本州最大の高層湿原・尾瀬ヶ原を日帰りで本格ハイキング!
群馬県、福島県、新潟県、栃木県の4県にまたがる尾瀬国立公園。年間およそ30万人のハイカーがここを訪れ、その半数が散策ルートに選ぶのが「尾瀬ヶ原」。2,000m級の山々に囲まれた尾瀬ヶ原には湿原が広がり、木道が一本はるか先までのびています。その木道をのんびり歩けば、ここでしか見られない広大な景色と鳥の鳴き声、澄んだ空気に包まれます。

日帰りハイキングは6時間コースがおすすめ
日帰りで尾瀬ヶ原を満喫するなら「尾瀬ヶ原コース」の途中、3分の2あたりにある「竜宮十字路」まで行くのがおすすめ!初心者でも往復約6時間で「鳩待峠」まで戻ってくることができます。今回はガイドさんに案内してもらいながら、「竜宮十字路」まで歩きました!
尾瀬の玄関口「尾瀬戸倉」から「鳩待峠」へ
今回はJR上越線沼田駅から路線バスに約1時間半乗って「尾瀬戸倉」へ。早朝の車内はハイキングの格好をした人たちばかりで、テンションがだんだん上がってきました。
ちなみに、「尾瀬戸倉」には駐車場も多くあるので車でもOK。上越新幹線が停車する上毛高原駅から路線バスで行く方法もあります。(所要約1時間50分、沼田駅発より本数が少ない)。
一般のハイカーも入山可能な期間(5月中旬~10月中旬ごろ)には、都内からの夜行バスが運行しており、「尾瀬戸倉」まで直行できるので便利です。

ちょうどやってきた乗合バスに乗り込み「鳩待峠」へ。25人乗りの中型バスで約20分、どんどん山道を登っていきます。自称「尾瀬で一番にぎやかなバス」との言葉通り、この日の運転手さんは、尾瀬の自然や動物についてマシンガントーク!あっという間に「鳩待峠」へ到着しました。
バスを降りると、かなり寒い!「尾瀬戸倉」よりも標高が600mほど高く、東京と比べると約10度も気温が低いんだそう。歩くんだしそんなに寒くないでしょ、となめていると痛い目をみます。着脱が簡単な長袖を重ね着するのがおすすめです(この日の私は、Tシャツの上に長袖パーカーとレインウェア。結局、最後まで脱ぎませんでした)。


尾瀬をより楽しむなら、尾瀬認定ガイドにおまかせ

個人で尾瀬に来る方には、まだまだガイドが普及していないといいます。「ガイドをつけることで尾瀬が何倍も楽しくなるはず」と、桂田さんは力強く話してくれました。
「尾瀬の自然や尾瀬の歴史について、豊富な知識でいろんな話をしています。時間に合わせたペース配分や緊急時の対処なども、ガイドをつけるメリットではないでしょうか。歩いていて、〈この花はなんだろう?〉〈あの鳴き声はなんの鳥だろう?〉という疑問があれば、ぜひガイドに聞いてください。その場でわかるスッキリ感も魅力のひとつですね」(桂田さん)


まずは山道を1時間。湿原のスタート地点「山ノ鼻」へ
いよいよ出発です!まずは、手足をしっかりストレッチしておきましょう。出発してすぐに、傾斜がきつい区間が30分ほど続きます。傾斜のない木道が続くイメージが強いからか、サンダルやヒールの高い靴などを履いてきてしまう人もいるんだとか。最低でも歩きやすいスニーカーは必須です。


この日は前日に雨が降ったあとだったので、道にある石や木が濡れてつるつるに。普通のスニーカーだったのもあってか、何度も滑りそうになってしまいました。下りは大股でスピードを出して歩きたくなりますが、できるだけ小股で注意して歩きましょう。

木々の中を歩いていると、近くからも遠くからも鳥の声が聞こえてきました。桂田さんに聞くと、5月から6月はとくにいろんな種類の鳥が鳴いているそう。
「コルリ、ウグイス、メボソムシクイなどがよく鳴いていますよ」(桂田さん)
「山ノ鼻ビジターセンター」で尾瀬の生態をチェック
センター内には、動植物に関する展示があり、常駐のスタッフに尾瀬について話を聞くことができます。
ガイドさんなしでのハイキングの場合は、ここで尾瀬の動植物についてチェックして、道中で実際に観察していくと、より楽しめるはず。


湿原のスタート地点になる「山ノ鼻」には山小屋もあるので、ここで昼食をとる方も多いそう。天気がよければ、外のベンチで食べるのが開放感もあって◎。お弁当を持参するのもよし、3軒ある山小屋には食堂もありますし、テイクアウトのおにぎりなども用意してくれます。ただし、尾瀬ではゴミは持ち帰り制なので要注意!




