今と昔が交差する港町、門司港レトロの建築巡り

2015.06.17

明治初期に開港して以来、日本を代表する国際貿易都市として栄えた門司港には、大正時代に建てられた歴史的な建築物がその姿を残し、当時の繁栄を今に伝えています。最も栄えた時代には、重要な国際貿易の拠点として日本三大港(神戸、横浜、門司)のひとつに数えられた門司港。商社や銀行が争うように支店を開設したといわれています。終戦後、栄華を極めた港町は貿易の縮小とともに衰退しましたが、1988年から整備をはじめた門司港レトロ事業で再開発が進むと、再び活気を取り戻しました。年間200万以上の人が訪れる門司港レトロで、見逃せない建築名所を巡ります。

大正建築から近代建築まで、有名建築物を訪ねて

JR門司港駅から海側に歩いていくと、本州と九州をつなぐ関門橋の下に、大小さまざまな船が行き交う関門海峡の景色が広がっていました。最初にめざしたのは、門司港ホテルの横にある「ブルーウィングもじ」。全国でもめずらしい歩行者専用の跳ね橋は、恋人の聖地として知られ、”跳ね橋が閉じてから最初に手をつないで渡ったカップルは永遠に結ばれる”というウワサもあるそうです。その奥に見えるのが、日本を代表する建築家、黒川紀章が設計した高層マンション「レトロハイマート」。31階にある「門司港レトロ展望室」からは、門司港の美しい街並みが一望できます。
跳ね橋を渡ると、右手にあるのが「旧門司税関」です。官界建築の雄といわれた妻木頼黄(つまきよりなか)の指導で造られた建物は、レトロ事業によって大掛かりな復元工事が行われ、威厳性を持つ明治の港湾施設の面影を残す建築として、かつての雄姿を取り戻しました。近代的なデザインとモダンなネオルネッサンス調が交わる建物の1階には、吹き抜けのエントランスホールや喫茶店、展示室があり、2階には、ギャラリーと展望室があります。
「旧門司税関」前のレトロ中央広場の奥には、「国際友好記念図書館」が佇んでいます。国際航路で結ばれ、交流が盛んに行われていた中国・大連市と昭和54(1979)年に友好都市として親交を深めた門司港。その15周年を記念して、明治35(1902)年に帝政ロシアが大連市に建てたドイツ風の建物をそっくりに複製建築しています。1階には、レストラン、2階には、中国をはじめとする東アジアの文献を収蔵した図書館、3階には、資料展示室があります。
駅周辺に戻り、門司港のランドマーク的な存在の「旧大阪商船」へ。大正6(1917)年に完成した大阪商船門司支店を修復した建物は、八角形の高塔が印象的で、オレンジ色のタイルと白い石の帯のコントラストが美しい辰野式建築を採用しています。「ミナトの美貌」と称賛された建物は、当時の商船会社のオフィスを知ることができる文化遺産でもありました。台湾や中国、インド、ヨーロッパに向けて、1カ月に60隻もの客船が出航していた門司港。この建物の待合室やオフィスも、海外へと旅立つ多くの人々で賑わっていたのでしょうね。
通りに面したエントランス部分も、ノスタルジーな雰囲気に包まれています。1階は、地域で活動する作家の作品を並べる門司港デザインハウスとわたせせいぞうギャラリー、2階は、出光美術館(門司)の特設展示室として利用されています。
「旧大阪商船」から駅前に出て、海と反対方向に歩いていくと、国の重要文化財に指定されている「旧門司三井倶楽部」があります。大正10(1921)年、三井物産の社交倶楽部として門司区谷町に造られた建物には、ハーフ・ティンバー様式と呼ばれるヨーロッパ伝統の木造建築工法が用いられ、ドイツ壁の特殊な技術が施されています。完成した翌年には、アインシュタイン博士夫妻が宿泊。今もその宿泊時の部屋を復元したメモリアルルームや、門司出身の女流作家・林芙美子の資料室などがあります。

大正ロマンを感じながらグルメやショッピングを満喫

「旧門司三井倶楽部」の1階にあるレストラン「三井倶楽部」で、門司港名物の焼き海鮮カレーセット(1,490円・税込)をいただくことにしました。フグやイカ、エビなどの具材がゴロゴロと入り、たっぷりのチーズの真ん中には卵がのり、瓦をひっくり返したような専用皿で、アツアツのまま席に運ばれます。名物の焼きハヤシライスと同様、バナナフライが入るルーは、甘く濃厚でコクのある味わい。バナナの叩き売りの発祥の地にちなんで、デザートにも手づくりのバナナゼリーが登場します。ビーフ焼きカレーセット(1,490円・税込)、ハヤシライスセット(1,490円・税込)も人気です。社交の場だった華やかなホールで食事をいただけるなんて、贅沢な気持ちになりますね。
異国情緒の風情を感じられる門司港レトロの魅力は、建築やグルメだけではありません。港町を散策していると、いたるところにセンスの良い雑貨店があり、アーティストの作品やセレクト雑貨が並んでいます。歴史あるレトロな建物に、オシャレなショップの雰囲気が調和する独特の空間が楽しめます。JR門司港駅の正面にある日本郵船ビルの1階にも、子供服からメンズ、レディースまで扱う「GOLDEN RAY(ゴールデンレイ)」というステキなお洋服屋さんを見つけました。
古き良き時代を偲ばせる港町には、そのままで絵になる風景が多く、いろいろな映画やドラマの舞台にもなっています。そして、もうひとつの魅力は、ライトアップされた夜の門司港レトロです。幻想的な夜の港町は、デートにもぴったり。潮風に吹かれながらロマンティックな夜を満喫してくださいね。
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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