山水画の世界へタイムトリップ!日本百景の一つ「猊鼻渓」で優雅に舟下り体験

2016.07.27 更新

岩手県一関市東山町に、全国唯一という「竿1本で往復する舟下り」を楽しめる場所がある。2kmに及ぶ渓谷が美しい「猊鼻渓(げいびけい)」だ。四季折々の景観に見とれ、船頭さんの舟歌に聞き惚れる優雅な舟下りで非日常を気軽に体験できる。

▲新緑シーズンの風景(写真提供:有限会社げいび観光センター)

岩手が誇る名勝・猊鼻渓ってどんなとこ?

一関市街地から車でおよそ30分。一関市東山町にある猊鼻渓は、明治期以降に観光地として開拓され、1925(大正14)年に国の史跡名勝天然記念物に。1927(昭和2)年には全国で23番目に日本百景に指定された名勝だ。
▲レストハウスの奥が舟下りの発着所
▲猊鼻渓舟下りは往復1時間半

高さ50mを超す奇岩の間に流れる砂鉄川(さてつがわ)を、ゆったりと手漕ぎ舟で運行する「猊鼻渓舟下り」。一度川上まで遡り、折り返し地点で一度上陸した後に下ってくる。上りも下りも船頭さんの竿1本で運行され、今では岩手を代表する観光スポットの一つだ。
▲季節によって運行時間や本数に変動がある

舟は毎日8時30分から、およそ1時間に1本の割合で定期便が出る。台風、強風、地震以外は休むことなく運行し、元日も休まず舟を出すのだとか。
▲船着き場には、私財を投じて猊鼻渓を観光地開拓した佐藤猊巌(げいがん)氏の石碑がある
▲いざ1時間半の優雅な旅へ!

高さ100mを越えるダイナミックな渓谷美に感動!

▲小雨の場合も屋根をかけて運行する

取材に伺った日はやや雨が心配な天候だったため、しっかり屋根をかけていざ出発!
▲趣味は津軽三味線という船頭・松岡さん

この日、私たちを案内してくれたのは、この道30年のベテラン船頭・松岡幸喜(まつおかこうき)さん。奇岩を仰ぎながら進む舟の舵取りは、松岡さんの竿1本だ。聞けば、全国各地18カ所で観光用舟下りが行われているが、往復共に船頭の竿1本で運行するのは猊鼻渓だけだという。
▲船頭さんは松岡さんの他に20人程。中には女性の方も!
▲出航前に、特別に触らせてもらった竿は、なんと7kgもある。船頭が自分で長さなどをカスタマイズするそう

船はゆっくりと川上へ向かって進み始めた。猊鼻渓舟下りの見どころは、舟の進む先々にそそり立つ奇岩の数々。石灰岩の層が長い時間をかけて浸食されて出来た渓谷美だ。
▲見上げる先には渓谷美が!

うねうね蛇行する川沿いに現れる岩にはそれぞれ特徴がある。出発後すぐに表れるのは、大きな鏡を立て掛けたような岩肌に水面の反射光がきらめくという「鏡明岩」だ。
▲船乗り場からすぐ見えてくる「鏡明岩」

さらに進むと、岩の合間に洞窟があり、毘沙門天が祀られる「毘沙門窟」が見えてくる。
思わず手を合わせて願をかけるうち、せせり出た「あまよけの岩」が舟ギリギリに迫ってきた。
▲洞窟に毘沙門天を祀る「毘沙門窟」
▲毘沙門窟に向かって祈願していると…
▲岩がひさしのようにせり出す「あまよけの岩」が!