隣接する「研究見本園」にぜひ立ち寄って
ここは「尾瀬ヶ原」の最西部。名前を聞くと、人の手が入っているのかなと思いますが、実際には人の手を加えていない、自然な尾瀬の姿を観察できる場所なんです。
広い湿原のなかに木道がぐるっと周回するように通っていて、一周30分ほど。ここの木道は高さが低いので、植物を近くで見ることができるのがポイント。あまり混んでいないので、ゆっくりと尾瀬の自然を満喫できる、穴場スポットです。


ここは最後までミズバショウの見ごろが続く場所でもあるそう。暖冬の今年は、尾瀬ヶ原ではいつもより早く(5月下旬ごろ)見ごろが終わっていましたが、ここでやっと出会うことができました。(例年の見ごろは、5月中旬~6月下旬ごろまで。気候によって前後あり)

「ミズバショウの白い部分は花ではなく、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる葉。また、ミズバショウの名前の由来は、〈葉がバショウという植物に似ていて水のそばにあるから〉です。でも、バショウ科ではなく、サトイモ科の植物なんですよ」(桂田さん)
驚いたのが、ミズバショウの大きさ。なぜか勝手に小さくて可憐なイメージを持っていましたが、実際には1mにもなる大きな葉っぱもあってびっくり!
「ミズバショウは年数を重ねて大きくなっていくんです。だから大きいミズバショウほど、長い年月をかけて成長したもの。ただし、土に栄養がないところでは大きくなれないままです」(桂田さん)
はるか先までつづく木道をひたすら進む!
このあたりが尾瀬ヶ原のメインゾーン。ハイシーズンはとくに混雑し、木道の上で人の渋滞が起こることも多いです。木道は右側通行なので、譲り合って歩きましょう。
また、木道が高架になっているので、植物とすこし距離があるのですが、湿原に足をおろすのはマナー違反です。

「山ノ鼻」から40分ほど歩くと、「牛首」の分岐地点。ここでUターンする人も多いので、ここを過ぎると人が少なくなり、周りの景色も見やすくなります。
ちらほらとしか人がいない湿原を歩きながら澄んだ空気を吸い込んでいると、浄化されていくような心地がしてきました。時間が許すなら、ぜひ「牛首」から1時間ほどの「竜宮十字路」まで足を運んでください。


浮島は枯れた草が土に還らずに、どんどんと重なってできる泥炭(でいたん)が水面に浮いている状態。寒い土地で起こりうる現象で、スポンジのように軽く、風が強いとその風にあおられてぷかぷかと移動するんだとか。この日は風が強かったので、池の片方に浮島が寄っていました。
池塘は尾瀬内に約1,900はあるといわれ、とくに「山ノ鼻」から「牛首」の分岐点までの間に多く見られます。じっと見ていると、イモリが泳いでいる姿も発見しました。

至仏山を背景にミズバショウが撮影できるベストスポット
見逃しがちな場所ですが、「山ノ鼻」からスタートして、3つめの下ノ大堀川橋という橋が目印。


水が吸い込まれる?不思議な伝説「竜宮現象」
右手側にあるのが竜宮現象の「入口」。3方向から水が流れ込んでいるのに、それが流れていく出口がありません。しかもその水たまりから水があふれる様子もありません。
え?なんで?水はどこに消えるの?
これが「竜宮現象」の不思議。渦を巻きながら、水底に水が吸い込まれていく様子から、そこには竜宮城があるのでは?と言われているんだそう。不思議現象の解釈が、なんともロマンチックです!

木道を挟んで、左側には出口と呼ばれる水たまりがあります。入口で吸い込まれた水は、この出口から抜けてきているといわれています。
実際のところはどうなのでしょう?いまだによくわかっていないんだそうです。

「竜宮」には、山小屋が一軒あります。その脇道に抜けると、沼尻川という川に橋がかかっていて、その真ん中あたりが群馬県と福島県の県境になっています。

ここが折り返し地点。普段からデスクワークで運動もほとんどしない私ですが、草花などを見ながら歩いていると、意外と歩けてしまいました。歩きはじめる前には不安を感じていたのですが、まだまだ歩きたいくらい!
もし体力と時間に余裕があるなら、「ヨッピ吊橋」というスポットを経由していくのもおすすめです。「竜宮」からも回って行けますが、先ほどの「牛首」分岐点から別ルートで行く方法もあります。「鳩待峠」からは往復約8時間ほどで歩けるコースです。

ただし、最後の「山ノ鼻」から「鳩待峠」への登り道は、往復した足の疲労感も相まってなかなかのキツさ。途中にあるベンチなどで小休憩を挟みながら、最後までけがのないように歩きましょう。行きよりも時間がかかってしまうと思いますので、交通機関の時間には気を付けて!
尾瀬を楽しむ3シーズン


美しい花や紅葉が見ごろを迎えるハイシーズンには混雑するので、ゆっくり尾瀬ヶ原を堪能するには、できれば平日に訪れたいところ。
2,000m級の山々に囲まれるなか、見渡す限りつづく湿原と木道の静けさは、日常のすべてを忘れさせてくれるような、澄んだ空気に満ちています。
都心からでも日帰りで楽しめる尾瀬で、リフレッシュしてみるのはいかが?
尾瀬ハイキングガイド
群馬県利根郡片品村花咲2792-78
[コース]尾瀬ヶ原・良い所どり(鳩待峠~山ノ鼻~研究見本園~牛首~山ノ鼻~鳩待峠)所要4~5時間
※その他コースの詳細はHPをご参照ください。
[ガイド料金]20,000円(税別)※15名まで
[定休日]期間中定休日なし ※期間要問い合わせ
0278-58-4824(オウレットトラベル内)

和田めぐみ
編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。医療・健康フリーマガジン『からころ』や、その他小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『I Love クラシックカメラ』『リンゴをほめるだけでアイデアが豊かになる本』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)などがある。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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