身が透き通るのは当たり前!「須佐男命いか」の甘さと弾力に心を奪われる
その名も「須佐男命(すさみこと)いか」――。神々しいばかりのブランド名は、山口県萩市須佐漁港の「一本釣船団」によって水揚げされる、活きケンサキイカのみに名乗ることが許されています。漁協による夏季限定の直売市では売り切れまであっという間!「男命(みこと)いか」が食べられる飲食店は行列必至!イカ漁で熱く賑わう須佐を訪ね、その美味しさの秘密を探ります。

沖合は日本海屈指の漁場!スサノオノミコトゆかりの地で生まれた「須佐男命いか」
中でも山口県萩市の須佐漁港はその筆頭。手釣りで漁を行う「須佐一本釣船団」によって水揚げされた活ケンサキイカは「須佐男命いか」として特に人気です。

「須佐男命いか」というブランド名は、地名の由来でもある日本神話に登場する神「須佐之男命(スサノオノミコト)」から命名されました。同船団による漁法は文字通り手釣りによる一本釣りで、一匹一匹丁寧に釣り上げられています。

ケンサキイカは非常にデリケートな生き物で、些細な衝撃や環境の変化によってあっという間に弱ってしまい、締めた後も特に“足がはやい”ことで知られています。活きた状態で提供されることが大前提の「男命いか」は、漁師によって手釣りで釣り上げられ、料理人の手によって捌かれるまで、とにかく“優しく・丁寧に・素早く”扱われます。

ゆえに、釣り上げられて間もない最高の鮮度の「男命いか」は“神がかり”的な美味しさ!シーズン最盛期である夏ともなれば、絶品のイカを求めて山口県内外から多くの人が須佐へと押し寄せます。
口にした瞬間、味わいの深さに恍惚――。誰もが、イカに対する認識を覆されるというその美味しさに迫ります!
行列のできる「男命いか」認定店で味わう、イカ三昧!
今回は、ご当地でも「男命いか料理」の代名詞的存在「口福の馳走屋 梅乃葉」を訪れました。休日ともなれば行列必至の超人気店です。

さっそく、「活イカ」(税込2,470円)を注文。110円を追加して定食(ごはん、みそ汁、小鉢、漬物付)にすることもできます。
待っている間、先に配膳された席からは「すごい!」「えーっ!」という声が…。思わず声を上げてしまうほどのお客さんの反応に、期待がふくらみます。

数分後、運ばれてきたお膳を見た瞬間…「おおおおーっ!」、あまりのイカの美しさに自然と声をあげてしまいました。これは想像以上、声が出るのは当然です。

イカ刺しといえば“白”というイメージがありますが、目の前にあるのは全体が透き通った、まさに活きたままのイカ刺し!しかも、器からはみ出し気味の足はたまにソワソワと動くではありませんか…、こ、これは凄い!

では、いただきます…コリコリとした食感は新鮮さの証、そして、甘い甘い甘ーい!イカの身ならではの甘さが上品!噛めば噛むほど旨みが出てきます。あまりの美味しさに「恍惚」という言葉以外に相応しい表現が見つかりません。
続いて、下足の部分。小さなトングで持ち上げて料理用ハサミで切り分けます。口へ運ぶと、身よりもさらにコリッとした食感で味が濃い、…わわわ、舌に吸盤が吸い付いてくる~。


さて、活イカの美味しさにひとしきり感動したところで、今度は生ではなく火を通して「男命いか」を味わいます。まずは炭火コンロをオーダー(1セット・税込320円)。
「ほかのイカと比べてケンサキイカが優れている点は、程よく熱を加えると柔らかくなるというところにあります。当店では、活イカ、天ぷら、さらに炭火で炙りと蒸し焼き、全部で四つの味わい方が楽しめます。特に味の濃い耳と下足は、炙りや蒸し焼きにおすすめです」と店主の福島淳也(ふくしまじゅんや)さん。
そこで、再び身を切り分けて炭火の上へ。

頃合いを見計らって、さあ、いただきます…!!!コリコリ感を残しながらも、確かにふんわりとした柔らかみも…くぅ~ッ、あまりの美味しさに悶絶必至です。
同店特製の「はちみつ柚子ポン酢」も一緒に提供されますが、まずは何もつけずにイカのみの甘さ際立つ旨みを存分に堪能することをおすすめします!

