天窓洞と伊豆のジオ巡り。大自然を満喫するクルージングへ!

2016.10.26 更新

世界認定へ向けての盛り上がりもあり、日本だけでなく世界からも注目されている「伊豆ジオパーク」。そんな雄大な伊豆の自然美を海の上から満喫できるのが、堂ヶ島から出発する「千貫門(せんがんもん)クルーズ」です。迫力たっぷりの海岸線や美しい洞窟や大海原を体感できる、西伊豆観光の人気スポットを訪れました。

静岡県賀茂郡西伊豆町の堂ヶ島は、「伊豆の松島」とも呼ばれる西伊豆屈指の名勝地。様々な形に例えられる岩や小さな島、海沿いの岩々が波の浸食を受けて形成された見事な風景は、古くから多くの旅人や芸術家の心をとらえてきました。

ゆったりとクルージングを堪能するなら
長距離の「千貫門クルーズ」がおすすめ

▲この桟橋からクルーズ船に乗り込みます

堂ヶ島マリンが運航する「千貫門クルーズ」は、西伊豆で最も変化に富んだ海岸線を進む、所要時間約50分のクルージングコースです。高速クルーザー「グレイスII」に乗り込み堂ヶ島を出発。複雑に入り組んだリアス式海岸沿いを進んでいきます。

千貫門、赤壁(せきへき)、観音島など、ユニークな名前のついた名所を巡り、コバルトブルーにきらめく駿河湾を抜け、神秘の洞窟「天窓洞(てんそうどう)」の洞窟めぐりで最後を締めくくります。

高速クルーザー「グレイスII」のキャビンでセレブ気分を味わいながら、伊豆の美しい自然と地形をゆっくりと堪能できるのが、このコースの魅力です。
▲遊覧船のりば前には、こんな記念撮影場所もあります。テンションが上がりますね~
▲いざ、高速クルーザー「グレイスII」に乗船!

さあ出発!
クルーザーは安定感があって揺れがほとんどないので、船に慣れていない私でも船酔いはまったくありませんでした。とっても快適ですよ。
この界隈は岩礁が複雑に入り組んでいるため、熟練の操縦士でないと運転が難しい場所なのだそうです。コースの数ある撮影ポイントでは、速度を落として航行してくれますよ。

天気が良ければ、船上から富士山を見ることができますが、この日は雲が多く、残念ながら富士山を見ることはできませんでした。

船上から、西伊豆の豪快な断崖絶壁や奇岩を眺めます。名前が付いていない岩でも、じつにさまざまな色や形があり、ずっと眺めていても飽きないほど。

伊豆半島は、本来なら海の底に沈んでいるはずの海底火山の断面を、陸上や海上から直接観察できるという、世界でも珍しい場所なのだそうです。
まず現れるのが、木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)・磐長姫命(いわながひめのみこと)姉妹の悲しい嫉妬の物語が伝わる「烏帽子山(えぼしやま)」。標高162mの山頂には、磐長姫命を祀った雲見浅間神社が鎮座しています。

烏帽子山は、かつて海底火山の地下にあった「マグマの通り道」が上昇し、地上に姿を現した「火山の根(火山岩頸・かざんがんけい)」です。
▲堂々とした姿の「千貫門」

この周辺には、荒々しい岩石の海岸が広がっています。千貫門も「火山の根」の一部で、マグマが冷え固まってできた「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」が積み重なったものが、波に削られて「門」のように形作られたものだそうです。「この迫力ある門の姿は千貫の価値がある」ということから、千貫門と名付けられたといわれています。

さて、ここからは、海の上からしか見ることができない風景を紹介しましょう。
▲女性のシンボルを想起させる巨石「さねもりさま」
▲少し離れた断崖にそびえたつ「うりもりさま」は、男性のシンボルを連想させる形の岩

「さねもりさま」「うりもりさま」を海から拝むと、良縁や子宝のご利益があるといわれています。まさに“海上から詣でるパワースポット”と言えますね。
▲座った観音様のお姿に似た「観音島」。どっしりとしていて写真映えしますね

現代人の私たちがうっかり見過ごしてしまいそうな岩にも、それぞれユニークな名前が付いていて、古(いにしえ)の人たちの想像力の高さに驚かされます。
▲「蛇(じゃ)のぼり」。まるで大蛇が岩壁を這いあがっているような模様があります。遥か昔、マグマが周囲の岩石を押しわけ、上昇してできた「岩脈(がんみゃく)」といわれる痕跡です

写真ではちょっとわかりにくいですが、「蛇のぼり」の右隣にそびえ立つのが高さ270mもある迫力満点の岩壁「赤壁」。評論家・言論人として知られる、かの徳富蘇峰(とくとみそほう)先生が、中国の名勝「赤壁」になぞらえてその名を付けたといわれています。

