下関・川棚に根付く「瓦そば」文化をひも解く

2015.06.17

初めて見た時、そのビジュアルに驚愕しました。“瓦”の上にのった“そば”が、ジュワーッという低い音とともに湯気をあげながら運ばれてきたからです。まさにその名の通りだと感心しました。なんの話かというと、山口県下関市・豊浦町の郷土料理「瓦そば」。豊浦町には県内外に広くその存在を知られる川棚温泉があり、その界隈の旅館やホテルを中心に提供されています。

瓦そばは豊浦町にとどまらず、下関市全域、そして山口県の広いエリアで親しまれるポピュラーな存在です。例えば、スーパーには普通に瓦そばセット(そばと出汁がセットになっている)が販売されていて、家庭の食卓にも頻繁に(後述する取材店舗「元祖瓦そば たかせ」のマネージャー・山本さんによれば、なんと週に一度くらいのペースだとか)登場するそうです。ちなみに家庭ではホットプレートを利用するとのこと。それだけ普及する瓦そばの原点に触れるべく、元祖とされる「元祖瓦そば たかせ」へ行ってきました。

歴史をひも解きつつ、瓦そばのルーツを味わう

「たかせ」があるのは、川棚温泉の入口そば。本館、新館、別館とあり、今回は本館に立寄りました。この店は元々、芸者さんが待機する置屋(おきや)で、築100年以上が経っています。とはいえ、手入れがしっかりなされているため、古くささはありません。風情、歴史をしっかりと伝えてくれる味わい深い建物です。
店に入る前に、瓦そばの歴史について書かれた看板を読んで事前の予習を。看板によれば、西南戦争の際、熊本城を囲む薩摩(島津家)の兵士たちが、野戦中、身近にあった瓦を利用して野草や肉を焼いて食べたそう。このエピソードを参考に、昭和36年(1961年)に「たかせ」の創業者・高瀬慎一さんが開発したのが瓦そばなのです。
店内に入ると、銭湯の番台を彷彿とさせる受付台がありました。中に通されると、思ったよりも広く、座敷、テーブル席がゆったりと設けてあります。所々にこれまで訪れた芸能人の写真が飾ってあり、それらの中の芸能人たちがいずれも若い頃の姿であることから、店の歴史の深さを改めて感じました。
食事の前に、マネージャー・山本さんに瓦そばについてお話を聞きました。「たかせ」で瓦そばが生まれた頃、実際に神社やお寺でもらった瓦を使っていたそうです。「食べ物をのせるわけですから、塗料が塗ってある瓦は使用できません。この瓦を確保するのがなかなか大変だったんですよ」。今では瓦屋に特注し、割れにくく、保温性が高いものを使用。3人前までは1枚の瓦で出し、4人の場合は、2枚の瓦で、2人前ずつを提供しています。「そうすると瓦を囲んで食事をすることになります。鍋のような感覚で、なんというか、絆が深まる気がするんですよね」と話す山本さんはなんだか嬉しそう。
ちょうど話にひと区切りついたタイミングで、「瓦そば」が登場。記憶の中にあるビジュアルのまま、音、湯気とともに運ばれてきました。宇治の抹茶が練り込まれたそばを、乾麺の状態で仕入れ、毎朝自社工場でまとめて湯がきます。「湯がき終わったあと、1時間ほど水切りするんです。私たちの瓦そばには、麺のコシはいりません。それよりも焼き上がった時に、瓦に接した部分はカリッと、その上の部分はフワッと仕上がるのが重要なんです。食感のコントラストがしっかり表現できるよう、調理しているんです」とコツを教えてくれました。

実際に食べてみると、山本さんの言葉どおりの食感に感激。創業当時のレシピを忠実に守っているという自慢のつゆは、カツオの風味がしっかり立っていて、食欲を刺激します。肉、錦糸玉子も彩り、そばとの相性ともに絶妙です。そのまま食べても良し、途中でモミジおろしを加えたり、レモンを絞ったりして味の変化を楽しむも良し。最後まで十二分に満喫しました。
瓦そばは単品で1,080円(税込)。平日(月~金曜)の11:00~15:00にはお得なランチセットが1,429円(税込)で楽しめます。瓦そばと並ぶ名物「うなめし」と一緒に味わうのもオススメですよ。
山田祐一郎

山田祐一郎

日本で唯一(※本人調べ)のヌードルライター(麺の物書き)として活動。麺の専門書、地元の情報誌などで麺に関する執筆を続ける。7月には福岡のうどん文化を一冊にまとめた自費出版本「うどんのはなし」を上梓。福岡市内の一部書店、オフィシャルwebサイト、掲載されるうどん店などで販売する。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP