身が透き通るのは当たり前!「須佐男命いか」の甘さと弾力に心を奪われる

2016.07.22

その名も「須佐男命(すさみこと)いか」――。神々しいばかりのブランド名は、山口県萩市須佐漁港の「一本釣船団」によって水揚げされる、活きケンサキイカのみに名乗ることが許されています。漁協による夏季限定の直売市では売り切れまであっという間!「男命(みこと)いか」が食べられる飲食店は行列必至!イカ漁で熱く賑わう須佐を訪ね、その美味しさの秘密を探ります。

沖合は日本海屈指の漁場!スサノオノミコトゆかりの地で生まれた「須佐男命いか」

甘みの豊かさと身の弾力、その美味しさからイカの中でも最高級品として知られるケンサキイカ。その生息域は山口県を中心とする山陰から九州北部にかけての日本海側一帯で、沿岸各地の漁港ではイカ漁が盛んに行われています。

中でも山口県萩市の須佐漁港はその筆頭。手釣りで漁を行う「須佐一本釣船団」によって水揚げされた活きケンサキイカは「須佐男命いか」として特に人気です。
▲須佐漁港に並ぶイカ釣り漁船。「須佐一本釣船団」には約50隻が所属する

「須佐男命いか」というブランド名は、地名の由来でもある日本神話に登場する神「須佐之男命(スサノオノミコト)」から命名されました。同船団による漁法は文字通り手釣りによる一本釣りで、一匹一匹丁寧に釣り上げられています。
▲一匹ずつ手で糸をたぐり寄せて丁寧に釣り上げる(写真提供/萩市須佐総合事務所)

ケンサキイカは非常にデリケートな生き物で、些細な衝撃や環境の変化によってあっという間に弱ってしまい、締めた後も特に“足がはやい”ことで知られています。活きた状態で提供されることが大前提の「男命いか」は、漁師によって手釣りで釣り上げられ、料理人の手によって捌かれるまで、とにかく“優しく・丁寧に・素早く”扱われます。
▲とにかくデリケートなケンサキイカ。活きイカでなければ「男命いか」は名乗れない

ゆえに、釣り上げられて間もない最高の鮮度の「男命いか」は“神がかり”的な美味しさ!シーズン最盛期である夏ともなれば、絶品のイカを求めて山口県内外から多くの人が須佐へと押し寄せます。

口にした瞬間、味わいの深さに恍惚――。誰もが、イカに対する認識を覆されるというその美味しさに迫ります!

行列のできる「男命いか」認定店で味わう、イカ三昧!

「男命いか」は、「一本釣船団」が所属する山口県漁業協同組合須佐支店によって認定された店でのみ味わうことができます。

今回は、ご当地でも「男命いか料理」の代名詞的存在「口福の馳走屋 梅乃葉」を訪れました。休日ともなれば行列必至の超人気店です。
▲お店はJR山陰本線須佐駅隣にあるが、電車の運行本数が少ないので車での来店がおすすめ。休日ともなれば店頭に多くの人が並ぶ

さっそく、「活きイカ」(税込2,270円)を注文。110円を追加して定食(ごはん、みそ汁、小鉢、漬物付)にすることもできます。

待っている間、先に配膳された席からは「すごい!」「えーっ!」という声が…。思わず声を上げてしまうほどのお客さんの反応に、期待がふくらみます。
▲店内には「男命いか」についての説明もある。食べる前に読んでおくべし

数分後、運ばれてきたお膳を見た瞬間…「おおおおーっ!」、あまりのイカの美しさに自然と声をあげてしまいました。これは想像以上、声が出るのは当然です。
▲捌かれつつも、まさに活きた状態。身の部分は透きとおり、足の付け根あたりが脈打つかのように動いている

イカ刺しといえば“白”というイメージがありますが、目の前にあるのは全体が透き通った、まさに活きたままのイカ刺し!しかも、器からはみ出し気味の足はたまにソワソワと動くではありませんか…、こ、これは凄い!
▲箸で身を持ち上げてみると…向こう側が透けて見える!

では、いただきます…コリコリとした食感は新鮮さの証、そして、甘い甘い甘ーい!イカの身ならではの甘さが上品!噛めば噛むほど旨みが出てきます。あまりの美味しさに「恍惚」という言葉以外に相応しい表現が見つかりません。

続いて、下足の部分。小さなトングで持ち上げて料理用ハサミで切り分けます。口へ運ぶと、身よりもさらにコリッとした食感で味が濃い、…わわわ、舌に吸盤が吸い付いてくる~。
▲下足の部分は自分で切り分ける…まだ動いているだけに、ちょっぴり罪悪感。希望すれば追加料金なしで天ぷらにもしてもらえる
▲もっと欲張りたいという人には単品の天ぷら(税込650円)を追加するのもおすすめ

さて、活きイカの美味しさにひとしきり感動したところで、今度は生ではなく火を通して「男命いか」を味わいます。まずは炭火コンロをオーダー(1セット・税込160円)。

「ほかのイカと比べてケンサキイカが優れている点は、程よく熱を加えると柔らかくなるというところにあります。当店では、活きイカ、天ぷら、さらに炭火で炙りと蒸し焼き、全部で四つの味わい方が楽しめます。特に味の濃い耳と下足は、炙りや蒸し焼きにおすすめです」と店主の福島淳也(ふくしまじゅんや)さん。

そこで、再び身を切り分けて炭火の上へ。
▲ほんのりと表面の色が白くなり、身がそり始めたあたりが食べ頃。うっとり見とれて焼きすぎないように

頃合いを見計らって、さあ、いただきます…!!!コリコリ感を残しながらも、確かにふんわりとした柔らかみも…くぅ~ッ、あまりの美味しさに悶絶必至です。

同店特製の「はちみつ柚子ポン酢」も一緒に提供されますが、まずは何もつけずにイカのみの甘さ際立つ旨みを存分に堪能することをおすすめします!
▲蒸し焼きにする場合、まずは少しお酒にひたして網に載せたらすぐにフードをかぶせる。この手法は、北大路魯山人の著書『魚を美味しく食べる 究極料理伝授」にヒントを得たそう

わずか税込160円なら、炭火コンロは絶対に追加するべきです!

