小江戸・川越の進化する老舗料亭・山屋で、本格的な会席料理を手軽に楽しむ

2016.07.09

古い蔵造りの町並みが残り、「小江戸」と称される埼玉県の川越。古くは川越城の城下町として、江戸とも近いその立地から物資の集散地として栄えました。そんな川越には100年を超える料亭文化が残っています。その文化を今もなお先頭に立って牽引している老舗料亭「山屋」で、ランチでも本格的な会席料理を楽しめると聞いて足を運んできました。

▲緑に囲まれた山屋の入り口

都心から電車を使って1時間弱でアクセスできる川越は、平日も多くの観光客で賑わっています。特に見逃せないのが時代劇に出てきそうな町家が数多く残っている、蔵造りの町並み。
▲ノスタルジックな町並みをゆっくり散策するだけでも楽しめる

そのメインストリートである一番街通りから一本道を入った徒歩約2分のところにあるのが、川越で最も歴史のある料亭「山屋」です。繁華街からアクセス抜群なのに、こんなに静かで自然豊かな環境があるとは驚きです。
▲趣のある母屋は2階建て

山屋はもともと幕末より仕出し屋を営んでいたそうですが、明治初期に関東の伝説的な豪商・横田五郎兵衛の別邸を譲り受け現在の場所へ移転し、料亭として創業。幕末の時代に贅を尽くした趣ある日本家屋が、訪れる人々を迎えてくれます。

四季を感じられる風情ある佇まい

玄関で靴を脱いで上がると、縁側の先に中庭があるのが分かります。外の入り口からは全く想像がつかなかったのですが、山屋はこの広い中庭を囲むように、敷地約900坪の中に7つの部屋がある造りになっているそう。
▲四季折々に美しく変化するという庭園
▲訪れた5月はちょうど新緑の季節
▲夏は障子や襖を外し、アジアンテイストな設えに
▲縁側に置かれた蚊取り線香も風情たっぷり

長い渡り廊下を通って案内されたのは、一番奥の離れのお部屋。こんなに長い廊下は初めてで、おもわず足音を立てないようにそろりそろりと歩きました。
▲廊下を通ると、風や虫の声などを直に感じられる
▲離れの8畳の個室。ランチは、季節の御弁当と特別会席のみ個室対応 ※要予約

目と舌で楽しむランチ会席

平日のランチは個室でいただく「季節の御弁当(4,500円・税サ別)」と「特別会席(6,000円・税サ別)」、広い喫茶室でいただく「かごめ弁当(1,500円・税別)」と「つばさ弁当(3,000円・税別)」の4種類があります。

今回はせっかくなので、特別会席をいただくことに。会席料理とは、武士が客をもてなした「本膳料理」が基本となっており、基本はお酒をゆっくり酌み交わしながらいただくため、料理も順を追って提供されます。季節によって中身は変わりますが、山屋の特別会席は、先附、吸物、造り、煮物、焼物、揚げ物、食事、甘味の全8品です。
▲特別会席は、先附、吸物、造り、煮物、焼物、揚げ物、食事、甘味の全8品。※季節によって中身は変わります

まずは先附から。この日の献立は「白木耳(しろきくらげ)の利休和え」と「もずく酢、落とし芋」。どちらもさっぱりしていて、春~夏の蒸し暑くなってきた季節にぴったりの味わい。
▲白木耳をベースに、椎茸、ほうれん草、糸雲丹が乗っていて、色合いがとても鮮やか(手前)
▲もずくと長芋の組み合わせは、スルッといけてしまう

次に「蛤の吸物」。料理長のこだわりが詰まった出汁の味を存分に味わってもらうため、「吸物」はコースの前半に提供しているんだそう。
▲蛤の出汁がしっかり出ていてホッとする味

続いて「鯛と勘八の造り」。脂の乗った勘八にワサビを少しつけていただくと、歯ごたえもしっかり。ちなみに武家社会では“刺す”という語を嫌ったことから、刺身ではなく「造り」と言うんだとか。
▲その時々の旬のお刺身が提供される

煮物は「鱧(はも)曙巻と野菜の生姜庵かけ」。出汁の効いた上品な味わいは日本食ならではですね。また、焼物の「鰆(さわら)の西京焼き」も西京味噌の独特の風味が“THE 日本食”といった印象です。
▲鱧の練り物、かぼちゃ、なす、スナップえんどうの煮物
▲鰆西京焼き、さつまいもの蜜煮・はじかみ添え。一つひとつの器もとても美しい

