

パン!

力を込めて手を叩いてみましたが、一瞬にして音が消えてしまいました。防音壁と同じ構造なのです。
▲「パン!」と叩いてもまったく響かない!

洞窟の中では、足元だけを見がちですが上も見てみましょう。「寒い寒い」と言いながらも、洞窟を進むにつれて出合う景色が楽しくて、探検隊の気分に。
▲自然にできた洞窟だからこそ、場所によって天井の高さも違う
▲小さな氷柱を発見

洞窟に入ってから約15分。さきほどの入口へと戻ってきました。
出口付近から洞窟の外を見てみると、美しい緑がなんともさわやかです。
▲洞窟から入口の外を見た景色。穴がハート型に見えませんか?

青木ヶ原樹海も溶岩から生まれた森だった

青木ヶ原樹海がある一帯はもともと大きな湖で、琵琶湖よりも大きかったそうです。貞観6(864)年の長尾山の噴火で、流れ込んだ溶岩が湖に流れ込んで固まり、青木ヶ原樹海の元となる地が誕生しました。溶岩に苔が生え、そこから木が成長し、長い年月をかけて森となったのです。

上空から見ると、緑のじゅうたんを敷いたようで、風が吹くと、まるで波がうねるように見えたことから「樹海」と名付けられたそうです。

今回歩く自然道は1.4km。「鳴沢氷穴」へつづく道です。ヤマガラやミソサザイなど、野鳥の鳴き声を聞きながら、樹海散策スタート!
▲歩道にある岩は溶岩だ

ゴツゴツとした溶岩の上にやわらかな土が重なった道は、すべりにくく歩きやすいと感じました。この日は、雨上がりということもあり、苔がいっそうみずみずしく、キラキラ。
見上げると、森に太陽が差し込んで、気持ちいい!
「樹海でいちばんはじめに生えた植物が苔です。溶岩は水がどんどん流れ出てしまうので、苔が水を貯えて木に与えてくれます。木は苔が育ちやすいように、風通しがよく、直射日光が当たらないように、木陰を作っている。ちゃんと共存共生の関係性になっているんですよ」(貫井さん)
▲固い溶岩には根を張れないため、根が地上に現れている。根には苔が生え、保水している
▲さまざまな苔がある。これはヒノキゴケ
▲樹海の植物や、生息する生き物などをガイドさんが教えてくれる

キノコ観察も楽しい!新種のキノコも見つかるかも?

前だけを見て歩いていると見過ごしてしまいますが、横を見ながら歩けばいろいろなキノコを発見します。とくに初夏はキノコがたくさん生えているそう。

「樹海ではまだまだ新種のキノコが見つかるのではといわれるくらい、さまざまなキノコが生えています。ただし、その9割は毒キノコ。キノコ図鑑を持って来る人もいますが、見分けるのはプロでも至難の業。ぜったいに、採って食べないでくださいね」(貫井さん)
※国立公園内である青木ヶ原樹海では、すべての動植物の採取が禁止されています。
▲朽ちた幹の中をのぞいてみたり、木と木の間を見たりしてみよう
▲いろいろなキノコが生えていた

樹海は「迷いやすい」と聞いたことがあったので、緊張していましたが、実際に中に入ってみると、散策用の道がきちんと整備されていて、風通しもよく居心地がよくて、「樹海」へのイメージがすっかり変わりました。

「地盤が溶岩なので、下に向かって根が張れず、幹を太くしてしまうと支えきれずに倒れる恐れがあるので、どの木も細くて高いんです。見た目が同じ木が多いことから〝迷いやすい〟とよく言われていたんです。でも今は、道をしっかり整備して、要所に案内板もある。〝迷いやすい〟というのは迷信ですよ」(貫井さん)
▲木のアーチのような道をくぐると、もうすぐ「鳴沢氷穴」だ

樹海の景色や、木々の姿、鳥の鳴き声などを楽しみながら進んでいると、「鳴沢氷穴」の案内所が見えてきました。

地下へと深い「鳴沢氷穴」。ふたたび冷蔵庫のように寒い場所へ

ついに今回のコースの最終スポット「鳴沢氷穴」へと到着しました。「鳴沢氷穴」は、竪穴環状形で総延長は153m。所によっては、一人通り抜けるのがやっとなほど、幅が狭い通路もあります。「富岳風穴」同様、頭上や足元に十分注意して進みましょう。
▲「鳴沢氷穴」案内所
▲ヘルメットを借りることができる。かぶらなくてもよい
▲「鳴沢氷穴」の入口につづく通路

「鳴沢氷穴」の気温も一年を通して0度~3度。冷蔵庫の中に入っていくような気分です。入口から一歩入ると、想像以上に急な階段が出現。一歩、一歩、ゆっくりと下りていきます。

