歴史初心者も楽しめる!ガイドさんと巡る国宝・彦根城の旅

2016.09.02 更新

日本全国に数多くの城が残されていますが、国宝に指定されているのは全国に5つだけ。その一つである彦根城は、年間を通じて多くの人が訪れる城郭でもあります。今回は彦根城のことを知り尽くすボランティアガイドさんに、見どころをたっぷり教えていただきました。ゆるキャラ「ひこにゃん」も登場しますよー!

「ここが大河ドラマのスポットで…」「あそこが歴史的に有名な○○で…」そんな場所は全国に数多くありますが、歴史に詳しくない人からすればピンとこないもの。何を隠そう筆者も日本史は真面目に勉強してこなかったので、歴史スポットを訪れてもそのありがたみを感じられないことが多々あります。

せっかく国宝・彦根城を訪れるのであれば、その面白さを熟知している人に案内していただきたい!
そこで今回は事前に「彦根ボランティアガイド協会」に申し込んでみました。(1週間前までに申し込み。ガイド1人につき税込1,000円※午前・午後をまたぐ長時間の場合は2,000円)

おすすめコースは彦根城を巡るコースや大河ドラマのロケ地を歩くコース、山の城郭を登るコースなど8つ。今回は一番人気の「彦根城と玄宮園(げんきゅうえん)」を巡るコースをお願いしました。
案内してくださるのは、彦根のガイド歴30年の岩倉喜代子さん。もともとご主人が転勤族だったことから各地に移り住んでいた岩倉さんですが、ご主人の海外転勤をきっかけに彦根に腰を据えることになったのだそうです。

岩倉さんは日本全国の城を訪れるほどの歴史好き。豊富な知識を活かしたガイドは、歴史に詳しい人はもちろん、そうでない人も引き込まれると評判です。

岩倉さん、今日はよろしくお願いします!

まるで軍事要塞!彦根城に隠された数々のトラップ

彦根城の築城は慶長12(1607)年。慶長5(1600)年に起こった関ヶ原の戦いにより勝利した徳川家康が、敵である豊臣秀頼(ひでより)をけん制するために井伊直政(いいなおまさ)に建てさせたと言われています。

「お殿様は天守(城)に住んでいるイメージがあるかもしれませんが、天守はあくまで象徴なんですよ。彦根城は戦のために建てられたもの。そのため、天守内にはトイレなどの水まわりは一切ありません」と岩倉さん。

では、お殿様はどこに住んでいたかというと、城よりもかなり麓のほうにある「表御殿」。彦根城入場入口の隣にある大きなお屋敷がまさにその表御殿で、今では「彦根城博物館」となっています。
▲明治時代に廃城令が出て一度壊された表御殿。しかし当時の図面が残っていたため、江戸時代の姿のまま復元されました

天守に向かうには、まず「表坂(おもてざか)」という山道を登っていきます。何の変哲もない坂に見えますが、一段一段微妙に歩幅が合わないよう不規則に作られているため、ここを駆け上がるとつまずきやすい構造になっているのだそうです。
▲敵が足元に気を取られている間に鉄砲で襲撃するという第一のトラップ

なんとか表坂を登ると、櫓(やぐら)にかかった大きな橋が見えてきます。これは「廊下橋(ろうかばし)」という名で、敵が攻めてくると橋の片方を外して落とすのだとか。
▲片方が落ちることで、敵が渡れないようにする第二のトラップ

そして、櫓は正面から見ると両端に荷物を下げた天秤のように見えることから「天秤櫓(てんびんやぐら)」という名前がついており、重要文化財になっています。
▲長浜城の大手門を移築したと言われている天秤櫓。日本の城郭でこの形式のものは彦根城だけだそうです

また櫓の石垣も、よく見ると両側で石の積み方が異なっています。
正面から見て右側の大小さまざまな石がランダムに積み重なっているのが、築城当初の「牛蒡(ごぼう)積み」。自然石を作為なく積んでいるように見えますが、実は細長い石が奥にのびるように並べられており、降った雨水が石垣に吸収されるようになっています。
▲越前(現在の福井県)の石工(いしく)たちによって積み上げられた牛蒡積みの石垣

正面から見て左側の石垣は石と石の接する部分が加工されており、牛蒡積みの石垣より表面がなめらかに見えます。こちらは嘉永7(1854)年に修復された際に積み直されたもの。
石垣もこうやって注目してみると面白いですね。
▲こちらは「落し積み」という手法で積み上げられています

天秤櫓は中に入ることができ、ここでも敵の襲撃に備えた仕掛けを見ることができます。
例えば、この窓枠。何がすごいのかというと、枠の仕切りがひし形になっているため、角度をつけて的を銃撃できるというメリットがあるのだそうです。
▲外からは中の様子がうかがいにくくなっています
▲斜めから銃撃できるため、隠れている敵も一網打尽にできます
▲内部の壁は鉄砲玉から守る為に二重壁になっており、間には石を詰めて防弾効果を高める工夫がされています

天秤櫓からさらに進むと見えてきたのが、彦根城下に時を知らせる「時報鐘(じほうしょう)」。
江戸時代から変わらぬ姿で残されており、当時この鐘の音は約30km先でも聞こえていたそうです。現在も6時から18時まで3時間おきに鐘が鳴らされます。
▲一般の人が打てるのは大晦日のみ

