長野県上高地を丸ごと楽しむ方法!年間120万人が訪れる日本屈指の山岳リゾートへ

2016.07.13 更新

日本を代表する山岳リゾートである長野県上高地。雄大な穂高連峰の眺望を間近に望め、観光やトレッキングから本格登山、また日帰りから宿泊までとさまざまな滞在スタイルで自然を満喫することができます。魅力的な名所も多く、何度訪れても飽きることがありません。そんな上高地の、王道の楽しみ方をご紹介します!

標高約1,500mの山岳景勝地・上高地。手付かずの自然が多く残り、大自然の宝庫と呼ばれることから、国の「特別名勝」と「特別天然記念物」に指定されています。このふたつの称号を与えられているのは、国内でも富山県の黒部峡谷とここ上高地だけ。

この貴重な自然を守るために上高地へのアクセスはマイカー利用が規制されており、松本市方面からは「沢渡(さわんど)駐車場」、高山市方面からは「平湯駐車場」に車を停め、バスかタクシーで入山します。なお、上高地には大きなバスターミナルがあってアクセスもわかりやすく、タクシーは定額運賃制なので初めて訪れる人も安心です。

まずは定番の観光スポット「河童橋」へ

バスやタクシーから降りて5分ほど歩くと見えてくるのが、上高地のシンボル的存在「河童橋(かっぱばし)」。梓川に架かる木製の吊り橋で、眼前に美しい川の流れと穂高連峰や焼岳を望める絶好の撮影スポットです。周辺はホテルや飲食店が集まる「上高地銀座」と呼ばれていて、シーズン中は多くの観光客でにぎわいます。
▲作家・芥川龍之介の晩年の代表作『河童』にも登場する「河童橋」。なお、この橋から上流に架かる橋は川の氾濫に備えて全て吊橋になっています

河童橋から約1kmの場所には「ウェストン碑」があります。この碑は明治時代に日本を訪れて北アルプス登山に挑んだ英国人宣教師ウォルター・ウェストンのレリーフ。帰国後に著書『日本アルプスの登山と探検』で上高地の魅力を世界に広め、登山の楽しみを日本人にも伝えた彼の功労をたたえて、1937(昭和12)年に日本山岳会によって設けられました。近くには梓川沿いから山々の眺望が楽しめる広場「ウェストン園地」があり、写真家の格好の撮影スポットとなっています。
▲梓川沿いの岩壁にあるウェストン碑。ウェストンは信仰の対象ではなくレジャーの登山を日本人に広め「日本近代登山の父」と呼ばれるようになりました
▲ウエストン園地付近、梓川沿いからの眺望。梓川の向こうに見える六百山(ろっぴゃくざん)や霞沢岳(かすみざわだけ)は、穂高の名声に隠れがちですが捨てがたい魅力があります

鏡のような水面に雄大な穂高を映す「大正池」

ウェストン碑から徒歩約50分(2.5km)の「大正池」の絶景も外せません。この池は1915(大正4)年に焼岳が大噴火をおこした際、噴出した多量の泥流によって梓川が堰き止められてできた上高地最大の池。水没した林は立ち枯れとなり、その神秘的な風景は多くのメディアに登場しています。
▲季節や時間によってさまざまな表情を見せる大正池
▲ウェストン碑から大正池までは約2.5kmで、その間は遊歩道が整備されています

なお、大正池の脇にはバス停やタクシー乗降場もあるので、体力に自信がない人も気軽にアクセスが可能です。

予約なしのガイドツアーで上高地の魅力をじっくり堪能

上高地では、予約なしでも参加できるさまざまなガイドツアーがあります。ネイチャーガイドが上高地の魅力や歴史をプロの視点から教えてくれるもので、山道に慣れていない人や年配者でも気軽に参加できるコースも。