ぶつかりそうでぶつからないのは船頭さんのアトラクション。熟練の技あっての仕掛けだ。

スリルを味わいながらも舟は進む。コイやハヤ、ウグイなどの川魚が、気持ちよさそうに泳ぐ水面を眺め、徐々に心も開放感いっぱいに。
▲すれちがう舟の乗客たちにも親近感を覚えて、つい手を振る
▲船頭さんもにっこり
▲こちらはモアイ像にも女性の横顔にも見える「少婦岩」

龍のように蛇行する砂鉄川の両側にはゴツゴツと切り立った岩が続いている。この荒々しい岩の様相を眺めるだけでも飽きない。スタートから30分程川を遡ると折り返し地点の船着き場が見えてきた。
▲ここで一旦上陸

渓谷の中を歩いて、ダイナミックな景観美を堪能

▲天に向かってそびえたつ岸壁

船着き場では舟を下りて20分程の休憩がある。ここでは、船着き場から少し歩いて、「大猊鼻岩(だいげいびがん)」をぜひ見に行こう。岩壁の中程にある突起部は「獅子(猊)ケ鼻」と呼ばれ、猊鼻渓という名称の由来になっている。
高さ124mの渓谷は圧巻。自然がつくりあげたダイナミックな景観美は「感動」の一言だ。
▲岩壁の中腹に見える突起部が「獅子ケ鼻」だ

もう1つ、ぜひ挑戦してほしいアトラクションが、猊鼻渓の隠れた名物企画「運玉」投げだ。川向こうの岩に空いた眼のような穴に、素焼きでつくった「運玉」という玉を放り投げ、見事入れば願いが叶うという。

「愛」「絆」「運」「財」「福」「寿」「禄」と7種の運玉が販売されている。5個で100円の運玉をさっそく購入。投げずに運を持ち帰ってもいいそうだ。
▲7種類の中からどの運玉を選ぶか、運玉選びは念入りに
▲意外に遠くて届かない。勢いあまって川に落ちないように!

思いきり、穴の上を狙って投げるのがコツ!結果は……無念!しかし、そんな人のために、舟の発着所にある土産店では、運を持ち帰ることができる(?)「うんだまんじゅう」も販売されているのでご安心を。
▲土産店で販売されている「うんだまんじゅう」(10個入り税込550円)

船頭さんの舟歌と船上弁当を味わう

さて、船着き場へ戻ったら、ここからが本当の「舟下り」だ。猊鼻渓舟下りのメインイベントは船頭さんが歌う「げいび追分」。ベテラン船頭・松岡さんの追分は、静かな渓谷に高らかに響きわたり、心地よいひと時を演出してくれた。

さらに旅を盛りあげるのが、おいしい舟積み弁当!事前に予約注文しておくと、舟に乗る際に積んでおいてくれる。おすすめは、猊鼻渓周辺の食材や餅料理などが詰まった「げいびの味弁当(税込1,620円)」だ。炊き込みごはん、あんことずんだの2種類の餅、煮物、サツマイモの甘煮、鮎の甘露煮、フルーツなど味もボリュームも満点。
▲地元食材を盛り込んだ「げいびの味弁当」
▲お弁当に餅が入っているのは、餅の聖地・一関ならでは!

その他にも、舟積み弁当は、前沢牛すき焼弁当(税込1,620円)や五穀鶏弁当(税込1,296円)など、いろいろ選べる。お弁当に舌鼓を打っている間に、1時間半のツアーも終了。大自然がつくりあげた渓谷美を満喫した舟下りだった。
▲焼き目のついた鶏肉とネギがおいしい五穀鶏弁当

水墨画の世界を進む、冬のこたつ舟もおすすめ!

桜や藤が咲き誇る春、緑が美しい夏、紅葉が美しい秋……。四季それぞれに楽しみどころがいっぱいの猊鼻渓は、1年を通して観光客に人気のスポットだ。
▲桜シーズンの風景(写真提供:有限会社げいび観光センター)
▲紅葉シーズンの風景(写真提供:有限会社げいび観光センター)

中でも、秘かに人気なのが冬季のこたつ舟。例年雪が降り始める12月から2月末まで運行し、舟のなかで料理も堪能できる。ほんわか温かいこたつに入って船上から眺める銀世界は、まさに水墨画のよう。普段は味わえない景観に感動すること間違いない。
▲こたつ舟の内部の様子(写真提供:有限会社げいび観光センター)
▲水墨画の世界を進む、冬のこたつ舟(写真提供:有限会社げいび観光センター)

四季折々それぞれに楽しさがある「猊鼻渓舟下り」。船頭さん一人ひとりとの出会いもまた、楽しみの一つだ。

写真撮影:ナカムラ写真館
モデル:八木絵里
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。 (編集/株式会社くらしさ)

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