ここで、岩倉さんの一番のお気に入りの場所に到着。重要文化財の建物…などではなく、大きな岩を紹介してくださいました。なんと調べてみると3億年前の褶曲(しゅうきょく)岩盤で、当時海の底にあった岩が地上に隆起して現れたものだそうです。

「この岩を見ていると人間の一生なんて短いもの。クヨクヨしていても仕方ないと前向きになれます」と岩倉さん。
これぞ、ガイドさんと巡る醍醐味!普通なら素通りしてしまいそうな場所にも面白さが隠れています。
▲3億年前の岩は「太鼓門櫓(たいこもんやぐら)」のすぐそばにあります

太鼓門櫓を通り抜けると、ようやく天守が見えてきました!
「彦根城」は天下普請(江戸幕府の命令で行われた土木工事)によって、同じ滋賀県の京極家の居城であった「大津城」を移築して建てられたもの。外観の美しさはもちろん、軍事面でも優れていることから昭和27(1952)年に国宝の指定を受けました。

「唐破風(からはふ)」「切妻破風(きりつまはふ)」「入母屋破風(いりもやはふ)」などを駆使した屋根や寺院建築の要素なども取り入れられており、現存する他の天守にはない美しさだと言われています。
▲東西南北の面で佇まいが異なる天守

外観の美しい様子とは異なり、内部は戦のための仕掛けがあらゆるところに設けられています。
▲内部には隠し部屋と呼ばれている部屋が4箇所。4~5人隠れることができたそう

その他にも、天守内にはいたるところに鉄砲狭間(ざま)や矢狭間を見ることができます。狭間とは攻撃用の穴のこと。外からは見えないように漆喰壁で塗り固められていますが、戦の時は中から狭間を突き破り、鉄砲や矢で攻撃できるようになっています。
▲隠し部屋や狭間など、天守内には80以上のトラップが仕掛けられています

このような仕掛けの数々から、実は「恐ろしい城」と言われていた彦根城。戦に備え、完璧な守りが施されていましたが、一度もこの城で戦が行われることはありませんでした。

現在、天守最上階からは穏やかな街並みや石田三成の城があった佐和山を眺めることができます。
▲彦根の城下町から琵琶湖の方まで見渡すことができる眺めは格別

優美な庭園で四季折々の美しさを感じる

彦根城のもう一つの見所が国の名勝「玄宮園」です。彦根藩の4代藩主、井伊直興(なおおき)によって整備された庭園で、別名「槻(けやき)御殿」とも言われています。
玄宮園は中国の離宮庭園を参考に「近江八景」が表現されており、天守を借景に中心の池には4つの島と9つの橋がかかった回遊式の庭園になっています。
▲当時は庭園北側の水門から舟で琵琶湖まで出られるようになっていました

時代劇の撮影にも使われることの多い玄宮園。さまざまな種類の植物と池の色が緑のグラデーションを作り出していて、なんとも美しい雰囲気です。
天気が穏やかな日は水面に彦根城の天守が映る「逆さ天守」も見ることができ、撮影スポットとしても人気が高いそうです。

四季折々の表情を見せる玄宮園では、庭園を観賞しながらお茶をいただくことができたり、「虫の音を聞く会」(毎年9月)や「ライトアップ」(毎年11月)が催されたりと、大名庭園ならではの趣きを味わうことができます。
また、紅葉の時期(例年11月中旬から下旬)の美しさは格別で、この時期に合わせて訪れる観光客も多いのだとか。
▲色づく木々に囲まれた玄宮園は息をのむほどの美しさです

「ひこにゃん」はやっぱり癒しキャラでした

彦根城に来たらぜひ会いたいのが、彦根のゆるキャラ「ひこにゃん」。
出陣の時間帯は、「ひこにゃん」の公式ホームページや城内にある“本日のひこにゃん”という案内板で確認することができます。
▲「ひこにゃん」は毎日登場!事前に出陣スケジュールを確認して観覧するのがオススメです

出陣時間に合わせてスタンバイしていると、ゆる~りゆるりと「ひこにゃん」が登場しました。
きゃーかわいい~!
▲一つひとつの動きがキュートな「ひこにゃん」に黄色い歓声が飛び交います

「本日もゆる~くがんばります」というスタッフの声と共に、かわいらしいパフォーマンスを見せてくれる「ひこにゃん」。

パフォーマンスといっても、右に左におしりを振りながらゆる~く移動し、随時ポーズを決めるというものなのですが、なぜかこの姿に癒されるんです。

一緒に写真を撮ることはできませんが、どの場所にいても写真が撮りやすいよう移動してくれるやさしい「ひこにゃん」にもうメロメロです。
▲女性ファンの心を鷲掴みにするハートのクッションのほか、刀や旗などさまざまな小道具を駆使する「ひこにゃん」

最後は「ひこにゃん」に癒され、ゆる~く終わった彦根城巡り。
ガイドさんに案内していただくことで、驚きと発見がたくさんありました。
今回巡った場所以外にも彦根城の見所はまだまだたくさんありますので、当時の様子を想像しながらのんびり巡ってみてくださいね。
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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