そこで、今回は河童橋近くにある「上高地ビジターセンター」が催行するツアーに参加してみました。
▲バスターミナルから河童橋を経てすぐに見えるビジターセンター

ツアーは5月上旬から11月上旬まで毎日催行していて、月・水・金曜は朝8時45分に集合して大正池まで、火・木・土・日曜は朝9時に集合して3kmほど先にある明神池まで歩きます。いずれも所要約2時間で、税込500円。参加方法は集合時間までに「上高地ビジターセンター」内にある受付ボードに名前を書き込めばOKです。今回は明神池までのコースに参加しました。
▲この日のネイチャーガイドは窪谷充代さん。東京出身ながら、夏は上高地のガイド、冬は近隣のスキー場で働く大の上高地好きです

まず紹介してもらったのは、ビジターセンターのすぐ脇を流れる「清水川」。湧き水からなる全長わずか300mほどの短い川で、一年を通して6~7度の水温を保ち、なんと水は飲めるのだとか!ならばと、勇気を出して飲んでみました。すーっと体になじみ、なんだか健康になれそうな味わいです。実際、上高地の多くのホテルでは、この川の横に水汲み用のポンプを設け、飲用水として少しの処理をした後に使用しているそうです。
▲源流からは毎秒1トンもの水が湧いているという清水川。雨が降ってもにごらないそうで、「梅花藻(ばいかも)」という植物が生えているのが、水がきれいな証拠

さらに森の中を進みながら、窪谷さんにさまざまな木々や植物の見分け方や特徴を教えてもらいました。
「シラカバとダケカンバの木は標高1,500mで住み分けをしていることから、上高地では両方を見ることができます。ダケカンバのほうが樹木の色が肌色に近く、めくれたような木肌が特徴のひとつ。昔の人はこの木肌で手紙を書いたと言われていますよ」と窪谷さん。
▲岩場に生える「イワカガミ」。葉に光沢があって鏡のようなことから名付けられたそう
▲3枚の葉と3の倍数の雌しべと雄しべからなる延齢(えんれい)草。真ん中の花が咲くまでに、なんと15年もかかるのだとか!

上高地の癒しスポットでパワー充電

30分ほど歩いてたどり着いたのは、清水川とともに窪谷さんおすすめの癒しスポットである「風穴(ふうけつ)」です。風穴とは冷風が吹き出る山腹などの深い穴のこと。一説によると地下水で冷やされた空気が地表に出てきているそうで、昔の人は冷蔵庫として使っていたとか。上高地は真夏でも最高気温が28度ほどと比較的涼しいですが、この辺りは特に涼しく感じるのだそうです。
▲風穴に手を入れると涼風を感じます。ちなみにこの時、遭遇率が低いというオコジョを発見!あまりの素早さに写真が取れず。残念…

また、森の中には「特別母樹林」が生育する一帯もあります。これは樹木整備のために優れた種子を採取できる樹木を確保したもので、上高地では2本のカラマツが「精英樹(特に優れた性質をもつ樹木)」として指定されています。
▲上高地で2本のみ指定されているカラマツの精英樹のひとつ

しばらく進むと、今度は不思議なカラマツが見えてきます。横に2本のウラジロモミの木を従えることから、水戸黄門にちなんで「黄門カラマツ」と呼ばれる木です。これは落雷などによって一度根元から折れたものの、再び伸びた樹齢300年ほどのカラマツだそう。このことから「神がかりの木」とされ、上高地のパワースポットになっています。
▲真ん中の大きな木が「黄門カラマツ」で、両脇が助さん、角さんにあたるウラジロモミ。裏側に回ると、根元に大きな裂け目があって、落雷など何らかのダメージがあったことがわかります

さらに進むと、真っ白な花崗岩(かこうがん)に覆われたエリアに出ます。ここは雨のたびに山から落下する花崗岩が堆積する場所で、年々急坂になっているのだとか。梓川が青く幻想的に見えるのも、この白い花崗岩が川底に堆積し、青い空の色を反射しているからだそう。
▲花崗岩が堆積しているエリア。木漏れ日があたっている部分を見ると、白いのがわかります
▲青く見える梓川。一見きれいに見えますが、清水川と違って飲用はできません
▲梓川の先に2,931mを主峰とする5峰の明神岳が見えてきたら、ゴールは間近

