博多の伝統料理「水炊き」文化を伝承する「とり田」の魅力に迫る!

2015.06.17

博多を代表する鍋料理のひとつ「水炊き」。博多の街には、「水炊き」を提供するお店がいくつかありますが、これまでは数十年、中には100年以上の歴史を持つ老舗がほとんどでした。しかし、ここ数年、若い人でも気軽に利用できる専門店が増えており、注目を集めています。今回は、水炊き文化を継承したいと意気込む店主・奥津啓克(ひろかつ)さんの店「とり田(でん)」へ。水炊きの魅力や楽しみ方に迫ります。

郷土料理としての「水炊き」を伝えていきたい

▲博多座の楽屋口の目の前に佇む「とり田 博多本店」

今回訪れたのは、2014年8月にオープンし、まもなく1周年を迎える「とり田 博多本店」。創業は2012年7月、今も営業を続ける薬院店が始まりです。店主・奥津啓克さんは関東出身。福岡で一軒家の創作和食レストラン「手島邸」を営み、人気を集めていましたが、せっかく福岡にいるのだからと、郷土料理に携わりたいという気持ちが高まってきたそうです。

そこでたどり着いたのが「水炊き」でした。当時、水炊き専門店といえば、老舗がほとんど。若い人が気軽に行ける雰囲気はなく、「このままだと水炊きという文化が継承されなくなる」という危機感を覚えた奥津さん。自分が歴史の伝承者となり、食文化を伝えていく仕事に意味があると考え、水炊き専門店「とり田」をオープンさせたのです。
▲店主・奥津啓克さん

100年以上の歴史を刻む「水炊き」文化

鶏を主役にした鍋料理は全国各地にあります。博多の「水炊き」は、秋田のきりたんぽ、東京の軍鶏鍋、京都のかしわ鍋にならぶ、日本の四大鶏鍋料理のひとつ。もともとは、家で飼っていた鶏を〆め、もてなし料理として提供していたものが始まりと言われています。お店で提供するようになったのは、明治38(1905)年創業の「水月(すいげつ)」や明治43(1910)年創業の「新三浦」あたりから。どちらも100年以上の歴史を刻んできた老舗です。
また、「水炊き」は、博多の伝統的な祭り「博多祇園山笠」との繋がりも深いといわれています。というのも、神社では四つ足の獣肉を食することが御法度。けれど、重い山笠を昇(か)く男衆たちは体力をつける必要があり、四つ足ではない鶏の肉はとても重宝されました。今も博多祇園山笠の直会(なおらい)では、「水炊き」が食されています。

肉や野菜のエキスが凝縮したスープを最後までいただく

▲まずはスープから。シンプルな味わいに感動

水炊きはもともと家庭でのもてなし料理でしたから、特別な作法などはありません。ただ、多くのお店では、最初にスープをいただくことから始まります。「水炊きが面白いのは、最初のスープからスタートして、お肉、野菜が入っていくごとに味わいが変化していくこと。最後は素材のエキスが全て抽出されたスープにご飯や麺を入れて、一滴も残さずに食べ尽くすことができます。だからこそ、最初にスープを味わっていただくことが大切です」と、奥津さん。「とり田」では、鶏と水だけでスープを作り、好みで塩を加えてスープをいただきます。
▲コラーゲンたっぷりで女性にも人気の高い「水炊き」

続いて、胸肉、ぶつ切り、つみれ、野菜が投入されていきます。「とり田」の特徴は、地元の特産品である「博多ねぎ」と一緒に食すこと。シャキシャキとしたネギの食感と柔らかな鶏肉のハーモニーが絶妙です。ガラを使わず丸鶏一羽でスープを取る贅沢な水炊きは、単品3,024円(税込)~。この金額なら、若い方も気軽に訪れることができるはず。また、地元・福岡の銘酒やワインの品揃えも豊富なのも嬉しいですね。
▲最後の「雑炊」まで、存分に味わいたい

そして〆は雑炊orラーメン。ここ福岡では雑炊でしめることが多いですが、観光客を中心にラーメンも人気。お腹がいっぱいになってしまっても、細麺なので気づけば完食してしまいます。

「同じ素材なのに、一緒に食べるメンバーやスピードなどによって、最後の雑炊の味が全然違うんですよ。毎回、一期一会の味ができあがるのも水炊きの醍醐味。奥深いですよね」と、奥津さんは言います。また、予算やニーズに応じてのアレンジも可能。パルメザンチーズとトリュフを加え、リゾット風に仕上げたこともあったそうです。

趣向を凝らしたランチが地元客の人気を集める!

▲特製の「黄金ぽん酢」でいただく

こちらは、九州産の若鶏を秘伝のタレに漬け込み、ジューシーに揚げた「唐揚げ定食」(950円・税込)。また、薬院店では月替わりのランチが評判に! 月初になると、「今月のランチは何だろう?」と訪れる常連客も多いそうです。
▲「博多祇園山笠」の手ぬぐいが飾られた店内

1階は海外から見た日本をイメージしたモダンな雰囲気。「博多祇園山笠」の手ぬぐいも飾られています。一方、2階は昔ながらの水炊き屋のイメージをモダンに表現した広間と、接待や記念日などに利用できる個室があり、様々なシチュエーションに応じて利用できます。店内各所には地元の伝統工芸を活かした装飾が施され、食文化だけでなく、伝統文化の継承にもひと役買っています。

博多の食文化を語る上では外せない「水炊き」。ここ数年の進化は目を見張るものがあります。ここ「とり田」のようにお昼から「水炊き」を楽しませてくれるお店も増えました。次回の博多旅の計画には、ぜひ「水炊き」を加えてみませんか?
寺脇あゆ子

寺脇あゆ子

福岡を中心にグルメや旅などを中心に活動するフリーの編集者・ライター。美味しいものがあると聞けば、行かずにはいられないフットワークの軽さが自慢。主な仕事はグルメ情報誌「ソワニエ」、greenz.jpなど。

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