ゆかたで町をそぞろ歩き。城崎温泉の外湯めぐり

2016.08.28

平安時代から続く1300年以上の歴史をもつといわれる城崎温泉。ここで温泉を楽しむのに欠かせないのが、ゆかたを着ての外湯めぐりです。ゆかた姿で下駄の音をからんころんと響かせながらの外湯めぐりは、なんともいえない風情があります。

▲自然石の上から湧き出る城崎温泉の源泉。「城崎温泉元湯」
いきなりですが、温泉クイズ!
「外湯(そとゆ)」「内湯(うちゆ)」という言葉をご存知でしょうか?
「外湯が露天風呂のことで、内湯は室内にあるお風呂でしょ」
と思われた方、

残念!
「外湯」とは、温泉街にある公衆浴場のこと。それに対して「内湯」とは、旅館などが独自に保有するお風呂のことをいいます。現在では混同されて使われることも多いようですが、屋外の露天風呂のことは「外風呂」、室内にあるお風呂のことは「内風呂」というのが正解です。

掘ったり、汲み上げたり、さまざまな技術により、今でこそ全国津々浦々、旅館やホテルなどの「内湯」でも楽しめる温泉。しかし、もともとは温泉といえば「外湯」。自然に湧き出る源泉近くに湯船などを整備し、周辺旅館の宿泊客は、その公衆浴場に通っていたんです。

大正時代以降、技術の進歩により独自の「内湯」をもつ旅館が急増。温泉=旅館の内湯があたりまえになっていきました。

そんななか、関西の名湯として名高い城崎温泉は、今でも「外湯」が残る温泉地として有名。趣のある合計7つの「外湯」をめぐることができる「外湯めぐり」は、名物のひとつになっているんです。
▲「町全体がひとつの温泉旅館」といわれる城崎。駅の名前も城崎温泉
京都・大阪・神戸からそれぞれ車で約3時間ほどの場所にある兵庫県豊岡市の城崎温泉。JR城崎温泉駅前にはさっそく外湯のひとつである「駅舎温泉 さとの湯」が。そして、道路を挟んだその奥には旅館やお店など、情緒ある木造の建物が立ち並び、昔の宿場町を思わせる町並みが続いています。

外湯めぐりは、ゆかたに下駄が正装!?

城崎の外湯めぐりといえば、外せないのがゆかた。
訪れた観光客は、宿泊する旅館や、町内にあるお店でゆかたをレンタルして町に繰りだします。

ゆかたで町を散策しながらというこの外湯めぐりのスタイルは、日本文化に興味のある外国人はもちろん、すっかり洋服が浸透し、ゆかたを着るのは花火大会やお祭りの時くらい、という方も多いであろう現代の日本人にも近年再注目され、城崎温泉の魅力のひとつとなっています。
「そうとなったら何はともあれ、まずはゆかたに着替えねば」

やってきたのは、ゆかたの販売・レンタルを手掛ける、ゆかた専門店「いろは」。
城崎温泉街の中心部、外湯「御所(ごしょ)の湯」のとなりにあるお店です。
シンプルで落ち着いた造りのおしゃれな店内には、たくさんのゆかた。女性用だけでなく男性用も豊富に取り揃えられており、帯や下駄はもちろん、和装小物や雑貨などもあります。
試着・着付けスペースの襖絵には、コウノトリが描かれていて、その美しさに目を奪われてしまいます。

▲キモノスタイリストである女将のアドバイスを聞きながら、ゆかた選びスタート
「ゆかたは着てみたいけど、いろいろわからないし、着付けもできないし…」

心配いりません!
「いろは」のゆかたレンタルは、帯・下駄・和装小物付き、そしてヘアスタイリングに、着付けサービス付きで税込2,160円~。スタッフの方が、コーディネートのアドバイスから親切に対応してくれるので、手ぶらで何もわからず訪れても大丈夫なんです。そしてゆかたは税込3,996円~で販売も行っています。この機会にマイ浴衣をゲットするのもおすすめです。

オリジナルの図柄を含め、200種類以上という豊富なラインナップのゆかた。古風な定番のものから和のテイストと現代っぽさが融合したハイセンスなものまで、見ているだけでも楽しくなってきます。

ゆかたが決まったら、次は帯。トータルコーディネートを完成させるまで、選ぶ楽しみは終わりません。あれやこれやと目移りしながら、自分好みのコーディネートを見つけたら、いよいよ着付けです。
▲店内の試着・着付けスペースにて、女将に着付けをしてもらいます
髪の毛のセットから始まり、順番に着付けをすすめていく女将。
外湯をめぐる際に、自分でまたゆかたを着ることができるように、着付けのレクチャーもしっかりしてくれます。
▲じゃーん
そうこうしている間に、20分ほどで着付けが完成。
「服装が変わると気分が変わる」とか「まずは外見、形から…」などとよくいわれますが、ゆかたを着るだけでグッと気分が高まります。
▲店内にはかわいい和小物も。お土産にもオススメ
素敵なゆかたに身を包んで、いよいよ外湯めぐりに出発です。
「今日は暑いから、これ持っていって」
特別に女将の私物の日傘まで貸してもらっちゃいました。