わずか税込320円なら、炭火コンロは絶対に追加するべきです!
ちなみに、こちらのお店では「イカ天丼」(税込1,500円)、「イカ肉味噌丼」(税込1,500円)、「イカ墨カレー」(税込1,200円)などもメニューに並びます。
※「イカ墨カレー」はリニューアル開発にて休止中


「男命イカ」と名乗れるのは「活イカ」に限られるので、これらのメニューは厳密に言うと“ケンサキイカ料理”となりますが、須佐が誇る「一本釣船団」が釣り上げた最高級のイカであることに変わりはありません。心ゆくまでイカ尽くしを味わうことができます。
なお、ケンサキイカ漁の最盛期となる7月から9月にかけては、安定して「男命いか」の入荷があるとのことですが、悪天候が続くなどした場合は入荷が困難となるそう。不安な場合は、入荷状況がはっきりする前日の午後以降に、お店に問い合わせるのがおすすめです。
口福の馳走屋 梅乃葉
山口県萩市大字須佐5010-1
[営業時間]11:00~15:00
※席の予約は原則受付なし
※活きイカの取り置きは前日午後以降より受付
※ケンサキイカの水揚げがない春先は、「活きイカ」はヤリイカに変更
[定休日]水曜(お盆を除く)、毎月5日(GWを除く)
08387-6-2354
超リーズナブル!漁師のおかみさんたちによる活きイカ定食

調理をするのはいかを知り尽くす「一本釣船団」漁師のおかみさんたち。メニューは「男命いか&めし」のみですが…え、え?せ、1,000円!?予想外の安さに食べる前からびっくり。

「男命いか」すなわち活イカなので、当然のように透きとおっています。そのお味と言えば、もう言葉はいらない美味しさ!下足の吸盤が口の中で吸い付く感覚がもう楽しくてたまりません。

活きイカを堪能した後は、入店時に貼り紙を見て気になっていた「イカ墨アイス」(税込250円)にも挑戦。ふたを開けると、名前通りに真っ黒!覚悟(?)して口に運んだのですが、良い意味で裏切られました。生臭さは一切なく、しっかりバニラ味で美味しい~!


ジョイフルセンター須佐
山口県萩市大字須佐7248-10
[営業日]2018年7月1日(日)~9月30日(日)までの土・日曜(7月28、29日、8月18、19日は休業)
[営業時間]食事11:00~13:00(完売次第終了)
08387-6-2813(平日は山口県漁業協同組合須佐支店08387-6-2311)

直売市は午前11時半までですが、その前に売り切れて終了してしまうこともあるのだとか。様子を見ていると、クーラーボックスを持参して「3kg」「5kg」と購入していく人も少なくありませんでした。



こちらの漁港では、「須佐夏祭り(2018年7月25日~28日)」期間中の7月27日(金)に「男命いか祭り」が開かれます。会場において漁師のおかみさんたちによる活イカ料理が味わえ、直売も行われます。
須佐男命いか直売市
山口県萩市大字須佐4740-10(須佐漁港)
[開催日]2018年7月1日(日)~9月30日(日)までの土・日曜(7月28、29日、8月18、19日は休業)
[開催時間]9:30~11:30(8:30より整理券配布)
※売り切れ次第終了
08387-6-2311(山口県漁業協同組合須佐支店)
ヤリイカ、アオリイカ、スルメイカなどなど、とにかくイカが大好きな日本人。その中でも捌きたての活きた「男命いか」の美味しさは全くの別物であると、実際に味わってみて衝撃をもって受け止めました。
誰をも虜にしてしまう恍惚の味わい――。須佐に訪れたなら、この夏一番の感動を保証します。

※本記事は2016年の取材内容をもとに一部更新しています

兼行太一朗
フリーライター・カメラマンとして、山口県を拠点に活動中。 主に旅行、グルメ、歴史、地方創生などについての書籍やウェブサイトを中心に取材・執筆を行っている。拠点とする山口市では、歴史資源を生かした地域活性化に取り組むNPO法人「大路小路まち・ひとづくりネットワーク」にも所属し、守護大名大内氏や幕末に関する史跡、ゆかりの場所や人物についての取材を担う。(編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。