京都だけじゃない!鮮度抜群の鱧料理を山口県防府市で味わう

2016.08.13

鱧といえば夏の京都…だけではありません!豊富な漁獲量を誇る瀬戸内海一円では、一般家庭の食卓にもあがる馴染みの深い魚。特に古くから鱧漁の拠点でもある山口県防府市では、市内の限られた店で名物「天神鱧(てんじんはも)」が味わえます。抜群の鮮度を生かした産地ならではの鱧料理。その美味しさの真髄に迫ります!

遠浅で砂泥状の海底が広がる防府市沖は絶好の漁場

料理人が見事な包丁さばきで骨切りをする様子、白い牡丹のように美しく盛られた「湯落とし」、そして夏の京都――。鱧といえばそんな連想をする人が多いのでは?

しかし、夏の風物詩として関西で珍重される鱧の多くは、絶好の漁場である瀬戸内海各地から供給されており、山口県は全国五指に入るといわれるほど鱧漁が盛んです。なかでも遠浅で砂泥状の海底が広がる山口県防府市沖は、鱧にとってはこれ以上ない生息地。ゆえに同市は、古くから鱧漁の拠点として県内屈指の水揚げ量を誇っています。
▲防府市街地近くの向島漁港。多くの船が底曳網による鱧漁をおこなっている

夏場は防府市内の鮮魚店やスーパーなどでも骨切りされた鱧が販売されており、家庭でも鱧料理が楽しまれています。
▲市内の鮮魚店では、当たり前のように鱧が売られている
▲一般家庭向けに、骨切りされた鱧も簡単に手に入る

防府産鱧の多くは関西へと出荷されていますが、同市内の料理店では、産地ならではの鮮度抜群の活き鱧料理「天神鱧」が味わえます。

「天神鱧」とは、産地ならではの調理法やメニューで鱧を味わってほしいと料理人たちが開発した名物料理のこと。名前の由来は、同市内に鎮座する日本三天神の一つ・防府天満宮です。
▲「天神鱧」の名前の由来は「防府天満宮」から

昨今、鮮魚輸送における技術の発達はめざましいものがありますが、“とれたて”の鮮度に敵うものはありません!

定番から変わり種まで、「天神鱧」を味わいつくす!

とはいえ、防府市内で味わえる鱧料理がすべて「天神鱧」というわけではありません。“防府産の鱧”を使った料理の提供にこだわるお店によって「はも塾」が結成されており、その加盟12店のみで味わえる鱧料理こそが「天神鱧」なのです。

今回、まずは「はも塾」代表・中谷泰さんのお店「料亭 桑華苑(そうかえん)」で、鱧コース(税込10,800円)をいただきます!
▲「桑華苑」は防府駅から徒歩10分。風情ある和風建築が目印
▲内部には見事な日本庭園が広がる

お座敷に通され、コーンと鹿威しの音が響き渡る立派な中庭に見とれていると、最初の料理が運ばれてきました。先付は「鱧そうめん」。麺には骨と皮ごとすりつぶした鱧の身が練り込まれています。
▲夏の暑い盛りにぴったりの「鱧そうめん」。程よいもちもち感は鱧の旨みを味わうのに絶妙

この「鱧そうめん」、実は「はも塾」のお店で共通の麺が使われていて、味付けで店の個性を楽しむことができます。「桑華苑」の「鱧そうめん」は梅だし仕立てで、優しい酸味が食欲を誘います。
▲だしと麺を混ぜ合わせれば、ほんのり梅の風味が香る
▲「鱧そうめん」に続いては「鱧の南蛮漬け」。香ばしさと鱧の身にしみわたった酸味に食欲はさらにあおられる

3品目には椀ものが運ばれてきました。お品書きには「『鱧笛』上湯仕立て」と書かれていますが…鱧笛って???
▲お椀のふたの裏には防府天満宮が描かれていました

お椀のふたを開けると、白い半透明の筒状の具材が二つ並んでいます。中谷さんにお尋ねすると「鱧の浮き袋です」とのこと!
▲くさみは一切なく、上品な味わい。コリコリとした弾力のある不思議な食感が楽しめます

鱧料理と言えば代表的な湯引きやしゃぶしゃぶなど、身の部分ばかりを思い描いていましたが、浮き袋とはびっくり!お品書きを見ながら、この先どんな料理に出会えるのか期待はさらにふくらみます。

次はお造りが運ばれてきました。「鱧薄造り」と「鱧生肝」、さらに湯通しされた皮も盛られています。
▲美しく盛られた薄造り。食べてしまうのが勿体ないくらい。薄造りは京料理では一般的な「骨切り」ではなく、骨がきれいに抜き取られて提供される

「浮き袋」に続いて本日二度目のびっくり、早速「生肝」をいただきます。味付けはごま油と塩、とろりとした見た目からして、“肝好き”な人にとってはたまらないはず。
▲「鱧はほとんど捨てるところがありません。内臓が料理に使えるのも、締められた鱧ではなく、必ず“活き鱧”を使う『天神鱧』ならではです」と中谷さん

一つの肝を丸ごと口へ運びます。ん~~!言葉にならない程のシアワセ感が口いっぱいに広がります、美味しい~。
▲湯通しされた皮も。弾力のある歯ごたえと味わいはまさに珍味
▲薄作りと一緒に提供されるもう1皿。軽く表面が炙られた「鱧焼霜」(右下)と梅肉添えの「湯引き」(左上)はもはや黄金の組み合わせ

さらに、続いて運ばれてきた「胃袋の山椒焼き」で三度目の驚き…!コリコリとした少し歯ごたえのある食感が、またなんとも味わい深いこと。
▲右側にあるのが「胃袋の山椒焼き」。左側は「あぶり鱧」