外湯めぐりにいざ出発

大谿川(おおたにがわ)の川沿いに広がっている城崎温泉街。
温泉情緒あふれるその町並みには、やっぱりゆかたがぴったりしっくり。
それでは、あらためて城崎温泉の「外湯」をご紹介していきましょう。城崎温泉にある「外湯」は、「さとの湯」「地蔵湯」「柳湯」「一の湯」「御所の湯」「まんだら湯」「鴻(こう)の湯」の7つ。
それぞれの湯に由来や言い伝えが残り、歴史の深さを今に伝えています。

それぞれ個別に入浴料金を支払って入ることもできますが、外湯めぐりには、一日中、どの「外湯」にも入り放題の城崎温泉外湯めぐり券(デジタル外湯券)「ゆめぱ」(大人1,200円、小人<3歳~小学生>600円 ※ともに税込)がおすすめ。

城崎のほとんどの旅館では、宿泊すると、外湯めぐり券もついてくるので、宿泊客はあらかじめ旅館でこの「ゆめぱ」をもらって「外湯」をめぐるという仕組みになっています。
▲デジタル外湯券「ゆめぱ」。おサイフケータイやICカード(FeliCa)、またはバーコードのついた外湯券を外湯の受付でバーコードリーダーにかざして入湯するというシステム

素朴で自然たっぷりの外湯「鴻の湯」

今回はその中から3つの「外湯」をめぐることに。まず向かったのは温泉街の西奥にある「鴻の湯」です。
▲「鴻の湯」
「鴻の湯」は、約1400年前、2羽のコウノトリが足の傷をいやしたと伝わる、7つの「外湯」のなかで最も古く歴史ある温泉。その伝説から夫婦円満、不老長寿にご利益のある温泉とされているんだとか。

賑わう町から少し離れたところにひっそりと立つ素朴な様式の建物からは、昔の山小屋のような雰囲気が漂っています。
さっそく中へ。脱衣所のロッカーに服を入れ、キーを抜き、浴室へ一直線。
▲「鴻の湯」の内風呂。大きなガラス張りの窓から庭園の景色が楽しめる
内風呂は、シンプルな清潔感あふれる造り。窓側を底辺とする末広がり台形の浴槽は、充分な広さがあり、ゆっくりくつろげます。
そして、「鴻の湯」の特長は、この庭園露天風呂。手入れの行き届いた庭と、その奥に広がる裏山が一体となったまさに緑に囲まれた露天風呂です。
豊かな自然を眺めながら入る露天風呂は格別の一言。
野趣に富んだその温泉は、幸せを運ぶ鳥「コウノトリ」の名にふさわしく、入る人みんなを幸せにしてくれる、そんな素敵な温泉でした。

食べ歩きに足湯。「外湯」のほかにも楽しみはいっぱい

「いろは」の女将に教えてもらった着付けのポイントを思い出しながら、再びゆかたを身にまとったら、次の「外湯」に向かいます。

「外湯」へ向かう道すがら、町歩きを楽しめるのも、外湯めぐりの醍醐味。
川沿いの柳の木やいくつもの太鼓橋が気分を一層盛り立てます。
▲お風呂あがりには、川沿いでちょっと一休み
町のメインストリート「北柳通り」、「南柳通り」には、旅館や外湯とともに立ち並ぶたくさんの飲食店やお土産屋さん。城崎地ビールや但馬牛コロッケにソフトクリーム…。さまざまな食べ歩きを楽しむことができます。
町を散策しながら、城崎温泉駅付近まで戻ってきました。次の外湯「さとの湯」の前に、立ち寄ったのは、飲泉場。
▲飲泉場
城崎温泉は、入浴するだけでなく飲むことができる温泉。慢性消化器病や慢性便秘に効果があるといわれているんです。

「ほんのり塩味が…」
やや塩味のするまろやかな味。健康のためにもお試しあれ。
▲「さとの湯」前にある足湯。他にも城崎の温泉街の中には合計5カ所の足湯が無料開放されている
温泉街といえば「足湯」。点在する外湯同様、足湯も城崎温泉街の随所にあります。これらの足湯は無料開放されていて、だれでもいつでも自由に入ることが可能。「さとの湯」入り口の足湯は駅から近いこともあり、電車待ちの人がちょっと立ち寄るなど、いつも大賑わいなんだとか。
せっかく外湯めぐりをするのなら、ぜひ足湯もめぐってみては。

