ヒグマのすみかに足を踏み入れる、知床五湖ネイチャーガイドツアー

2016.08.13

知床五湖は世界自然遺産の知床を代表する観光スポット。原生林に囲まれた5つの湖と知床の山並、エゾシカやヒグマなど野生動物の痕跡を見ることができます。ネイチャーガイドとともに散策すると楽しさも倍増!知床の大自然を満喫しました。

▲湖畔の散策路をネイチャーガイドの案内で進みます

知床五湖は、北海道東部の知床半島の中ほどにある5つの湖。「一湖」から「五湖」まで、数字の名前がついている湖の総称です。湖畔にある散策路からは知床の大自然を堪能でき、多くの人が訪れる有名な観光スポットです。

大自然へ多くの人が訪れるため、自然公園法による利用調整地区制度が導入されています。これは、自然景観や生物の多様性を維持するために、散策できる人数の調整などを行う制度です。
そのため、知床五湖を散策する方法は2つ設定されています。「高架木道」を歩くパターンと「地上遊歩道」を歩くパターンです。

「高架木道」は、一湖から五湖まで5つある湖のうち一湖しか見ることができませんが、開園期間中いつでも誰でも歩くことが可能。いっぽう「地上遊歩道」は湖畔を歩いて5つの湖を全て見ることができますが、時期により人数制限があるほか、レクチャー受講やガイド同伴が義務付けられています。
▲「知床五湖フィールドハウス」では、散策の手続きやレクチャーが行われるほか、休憩所や売店もあります

ウトロ温泉街から車で約20分、知床五湖観光の拠点となる「知床五湖フィールドハウス」を起点に、2つの歩き方を紹介します!

高架木道なら、車椅子でもベビーカーでも知床の大自然を満喫できる!

「高架木道」は、知床五湖フィールドハウスの横からスタートして一湖近くにある終点の展望台まで、約800mの散策路、片道歩いて約20分です。入口から終点まで段差がなく緩やかな坂のみなので、車椅子でもベビーカーでも進めるのが大きな特徴です。
また、万が一ヒグマが現れても木道へよじ登れないよう、柵の下には弱い電流が流れているので、安心して散策できます。
▲見晴らしのよい草原の上に造られた高架木道

「高架木道」には展望台が3カ所あり、木道の途中に2カ所、終点に1カ所です。1つ目の展望台からは知床連山の山並を眺められ、2つ目の展望台は一湖を遠望でき、終点の展望台からは、目の前に広がる一湖と知床連山の姿を同時に楽しめます。
▲終点の「湖畔展望台」から眺めた一湖

50年以上前まで知床五湖周辺には開拓民が住んでいて、牛が放牧されていました。現在は居住者はおらず、牧草地などは自然に還す取り組みがなされています。
「高架木道」は当時の牧草地跡の上に造られているため、周囲に高い木々がほとんどなく遠くまで見通しがよいことも特徴です。
▲展望台ではなく木道の途中からでも、大自然の風景を楽しめます
▲草をはむエゾシカを発見!広々として見渡しがいいので、動物たちの姿も見つけやすい!

手軽に散策できる「高架木道」。木道から湖畔に下りることはできませんが、小さなお子さんからお年寄りまで雄大な自然を満喫できます。

ネイチャーガイドとともに、ヒグマのすみかへ

もう一つの歩き方、「地上遊歩道」では散策のルールが厳格に定められています。観光客の混雑による植生破壊を防ぐためと、ヒグマと遭遇するリスクを減らすためです。

春先から5月9日までと、8月から10月中旬頃までの間は、散策する前に知床五湖フィールドハウスで約10分間のレクチャー受講が義務づけられています。
例年5月10日~7月末は「ヒグマ活動期」のため、レクチャー受講とともに、ヒグマ対策の知識と技術を持った知床五湖登録引率者(専門のネイチャーガイド)の引率も義務づけられています。この時期は、有料のガイドツアーでのみ散策することができます。
▲知床五湖フィールドハウス内でガイドツアーの受付をし、隣の部屋でレクチャー受講をします

レクチャーでは、ヒグマと出合わないようにするための知識を中心に、知床五湖の自然環境についてと散策する上での注意点を、ビデオ映像を見て学びます。
受講を終えたら、いよいよ出発!
▲散策路入り口にはブラシがあり、靴底の土を落とします。汚れを落とすだけではなく、植物の種子など外来のものを知床五湖へ持ち込まないようにするためです

「地上遊歩道」は、知床五湖フィールドハウスの裏手を起点に、「高架木道」の湖畔展望台までの散策ルート。ネイチャーガイドの案内を聞きながら、約2時間35分かけて歩きます。
▲今回は「知床オプショナルツアーズSOT!」の代表ガイド・鈴木謙一さんに案内してもらいました

「地上遊歩道」は湖畔の一部を除いて木道などはほとんどなく、地面を踏みしめながら進みます。スニーカーでも歩くことはできますが、時折木の根が地面から出ていたり、水たまりやぬかるみがあったりするので油断は禁物。トレッキングシューズ、もしくは底が厚いスニーカーがおすすめです。

知床五湖の散策のポイントは、美しい自然景観を眺めるだけではなく、ヒグマの痕跡などを見て、自然の営みを感じること。散策中に動植物のことなどを時折案内してもらいながら進みます。
▲鈴木さんが、ヒグマがよじ登った木について教えてくれました
▲樹皮にヒグマの爪跡がくっきり

散策路周辺には、ミズバショウの群生地が数カ所あります。ミズバショウの根はヒグマにとって大好物。特に、春先に花開いてから夏前くらいまでの成長期がヒグマにとって美味しいらしく、この時期は群生地にヒグマが頻繁にやってきます。
▲成長中のミズバショウの群落。まるで巨大な小松菜のように見えます。草をなぎ倒してヒグマが通った跡!?も発見

5月10日~7月末に専門知識を持つガイドの同伴が義務付けられている理由は、この時期にヒグマと不意に遭遇する可能性が高いからなのです。万が一ヒグマと遭遇した場合、ネイチャーガイドの指示に従い引き返してツアー中止になることも。実際、年に数回あるそうです。

ヒグマが近くにいないかを確認するため、時折大きな声を出したり、ぬかるみなどでヒグマの足跡がないかを確認したりしながら前に進みます。

いよいよ湖めぐり!知床の大自然をたっぷり堪能!