その昔、この周辺の岩石は地熱によって加熱された高温の熱水にさらされていて、成分などが変化してできた「熱水変質」と呼ばれる作用によって、岩石が赤みを帯びた黄白色になったのだそうです。
洞窟がたくさんあります。ここにも「柱状節理」が認められる場所がありますね。海底火山が噴火し、徐々に本州が形作られていった、太古の地球の脈動が伝わってきます。地球科学や自然科学が好きな人にはたまらない風景です。
波勝崎沖でUターンして、ここから復路になります。心地よい海風を受けて、堂ヶ島海岸へ向かいます。
先ほどの荒々しい岩の風景とは打って変わって、堂ヶ島の白く美しい岩壁の海岸線が見えてきました。これは、伊豆が南の海の海底火山だった頃の名残りなのだそうです。伊豆半島と本州の衝突にともなって隆起し、その後の浸食によって創り出された景色です。堂ヶ島周辺は、美しいだけでなく太古の海底火山の姿を今に伝える貴重な場所でもあります。

堂ヶ島海岸では、海底に降り積もった水底土石流の地層が見られ、遊歩道や遊覧船からさまざまな自然の造形を見ることができます。
船内のアナウンスでも触れられていましたが、「堂ヶ島というのはどの島ですか?」という質問がよくあるそうです。驚くことに「堂ヶ島」という名前の島はないそうで、安城岬から瀬浜にかけての約2kmの範囲を指して「堂ヶ島」というのだそうです。

静岡県の天然記念物に指定されている「三四郎島」が見えてきました。
左から、高島、沖ノ瀬島、中ノ島、伝兵衛島(象島)からなる4つの島で、見る角度によって3つに見えたり4つに見えたりすることから「三四郎島」と呼ばれています。
▲少し角度がずれると、島が4つに見えます
干潮時に浅瀬が現れて伝兵衛島と陸地がつながる「トンボロ現象」で知られる場所も、遠くに見ることができます。浅瀬を渡っている人が、かすかに見えますね。

天から降り注ぐ光は幻想的
自然が作り出した神秘の天窓洞

さて、いよいよツアーも大詰め。クライマックスを飾る「天窓洞」へ!
昭和10(1935)年、国の天然記念物に指定された天窓洞は、凝灰岩(ぎょうかいがん)で出来ている海蝕洞窟(かいしょくどうくつ:海水の浸食でできた洞窟)です。
入口が3カ所ありますが、船は南側の入口から入ります。この洞窟は幅が広くて、長さは147mに達します。中央に丸く抜け落ちた天窓のようになっている場所があり、そこから洞窟内に陽の光が差し込んで、まるでスポットライトのように海面を照らします。
天窓から注ぐ陽光が、エメラルドグリーンの海面を照らします。光が白い岩壁に反射し、水面の揺れとともにキラキラと輝く光景は、息をのむ美しさです。
その幻想的な光は、季節や時間、天候によってさまざまに変化するので、何度見ても新しい感動を呼び起こすのです。本家・イタリアの“青の洞窟”に勝るとも劣らない美しさですね。

堂ヶ島から発着するクルージングコースには、今回の「千貫門クルーズ」のほかに、「堂ヶ島クルーズ」「ジオサイトクルーズ」、そして遊覧船での「洞くつめぐり」がありますが、そのすべてのコースで「天窓洞」を通ります。時間がない人は約25分間の「堂ヶ島クルーズ」や約20分間の「洞くつめぐり」がおすすめです。また、毎週土曜日の12:00出発のみですが、伊豆半島認定ジオガイドが同乗する「ジオサイトクルーズ」もありますよ。

実はこの「天窓洞」、遊覧船のりば近くの遊歩道から徒歩でも行くことができるんです。
残念ながら洞窟の中へ行けるわけではありませんが、天窓洞の天窓の周囲から観察することができるので、興味がある方はぜひ行ってみてください。
▲天窓洞内から天窓を見上げた写真。天窓の周囲が遊歩道になっています
▲遊覧船の発着場所へ向かう地下道で、西伊豆の名所や特産物・地場産品などが紹介されています

ハイキングや登山では味わえない、「海の上から見る西伊豆の大自然」が楽しめるクルージング・ツアー。太古の時代の地球が造り出したダイナミックな芸術の数々は、乗船した国内外の旅人の心をがっしりととらえていました。伊豆旅行一番の思い出になること間違いなし。ぜひ海の上から伊豆半島の美しさを堪能してくださいね。
小林ノリコ

小林ノリコ

移動文筆家/伊豆在住フリーランス・ライター。東京・南青山の編集プロダクション勤務を経て2005年からフリーランスとなり、2015年より静岡県熱海市を拠点に執筆活動を開始。「ふらりと出かける、ゆる伊豆」をテーマに、地域の宝を再発見する取材活動と、伊豆地域を拠点に活動するフリーランス・クリエイターのネットワーク作りを行っている。

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