風情たっぷり!修験文化が息づく昭和レトロな温泉街「洞川温泉」

2016.12.17

奈良県吉野郡天川村に位置する洞川(どろがわ)温泉は、標高約820mの高地に広がる温泉郷。周囲を標高1,000~2,000m級の山々に囲まれており、冬には奈良では珍しく雪が積もる温泉街として、雪見温泉を楽しむ客でにぎわいます。ここ数年は宿の整備が進んだことや、昭和レトロな町並みに注目が集まり、女性の宿泊客が増加。懐かしさをまとう洞川温泉をご案内します。

行者の町をぶらり散歩

洞川温泉は、吉野の近鉄「下市口(しもいちぐち)」駅からバスで1時間ほどの場所に広がる温泉街。
山に籠り厳しい修行を行う山岳信仰を仏教に取り入れた日本独自の宗教「修験道(しゅげんどう)」の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)に仕えていた後鬼(ごき)の末裔が開いたと伝わります。

修験道の聖地とされる大峯山(おおみねさん)の入山口にあることから、修験道の修行をする行者(ぎょうじゃ)のための宿場として古くから栄えてきました。大峯山は1300年以上前から現在まで女人禁制がしかれており、かつては男性のみが集う場所でしたが、1970年代に温泉が湧出し、今では多くの女性客が訪れます。
▲洞川温泉の町並み。奥に連なる大峯山一帯は「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています
▲穏やかに流れる川や、橋の赤い欄干も洞川温泉の風景美の一つ

温泉街には旅館や民宿が20軒ほど立ち並び、どの軒先にも縁側があったり、提灯がぶら下がっていたりと、とても風流。
▲縁側に座ってしばし休憩することも

また洞川は、名水が湧き出ることでも知られる場所。
環境省が全国各地の名水を選定した「名水百選」にも選ばれる「ごろごろ水」は、遠方からたくさんの人が汲みに来るほどの人気で、街中には、名水で作った豆腐屋や名水コーヒーなどが味わえる喫茶店も並びます。
▲ひょうたん型のペットボトルに入った「ごろごろ水」(350円・税別)の販売も

街を歩いていて最も目にするのが「陀羅尼助(だらにすけ)」の看板の文字です。
▲陀羅尼助を販売する「銭谷小角堂(ぜにたにしょうかくどう)」

陀羅尼助は、“和薬の元祖”といわれる胃腸薬。
役行者が大峯山での修行中、これから山の中で修行する山伏のためにと、弟子の後鬼に陀羅尼助の製法を伝授。それが洞川の陀羅尼助の起源だと伝えられています。

現在も、山伏の持薬として愛用されているほか、関西では家庭常備薬としても知られ、食欲不振、二日酔い、食べすぎなどに効果があるとされています。
▲陀羅尼助は板状のものですが、時代とともに飲みやすい丸状になり、現在は写真の「陀羅尼助丸(だらにすけがん)」が主流に。12包(1包=30粒)入り540円(税込)~

また、銭谷小角堂の店頭では、かわいい子たちがお出迎えしています。
▲お店の前に立つ石像のお猿さんは陀羅尼助丸の箱を持って宣伝中
▲銭谷小角堂オリジナルの「陀羅尼助キューピー」がかわいすぎ!左後ろにあるストラップ(小)540円、左前に立つキューピー(大)864円(いずれも税込)※右2体は非売品

雪見風呂と地元猟師が仕留めた絶品ぼたん鍋

街歩きを楽しんだ後は、本日のお宿「花屋 徳兵衛」へ。
こちらは、温泉街の中でも最も古く、なんと創業約500年!の老舗宿です。

もとは行者のための宿だったので、浴室とトイレは男性用しかなかったそうですが、現在は昭和の名残と洗練された新しさが融合され、女性にも心地よい宿となっています。
▲17代目の花谷芳春(はなたによしはる)さん

館内に入ると、行者の宿らしいディスプレイに目を引かれます。
▲大峯山を参詣することを目的として集まる「行者講」の提灯。各地域の行者講にはそれぞれ定宿があり、提灯を吊るしている宿に泊まります
▲真ん中が役行者。向かって右が前鬼(ぜんき)、左が後鬼

