墨発祥の地・奈良で「写仏」体験。仏さまを描いてご縁結びを

2017.04.23 更新

最近、注目を集める「写仏」をご存知ですか?「写経」はお経を写す“行(ぎょう)”のことですが、「写仏」は、仏さまの姿を描き写す行です。奈良でもっとも写仏の盛んなお寺、當麻寺中之坊(たいまでらなかのぼう)で、本格的な写仏を体験してきました。

国宝・當麻曼荼羅で知られる中将姫ゆかりの古刹へ

奈良は日本で最初に仏教が伝来した場所であり、筆と墨の発祥の地。
墨においては、奈良時代に生産が始まり、現在も全国シェア90%を誇ります。
そんな“はじまりの地”奈良のお寺で、墨を使って描く写仏は特別感いっぱいの体験です。

なかでも、本格的な写仏体験を行っているのが、葛城(かつらぎ)市にある當麻寺。
近鉄南大阪線の当麻寺駅から、徒歩15分ほどのところにあります。
▲當麻寺の本堂

當麻寺は本尊が曼荼羅(まんだら)という、全国的にも珍しいお寺です。
その曼荼羅は、奈良時代に都で生まれた中将姫(ちゅうじょうひめ)が織り上げました。中将姫は、5歳で母親を亡くした後、継母から妬まれ命を狙われるようになり隠棲生活を送りますが、そのことを恨むことなく、やがて仏門に入ります。

千巻の写経を成し遂げたとき、夕陽の中に阿弥陀仏と極楽浄土の光景を観じ、その阿弥陀仏に仕えたいと當麻寺にたどり着きました。
そして、夕陽の中に観た極楽浄土を、蓮糸(はすいと)で一夜にして織り上げたのが、本尊の當麻曼荼羅です。
▲當麻寺中之坊の「當麻曼荼羅」平成写本

當麻寺の塔頭(たっちゅう)の一つ、中之坊では、今のような写経ブームになる以前、2005年から写仏を始めました。
当初は、當麻曼荼羅の中央に描かれた「阿弥陀仏」とその左右にいらっしゃる「観音菩薩」と「勢至菩薩」の三尊の写仏を行っていましたが、現在はさらに増え、「中将姫」、當麻寺金堂に安置される国宝「弥勒如来」、中之坊に安置され、中将姫を守り導いた「導き観音」の計6種類があります。
▲仏画家が制作したオリジナルで格調高い写仏用紙

写仏は、写仏道場で行います。
用意されているのは、奈良の筆、奈良の墨、そして練習用紙です。
▲筆はお寺の名前入り。持ち帰ることができます

説明を受けながら、まずは練習から。用紙には薄く描かれた仏さまの手や耳、顔などのパーツが並び、その上から筆でなぞって描いていきます。
▲院主の松村實昭(まつむらじっしょう)さんをはじめ、職員さんが丁寧に教えてくださいます

心静かに仏さまを描いていく

練習が終わると、いよいよ本番。
今回は、一番人気があるという「導き観音」の写仏をすることに。
まずは、當麻曼荼羅に手を合わせ、心静かにして始めます。
ただなぞるだけと思いきや、これが結構難しいんです。
仏さまのお顔に向かって真正面に描いていかないといけないのかと思っていましたが、線を描きやすいように、紙を回しながら描いていいとのこと。
さらに、どのパーツから描いてもいいのだそうです。
▲心を込めて一筆ずつ描いていきます

筆を持ちなれていないこともあり、最初は線が震えて、太くなったり細くなったり思うように運ばないのですが、次第にそういうことが気にならなくなり、ただ描くことに没頭していきます。
仏さまのお顔がだんだんと浮き上ってくるのが楽しくて、描くことで仏さまと強いご縁を結べたような嬉しい気持ちになっていきます。
文字を書いていく写経とは、そこが大きく違うところかもしれません。
▲見事な天井絵のもと、写仏と向き合います
▲天井には、文化勲章・前田青邨(まえだせいそん)をはじめ、上村淳之(うえむらあつし)や絹谷幸二ら有名画家が奉納した絵画が約150点飾られています

最後は、筆を一度洗い、當麻曼荼羅に手を合わせてから、仏さまが光を放つ白毫(びゃくごう)を描いて完成です。
とっても穏やかなお顔になりました。
早い人は20分ほどで描き上げるそうですが、1時間ほどかけてゆっくりと行うのがおすすめです。

描き終えた写仏は、持ち帰っても奉納してもどちらでも良いとのこと。
最近は、自身で描いた仏さまを家に飾りたいと、持ち帰る人が多いそうです。
▲奉納する場合は願い事を書いておきましょう

描き終えた後は、導き観音さまにお詣り。
導き観音は、中将姫の守り本尊で、良縁成就の仏さまでもあります。
描いたことで一層親近感の湧いた仏さまと、さらにご縁を結びます。
▲導き観音。「中将姫剃髪堂」に祀られています(写真/當麻寺中之坊)

また、重要文化財に指定される書院では、庭園を眺めながらお抹茶をいただくこともできます。
写仏を終えた後いただくと、ほっこりします。
▲お茶菓子付きお抹茶400円

お顔を描くことで、仏さまをより身近に感じることのできる写仏。
心が洗われる行を、ぜひ奈良で体験してみてください。
白崎友美

白崎友美

奈良の編集制作会社EditZ(エディッツ)の編集者。大阪、京都で雑誌や通販カタログなどの制作を行い、現在は居住する奈良県に軸足を置き、奈良の観光関連のガイドブックやホームページなどを制作。自社媒体の季刊誌『ならめがね』にて、「ユルい・まったり・懐かしい」奈良の魅力を発信している。

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