いよいよゴールの明神池に到着

さらに明神岳を左岸に望みながら進むと、「穂高奥宮参道 明神池」の道標が見えてきます。「明神」と呼ばれるこの一帯は明神岳をご神体とした神域で、明神池畔には穂高神社奥宮が鎮座しています。このことから、上高地は古くから「神降地(神の降り立つ地)」とも呼ばれています。この道標脇から明神橋を渡り、ゴールの明神池を目指します。
▲明神橋は穂高神社奥宮までの参道になっています
▲大きな鳥居を越えて穂高神社奥宮がある明神池へ
▲鳥居を越えた先には、先述のウェストンの山案内人・上條嘉門次(かみじょうかもんじ)の石碑があります。ふたりが登山をした当時の写真を窪谷さんが見せてくれてみんな興味津々!

さて、ツアーはここで終了。ここからは各自で散策を。ゴールの明神池には境内左手にある社務所で拝観料(300円)を納めて進みます。
▲明神池すぐ手前にある穂高神社奥宮の社殿。この日のトレッキングの無事に感謝して参拝します

社務所を経て20mほどで、いよいよ明神池に到着!一ノ池・二ノ池からなるひょうたん型の池で、明神岳の土砂崩れにより梓川の支流や明神岳からの湧水が堰き止められてできた池なのだそう。間近に明神岳がそびえ、神秘的な静けさが漂います。
▲明神池二ノ池。上高地の地形は平地の10倍の速さで変化しているそう

上高地のさまざまな樹木の名前や歴史を学ぶことができた今回のツアー。天気にも恵まれ大満足の時間でした!

ツアーの後は上高地ならではのグルメを堪能

たっぷり2時間歩いた後は、先ほど紹介した上條嘉門次の石碑前にある「嘉門次小屋」の名物・イワナの炭火焼き(税込1,000円)をいただきます。
▲上高地好きが高じて小屋を建てて住んでしまった上條嘉門次の「嘉門次小屋」。現在では絶好の休憩スポットになっています

頭から尻尾までパリパリと全部食べられ、香ばしさとほどよい塩加減が疲れた体にじんわりと染み渡っていきます。
▲イワナは囲炉裏の炭火で焼き上げます
さらに河童橋に戻ったついでに、トレッキングで疲れた体をスイーツで癒します。河童橋の目の前にある五千尺ホテルの1階ティーラウンジ「5HORN(ファイブホルン)」では、松本民芸家具を配した落ち着いた雰囲気の中、さまざまなスイーツをいただけます。

一番人気は「レアチーズケーキ(税込780円)」。清水川の湧水を利用したコーヒーなどの飲み物をセット(税込1,400円~)で付けることもできます。
レアチーズケーキは、濃厚でやわらかな口当たりのクリームチーズと程よい酸味のブルーベリーソースがマッチしていて、疲れも一気に吹き飛びました。

上高地で守るべき5つのルール

最後に、上高地の美しい自然を守り次代へ継承していくために、守るべき5つのルールをお伝えします。

(1)昆虫や植物などの生きものを採らない
(2)野生動物にエサを与えない
(3)ゴミはすべて持ち帰る
(4)ペットや外来生物を持ち込まない
(5)歩道を外れて歩かない

当たり前のようですが、こうしたルールは一人ひとりが意識をもって守ることが大切です。現在はこのルールが浸透しているからこそ、美しい上高地の景色が守られていると言えます。

長野県で暮らし、普段から自然は身近に感じていた筆者ですが、上高地の圧倒的な大自然の魅力は格別の感動がありました。みなさんもこのルールを頭に置いて、今年の夏はさまざまな楽しみ方ができる上高地に出かけてみませんか。
写真撮影:平林岳志
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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