現在の建物は、道に面している部分が昭和28(1953)年築のもの。2010年に建物奥に3階部分を増築しました。吉野の木材をふんだんに使い、木の香りとあたたかみが感じられます。
▲階段を上がった2階の踊り場に素敵な空間が
▲振り返ると風情ある旅館のたたずまい
▲2階の客室「表の間」1泊2日・食事付13,600円~(税・サ込、入湯税別途100円)
▲部屋の中には夕涼みにピッタリな椅子も

3階には3つの客室あり、すべてテラス、トイレ付き。眺望も抜群です。
▲浴室付きの「西の天空」の客室、1泊2日・食事付19,500円~(税・サ込、入湯税別途100円)
▲眺望を楽しみながらくつろげるテラス

浴場は1階に半露天風呂の「後鬼の湯」と、長年行者の疲れをいやしてきた「前鬼の湯」があり、3階には貸切風呂の「是空の湯」を備えます。
いずれも単純アルカリ泉の温泉で、神経痛や筋肉痛、疲労回復などに効果があるそう。
1階にある2つのお風呂は24時間入浴可能!
▲窓が全開なので心地よい風が入り、気持ちのいい湯浴みができます
▲積雪する1~2月は雪見風呂が楽しめます
▲貸切風呂は50分2,000円(税別)。事前予約が必要ですが、空いていたら当日予約も可

そしてこの日のお待ちかねの夕食は、秋冬に旬を迎える「ぼたん鍋」のコースを。
美しく盛られた猪肉は、地元の猟師・阪口正(さかぐちただす)さんが獲るブランド猪肉「大峯猪(おおみねじし)」!
▲脂身と赤身のバランスがいい大峯猪

特産品でもある名水豆腐も。大豆の風味を強く出すのではなく、名水のおいしさが感じられる豆腐なので、鍋物に合います。
ゴボウの風味とショウガを効かせた白味噌ベースのダシの中に、猪肉、名水豆腐、そして、白菜や春菊、シイタケやシメジ、ゴボウ、地元で手作りするコンニャクなどを入れてグツグツ。
大峯猪は、やわらかい肉質で脂身は甘く、そのうえ新鮮だから猪肉独特のクセや臭みは一切なし!
一般的にぼたん鍋といえば赤味噌が入った濃い目のダシで味わうことが多いですが、優しい甘みの白味噌ダシとこんなに相性がいいなんて驚きです。それも、上質な猪肉だからこそ叶うんですね。

名水豆腐にもダシがしっかりと染み込み、煮込むほどに中がとろっとした食感となり一層美味に。

鍋のほかには、食前酒や3品盛り、小鉢、柿の葉寿司、汁物、デザートなどが付き、ボリュームも申し分なし。
お腹も心も満たされ、大満足な夕食です。
▲手前の3品盛は、合鴨のスモーク、豆乳のごま豆腐、柿とバターのミルフィーユとイチジクのワイン煮。ほか酢の物、白和え、柿の葉寿司、にゅうめん、デザートのリンゴのコンフォート。内容は季節によって変わります

夕食後、またはお風呂上がりにぜひ立ち寄ってほしいのが、暖炉のある談話室。
こだわりのオーディオから流れるジャズの音色を聴きながら、談話するもよし、読書するもよし。大人のための上質な空間で、素敵な夜のひとときを過ごしてください。
▲オーディオの上には、ご主人のコレクションCDが
懐かしさの中にのんびりとした雰囲気を併せ持つ洞川温泉。
夜は、温泉街をふらり散歩に出てみるのも一興です。
白崎友美

白崎友美

奈良の編集制作会社EditZ(エディッツ)の編集者。大阪、京都で雑誌や通販カタログなどの制作を行い、現在は居住する奈良県に軸足を置き、奈良の観光関連のガイドブックやホームページなどを制作。自社媒体の季刊誌『ならめがね』にて、「ユルい・まったり・懐かしい」奈良の魅力を発信している。

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