「鳴沢氷穴」も溶岩でできています。真っ黒で、手触りはザラザラ。「鳴沢氷穴」という名前から、氷を見に訪れる人が多いそうですが、「溶岩でできた洞窟自体の魅力も感じてほしい」と貫井さん。
▲想像以上に階段が急だった。手すりにしっかりつかまりながら進む
▲どんな通路が出てくるのか予想がつかないのも楽しい

横に長かった「富岳風穴」とはまったく違った形です。低い体勢をとりながら進みます。先へ進むとまた階段があり、下りると、「鳴沢氷穴」でいちばん深い場所へたどり着きます。
▲天井の一番低いところは高さ91cm。体を縮めて歩く
いちばん深い場所には氷の塊がたくさんありました。昔は天然の氷を洞窟内で切り出し、このように貯蔵していたそう。現在は人口の氷を置いて、貯蔵庫の再現としており、今も残る天然氷を保護する役目も果たしています。

この場所が折り返し地点となります。もう道は続いていないようですが、「地獄穴」と呼ばれる小さな穴があるのでぜひ見てみてください。なんとこの穴、江の島まで続いているという言い伝えがあるそうです。

通路を出口へ向かって進むと、「鳴沢氷穴」のいちばんの見どころである氷柱が登場します。

ライトアップされた氷柱はキラキラと輝き、神秘的です。この氷柱を見に、多いときでは一日に3,000人以上の観光客が訪れ、「鳴沢氷穴」の入口には行列ができるそうです。
▲青い光でライトアップされた氷柱
▲氷柱の大きさはさまざまだ

氷柱を眺めたら、出口へ向かいましょう。少しずつ、外の光が差し込み、だんだん明るくなっていく風景もきれいです。そして、出口から地上を見上げると、「富岳風穴」を出たときのように、ふたたび美しい緑の景色が現れます。

ひんやりと涼しい洞窟。さわやかな緑の風景。暑い夏でも、気持ちよく過ごせるのがうれしいですね。
▲溶岩から木が生えている様子もよく見える。木の根は、下へ伸びることができず、横へと伸びている

案内所のイートインコーナーでほっとひと息。オリジナルフードメニューも充実

今回の散策コースはこれにて終了です。「富岳風穴」と「鳴沢氷穴」の案内所には、イートインコーナーがあり、おいしいごはんやスイーツを食べることができます。

今回は、「鳴沢氷穴」の案内所で大人気の「桔梗信玄餅パフェ」と「樹海ドッグ」を食べました。

たっぷり歩いたあとのひんやりスイーツは、ひと口食べただけで、疲れが吹き飛ぶようです。信玄餅のモチモチ食感と、シリアルのザクザクとした食感のバランスがよく、黒蜜の甘さもコクがあっておいしい。
▲「桔梗信玄餅パフェ」は、山梨県内のほかの観光スポットなどにもあるが、なんとこの「鳴沢氷穴」が発祥!ソフトクリームに桔梗屋の信玄餅と、きなこ、黒蜜がたっぷり(税込・520円)

「樹海ドッグ」は、樹海の森林を表現したアボカドソースを、旨みたっぷりのソーセージにかけた逸品。パンには新鮮なキャベツの千切りがたっぷり挟んであります。
キャベツがとってもやわらかく、アボカドソースとソーセージと一体に。大きな口を開けてパクリといただきました。
▲「樹海ドッグ」(税込・450円)。最近発売された新メニューだ。

一方、「富岳風穴」の案内所には、「富士宮やきそば」や「吉田のうどん」、夏季限定の「富士山かき氷」などがあります。
▲甲州ワインや、富士山をモチーフにした小物など、山梨土産も充実している

最後に「鳴沢氷穴」の案内所で、スタンプを押すのをお忘れなく。「富岳風穴」「鳴沢氷穴」「売店(富岳風穴または鳴沢氷穴の案内所)」のスタンプを集めて、レジに持って行くと、オリジナルポストカードがもらえました。
▲ポストカードには「富岳風穴」と「鳴沢氷穴」の絵などが描かれている

2つの洞窟を探検し、青木ヶ原樹海の自然道を歩くこと約2時間。ちょっとハードなコースかと思いきや、洞窟や樹海の景色を楽しみながらのんびりとめぐり、へとへとに疲れるということはない距離でした。ほどよい疲労感が心地よいほど。

目を凝らせば、野鳥が木々の間を飛んでいたり、ミツバチが花の蜜を吸っていたり、自然観察も楽しかったです。

今回歩いたコースのほかに、樹海と海底の隆起でできた山を歩くコースや、秋には「鳴沢氷穴」を起点として紅葉を満喫するコースなどもあるそうです。

噴火によって生まれたこの場所ならではの自然の造形を楽しめるコースをぜひ散策してみてください。きっと、洞窟や樹海へのイメージを一新する発見の連続ですよ。
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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