入口から20~30分ほどで最初の湖、五湖に到着。
▲静かな水面に木々と山が鏡のように!マガモやカルガモなど水鳥も多数羽を休めていました

一湖から四湖までは、開拓民が放流したフナがいますが、五湖には魚はいません。かわりにカエルやサンショウウオがいると言われています。また、五湖は他の湖に比べてトンボが多いそうです。魚がいないためヤゴが食べられないからかもしれませんが、なぜ多いのか正確な理由はわかりません。
▲水辺の草むらにとまっていたルリイトトンボ。綺麗な青色が印象的なトンボです

しばし湖畔で滞在したのち、四湖へ向け出発。四湖までは距離が短く、10分程度で到着しました。
▲四湖にて。このように湖の数に合わせて5、4、3、2、1と指で示しながら各湖で撮るのが記念撮影の定番なのだとか

ちらりと眺めて記念撮影をしたら、三湖へ向かいます。途中立ち止まりつつ、20分少々の道のりです。
▲大木の真ん中にある大穴を覗き見。木の中心は枯れて空洞ですが、樹皮近くの部分だけで生きている木だそうです

散策途中、動物のことや植物のことなど、鈴木さんが随時案内してくれます。自分一人で歩いていてはきっと気づかなかったことや、知らないことがたくさん!
▲三湖に到着。対岸に見える高い山は羅臼岳。例年は10月に初雪が降りますが、過去7月に降雪があったこともあるそうです

散策路は三湖を3/4周するので、しばらく湖畔沿いを歩きます。
▲湖畔からつかず離れず進みます

知床五湖の水は、湖の底や畔(ほとり)などから湧き、湖の底から地中に染み込み、大地の中を通って海岸線の断崖から染み出してオホーツク海に流れている、と言われています。
▲三湖から流れ出る川と湿地帯にかかる木道

ただ、雪解けの時期は水量が多いので、五湖から四湖へと流れる小川ができるほか、一湖から二湖、二湖から三湖へと小川が流れ、三湖からあふれた水が小川となり流れ出ます。流れ出た川の水も湖の水と同様、地中に染み込んでいくので、海まで達する前になくなって消えてしまうそうです。
▲三湖には島もあります。たまにエゾシカが泳いで湖を渡り島にいることもあるそうですよ。さあ、目をこらしてエゾシカ探し!

三湖から二湖にかけては小川や湿地帯が多いので、この周辺にもミズバショウの群落が点在しています。つまり、ヒグマのエサ場が点在しているということ。
案の定!?ヒグマの足跡を発見。昨日通った跡かもしれませんが、1分前に通った跡かもしれません。念のため警戒しながら進みます。
▲少し崩れてわかりにくいのですが、ヒグマの足跡。手のひらと比べてみると、大きさにびっくり!

ヒグマは本来臆病な動物なので、基本的には人間の気配がすると自ら遠くへ逃げていくそうです。周囲の気配に目を配りつつ、ヒグマに対し人間がいることを伝えるため、鈴木さんとの会話を少~し大きな声で話すようにしました。

少しドキドキしながら歩みを進め、三湖から10分足らずで二湖へ到着。
▲少し大きな二湖。風がない日は水面に知床連山の姿が映って綺麗そうです!

二湖へ到着すると、ゴール地点はもう目前。二湖を出て数分歩くと一湖の湖畔へ到着し、「高架木道」へ合流する地点が目の前に現れます。
▲「地上遊歩道」側からのみ開くことができるゲートを通り、「高架木道」へ合流します

「地上遊歩道」の散策はこれで終了。「高架木道」を通って知床五湖フィールドハウスへと戻ります。
▲散策終了!眺めのよい「湖畔展望台」で風に吹かれつつ、鈴木さんから最後の解説を受けます

知床五湖での散策は、大自然の息吹を感じる特別なひと時。手軽に散策できる「高架木道」も、大地を踏みしめじっくり歩く「地上遊歩道」も、それぞれの楽しみ方を満喫できました。

特に、ネイチャーガイドと一緒に歩くと楽しさ倍増!見過ごしてしまいそうな野生動物の痕跡を見つけることもできますし、動植物についての深い知識や、知床の森のなりたちなどを教えてもらいました。自分一人で歩いていたら知ることができなかった、知床の奥深さを体感!

同伴が必須ではない時期でも、ネイチャーガイドを依頼することは可能。ここはぜひ、一緒に歩いて知床の醍醐味を味わってみることをおすすめします!
川島信広

川島信広

トラベルライター/温泉ソムリエ/イベントオーガナイザー。北海道を拠点に活動。旅行雑誌や観光サイトでの執筆や撮影を中心に、観光施設などの集客支援や、イベントやツアーの企画と実施支援を行う。その日・その時・その場の空気感や現場感を活かした表現や演出が得意。常に「誰」を考え、利用者視点を重視している。

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