展望露天風呂からの眺めが秀逸!「さとの湯」

さあ、外湯めぐりの2カ所目は、7つの「外湯」のなかで一番大きい「さとの湯」。
城崎温泉駅のすぐ近くにある「さとの湯」は、その立地から駅舎温泉ともいわれる大きな外湯。建物はなんと3階建てで、1階には受付と休憩処、2階に大浴場、3階に露天風呂という造りになっています。
▲男女それぞれ、その日最初の入湯者だけがもらえる一番札
ここでひとつ、城崎温泉の外湯めぐりの豆知識をご紹介しましょう。
城崎温泉の7つの外湯では、毎日一番最初の入湯者だけに「一番札」を配っています。7つの外湯で男女それぞれ1人ずつ、合計14人しか手にすることができないレアアイテム。なかには7つの外湯の一番札コンプリートのため、たびたび城崎を訪れる強者リピーターもいるんだとか。外湯によって開湯時間やお休みの曜日がそれぞれ違うので、よくよくチェックして一番乗りをめざしましょう。
▲2階の大浴場(和風)
大浴場は和風と洋風の2種類あり、日替わりで男湯、女湯が入れ替わります。どちらも広々としており、ゆったりと温泉を楽しむことができます。
▲4種類のサウナなど、公衆浴場とは思えないほど充実したさまざまな設備
高温サウナや、木の香りただようフィンランドサウナ、冷気が心地よいペンギンサウナなどの設備も充実。洋風の大浴場をはじめとするこれらの設備は、異国の雰囲気ただよう仕様。
バラエティに富んだたくさんのお風呂が楽しめるのも「さとの湯」の魅力です。
▲展望露天風呂
そして、一番のオススメはやはり、3階の展望露天風呂。
青々とした空に、円山川(まるやまがわ)、遠くに見える山々…。
見晴らし最高の絶景を露天風呂に入りながら楽しめる、というなんとも贅沢なお風呂です。

「いろんな種類のお風呂をたくさん楽しみたい」
「とにかく大きいお風呂でのんびりしたい」
「さとの湯」はそんな人にぴったりの外湯。
気負わず気軽に楽しめる温泉でした。
ふたたび温泉街の中心部へ。今度はたくさんのお店で賑わう通りから一本入った裏通り「木屋町通り(きやまちどおり)」を進みます。
温泉情緒あふれる表通りも楽しいですが、静かに落ち着いた、形容しがたいひなびた風情を楽しむのも乙なもの。
表通りでお店散策を楽しんだら、裏通りにもぜひ足を延ばしてみてください。

外湯の聖地!?「まんだら湯」

「木屋町通り」をしばらく進むと、見えてくるのが「まんだら湯」。お寺の御堂(みどう)を模して造られたという青緑の屋根の建物が印象的です。
▲「まんだら湯」
こちらも「鴻の湯」についで古い言い伝えの残る温泉。養老元(717)年、この地を訪れた道智上人(どうちしょうにん)というお坊さんが難病の人びとを救うために、曼陀羅一千日祈願という千日間のお祈りを捧げたところ、この「まんだら湯」が湧きでたと伝わっています。
▲のれんをくぐると玄関には道智上人の像が
こうした由来から「まんだら湯」は城崎温泉の外湯の中でも聖地とされる特別なところなんだとか。別名「一生一願の湯」ともいわれ、ここぞというお願いごとがあるときに入ると願い事が叶うとも。そんなありがたい温泉。ここぞというお願いごとがあるかどうかはさておき、入らないわけにはいきません。
内風呂はほどよくこじんまりとした空間。洗い場と湯船ひとつが、すっきりと配置されています。
そして露天風呂はヒノキの桶風呂。こちらも決して大きくはなく、大人が2~3人入るといっぱいになるくらいのサイズ。大きいお風呂もいいですが、このこじんまりとした感じがこれまたとても落ち着きます。

ありがたいお湯に心は穏やか、体もすっきり。
しっぽり楽しみたい方は「まんだら湯」がオススメです。
今回ご紹介した「鴻の湯」「さとの湯」「まんだら湯」はもちろん、城崎温泉の外湯は7つそれぞれにちがった特長をもっており、どれも素敵な温泉ばかり。たくさんの外湯をめぐって、お気に入りを見つけてください。

夜の町の賑わいもまた一興

城崎温泉は、日が暮れたあとのムードも満点。
旅館やお店、そして「外湯」にオレンジ色の暖かい明かりが灯ると、町は昼とは違ったロマンチックで味わいのある雰囲気に。
▲夜の町並みもムード満点
もちろん「外湯」も時間帯によってそれぞれの良さが。露天風呂から見える景色も昼と夜では変わってきます。7つの外湯制覇をめざすのもいいですが、同じ外湯に二度、三度。時間帯ごとの変化を楽しんでみるのもいいかもしれません。
▲外湯「御所の湯」
どのお湯にいつ行くか?どういう順番で回るか?どこに立ち寄るか?
楽しみ方は十人十色。外湯めぐりの可能性は無限大です。
お気に入りのゆかたに袖を通して、あなた流の城崎温泉外湯めぐりに繰り出してみてはいかがでしょうか。

[モデル]引田 絵里華(関西美少女図鑑)
James

James

イギリス人と日本人とのクォーター。大学では工学部、情報システムを専攻したかと思えば、ミュージシャンとしてギタリスト、MC、DJとして活動。TVやラジオなどでも活躍。その後(株)アドビジョンにて、デザインやコピーライティングなどマルチに活躍。バックグラウンドを活かした独自の視点が人気のライター。

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