「浮き袋」「胃袋」「生肝」など、内臓が美味しく味わえるのも、活き鱧がとびきりの鮮度である証。それも、締めた直後だからこそ。これぞ産地ならではの料理といえます。
▲凌ぎは「鱧寿し」と「鱧フライ梅ソース」。お酒もしっかり進みそうな品ばかり

そしてコースも終盤に。今度は「鱧しゃぶ」です。鱧料理としては定番メニューですが、「桑華苑」では新鮮であるからこその趣向で味わえます。

そのポイントは「鱧しゃぶ」用の薄切りの身に皮が残されていること。さばきたての活き鱧の皮は熱を通すとたちまち収縮、細く切られた野菜をくるりときれいに巻き込みます。
▲「鱧しゃぶ」用の鱧の身。うっすらと裏側の白い皮が透けて見える
▲だしは鱧の頭と骨から取られている。鱧の身をしゃぶしゃぶすると…
▲くるりと野菜を巻き込んで、身はぷりっぷりに。最後は、鱧の旨みが溶け込んだこのだしで雑炊をいただく

「鱧の身、皮、シャキシャキした野菜、三つの食感が楽しめます。身が踊るほどの、活きたうちに調理しなければ、このようにしっかりと野菜を巻き込んではくれません」と中谷さん。

身だけでなく様々な部位を味わえる「天神鱧」は、その美味しさはもちろんのこと、今までの鱧料理の概念をきれいに打ち崩してくれました。趣向を凝らしたコースの品々に、最初から最後までお品書きを見ながらワクワクが止まりません!

「はも塾」加盟店ごとに個性豊かな「天神鱧」を提供

料亭、寿司店、活魚料理店、中華料理店など、多彩な店が加盟している「はも塾」。中谷さんによると「鱧そうめん」に限らず、定番料理、創作料理ともに「天神鱧」には店の個性があらわれるのだとか。

ならば!と次に訪れたのは、防府駅を挟んで市街地の反対側にある「佐じか」。今度はどんな「天神鱧」に出合えるのでしょう。
▲「ふぐ処 佐じか」はその名のとおり、通年でふぐ料理も味わえる。天神鱧とふぐ、両方を楽しむことも可能

「佐じか」ではコース(税込5,400円、税込8,300円※要予約)だけでなく、単品でも「天神鱧」を味わうことができます。さっそく目にとまった「はも鉄板焼」(税込1,650円)を注文します。

「鱧そのものは淡泊な味わい。油とは良く合います」と店主の佐鹿英武(さじかひでたけ)さん。こちらのお店では、なんとバターで仕上げられた鱧を、わさび醤油でいただきます。

和食料理店だけに“和”のイメージばかりが先行していましたが、なんとバター。これは嬉しい不意打ちです!バター風味の鱧にわさび醤油、う~ん、美味しい~!
▲鱧とバターとわさび醤油、なかなか侮れない素晴らしい“トリオ”

次に、「佐じか」イチ押しの「鱧にぎり」(3貫/税込1,080円)をいただきます。こちらのネタに使われているのはハモの腹身の部分。複雑な骨の隙間に包丁を入れ、骨をすくように交わして身を切り取るのだそう。
▲にぎりに使われている鱧の身は骨が全くない。腹身だけに旨みもしっかり
▲「鱧押し寿司」(税込2,150円)も人気で持ち帰りもできる。そぼろ状にした鱧の身を寿司飯とともに押し固め、表面を少し炙って仕上げる

「佐じか」の「天神鱧」も期待以上の絶品でした。こうなれば、ぜひコースも味わってみたいところです。
それにしても、「桑華苑」「佐じか」2店を訪れただけでも、驚きと感動の連続。ほかの「はも塾」加盟店ではどんな「天神鱧」に出会えるのか、防府を訪れる楽しみがふくらみます。

はも塾

加盟店の詳細は下記ウェブサイトをご参照ください

関西でも引く手あまたの防府産の鱧。なぜこんなに美味しい?

中国、四国、九州の各山地から無数の河川が流れ込む瀬戸内海。山林の豊富な栄養分が海へと浸透することでプランクトンが育ちやすく、魚たちにとってはまさに天国。そんな中で育ったエビ、カニ、小魚などをエサに、防府産の鱧は丸々と太っていきます。

その中でも、一級河川佐波川が注ぎ込み、遠浅で砂泥状の海底が広がる防府市沿岸は、鱧にとっては格好の住みか。栄養たっぷりの食事が保証された海域でもあります。
▲防府市を縦断して瀬戸内海に注ぐ佐波川。中国山地から豊富な栄養分を運んでくる

鱧そのものが「西京はも」としてブランド化されている山口県。その中でも、特に美味しい防府産の活き鱧による料理「天神鱧」は、ご当地の料理人と最高の素材が織りなす珠玉の逸品です。

「鱧は梅雨の水を飲んで美味しくなる」という言葉があるように、まさに夏の今が美味しい盛り。夏の京都で味わう鱧ももちろん絶品(ひょっとしたら防府産かも!?)ですが、水揚げされるご当地の防府で「天神鱧」を味わえば、きっと新たな美味しさに感動するはずです!
▲お土産も「天神鱧パイ」(税込700円)で決まり!製造元の洋菓子店「シェモム」や地域の名物が並ぶ防府天満宮前「まちの駅うめてらす」などで手に入る
兼行太一朗

兼行太一朗

記者兼営業として、地元山口の地域情報紙に14年間勤務。退職後はNPO法人大路小路ひと・まちづくりネットワークに籍を置き、守護大名大内氏や幕末における歴史資源の取材に携わる。同時にフリーライターとして活動しながら、たまに農業も。自称ネコ写真家。(編集/株式会社くらしさ)

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