と、ここまでが一汁三菜(吸物、造り、煮物、焼物)で、会席料理の基本メニュー。ここからはお店によって品数が増え豪華になっていき、山屋では揚げ物などがメニューに組み込まれています。

この日の揚げ物は、海老の挟み揚げ、鱧真丈、伏見甘唐辛子、エリンギ茸の4種盛り合わせ。海老の挟み揚げにはチーズと大葉、鱧真丈にはバジルが一緒に入っていて、とても手の込んだ逸品です。
▲ライムを搾って、抹茶塩でいただく
▲海老、チーズ、大葉の組み合わせに抹茶塩がまた合う!

食事は通年、お酒の後でもサラリと食べられる蕎麦にしているといい、確かにツルリと完食してしまいました!
▲この日の蕎麦は「山菜蕎麦」

最後は月替わりの甘味で、「自家製フルーツあんみつ」を〆に。粒あん入りのもちもちした白玉に、寒天、フルーツの入ったあんみつは、甘さ控えめなのでさっぱりいただけました。
▲甘すぎないデザートは口直しにぴったり

どの料理もシンプルな味付けなので、お酒のお供にはもちろん、お酒が苦手な人でも料理そのものを楽しむことのできる山屋の特別会席。ここが観光客で賑わう川越というのをすっかり忘れてしまうようなとても静かな空間で、お庭の景色を眺めながら、心地よいランチの時間を過ごすことができました。

なお、喫茶室でいただけるランチの「かごめ弁当」(1,500円・税別)はこちら。
▲手前から時計回りに、自家製鱒フレークのごはん、高野豆腐とかぼちゃの煮物、鯛の刺身、湯葉、玉子焼き、鶏のきじ焼き、海老、コンニャク、白身魚と野菜のネーズ焼き、きんぴらごぼう、さつまいもの蜜煮 ※季節によって内容は変わります
▲喫茶室でのランチは合い席 ※予約不要

喫茶室からも中庭の景色を臨めるので、町歩きに疲れたら、喧騒を離れて優雅な気分に浸れるこちらのお手軽ランチがおすすめかもしれません。

また、祝祭日を除いた平日には女子会向けの「女子会セット」(3,500円・税込)もあるので、女子同士のお祝いの際やいつもよりちょっとゆったりしたい時にピッタリです。
▲お弁当に山屋自家製の梅酒(蔵の中で3年寝かせたもの)がセットに ※要予約(写真提供:EASTER EGG)

文化の発信基地としての料亭

「昔は料亭が当たり前の存在でしたが、今の若い人には馴染みがない場所になってしまいました。料亭が忘れられないためにも色々試行錯誤しています」

そう話すのは、5代目当主の奥様で若女将の松山郁子(いくこ)さんです。
山屋では2011年頃からウェディングのサービスも本格的にスタート。郁子さんは料亭の若女将を務めながら、ウェディングプランナーとしての仕事もこなしているといいます。

「当日に向けて事前に何度も打ち合わせを繰り返すウェディングの仕事を通して、接客の覚悟ができたようにも思います。あらゆるシーンのお客様に満足いただけるように、望みを先読みできるように心掛けています」
▲料亭ウェディングは国際結婚などのカップルに大人気だそう

また、山屋ではコンサートや落語会などの企画や、「ビア☆お座敷」や「紅葉ウィーク」、「なべ会席」といった季節ごとのプランなども実施しています。
▲郁子さんも大好きだという紅葉の時期の中庭

「ただ料理を提供するだけでなく、料亭が文化を発信できる場所でありたいと思っています。この場所に実際に足を運んでもらって、日本家屋や日本文化に触れてもらうことで、料亭文化というものを後世につないでいきたいです」

そう語ってくれた郁子さん。これまで少し敷居の高い印象のあった料亭という場所が、なんだか少し身近に感じられました。

普段頑張っている自分のご褒美に会席を楽しむもよし、季節や日本文化を感じに企画ものに参加してみるもよし。思い立ったら気軽に川越の料亭「山屋」へ出掛けてみてはいかがでしょうか。
長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。 http://lifedesign-j.com/

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