泡盛の力でスパイスがまろやかに!沖縄の魂が入った沖縄古酒カレー/全国カレー巡礼の旅Vol.30

2016.08.05

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、医食同源の考えに則り、オーダーメイドで作ってくれる「薬膳カレー」をご紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1. スパイスを「寝かせる」ってなんだ?
2. 古酒の力でカレーはこんなに変わる!
沖縄の食シーン、特にお酒を語る上で外せないのが、ご存じ泡盛。その泡盛を3年以上熟成させたものは「古酒(クース)」と呼ばれ、寝かせれば寝かせるほど芳香は増し、舌を包むようなまろやかさを纏い、あゝグラスが手放せない……と、なんとも寝かせ甲斐のあるヤツであります。

今回ご紹介するのは、この古酒の力を最大限に利用したなんともユニークなカレー、その名も「古酒カレー」です。これを食べずに沖縄カレー巡礼の旅は終われますまい!

1. スパイスを「寝かせる」ってなんだ?

やってきたのは「カフェ沖縄式」さん。井上先生がプロデューサーを務めたカレーのテーマパーク「横濱カレーミュージアム」への出店経験を持つ沖縄で唯一のお店です。

「もともとこちらはカレーミュージアムへの誘致候補として注目していて、プライベートで沖縄に来たときに訪ねてみたんだ。幸運にもその日のラスト一皿にありつけてね。あまりにおいしくて、思わずその場でカレーミュージアムにスカウトさせてもらったんだよ!」(井上先生)
「沖縄では料理に泡盛をよく使うのよ。たとえばラフテー(角煮)とかね。私たちにとって泡盛は身近な調味料なの」とは、女将の島尻美江子さん。
その泡盛(同店では古酒を使用)を非加熱の香辛料に練り込み団子状にして一定期間寝かせると、香辛料の角が取れ、カレーにしたときに驚くほどまろやかな味わいになるんだとか。
意地悪な言い方をすれば、香辛料の角が取れるということは、中には本来と異なる性格に変わるものもあるということ。単にブレンドするより、仕上がりの予測がはるかに難しくなります。

それゆえ重要となるのは、古酒に練り込んでなおバランスを崩さない香辛料の“配合”。現在練り込まれているのは、ご主人・直樹さんが研究に研究を重ねて選りすぐったクミン、パプリカ、沖縄ウコン、そしてシナモンのようなエキゾチックな香りを放つ石垣島産のピパーズ(島こしょう)などこだわりの15種類です。

季節や気候によって配合を変え、手間をかけた香辛料に合わせるのは、カレーにトッピングするあぐー豚をホロホロになるまで煮込んで旨みを抽出したブイヨン。小麦粉は一切使わず、玉ねぎとトマトだけでとろみを出すのが「カフェ沖縄式」流です。さて、そのお味とは?

2. 古酒の力でカレーはこんなに変わる!

▲古酒カレー(並1,000円、大盛1,300円・税込)
それではいただきま~す!と意気込む私たちの鼻腔をくすぐるある香り。
こん「この妖艶な香り……分かった、クミンですね!そういえば、豚肉とクミンって好相性なんですよね~。それに何ですか、このまろやかなルウは!口に含むと、すんと喉の奥に流れ落ちるような澄んだ印象です。スパイスの角が取れたおかげで、刺激はないのに香りの余韻は残したまま、さらにターメリックライスと相まってたまらなく美味!どうしよう、スプーンが止まりません」
井上先生「でしょ?気が付いたら食べ終わっちゃうんだよね。食後は胃がスッキリするよ。それにしても初めてこちらでいただいてから10年以上経つのに、味にブレがないのはお見事!普通はオペレーション的にもコスト的にもここまで手間をかけられません。古酒を使うにしても煮込む段階で加えるくらいが関の山。島尻さん、実際のところ採算度外視なんじゃないですか?」
女将「そうですね、コストはかなりかかっているかもしれません(笑)。でも、利益を優先させたらいいものは作れません。カレーって世界中どこでも食べられるものだけど、私たちが出したいのはこの店でしか食べられない、ノージャンルのカレーなんです。だからこそ『ここのカレーにハマりました!』と言っていただけると本当にうれしいです」
▲ふとテーブルの隅に目をやると「伝言板」と書かれたノートが。ページをめくると、国内外から訪れた方たちの温かいコメントがぎっしり!

ちなみに食後におすすめなのが、こちらも同店名物「ぶくぶくコーヒー」(540円・税込)。なんとも愛嬌のある名前の秘密は……?
ご覧ください、この“ぶくぶく”なビジュアル!一見カプチーノかと見紛うこの泡っぷり、古くから沖縄に伝わる“ぶくぶく茶“を独自にアレンジしたもので、コーヒー豆と一緒に挽く大豆の力でこうなるのだとか。香草やゴーヤ、シナモンなどのパウダーも加わり、泡の中から尖りのない苦味と得も言われぬ豊かな風味が広がります。
それでは本日のカレー格言へまいりましょう!
井上先生「沖縄の魂の入ったカレー、そして沖縄を語れるカレー」

こん「古酒が引き出すスパイスの力!」

実はテーブルやイス、柱に至るまですべて手作りだというお店。ご夫婦の温かな人柄がそのままにじみ出た店内で、沖縄魂にあふれた愛情カレーを味わってみてはいかがですか。
カフェ沖縄式さん、ありがとうございました!

最後に、皆さまにお知らせがあります。長らくご愛読いただいた私、井上こんが初心者目線でカレーをレポートする本連載ですが、今回が最終回となります。約1年前、カレーの街・横須賀からスタートし、北は北海道から南は沖縄まで、また正統派から個性派まで本当にさまざまなカレーに出会い、私も「初心者ライター」から卒業できたような気がします!

またどこかでお会いしましょう。今までご愛読いただき、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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