ちなみに、こちらのお店では「イカ天丼」(税込1,250円)、「イカの肉味噌丼」(1,020円)、「イカ墨美人カレー」(税込1,080円)などもメニューに並びます。
▲「イカ三昧丼」(税込1,890円)は、「イカ天丼」「イカの肉味噌丼」に加えて、イカ刺しの入った「須佐の漁師のまかない丼」の三種類が味わえる。いずれも単品のハーフサイズ
▲ルウの濃厚さに圧倒される「イカ墨美人カレー」。これはクセになりそうな独特の美味しさ!イカの身が柔らかい~

「男命イカ」と名乗れるのは「活きイカ」に限られるので、これらのメニューは厳密に言うと“ケンサキイカ料理”となりますが、須佐が誇る「一本釣船団」が釣り上げた最高級のイカであることに変わりはありません。心ゆくまでイカ尽くしを味わうことができます。

なお、ケンサキイカ漁の最盛期となる7月から9月にかけては、安定して「男命いか」の入荷があるとのことですが、悪天候が続くなどした場合は入荷が困難となるそう。不安な場合は、入荷状況がはっきりする前日の午後以降に、お店に問い合わせるのがおすすめです。

超リーズナブル!漁師のおかみさんたちによる活きイカ定食

続いて訪れたのは、須佐漁港から車で10分ほどの場所にある「ジョイフルセンター須佐」。山口県漁協須佐支店が運営するこの施設で、イカ漁が最盛期を迎える7月から9月の土・日曜の昼限定で「男命いか」が味わえます。
▲営業は夏季のみで、漁師の“かあちゃん”たちが交代で切り盛りする

調理をするのはいかを知り尽くす「一本釣船団」漁師のおかみさんたち。メニューは「男命いか&めし」のみですが…え、え?せ、1,000円!?予想外の安さに食べる前からびっくり。
▲注文が入ると、店内の水槽から活きイカをすくい上げる。さすが、手慣れた手つき

「男命いか」すなわち活きイカなので、当然のように透きとおっています。そのお味と言えば、もう言葉はいらない美味しさ!下足の吸盤が口の中で吸い付く感覚がもう楽しくてたまりません。
▲「男命いか&めし」(税込1,000円)。入荷したイカのサイズによっては税込1,200円となる場合もあるそうですが、それでも安い!

活きイカを堪能した後は、入店時に貼り紙を見て気になっていた「イカ墨アイス」(税込250円)にも挑戦。ふたを開けると、名前通りに真っ黒!覚悟(?)して口に運んだのですが、良い意味で裏切られました。生臭さは一切なく、しっかりバニラ味で美味しい~!
▲ふたを開けてびっくりの真っ黒アイス。同施設のほかに、ご当地を代表する観光地「須佐ホルンフェルス」にある「つわぶきの館」などで購入できる
▲アイスのふたには「ホルンフェルス」と“萌え”ならぬ“藻え”キャラ「海野みこと」がデザインされている
なお、須佐漁港では、7月から9月までの土・日曜限定で「男命いか」の直売市を開催。100g・税込280円(イカ1杯・200g前後)という市場と比べて格安の値段で買えるとあって、山口県外からも多くの人が訪れます。
▲取材に訪れた7月3日(日)は2016年の直売市初日。開始時刻の午前9時半にはすでに100人近くの人が会場に!

直売市は午前11時半までですが、その前に売り切れて終了してしまうこともあるのだとか。様子を見ていると、クーラーボックスを持参して「3kg」「5kg」と購入していく人も少なくありませんでした。
▲秤にかけられる「男命いか」。興奮してあっという間に色が変わる。たまにイカが吹き上げた塩水や墨も飛んでくるので油断は禁物
▲来場者には、試食として活きイカが振る舞われる
▲会場そばでは「須佐一本釣船団」の「黎明丸」の漁師・渡部裕臣(わたなべひろおみ)さんが、直売市に合わせてケンサキイカの一夜干しや沖漬けを販売している

こちらの漁港では、「須佐夏祭り(2016年7月25日~28日)」期間中の7月27日(水)に「男命いか祭り」が開かれます。会場において漁師のおかみさんたちによる活きイカ料理が味わえ、直売も行われます。
「『活きイカ』と『イカ』は全く異なる食文化であると考えています」とは前にご紹介した「梅乃葉」のご主人・福島さん。

ヤリイカ、アオリイカ、スルメイカなどなど、とにかくイカが大好きな日本人。その中でも捌きたての活きた「男命いか」の美味しさは全くの別物であると、実際に味わってみて衝撃をもって受け止めました。

誰をも虜にしてしまう恍惚の味わい――。須佐に訪れたなら、この夏一番の感動を保証します。
▲北長門海岸国定公園の景勝地の一つ「須佐ホルンフェルス」も必見。「男命いか」で感動した後はここに訪れ、大自然の雄大さにも感動しよう
兼行太一朗

兼行太一朗

記者兼営業として、地元山口の地域情報紙に14年間勤務。退職後はNPO法人大路小路ひと・まちづくりネットワークに籍を置き、守護大名大内氏や幕末における歴史資源の取材に携わる。同時にフリーライターとして活動しながら、たまに農業も。自称ネコ写真家。(編集/株式会社くらしさ)

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